相互作用型演示実験講義(ILDs)のニュートンの第 3 法則(作用・反作用の法則)の学習において,学習者の推論の正しい部分を尊重しつつ,間違った部分を修正することを支援するという「橋渡し」を目指した演示実験を取り入れることを検討した。大学生を対象とした実践において,物理概念調査問題によるプレ・ポストテストによる分析を行い,改良版ILDs の有効性を確認した。特に,質量や速度の異なる 2 物体が衝突する状況の問題だけでなく,2 物体が接触したまま押し合う状況の問題に対する正答率の向上も確認できた。
『小学校生徒用物理書』はわが国初の実験ブームの折に 1885(明治 18)年に出版され,最も優れた教科書と評されている。一方で,同書は群馬県での使用実績はあるものの,その他の地域での使用実績は不明であった。本研究では各都道府県の文書館等に保存されている同書や生徒の筆記(現在のノートや試験答案等)を調査し,群馬県の他に埼玉県,静岡県,新潟県での使用実績を明らかにした。また 1899(明治 32)年という遅い時期までの使用の証拠を見いだし,教師が実験器具や実験方法に工夫を加えながら教えていたことを解明した。
カーボン・ナノチューブ・ペーパー(CNP)を用いて,電気抵抗を探究的に学習する授業実践を行った。CNP は適度な導電性を示す新素材であり,電気抵抗器として活用することで,電気抵抗値の長さ依存性や断面積依存性を定量的に示すことが可能となる。CNP は形状加工が容易で,矩形のみでなく特殊な形状の抵抗体の電気抵抗値を測定することもできる。これらの特性を活かして高等学校「物理基礎」及び「探究」において授業実践した結果,生徒が主体的に実験を行い,電気抵抗を探究的に学習することが可能であることを確認した。
東京都市大学工学部(現,理工学部)の初年級学生に対して,運動の法則の授業終了後,質量の概念理解を問う調査を行った。その結果,授業後も,「摩擦のない面上や無重量のもとでは,物の動かしやすさに,質量の大小は関係がない」とする誤概念が根強く残っていた。同じ問題による高校生を対象にした調査結果と比較し,大学初年級物理学教育における質量概念形成の現状と問題点を考える。
本論文では 3 つの概念調査紙について,日本語訳をして中学校や高等学校で試行した結果を報告する。3 つの概念調査紙とは,熱分野の TCE,波動分野の MWCS2,万有引力分野の NGCI である。それぞれについて,授業前後での正答率と規格化ゲイン,さらに各設問の正答率も示す。そして,試行結果から得られる生徒の概念理解について,具体的な設問内容を示しながら考察する。
平成 30 年度からの移行期間を経て,小学校では令和 2 年度より新学習指導要領が全面実施となった。多くの教員が今や何度も耳にし,話題としている資質・能力の 3 本柱「学びに向かう力・人間性等」「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」についてどのようにとらえ実践を展開すべきか,さまざまな試みが行われている。本稿では,資質・能力を 3 つの視点でとらえ,それらを関連させた指導を通して子どもたちが成長することを意識し,児童が電気を量的にとらえることを目指した実践を報告する。
新学習指導要領では,国際的な教育界の動向を参考に多くの新たな要素が取り入れられた。本稿では,その中でも 1)資質・能力ベースの理科教育,2)理科の見方・考え方,そして 3)自己調整学習の視点を取り入れた評価が,小学校理科にもたらす変革と危険性について,実際の授業における教員の手立てと子どもの姿を基に考察する。 その結果,新たな要素は子どもに考えることを促す効果が高い一方,子どもの考えには誤った解釈が多く含まれており,実験で正しい結果を示すだけでなく,考えを修正する場を確保することの重要性が示唆された。
中学校では,すでに令和 3 年 4 月から評価が,全ての教科で 3 観点評価が共通になった。評価の観点を共通にしたことで,教師間での評価に関しての相互の取り組みが始まっている。本論文では,中学校の新たな課題として検討されている「主体的に学習に取り組む態度」を取り上げて,本校での具体的な評価方法について紹介する。
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