物理の初等教育において,横波に比べて直感的な理解が難しい縦波の伝搬と反射をわかりやすく演示するため,質量要素と弾性要素を集中定数的に分離して一次元的に連結した縦波ウェーブマシンを新たに考案し製作した。 縦波の変位を自動的に横波的に表示するための光学的機構も考案した。これらの工夫の結果,縦波の伝搬の様子を肉眼で追跡できる程度のゆっくりした伝搬速度を実現するとともに,固定端反射と自由端反射を再現し,その様子を横波表示的に観測できるようになった。
理解を深めてゆく中で,自ら考える過程は重要である。実験や講義の中で生徒が自ら考え始める為には,きっかけやその為の仕込みが必要である。実験を行う際は,センサー(変換素子)類を用いた ICT 測定機器が便利である一方で,その測定原理が置き去りにされていることも多い。まずは,測定原理の理解を中心に据えた授業実践を紹介する。次に,授業の中で積極的にトラップ(仕掛け)を仕込んだ展開例や,生徒が演習問題を作成する作問課題”導入の実践結果を報告する。作問課題に対するアンケート調査からは,授業時に扱う例題が作問と内容理解に影響を与えていることが推察され,改めて例題の重要性を認識した。
電磁気学は完成した古典物理学の分野の一つである。しかし,必ずしも易しく理解できるとは限らないようである。J. C. Maxwell が基本となる方程式を発見して既に 170 年になろうとする今日でも,誤解や曲解がしばしば見られる。電磁波を考える上で基本的な,Ampère-Maxwell の法則で導入されている変位電流(電束電流)に関しても,理解の難しさ,実験の困難のためか,誤った記述が多々見られる状況である。電磁気学を基礎からはじめて,正しい理解を得るにはどの範囲を視野において考える必要があるか検討する。
電磁気学のマクスウェル理論をミクロのレベルの量子電気力学に基づいて考察する。相対論的場の量子論における真空は,カラの空間(単なる物質の容れ物)ではなく,電子・陽電子対などによって満たされている物質的実体(一種の誘電体)である。その真空の物質性を考慮するならば,真空の誘電率や透磁率,および変位電流などの物理的意義がより明らかになるだろう。この真空の中での変位電流は仮想的な概念でなく実体的な存在であり,実電流と同等で磁場を作るといえる。最後に,マクスウェル方程式と因果律について言及する。
半直線電流の電磁場による「パラドックス」をディラックによる磁気単極子の表現を利用することで解く。また,半直線電流を点電荷列とみなすことで「パラドックス」の物理的描像を与える。相対論的マクスウェル方程式の考察から電荷密度と電流密度が源であり,変位電流は相対論的に必然的な項で他の項と関わりあって電磁波の伝播を創出することを主張する。マクスウェル方程式に馴染みのない方々も読者の対象とした。
マクスウェル方程式まで遡らず,しかしそこから導かれた高校物理の教科書の記述を出発点として,図解と類推によってc= 1 ε μ を導く説明方法を提案する。また,求めた E とH の関係式を微分の形に精密化し,磁場 の波として正弦波を指定することにより,電場の波の式が導かれ,電場と磁場の振動方向が互いに直交すること,両者の角振動数や位相が一致すること,振幅の比が定数であることを具体的に示す。
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