日本化粧品技術者会誌
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42 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 酒井 進吾
    2008 年 42 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    しわ, きめ, 毛穴, 等の表面形態変化に起因する内部構造変化を解析することは香粧品学のみならず, 皮膚科学, 美容学的にも非常に重要である。しかし, 表面形態は外力や切り出しによって容易に変形してしまうため, 表面形態の変化と内部構造の変化は別々の方法で評価され, その評価値の相関によって両変化の関連を解析する方法が一般に行われている。したがって, 非接触, 非侵襲的に表面構造と内部構造を同時に計測し, 解析する方法が望まれている。われわれは非侵襲的に皮膚を3次元計測することを可能にした次世代の光干渉断層計, FD-OCT (Fourier domain optical coherence tomography) を用いた皮膚内部構造解析に着手している。今回は, その新しいFD-OCT技術の概要と香粧品学的有用性, 将来性について解説したい。
  • 小西 奈津子
    2008 年 42 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    最近, 美容雑誌・女性誌の影響もあってか, 世の女性の毛穴に対する美意識が高まってきているように感じる。実際に, 外来でも毛穴をなんとか改善したいという患者が少しずつだが増えてきている。このような毛穴の開きを主訴に来院される患者に対し, 女性外来ではまずは正しいスキンケアの指導を行っている。間違ったスキンケアを行っている患者は多く, 特に10代の患者はその傾向が強い。正しいスキンケアを指導するのみでかなり改善するケースも珍しくない。そして必要に応じてレーザーや光治療などといった治療を行っている。レーザーと一言でいっても様々なものが存在するが, 当院で扱っているのは波長1450nmのダイオードレーザー (Smoothbeam) である。SmoothbeamのFDAでの適応疾患には, 尋常性〓瘡, 〓瘡瘢痕, シワがあるが, 毛穴治療にも有効である。また光治療としてはLumenis oneを導入している。Lumenis oneは波長域が500-1200nmと広く, 色素性病変 (肝斑を除く), シワ, たるみ, 赤ら顔, 開大毛孔などといった光老化の皮膚諸症状に有効である。今回はこれら治療機器を用いた女性外来での毛穴治療法について紹介する。
  • 森山 正大, 成 英次, 三崎 裕子, 林 昭伸
    2008 年 42 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    肌の美しさは, 「みずみずしい肌」「潤いのある肌」「透明感のある肌」などに代表されるような水分に関連した事象が多く, 皮膚の潤いを保つためには, 皮膚表面に水分を保持しておく天然保湿因子 (NMF) と皮膚内部からの水分蒸散を防ぐ正常なバリア機能の形成が不可欠となっている。このような観点からわれわれは培養細胞を用いたin vitro系において, シラカンバ樹液に表皮角化細胞の分化誘導作用を見出した。シラカンバ樹液は, 表皮角化細胞において, NMFの前駆タンパクであるフィラグリンおよび正常なバリア機能形成に関与するcornified cell envelope (CE) の前駆タンパクであるインボルクリンを, mRNA発現およびタンパク産生レベルで共に促進した。一方, シラカンバ樹液は, 表皮角化細胞において, 炎症の誘発および細胞の増殖マーカーの一つと考えられるIL-6の産生には影響を及ぼさなかった。今回見出されたシラカンバ樹液による分化形態の出現は, in vitroでのカルシウムによる分化誘導に極めて類似している。このことからシラカンバ樹液はin vitroにおいて表皮角化細胞の分化を誘導する効果を有していることが強く示唆された。本研究においてわれわれが検討したシラカンバ樹液は, これらの効果から皮膚の保湿機能とバリア機能に関連した因子を同時に向上させることにより, 皮膚の恒常性を維持することが期待され, 非常に有用な化粧品素材であることが示された。
  • 高橋 栄治, 及川 哲也, 井柳 宏一, 毛利 邦彦, 中前 勝彦
    2008 年 42 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    サンスクリーン製品を開発する際, 効果と感触の間でどのように妥協するか常に悩まされる。SPF値を上げようとすると紫外線吸収剤の量が増え, べたつきが増す。そこでわれわれは無機紫外線散乱剤を含んだ水系サンスクリーンジェルがこれらの問題を解決する効果的な方法であると考え「水へ分散可能な無機紫外線散乱剤を水系ジェルに組み入れる」という課題について検討した。その結果, 高い紫外線防御効果と, 高い水分散性をもったポリマー一酸化亜鉛コンポジット (P-ZnO) の開発に至った。P-ZnOは従来困難であった無機粉体を含んだサンスクリーンジェルの調製を可能にした。P-ZnOは粒径約10nmの微粒子酸化亜鉛がポリアクリル酸ナトリウムで被覆かつ連結された大きさが約500nmの集合体コンポジットであった。その構造から, 酸化亜鉛の粒子成長を制御し, 表面活性を防いでいることが示唆された。本コンポジットを配合した水系サンスクリーンジェルは紫外線防御効果と同時に快適な使用性を併せ持つことを確認した。
  • 小川 克基, 八木 克彦, 秦 英夫, 三浦 由将, 中村 浩一, 高田 定樹, 藤間 一美
    2008 年 42 巻 2 号 p. 110-120
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    コンピューターシミュレーションによる新たな粉体開発によって, 従来にないきめ細かな質感を有するファンデーションの開発を行った。女性が羨望する乳幼児のきめ細かな肌の光学特性を測定・解析することで粉体の光学的な構造設計を行った。光学特性の最適化を図るためにシミュレーションの計算手法にMaxwellの微分方程式を差分化し時間領域で解くFDTD (finite differential time domain) 法を用いた。光学的な理想構造に基づいた複合粉体の合成には薄片状基板に硫酸バリウムの結晶を微細球状に被覆する形態制御被覆技術を用いた。開発した複合粉体の光学特性は一次粒子レベルで高い拡散特性を有していることが確認され, 複合粉体を配合したファンデーションは毛穴や小じわ, しみ・そばかすなどを均一に補正し, 従来にない繊細な反射特性によるきめ細かな質感を演出していた。
  • 栃尾 巧, 森地 恵理子, 広瀬 統, 中田 悟, 久世 淳子
    2008 年 42 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年の研究から, メイクアップは心理的な指標だけでなく生理的な指標においても精神的ストレスの緩和効果があることが示されている。本実験において, われわれは, 精神的ストレスとsuperoxide dismutase (SOD), catalase (CAT) のような活性酸素消去酵素の関係およびメイクアップによる精神的ストレス緩和効果の活性酸素消去酵素に対する影響について調べた。実験1において, 精神的ストレス負荷前後に唾液中のコルチゾール濃度とSOD活性を測定したところ, 負荷前に比べコルチゾール濃度の増加とSOD活性の低下がみられた。また, 実験2において, 精神的ストレス負荷後にメイクアップを行った実験群は, 精神的ストレス負荷前に比べ, 唾液中のコルチゾール濃度は減少傾向にあり, SOD, CAT活性は増加した。また, 心理的効果として, 状況不安の低下や精神的健康度の上昇などが示された。以上の結果から, メイクアップは精神的ストレスによる心理的不安を解消し, 活性酸素消去酵素の活性低下を抑制すると考えられた。
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