肌の美しさは, 「みずみずしい肌」「潤いのある肌」「透明感のある肌」などに代表されるような水分に関連した事象が多く, 皮膚の潤いを保つためには, 皮膚表面に水分を保持しておく天然保湿因子 (NMF) と皮膚内部からの水分蒸散を防ぐ正常なバリア機能の形成が不可欠となっている。このような観点からわれわれは培養細胞を用いた
in vitro系において, シラカンバ樹液に表皮角化細胞の分化誘導作用を見出した。シラカンバ樹液は, 表皮角化細胞において, NMFの前駆タンパクであるフィラグリンおよび正常なバリア機能形成に関与するcornified cell envelope (CE) の前駆タンパクであるインボルクリンを, mRNA発現およびタンパク産生レベルで共に促進した。一方, シラカンバ樹液は, 表皮角化細胞において, 炎症の誘発および細胞の増殖マーカーの一つと考えられるIL-6の産生には影響を及ぼさなかった。今回見出されたシラカンバ樹液による分化形態の出現は,
in vitroでのカルシウムによる分化誘導に極めて類似している。このことからシラカンバ樹液は
in vitroにおいて表皮角化細胞の分化を誘導する効果を有していることが強く示唆された。本研究においてわれわれが検討したシラカンバ樹液は, これらの効果から皮膚の保湿機能とバリア機能に関連した因子を同時に向上させることにより, 皮膚の恒常性を維持することが期待され, 非常に有用な化粧品素材であることが示された。
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