日本化粧品技術者会誌
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47 巻, 4 号
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特集総説 紫外線防御化粧品を支える技術と製剤(2)
報文
  • ~Ⅲ型コラーゲンプロペプチド切断酵素meprinの加齢変化~
    村上 祐子, 足立 浩章, 坂井田 勉, 田中 浩, 八代 洋一, 中田 悟
    2013 年 47 巻 4 号 p. 278-284
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/12/21
    ジャーナル フリー
    真皮のコラーゲン線維はⅠ型およびⅢ型コラーゲンから構成されており,加齢とともにⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率が減少する。また,これが真皮の物性に影響を及ぼすと考えられている。コラーゲン分子は,線維芽細胞において,プロ体として合成,分泌されたのち,酵素によりN末端およびC末端のプロペプチドが切断されることで互いに会合し,コラーゲン線維を形成する。今回,コラーゲン線維におけるⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の加齢にともなう減少メカニズムを調べる目的で,Ⅰ型およびⅢ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素の加齢変化について検討した。また,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素であるmeprinに及ぼすスクシニルブリオノール酸2Kの効果についても検討した。その結果,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素meprinの発現は,Ⅰ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素BMP-1およびADAMTS-14よりも加齢とともに顕著に減少した。また,スクシニルブリオノール酸2Kは,meprinの発現を促進した。以上から,Ⅲ型コラーゲンのプロペプチド切断酵素がⅠ型のそれよりも顕著に減少するということが,コラーゲン線維中のⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率を低下させる一因であると考えられた。また,スクシニルブリオノール酸2Kにmeprinを増加させる効果が認められたことから,加齢によるmeprinの減少を防ぐことでⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少を抑制し,真皮の物性変化を改善できると示唆された。
  • 勝田 雄治, 岩井 一郎, 針谷 毅
    2013 年 47 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/12/21
    ジャーナル フリー
    敏感肌において感覚刺激を受けやすいことの原因の一つとして,角層バリア機能の低下により外来刺激物質が皮膚に浸透しやすくなっていることが考えられている。しかしながら,角層バリア機能がどのように低下しているのかについての詳細は明らかになっていない。そこで,ドライアイの診断法として汎用されているフルオレセイン染色法を皮膚に応用して,非侵襲的手法による角層バリア機能のビジュアル化を試みた。検討の結果,皮膚にフルオレセインを塗布して蛍光を観察することにより,角層深部への水溶性物質の浸透が確認できた。また蛍光強度を定量したところ,経皮水分蒸散量との間に相関が確認された。これによりフルオレセイン染色像が角層バリア機能を反映していることが明らかになり,角層バリア機能のビジュアル化が実現できた。また,角層バリア機能がどの領域で低下しているかを観察することが可能になった。実際にこの方法を用いて敏感肌の頬部皮膚の観察を行ったところ,毛穴周辺領域での角層バリア機能の低下が示唆された。さらにはスキンケア化粧品の連用による角層バリア機能向上のビジュアル化に活用しうることが示された。
  • 沖山 夏子, 津田 千春, 森合 康朗, 次田 哲也, 南 浩治, 佐藤 直紀
    2013 年 47 巻 4 号 p. 292-300
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/12/21
    ジャーナル フリー
    ファンデーション (FD) ユーザーの多くが日常的に感じている「化粧のり」,すなわち化粧仕上がりが日によって異なる現象に着目し,同一人の肌で化粧仕上がりを毎日観察する調査を行った。化粧仕上がり変動の原因は,素肌の表面状態が日によって変動することによりFD の肌への付着状態が変化するため,という仮説を設けた。30代女性15名のパウダータイプFDユーザーを被験者とし,素肌の表面特性 (水分量,皮脂量,粘弾性) の測定と表面状態 (落屑,毛穴,ニキビ,色むら) の観察,化粧仕上がりの観察を1カ月間毎日実施した。その結果FDの仕上がりは,同一被験者が同じFDを使用していても日によって変動していた。変動の内容は「かさつき目立ち」が変動するタイプと「ムラづき」が変動するタイプの被験者に分類された。素肌状態も日により変動していた。FD仕上がりと素肌の変動の相関を被験者ごとに解析した結果,「かさつき目立ち」変動タイプでは落屑,ニキビの変動が,複数の被験者において仕上がり変動と相関が認められた。素肌の表面凹凸が日々変動することがFD付着性に影響を与え,化粧の「かさつき目立ち」の変動の原因となることが示唆された。
  • 中村 清香, 小林 恵理子, 林 奈津子, 村越 紀之, 小柳 綾子, 笠原 淳仁, 吉岡 正人
    2013 年 47 巻 4 号 p. 301-307
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2015/12/21
    ジャーナル フリー
    キューティクル最表面には,18-メチルエイコサン酸が直下のタンパク質に結合したF-layerが存在している。F-layerは毛髪表面を疎水性に保ち,外的ストレスから毛髪を保護しているほか,健康な毛髪の質感の保持にも深い繋がりを持つ。F-layerの破壊はキューティクルのリフトアップや剥離,内部成分の流出など更なるダメージを加速させ,健康な毛髪特有の官能特性が失われるため,再び健康な髪へ修復することを目的として擬似F-layer構造を持つCetearamidoethyl diethonium hydrolyzed protein (CDHP) を開発した。CDHPは,アルキル基を持つカチオン系化合物とコメペプチドとのイオンコンプレックス素材である。これまでに蛍光ラベリング手法でCDHPが毛髪表面のダメージ部位に特異的に吸着することがわかっている。本報ではこれに加えて,接触角および表面摩擦係数測定法でCDHPが毛髪表面の物性を健康毛に近づけること,さらにCDHPを配合したシリコーンフリーコンディショナーが毛髪に良好な感触を与え,その感触を持続できることがわかったのでこれを報告する。
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