動物臨床医学
Online ISSN : 1881-1574
Print ISSN : 1344-6991
ISSN-L : 1344-6991
14 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Original Article
  • 斉藤 久美子, 鶴岡 学, 田川 雅代, 金澤 優子, 藤原 清隆
    2005 年 14 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    ウサギの参照値を求めることを目的に,臨床上健康な家庭飼育ウサギ110頭から採血し,生化学分析装置「富士ドライケム7000V(FDC)」にて24項目の測定を行った。いずれの項目も溶液法との間に高い相関性が認められ,測定値の有用性が確認された。しかし,一部の項目,特にカルシウムおよびアルブミン(ALB)値では測定値の差が大きかったことから,装置ごとの参照値を使用すべきであると思われた。総タンパク(TP)とALBの両方を測定した101検体中10検体でALBがTPを上回った。そこで,診断にあたってはALB値の補正が必要と考え,いくつかの測定法について比較検討した上で,電気泳動法を基として補正値を算出した。
  • 小林 正行, 星 克一郎, 平尾 秀博, 清水 美希, 島村 俊介, 田中 綾, 山根 義久
    2005 年 14 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)による慢性心不全(CHF)に対するβ遮断薬の有効性と安全性を評価する目的で,β遮断薬治療を行ったMR犬26症例を対象とし遡及的検討を行った。投与開始時のNew York Heart Association (NYHA)の心機能分類はII度が10例,III度またはIV度が16例で,ジゴキシン,ACE阻害薬,利尿薬を含む標準的な心不全治療が行われていた。β遮断薬(酒石酸メトプロロール)は,0.5mg/kg/dayから開始,目標投与量2.0mg/kg/dayに漸増された。投与前の臨床症状,胸部X線検査,心臓超音波検査によるデータと投与後のデータと比較した。投与1カ月,3カ月,および6カ月後で,それぞれ40.0%,45.0%,30.8%の症例でNYHAの改善が認められた。心拍数および左室短縮率は低下傾向を示したが,左室前負荷に増大は認められなかった。胸部X線検査上では心拡大傾向が認められたが,心室壁厚は維持され心拡張は抑制されていた。投与直後に9症例(34.6%)に副作用が認められ,その発生は重症例ほど多い傾向にあった。以上の結果から,導入時の心不全増悪に注意が必要であるものの,従来の標準的な心不全治療に加えβ遮断薬を併用することは,犬のMRによるCHFに対して有効である可能性が示唆された。
Case Report
  • 高島 一昭, 佐藤 秀樹, 山根 義久, 江口 博文
    2005 年 14 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    9歳齢の雑種犬が,跛行を主訴に来院した。犬の頭頂から後頭部にかけて骨隆起が認められたため,内科療法を行っていたが,突然痙攣発作を生じた。頭部CT検査にて,頭頂骨および後頭骨,側頭骨にかけて激しい骨破壊像が認められた。また,後頭葉にも高吸収像を呈する腫瘤がみられ,顕著なMidline Shiftも認められたため,腫瘍による脳の圧迫像および頭蓋内圧亢進症と診断した。緊急開頭術にて頭蓋骨および脳内腫瘤の摘出を行い,頭蓋減圧術を実施した。術直後のCT検査にて,Midline Shiftが消失したため,頭蓋内圧が正常化したものと考えられた。臨床症状は劇的に改善したが,その後,再発が認められ,第57病日に死の転帰をとった。病理診断は骨の多分葉状腫瘍であった。
  • 堀 泰智, 山下 和史, 荒薪 義隆, 上地 正実, 夏堀 雅宏, 中山 正成
    2005 年 14 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    後肢に麻痺を主訴とした6歳,雌,体重3.7kgの雑種猫に対して単純X線検査,脊髄造影検査およびCT検査を行った結果,第7頸椎に原発したと思われる孤立性外骨症を認め,さらに第6,7頸椎および第1胸椎レベルにおける脊髄神経の圧迫が確認された。右側椎弓切除術により除圧するとともに外骨症を切除した。本症例では,神経症状の期間が長く,術中に脊髄の色調の変化が観察されたので予後の悪いことが示唆された。このことより孤立性外骨症においても早期のCT検査による診断と外科的治療が必要であったと考えられた。
  • 金井 浩雄, 金井 裕子
    2005 年 14 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    2カ月前より左右対称性の脱毛や前立腺嚢胞など副腎皮質機能亢進症を疑わせる症状を呈していたフェレットが,突然の元気消失と多飲多尿のため来院した。精査したところ,高血糖と尿糖および尿中ケトン体がみられた。糖尿病性ケトアシドーシスと診断し,インスリンの治療を行ったが,尿中ケトン体は消失したものの血糖値のコントロールは困難であった。副腎疾患の関与を疑い,試験的開腹を行ったところ,左右副腎の形状異常が認められたため,左副腎の全摘出と右副腎の部分切除を実施した。その結果,術後数日でインスリンの投与が不要になり,その後糖尿病の再発はみられなかった。病理組織検査では右副腎が副腎腺腫,左副腎が過形成と診断された。フェレットにおいて,副腎皮質機能亢進症が糖尿病を引き起こす可能性が示唆された。
feedback
Top