本研究は,多様な考え方の共通点・相違点を考えることと,最も良い考え方を選ぶことが,小学生のデータの代表値を用いた判断を伴う課題解決に及ぼす影響の差異を検証した。本実験では,小学5年生(
N=46)を対象とし面接調査を行った。実験参加者は,介入課題において多様な考え方の共通点・相違点を考える共通相違群と,最も良い考え方を選ぶ最良選択群に割り当てられ,事後課題に取り組んだ。事後課題は主に,(A)平均が妥当でないときに平均以外の代表値で判断できるか,(B)多様な代表値を用いて判断できるかを問う課題であった。対数線形モデルのあてはめによる分析の結果,課題(A)正答者では,課題(B)で自発的に複数の代表値を用いた児童が共通相違群で多く最良選択群で少なかった。また,課題(B)で自発的に複数の代表値を用いた児童の回答内容を検討したところ,平均に対する最大(小)値の影響を述べるなど,平均が常に正しいとは限らないことに言及した児童が,共通相違群で多い傾向にあった。
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