以上の研究結果を總括レて述べると次の如くなる.
1)研削砥石の表面状態及び構造組織を檢査するには觸針式切断面法に依つて實驗しΣ
h/S及び
n/S或はΣ
h/n及び
S/nの兩者を測定すれば良い.但し
Sは測定長さ,
hは突起の高さ,
nは測定長さ
S中に含有される突起の数である.
2)觸針の先端曲率半徑は.Σ
h/S及び
n/S或はΣ
h/n及び
S/nに至大の影響を持つ.この關係は一部分 H. Fleming 氏の結果と同一である.即ち曲率半徑が大になる程.Σ
h/S或はΣ
h/nは抛物線的傾向を以て減少し
n/Sは緩減-急減-緩減の傾向を以て次第に減少し
S/nは之と正反對と傾向となる.
3)研削砥石の表面檢査にはΣ
h/S及びΣ
h/nの減少度合が少くなり一方
n/S及び
S/nの減少及び増大度合の少くなる範圍の曲率半徑が良く砥石の粒度番號が20~320の範圍,硬度符合がG~Rの範圍では
r=5m/mが適當である.
砥石の場合の燭針の曲率の決定には觸針の磨耗の影響を低減せしめることが基本となる.
4)一本の觸針に依る測定長さは100m/m,測定壓力は10g程度が良好である.
5)砥石のドレッシング及びツル-イングは檢査結果に著しい影響を及ぼさぬ.
6)硬度符合が同一の場合粒度符合が増加すると突起凹凸の程度(粗さV=Σ
h/n)は双曲線的傾向を以て減少する.又突起の聞隔(突起數の逆數)も同傾向に減少する.
7)粒度符合が同一の場合は硬度符合が高くなるに從つて,一般には突起の凹凸程度粗さ
V=Σ
h/n)は抛物線的傾向を以て減少する.
併し硬度符合が或値以下になると逆に減少するものもある.又以上の傾向とは全く反對の經過を取るものもある.
一方突起の間隔は一般的には
Vと同傾向に減少してゐるが,同様に硬度符合が或値以下になると逆に減少するものがある.
又以上の一般的傾向とは全く反對の經過を取り或は硬度符合の變化に依で突起間隔の全く變化せぬものもある.
8)
Vは粒砥と結合剤の量の割合を示し
P=
S/nは砥石の單位容積當りの砥粒の密度を示す,從て
V及
Pの兩者に依て砥石の構造組織を判定し得る.
9)一般邦國の研削砥石は硬度同一の場合には粒度番號の如何に拘らず同一の組織を持つてゐる.
10)粒度符合が同一の場合一般には硬度符合が高くなるに從つて組織は密になる.併しこの密になる原因は次の二種に分れる.
イ)砥石の單位容積中に含有される粒砥と結合剤がお互の容積割合を變ずることなく共にその量を増加せる結果に依るもの,之は一般的傾向である.
ロ)粒砥の容積に變化なく結合剤の量が増加せる結果に依るもの.從て之は硬度に依て砥粒と結合劑の調合割合を變するものである.又特に以上の傾向と全く逆のものがある即ち硬度符合が高くなるにつれて組織は粗一密一粗と變化する.これもイ)ロ)と同様之と全く逆の二種の原因に依る.
11)各會社の砥石はその組織符合が同一でもその粗密程度の相關性は全く別々である.從て使用に際しては各會杜の製品を必ず指定せねばならぬ.
12)砥石の磨耗經過は常に三種の型式が混合してゐる.
從て最悪の研削條件下でも最良の磨耗經過を,取る粒子があり.最良の研削條件下でも最悪の磨耗經過を取る粒子がある.
13)砥石の表面粗さは検査中の磨耗に依て變化ない.この事より砥石の何處の表面を検査しても手均粗さ及び突起數に變化ないことが判る.
14)觸針式で磨耗面の一連のプロフィルを檢すれば砥石の構造状態を知ることが可能である.
15)粒度番號及び硬度符合とΣ
h/n及
S/nとの間には數學式的關係がある.從てこの検査法をこの兩者の検定に應用することも可能である.
附記
本實験に於ては簡便に砥石の表面状態並びに組織を檢討する目的で
V=Σh/n及び
P=S/nの二量を用ひて判定を下したが之が表面凹凸の最大高さΔ
Hと,測定長さ
S中の
nの二量を用ひて判定してあ全く同一結果となつた.
この方法なれば更に檢査を簡便とし現場検査に適合するものと思考する.
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