切削油剤の潤滑効果と, 冷却効果が工具の欠損および摩耗などに及ぼす影響について調べた。その結果, 次のようなことがわかった。
1) 切削油剤として水を噴霧供給した場合には, 故意に刃先を鋭くしたS種 (JISP種相当) 超硬チップの切れ刃に欠損を生ぜしめるが, スピンドル油を噴霧供給した場合には, その定常的な冷却効果はかなり大きいにもかかわらず, 欠損が起こらず, 切削油剤としての効果が認められる。これは噴霧供給法における両油剤の急冷効果の相違によるものであると考えられる。
2) 既知の物性定数を用いて計算したG種 (JISK種相当) 超硬バイトの熱衝撃係数は, S種 (JISP種相当) 超硬バイトよりも大きく, 高速度鋼と同程度であり, 油剤の使用に対して適している。
3) いおうを豊富に含む油剤は, 比較的高速切削においては, 一般に工具のクレータ摩耗を大きくする。しかし同一成分の油剤を噴霧供給して冷却効果を持たせた場合は, この心配は少ない。
4) 急冷によの, 焼入硬化を起こしやすい被削材では, 冷却能力の大きい油剤の使用は, 削りくずを硬化させ, 工具損耗を助長する場合がある。
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