Ketamine hydrochloride(以後Ketamine)の鎮痛作用をはじめとする中枢作用機序について検討するために,坐骨神経刺激による上眼瞼のmicrovibration(sciatic evoked eyelid microvibration,SMV),侵害反射性筋放電,M・H波および光刺激により上眼瞼に誘発されるmicrovibration(MV)を対象とした実験をウサギを用いて行った.
1)SMVはKetamineの少量投与(0.5mg/kg)により振幅の減少を示し,さらに増量(1.0-10.Ong/kg)するのに伴い著明な振幅の減少を示した.
2)あらかじめ縫線核を電気的に破壊したウサギにおいては,Ketamine投与によるSMVの振幅の減少は,非破壊群に比し軽減されることが認められた.
3)視床のnucl.ventralisanteterior(VA)を電気的に破壊したウサギおよび大脳皮質をキシロカイン塗布により麻酔させたウサギにおいては,Ketamine投与によるSMVの振幅の減少には,それぞれVA非破壊群ならびに大脳皮質非麻酔群に比し有意の変化が認められなかった.上記1)-3)の成績より,Ketamineは強力な鎮痛作用を有すること,このKetamineの鎮痛作用には縫線核が直接的あるいは間接的に関与するが,VAおよび大脳皮質は関与しないことが考えられる.
4)坐骨神経刺激による侵害反射性筋放電の加算波形の振幅は,KetamineO.3gig/kgの少量投与により著明に減少した.したがって,Ketamineは多シナプス反射を抑制することが明らかとなった.
5)M・H波の振幅は,Ketamine投与により著変を示さなかった.したがって,Ketamineは単シナプス反射や神経筋接合部には影響を及ぼさないことが明らかとなった.
6)光刺激による上眼瞼のMVの振幅は,Ketamine少量投与下(0.3-0.5mg/kg)では,むしろ増大したが,それより増量(1.0-10.0mg/kg)すると,軽度の減少を示した.したがって,KetamiRe少量投与下では,意識レベルはむしろ高まった状態となり,また増量した場合でも,意識への影響は軽度であることが確かめられた.
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