土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
74 巻, 7 号
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環境工学研究論文集 第55巻
  • 河野 誉仁, 赤松 良久, 乾 隆帝, 後藤 益滋, 山口 皓平
    2018 年74 巻7 号 p. III_457-III_462
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     アユは内水面における有用種であるが,近年全国的に漁獲量の減少が報告されているため,減少要因を把握し,適切な資源管理をおこなう必要がある.本研究では,中国地方の一級河川である高津川,小瀬川,太田川,斐伊川を対象に,夏季における河川水温のモニタリングと,環境DNAを用いたアユの生息状況の調査を実施し,アユの環境DNA濃度およびフラックスと河川水温の関係性について検討した.その結果,アユの環境DNA濃度およびフラックスの流程分布パターンは河川によって異なっていた一方,全河川をあわせてみた場合,7月から8月までの平均水温が23℃前後の地点でアユの環境DNA濃度およびフラックスが多いことが示唆された.これらの結果から,本研究対象である4河川では,アユは,夏季における水温選好性がある可能性が示された.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 武田 知秀, 定地 憲人, 内山 僚介, 泉 孝佑
    2018 年74 巻7 号 p. III_463-III_469
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     河川において魚がすみやすい環境を創出するためには,洪水時に魚の避難場所となりうる空間を確保する必要がある.既往の研究によって,わんどが洪水時の魚の避難場所として有効であることが解明されているが,魚の避難行動とわんどの幾何学形状との関係は十分には解明されていない.本研究では,わんどの開口部の向きおよび流速の変化がカワムツの避難行動に及ぼす影響について検討した.その結果,わんど開口部の向きが横断方向の場合と比べて,流下方向の場合では低速流域が広範囲に形成され,避難場所となる空間が増加することが明らかになった.また,わんど開口部の向きが流下方向のケースでは,カワムツが主として側壁および下流方向を向いて遊泳していることが解明された.
  • 東 和之, 大田 直友, 阿部 暉, 大谷 壮介, 橋本 温, 上月 康則
    2018 年74 巻7 号 p. III_471-III_476
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     徳島県吉野川河口住吉干潟において,産学民の協働によるシオマネキのモニタリング調査を5年間行った.その結果,シオマネキの個体数密度の変動や底質選好性などが明らかになってきた.また協働調査参加者へのアンケート調査を行ったところ,市民団体会員と非会員の間では,本協働調査に対する意識の違いが確認された.本活動のような希少種の基礎的な生態調査は保護策として重要であるが,「モニタリング」では研究費を得にくいのが現状であり,作業を分担できる協働調査を続ける意義が見いだされる.しかしながらアンケート結果からは協働調査継続への課題も挙がっており,今後は参加者の満足度を高める行動や参加者の広がりを促すための啓発等も含めて活動する必要がある.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 緒方 亮, 内山 僚介
    2018 年74 巻7 号 p. III_477-III_483
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     魚の遡上・降下を促進させるために河川に魚道が設置される.魚道を設計する上で,魚道内の流速,水深や勾配等の魚道の諸条件が魚の遊泳特性に及ぼす影響を把握することは極めて重要である.既往の研究では魚道に一定の横断勾配を持たせることで,少なくともウグイの遡上に対しては有用であることが指摘されている.このように,魚道の横断勾配が魚に及ぼす影響について解明されつつあるが,魚道に適した横断勾配の角度については未解明である.そのため,まずは魚道のような流れが複雑な状況ではなく,開水路のようなシンプルな流れにおいて横断勾配の変化が魚の遊泳特性に及ぼす影響を解明することが望まれる.本研究では,開水路底面の横断勾配および流速の変化がカワムツの遊泳特性に及ぼす影響について検討した.その結果,開水路底面の横断勾配の増加に伴い,最深部付近を遊泳するカワムツの尾数が増加することが判明した.また,横断勾配のないケースと比較すると,横断勾配のあるケースの方が停滞するカワムツの尾数が増加することが判明した.
  • 青木 宗之, 船越 智瑛
    2018 年74 巻7 号 p. III_485-III_491
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,粗石配列の異なる水路式魚道および実魚(平均体長BL=8.7(cm)のウグイ)を用い,配列の違いによる流れおよび実魚の応答について検討した.
     そのために,水理実験および挙動実験を行った.その結果,ウグイの遡上率Rrは粗石配列の違いで大きな差異は見られなかった.また,実験流量Qおよび粗石配列の違いに関係せず,ウグイは2~8BL(cm/s)程度の箇所を選好して遡上した.次に,ウグイの遡上時間および距離に着目したところ,Run1(千鳥配列)に比べてRun2(整列配列)において,時間および距離が短縮した.これは,ウグイが前者では水路全体をジグザグに,後者では直線的に遡上しており,Run1に比べてRun2におけるウグイの遡上が効率的であったことを示している.
  • 杉田 創, 小熊 輝美, 張 銘, 原 淳子, 川辺 能成
    2018 年74 巻7 号 p. III_493-III_502
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     ヒ素吸着材のひとつとしてカルシウム系吸着材が期待されているが,汚染水中のヒ素を除去した吸着材は,それ自体が多量のヒ素を含有するため,適切な処理を行わずに環境中に廃棄された場合,ヒ素溶出による二次的な環境汚染を引き起こす懸念がある.本研究では,土壌やセメント系固化材等から溶出する可能性のあるケイ酸成分が使用済Ca系吸着材の環境安定性に及ぼす影響を評価するために,ケイ酸溶液を用いた振とう試験を実施した.その結果,CaO及びCa(OH)2を母材とした使用済Ca系吸着材では,試験溶液に含まれるケイ酸の初期濃度が高いほどヒ素の溶出率が低下することが明らかになった.これは,ケイ酸成分が使用済吸着材から溶出したカルシウム成分と反応してケイ酸カルシウム種を生成する際に,使用済吸着材から溶出したヒ酸成分を取り込むためと考えられた.また,生成したケイ酸カルシウムの平均化学組成は,試験溶液の初期Si濃度によって異なり,25 mg/L付近ではCa2SiO4,50~100 mg/LではCaSiO3が推測された.一方,初期Si濃度が比較的低い場合(約5 mg/L)では,使用済吸着材表層へケイ酸成分がイオン交換反応あるいは化学吸着反応によって直接的に吸着する反応が優勢であると推察された.
  • 木村 建貴, 福谷 哲, 山路 恵子, 池上 麻衣子
    2018 年74 巻7 号 p. III_503-III_508
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     植物は鉄の取得のために,共生関係を築いている微生物が生成するシデロホアと呼ばれる鉄(III)キレート剤を利用している.近年,シデロホアを用いることで粘土鉱物中や土壌中に取り込まれたCsの溶出量が増加することが見出された2),3).すなわち,粘土鉱物中に固定されていると考えられている放射性Csが,恒常的な植生物の活動によって脱離する可能性があることを示唆している.そこで本研究では,植物の生態活動において,シデロホアが与える粘土鉱物中Csの脱離現象に関する調査研究を目的とした.自生しているクローバー根中から分離した微生物の生成するシデロホアを用いて溶出試験を行ったところ,Cs添加した粘土鉱物に関して,Cs溶出率が増加する結果が得られた.この結果より,シデロホアの存在により粘土鉱物中のCsが脱離する可能性を示せた.
  • 百鳥 仁, 石川 奈緒, Warunee LIMMUN, 佐藤 巧夢, 笹本 誠, 伊藤 歩, 海田 輝之
    2018 年74 巻7 号 p. III_509-III_515
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,湿式の化学的方法による鉄(VI)酸カリウム(K2FeO4)の生成を試み,その生成物を用いて水試料および下水汚泥試料中のノニルフェノール(NP)を分解除去できた.次に,鉄(VI)酸カリウムによるNPの無機化の程度と分解生成物の生分解性について,放射性同位体炭素14Cから構成されたNPを用いたトレーサー実験により検討した.生分解性の評価には活性汚泥微生物を用いた.14Cの減少率が低いことからFe(VI)の酸化反応によるNPの無機化はほとんど確認されなかった.活性汚泥のみの添加により14C量は徐々に減少し,微生物による生分解が確認された.K2FeO4による分解生成物の生分解性は元のNPよりわずかに高くなったことから,より生分解性のある生成物に変化したと示唆される.
  • 市木 敦之, 丸岡 寛幸
    2018 年74 巻7 号 p. III_517-III_526
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     都市系面源汚染の中でも降雨時に流出する道路塵埃の汚染ポテンシャルは高い。道路塵埃には多環芳香族炭化水素類(PAHs)や重金属類が含まれており、それらが未処理のまま流出するため、受水域への影響が懸念されている。本論文では、自動車交通由来の汚染に着目し、高速道路塵埃を採取して含有される汚濁物の測定を行い、結果について考察した。これにより、冬季に回収された道路塵埃にはNaが多く含まれており融雪剤の影響がみてとれた。また、有害な金属元素の中ではZnとCuが多く含まれていることがわかった。ClPAHsとその親PAHsは粒径75μm以下の粒径区分で正の相関を示し、こうした細かい粒子におけるPAHsの増加と同時にClPAHsが生成されていることが示唆された。PAHsとCuは負の相関にあり、PAHsの光分解時にCuが触媒になっている可能性が推察された。
  • 雪岡 聖, 田中 周平, 鍋谷 佳希, 鈴木 裕識, 藤井 滋穂, 高田 秀重
    2018 年74 巻7 号 p. III_527-III_535
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年,水環境中のマイクロプラスチック(MPs)を輸送媒体とした微量有機汚染物質の水生生物への悪影響が問題視されている.本研究では水環境中におけるペルフルオロアルキル酸類(PFAAs)および多環芳香族炭化水素類(PAHs)とそのハロゲン化体類(X-PAHs)のMPsへの吸着特性の検討を主目的とした.特にMPsの粒径に着目し,1)MPs標準品を用いた吸着試験,2)2017年10~11月に琵琶湖・大阪湾における表層水中のMPsへの微量有機汚染物質の吸着量の存在実態の調査を行った.MPsの粒径が小さくなるにつれて,単位重量あたりのPFAAs, PAHs, X-PAHsの吸着量が多くなる傾向が示され,粒径数十μmのMPsでは浮遊物質より吸着量が多くなる可能性が示唆された.また,環境中の作用によりMPsが劣化し表面積が大きくなると,PFAAs, PAHsの吸着量がさらに増加することが予想された.
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