土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
68 巻, 7 号
選択された号の論文の86件中1~50を表示しています
環境工学研究論文集 第49巻
  • Denny HELARD, Joni A. FAJRI, Ahmad S. SETIYAWAN, Fusheng LI, Toshiro Y ...
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_1-III_11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     To obtain information that can be used as reference for improving the environment inside and surrounding the open channels receiving johkasou effluent, the formation and correlation of sediment bed bacterial density with water quality were evaluated with multivariate statistical analysis based on measured data for water and sediment samples collected for 8 times from 6 sites of an open channel that receives johkasou effluent in a residential area of Gifu Prefecture, Japan. Statistical analysis included principal component and factor analysis (PCA/FA), cluster analysis (CA) and correlation analysis. The PCA/FA results showed that 3 dominant factors were responsible for the water quality data structure, accounting for 85.12% of the total variance in the dataset. Hierarchical cluster analysis grouped 6 study sites into 3 statistically significant clusters, reflecting different characteristics and pollution levels of the sites. Correlation analysis revealed statistically significant relationships of the sediment bed bacterial density with BOD, total nitrogen and total phosphorus in the water of the channel receiving johkasou effluent.
  • 松永 健吾, 久保田 健吾, Erica Vonasek , 竹村 泰幸, 原田 秀樹
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_13-III_19
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     嫌気/好気活性汚泥法およびDown-flow Hanging Sponge (DHS)法の汚泥中に存在する真核生物の群集構造を,18S rRNA遺伝子情報を用いて解析した.嫌気/好気活性汚泥法では濁度の除去に寄与する繊毛虫亜門Opercularia属に近縁なクローンが優占していた.一方DHS法では,節足動物門に近縁なクローンが全体の50%以上を占めた.遺伝子解析結果を既報の顕微鏡観察結果と比較すると,活性汚泥においては相関が見られたが,より高次な生態系が構築されていると推察されるDHS汚泥においては結果が異なり,遺伝子解析と顕微鏡観察を相補的に用いる必要性が示唆された.また,遺伝子解析より綱レベルで未知な配列が回収され,顕微鏡観察に比べ未知の真核生物群を評価できる可能性が示唆された.
  • 石川 愛弓, 渋谷 幸子, 玉木 秀幸, 原田 秀樹, 久保田 健吾
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_21-III_30
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     難分解性有機物やアンモニア態窒素,無機塩類を多く含む浸出水処理硝化槽内の微生物群集構造を分子生物学的手法と培養法により調査した.クローンライブラリーの65%がProteobacteria門に属するクローンで構成されていたが,この他にCandidate Division TM7,OD1,TM6に属するクローンが多数検出された.また,難分解性有機物分解菌や海洋性のアンモニア酸化細菌および亜硝酸酸化細菌に近縁なクローンが検出された.培養では,ゲル化剤として寒天およびジェランガムを用いて合計312株を分離した.クローンライブラリーで優占していた機能が未知なグループに近縁な株や多環芳香族炭化水素分解菌に近縁な株が分離された.また,新属以上での提案が可能と考えられる新規性の高い株が得られるなど,埋立地浸出水処理に関わる微生物群集構造の一部を明らかにすることが出来た.
  • 中村 寛治, 須藤 真志
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_31-III_40
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     広瀬川河川水を中心に,環境中に生息する細菌捕食性の原生動物に関する解析を行った.また,湧水,地下水,土壌浸出水についても同様の解析を行なった.主としてCupriavidus属細菌を被食者として利用したが,細菌種の影響を評価するため,Pseudomonas属細菌,Bacillus属細菌,Rhodcoccus属細菌についても試験を行った.広瀬川で複数の採水地点を設定し,捕食実験を行った結果,全地点において原生動物が確認され,被食者の細菌の種類によらず,多くのケースでChrysophyceae(黄金色藻網)に分類される鞭毛虫が捕食者として出現した.また,湧水,地下水,土壌浸出水を対象に,同様の捕食実験を行った場合でも,本系統の原生動物が出現し,自然界の捕食者として主要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 白崎 伸隆, 松下 拓, 松井 佳彦, 大芝 淳
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_41-III_50
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,凝集剤の塩基度,凝集剤中の硫酸およびアルミニウム形態がウイルスの処理性に与える影響を詳細に評価し,ウイルス処理に有効な新規アルミニウム系凝集剤を開発した.開発した新規凝集剤を凝集沈澱処理に用いた場合,弱酸性および中性のpH領域のみならず,弱アルカリ性のpH領域においても,約6 logの高い除去率が得られ,従来のアルミニウム系凝集剤を用いた場合に比べ,除去率が飛躍的に向上した.また,ESI-FT-MS法および27Al-NMR法による分析の結果,新規凝集剤には,アルミニウム13量体や30量体が含まれていることが明らかとなったことから,これらのアルミニウム種がウイルスの処理性の向上に大きく影響している可能性が示唆された.
  • 八巻 哲也, Jae-Lim LIM, 吉原 康徳, 米川 均, 大村 達夫
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_51-III_58
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     藻類由来有機物による膜ファウリングに対して,前塩素処理の有効性を検討するため,セラミック膜を用いた膜ろ過実験を行うとともに,塩素処理前後の化学特性及び分子量分布の測定を行った.その結果,全ての塩素処理条件下で溶存有機炭素及び中性糖の濃度が上昇することが示された.一方で,たんぱく質については,4-8 mg・L-1の塩素処理濃度でその濃度が減少する結果となった.さらに,分子量分布については,塩素処理により主要な分子量のピークが低分子に移動したことが示された.また,膜ろ過実験においては,全ての塩素処理条件下で不可逆的膜ファウリングが抑制されたことから,前塩素処理を行うことで有機物が変性し,凝集フロックの形成に影響を与えたことで膜ファウリングが抑制されたと考えられた.
  • Naoki MURATA, Nobuhiro AOKI, Fusheng LI, Hitoshi YONEKAWA, Nobuyuki MO ...
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_59-III_68
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     Application of membrane filtration processes in large-scale water treatment facilities has expanded in recent years. In particular, they are increasingly used for surface water treatment (river and lake waters) rather than for groundwater treatment. Generally, coagulation is used to remove colloidal and suspended particles in surface water, but the effects of coagulation, which is a pre-treatment process in membrane filtration, on membrane fouling are scarcely reported. In this research, we studied the effect of coagulation as a pretreatment process of the ceramic membrane filtration system, with the focus being concentrated on investigation of the effect of Gt value of coagulation through experiments of membrane filtration after precoagulation. The results indicate that; the difference in the increase rate of transmembrane pressure depends on the Gt-value of coagulation. The optimum Gt values seem to be existent in the range of 20,000-50,000. Optimization of the Gt-value contributes to suppression of the increase rate of the transmembrane pressure, reduction of the coagulant dosage and reduction of pH control chemicals.
  • 西村 直貴, 伊藤 紘晃, 八巻 哲也, 真砂 佳史, 大村 達夫
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_69-III_75
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     浄水場における代表的な凝集阻害誘因藻類とされているMicrocystis aeruginosaの莢膜から,アルミニウムと親和性を有する有機物を分離し,組成分析を行った.FPLCによる分析の結果,全莢膜試料からは糖とタンパク質が検出されたが,アルミニウムイオンに親和性を持つ莢膜試料からは糖のみ存在が確認された.後者についてキャピラリー電気泳動による構成糖分析を行った結果,グルコース,マンノースおよび酸性糖が存在することが確認された.これらの結果より,莢膜に含まれる糖鎖中の酸性糖が含有するカルボキシル基がアルミニウムと錯形成することによって,凝集阻害を引き起こしていることが示唆された.
  • 稲垣 嘉彦, 藤田 泰史郎, Andre Rodrigues dos REIS, 鈴木 詩麻, 榊原 豊
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_77-III_85
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究は水生植物によるエストロゲン類の浄化能力を明らかにするために、内分泌撹乱活性の高いエストロン(E1)、17β-エストラジオール(E2)、17α-エチニルエストラジオール(EE2)を対象物質とし、水生植物および水生植物から抽出した6種類の粗酵素(可溶性・イオン性・共有結合性ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を用いて回分処理実験を行った。その結果、エストロゲン類は植物によって効率良く除去されること、およびその反応は主として植物体内の過酸化水素とペルオキシダーゼによることがわかった。また、拡散律速を仮定した数学モデルとの比較から、植物のエストロゲン除去速度は液境膜の物質移動速度に支配されていると考えられた。
  • 中野 和典, 千木良 純貴, 中村 和徳, 矢野 篤男, 西村 修
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_87-III_92
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     畜舎排水を処理するフルスケールの多段鉛直流式人工湿地について運転開始から2年間の水質モニタリングを行い,汚水処理施設としての性能を評価した.運転開始1年目の人工湿地の水質浄化性能は水温に依存する季節特性を有していたが,2年目には水温の低い冬季の浄化性能が有意に向上し,年間を通した浄化性能の安定性が向上した.これは,人工湿地の水質浄化性能が運用開始から1年間は発展途上にあり、運用から1年を経て気候条件に適応した頑健性を発揮するようになることを示唆するものである.2年目の年間汚濁負荷量と年間平均除去率により求めた各水質項目の浄化性能原単位は、BODでは26.2g/m2・d、SSでは21.0g/m2・d、TKNでは1.60g-N/m2・d、TNでは1.55g-N/m2・d、TPでは0.36g-P/m2・dであった.
  • 村松 亜由美, 渡部 徹, 佐々木 貴史, 伊藤 紘晃, 梶原 晶彦
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_93-III_101
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     水田模型を用いた栽培実験を通じて,下水処理水の循環利用によって灌漑用水と肥料の使用量を削減した省資源型の水稲栽培の可能性を検討した。水田模型では暗渠から常に排水を行い,その水が再び田面に戻るようにした。下水処理水と河川水を1:1で混合した水を利用する系と,河川水のみを利用する系で,水稲の生育と収量,収穫された玄米の品質について比較を行った。窒素,リン,カリウム肥料の施用は慣行の栽培方法に従ったが,前者の系では必要な窒素施肥量を下水処理水でまかなうことができた。栽培実験の結果,どの比較項目でも2つの系には有意差が見られず,下水処理水の循環灌漑による水稲栽培への影響はなかった。ただし,どちらの系でも水稲は窒素吸収過多で過繁茂となり,玄米の食味も低下した。
  • 前田 守弘, 仲宗根 安弘, 岡本 啓史, 浅野 裕一, 藤原 拓, 永禮 英明, 赤尾 聡史
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_103-III_111
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     施設園芸栽培では,塩類集積を防ぐ目的で休閑期間に除塩灌水を行う.しかし,商品作物栽培後に栄養塩が土壌に残留していると,灌水とともに溶脱した栄養塩が水質汚濁の原因になる.本研究では,ナス施設栽培農家実圃場の休閑期を対象に,クリーニングクロップ栽培が休閑期(クリーニングクロップ栽培,除塩灌水,土壌還元消毒)の窒素,リン溶脱に与える影響を2年間調査した.その結果,クリーニングクロップによって,休閑期の窒素溶脱量を2010年には12.2 g m-2,2011年には5.4 g m-2削減できた.この違いはクリーニングクロップ栽培前に土壌中に残存していた無機態窒素の差によるものと推察された.一方,リンに対しては,クリーニングクロップを栽培しても溶脱量は有意に低減しなかった.これは,クリーニングクロップのリン吸収量に比べて,供試圃場の土壌リン酸蓄積量が非常に多かったためと考えられる.
  • Kui HUANG, Fusheng LI, Jiefeng LI, Denny HELARD, Kayako HIROOKA
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_113-III_120
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     The aim of this study was to evaluate the feasibility of rapid vermicomposting of different fresh fruit and vegetable wastes (FVWs) including banana peels, cabbage, lettuce, potato and watermelon peels using earthworm Eisenia foetida. For this, the changes of physicochemical properties, microbial profiles and earthworm biology were comprehensively evaluated after vermicomposting for 4 weeks. Compared to controls (without earthworms), vermicomposting caused reductions of the total carbon content by 42.7-52.4% and the carbon to nitrogen ratios by 46.5-61.1%, and increases of the electrical conductivity by 6.7-69.4% and the total phosphorous content by 4.0-52.0%. Vermicomposting revealed a higher microbial activity, density and diversity in end products than controls. The vermicomposting treatment for FVWs allowed a high growth rate of earthworms and an increased number of cocoons. Similar microbial community structures were observed in all vermicomposts, indicating a high degree of bio-stabilization and maturity. The results suggest that rapid vermicomposting is a feasible technology for converting fresh FVWs into valuable products and that the quality of vermicomposts is strongly associated with the properties of initial substrates.
  • Kandula. P. K. Jayakody, Takayuki Shimaoka, Teppei Komiya
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_121-III_129
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     A new landfill settlement model is proposed by coupling microbiological kinetics to simulate and predict municipal solid waste (MSW) landfill settlement. The model can be used to evaluate the effect of bacterial metabolisms on MSW landfill processes including settlement. The model is based on three mechanisms, namely, biodegradation of organic carbon mass, stress variation and moisture removal from waste particles (IMR) and pore spaces. Model simulation indicates that the contribution from biodegradation is small within a short period of simulation time. The landfill settlement has been dominated with water removal induced settlement where landfilling solid waste has high percentage of biodegradables and moisture content. To examine and simulate MSW landfill settlement process, a lab scale column experiment was carried out with synthetic MSW. The observed MSW landfill settlement in column experiment was used to verify the proposed model. The simulation and experiments suggested that effect of water removal will influence primary stage of settlement and this process will be introduced as a new mechanism for landfill settlement modelling. However, a careful demarcation between mechanically induced settlement and effect of internal moisture present in waste particles has to be explained by considering absorptive properties of waste particles, level of compaction and age of the waste.
  • Chuanfu WU, Takayuki SHIMAOKA, Teppei KOMIYA, Gangzhen JIAO
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_131-III_138
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     Understanding the effects of environmental conditions (e.g. temperature and pH value) on organic carbon dissolution behavior is very important for quantifying the biodegradation of municipal solid waste. However, the dissolving of organic carbon from solid waste has not been sufficiently described. In this paper, the dynamic of organic carbon dissolution under different temperature and pH value conditions are analyzed by both experiment data and model simulation. The results revealed that lower leaching pH values are favor for dissolving organic carbon especially rapidly dissolution fraction of the solid samples. Under high temperature extraction condition, the dissolution rate of rapidly dissolution fraction was also improved and the amounts of biodegradable products exceed low temperature extraction amount. The dissolving rates of organic carbon were in the order of 0.045-0.22 m3/kg/h for all leaching conditions. The labile fractions of water extractable organic carbon were ranged from 3.5% to 20.3%. Therefore, the water extractable organic carbon extracted from MSW consists of substantial amount of stable fraction, indicating that anaerobic bioremediation of old landfill site is ineffective.
  • 落合 知, 平山 けい子, 平山 公明, 金子 栄廣
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_139-III_145
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)分解細菌を分離し, 得られた菌株をコンポスト中へ添加することでPBSA分解促進効果が得られるか検討を行った. コンポストおよび活性汚泥からPBSA分解細菌を分離し, それらがPBSAだけでなく他種の生分解性プラスチック(PBS, PLAおよびPCL)に対しても分解能を示すか調べたところ, 5株が全ての生分解性プラスチックに対して分解能を持つことがわかった. これら5株に1株加えた計6株を, コンポスト中へ植種した. その結果, 6株のうち2株はコンポスト中へ植種するとPBSA分解が促進されたが, 残りの4株は促進効果がみられなかった. 以上のことから, 生分解性プラスチックの分解促進を目的とした微生物剤の開発において, 純粋培養系で分解能を評価するだけでなく, 実際に複合微生物系であるコンポスト中で能力を発揮できることを確認する必要があると考えられた.
  • 吉川 泰代, 矢部 博康, 小池 亮, 森本 達男, 小熊 久美子, 荒巻 俊也, 滝沢 智
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_147-III_156
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     近年,自然災害が頻発しており,将来的に,気候変動により自然災害が増加,甚大化することも懸念されている.このような中,本研究では,水道事業における防災分野での広域連携やBCPの策定に寄与するため,各種災害による水道事業への影響を評価した.そのため,流域を単位として水道施設とその被災要因を可視化し,流域ごとの被害特性や問題点を抽出する水道ハザードマップを提案した.この水道ハザードマップを紀の川流域及び大淀川流域に適用したところ,各種災害による水道施設への影響及び影響人口を市町村単位で定量化することができた.また,大淀川流域では影響人口に占める独居老人人口の比率が紀の川流域と比較して小さいなど,流域ごとの被害状況の差異を定量的に把握することが可能となった.
  • 田村 聡志, 木伏 明人, 増子 知樹, 稲員 とよの, 小泉 明
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_157-III_164
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     従来ステンレス給水管に使用され,現在も地中に多数残存している砲金製の継手等の腐食は,これまで漏水の原因の一つとなってきている.そこで本研究では,ステンレス鋼管と砲金継手等との間のガルバニック腐食の進行を,管対地電位を活用して評価した.まず,給水管や配水管の4種類の金属材料が6種類の土壌中で示す自然電位を実験室内で測定し,自然電位が時間の経過とともに大きく変動するものの,400日後には概ねステンレス鋼>砲金>鉛>ダクタイル鋳鉄の順となっていることを明らかにした.その上で,都内のほぼ全域において318栓のステンレス給水管を掘り上げて,管対地電位と最大腐食深さを測定し,管対地電位が高くなるほど砲金継手等の腐食割合が高まり,最大腐食深さも増大することを明らかにした.
  • 山口 貴士, 稲員 とよの, 小泉 明, 荒井 康裕, 田村 聡志, 北澤 弘美
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_165-III_173
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     水道における水供給では,安全性に加え,おいしさも追及した給水を実現するため,送配水システムにおける残留塩素濃度の管理が課題となっている.配水システムは,給水所配水池,配水本管,配水支管等で構成され,配水方式や需要の時間変動に伴う複雑な残留塩素の消費が生じている.本論文では,配水システムを一体的に捉える残留塩素減少モデルの構築を試みた.実施設における水質測定結果をもとに給水所内配水池において水質由来と揮散による残塩濃度減少速度モデルを定式化し,得られたモデルと水道GISモデルを組み合わせることで,提案モデルが残留塩素濃度の挙動を追跡可能で実用的なシミュレーションモデルであることを示した.さらに,提案モデルと水質調査の行われた給水栓において残留塩素濃度の比較分析を行い,給水における残留塩素の低減化について考察した.
  • 杉本 泰亮, 小池 淳司, 細井 由彦
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_175-III_183
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     これまで水使用料金設定に関する研究の多くは,一律何パーセント調整するかの議論が中心であり,水使用量に対して単価が異なることに着目した事例は少ない.水使用料金体系は地域の産業活動に少なからず影響を与えており,水使用量が異なる産業を考慮した望ましい設定を検討することが重要である.本研究では,全国の下水道事業体を対象とした実態分析を踏まえ,望ましい料金体系の仮定を設定する.その上で地域経済モデルを構築し,2都市を対象に水使用料金設定が地域経済に与える影響を比較することで検証した.その結果,製造業が中心の地場産業地域では,水使用量に関わらず均一の料金単価に設定するほうが,そうでない地域と比較して等価変分量が高くなることを明らかにした.
  • 高浪 龍平, 谷口 省吾, 林 新太郎, Rabindra Raj GIRI, 尾崎 博明
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_185-III_192
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     新型インフルエンザの発生に伴い,使用量が増大している抗インフルエンザウイルス薬に注目し,タミフル,タミフル代謝物質およびリレンザを対象とした同時測定方法を用いて,冬季3シーズンにおける寝屋川河川水の測定を行った.インフルエンザが流行している期間において抗インフルエンザウイルス薬が高濃度に検出され,これらの濃度およびインフルエンザ流行指数の経時変化との間に関連性が見られた.さらにこれらの関係は,薬品の用量,服用期間,排泄に要する時間,薬品の供給量および割合を考慮することで高い関連性を示した.得られた相関関係より統計的な解析を行い,寝屋川上流部における抗インフルエンザウイルス薬による生態毒性および耐性ウイルス発生の初期的なリスク評価について検討を行った.
  • 花本 征也, 山下 尚之, 中田 典秀, 杉下 寛樹, 田中 宏明
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_193-III_203
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     礫間浄化施設,木炭浄化施設,人工水路を用いて淀川水系中流域の都市排水汚染から下流域の水道水源を守るために開始された淀川流水保全水路事業の有効性を評価することを目的として,淀川流水保全水路と桂川における医薬品類53物質の減衰を現地調査によって把握し,淀川流水保全水路の供用拡大時も含めて両者の結果を比較した.その結果,淀川流水保全水路における医薬品類の浄化機能は,現状では河川と同程度,供用拡大時においては河川を下回ると推定され,これには,河川流下過程における太陽光による光分解や底質への吸着が関与していることが示唆された.
  • 岡田 紫恵奈, 伊藤 潤, 吉村 千洋, 増山 貴明, 藤井 学
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_205-III_215
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,タリアメント川(イタリア)中流の洪水氾濫原を対象に,生息場とその生息場条件と水中堆積物の質的および量的特性の関係を明らかにし,さらに,水中堆積物に付着する微生物に着目して呼吸活性と堆積物特性との関係を明らかにすることを目的とした.洪水氾濫原における調査の結果,本流と上流で接続のある生息場では河床堆積物の粒径が大きくC/N比は高くなり,樹木の多い生息場では微細堆積物密度と微細有機物の含有率が高くなるという特徴が明らかとなった.また,微細堆積物量と微細有機物の含有率は溶存酸素消費係数と強い正の相関性が確認され,水中での溶存酸素消費濃度は生息場のタイプや堆積物の質や量により大きく影響を受けることが示された.
  • 森田 隼平, 安田 侑右, 駕田 啓一郎, 田村 生弥, 鑪迫 典久, 山本 裕史
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_217-III_225
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     現在、国内では多種多様な化学物質が人間活動によって消費・廃棄され環境中に排出されており,公共水域等でも検出されて環境水中での多様な化学物質による複合的な毒性影響が懸念される.そこで本研究では2011年10月~2012年4月の間に、全国の環境基準点28か所で採水を行ない,米国等で排水や環境水の評価・管理に用いられているWET(Whole Effluent Toxicity)の手法のうち、魚類、甲殻類、藻類の3種を用いた短期慢性毒性試験を適用し、河川水の毒性影響を評価、毒性の傾向と分布を調べた.その結果,藻類では4河川で生長阻害が確認された.ニセネコゼミジンコでは8河川で致死または産仔数の減少が確認された.ゼブラフィッシュでは3河川で孵化率の減少または致死率の増加が確認された.
  • 本田 隆秀, 浅利 修一, 秋野 淳一, 高澤 浩二, 高島 清光, 小林 博
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_227-III_237
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     粗石付魚道工は,多様な流れ場を創出することにより様々な水生生物の移動を可能とし,良好な河川景観を創出し周囲の景観になじむため、河川環境の復元の観点から,注目されている.しかし,自然石を用いた粗石付魚道工は,設計手法が確立されておらず,課題が多い.そこで,本研究では、自然河川の礫材を模した粗石付護床工ブロックを勾配1/10と1/20に設置し,水理実験および、ウグイ,タモロコ,モクズガニ他を使用した遡上実験を行った.その結果,粗石付魚道として厳しい条件である縦断勾配1/10で実験に用いた生物の全種の遡上を確認した.また,水理実験での流速と水深の実測データにより,魚類の遡上について検討を簡易に行うことができる水理式を提案した.さらに,擬石の粗度係数が大きな値となり,緩傾斜落差工の本体としての減勢効果についても考察を加えた.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 三原 和也, 白岡 敏
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_239-III_244
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     Partridgeはコイ科魚類の一種が2尾で遊泳する場合は特定の1尾が主としてリーダーとなって遊泳するのに対し,3尾以上ではリーダーが存在しなくなることを発見した.そのため,「各個体が遊泳特性を群れの他の個体全てと一致させようと絶えず調整している3尾以上のグループ」が魚群であり,2尾以下は魚群ではないという定義が定着している.鬼束らは流水中において,1尾,2尾および3尾で遊泳するアユの遊泳軌跡を直線と屈折でモデル化し,遊泳特性を定量的に評価した.しかし,尾数の変化による3尾以上の魚群の挙動を定量的に評価した実験はほとんど行われておらず,魚群内の尾数変化に伴う魚群行動に及ぼす影響を評価した実験はほとんど行われていない.本研究は流速を系統的に変化させて,5尾で遊泳するアユの挙動を解析したものである.その結果,流速の増加に伴う遊泳挙動の定性的傾向は,3尾の挙動と一致し,5尾は3尾に比べ流速の増加に伴う個体間距離の変化が小さいことから魚群特性が強く働くことが判明した.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 松田 孝一郎, 藏本 更織, 野口 翔平
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_245-III_249
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     河川にダムや堰などが設置されると,一般的に魚道が併設される.高い遡上率を確保するには,魚道の適切な幾何学形状の把握が必要である.日本で採用例が最多の魚道は階段式魚道である.高い遡上率を確保するためには,プール幅よりプール長が大きい方がよい.ところが,階段式魚道のプール形状に関して,プールの平面形状が矩形の場合についてのみ検討しており,その他のプール形状に関しては議論がされていない.本研究では,階段式魚道におけるプールの平面形状と流量を変化させ,オイカワの遡上特性に及ぼす影響を解明した.その結果,プールの平面形状を変化させることで魚の休憩場所と遡上経路をある程度限定できることが解明され,魚の遡上に適したプールの平面形状を提案した.
  • 村上 俊樹, 鈴木 祥広, 大石 博之, 中尾 登志雄
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_251-III_257
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     長期濁水化が顕在化しているダム流域内の広範囲の多数地点(71地点)において土砂試料を採取し,濁り継続試験を実施した.試験結果に基づき,長期濁水化の発生源となり得る危険度を設定・評価した.また,現地地質調査結果から,既存地質図における同一地質区分内をさらに詳細に分帯し,地質ブロック図を作成した.ここで明らかにした地質ブロックの分布と危険度が高い試料が採取された地点との間には整合性の高い関係があり,地質ブロックのレベル4分布域からは「危険度3」の試料採取が特徴的に多く得られていることが確認できた.この成果は,濁水長期化に関与している土砂分布域を特定するための基礎資料として大いに有用なものであり,今後の濁水抑制対策計画に資するものと評価できる.
  • 山﨑 公子, 村山 道彦, 小泉 明, 横山 勝英, 青木 秀幸, 岩本 智江
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_259-III_268
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     台風等に起因する大雨により,貯水池に大量の濁質や高濁度水が流域から流入する.その結果,貯水池では長期間の高濁度状態が続き,長期にわたり水道水源として大きな問題が発生する.
     本論文では,小河内貯水池において大雨時に流入した濁質や高濁度水の早期放流のための基礎的研究として,高濁度状態を引き起こす流入濁質の挙動を把握することを目的に,平常時と高濁度時の濁質の比較分析を行い,台風通過前後の差異を検討し,高濁度状態の主要な要因を明らかにするとともに,貯水池への影響を考察した.その結果,大雨によって流入する難沈降性濁質の成分は5μm以下の粘土粒子であることが明らかとなり,貯水池内の高濁度化現象の主因であることが示された.さらに,流入濁質とリンの挙動が類似して,リンは主にPO4-P(リン酸態リン)として存在していることが確認できた.
  • 熊谷 博史, 石橋 融子, 田中 義人, 松尾 宏
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_269-III_275
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     一級河川矢部川上流の日向神ダムにおいて、溶存態ケイ素(DSi)の動態把握と捕捉量見積を実施した。日向神ダム湖内においては、春から秋にかけて珪藻が増殖した時に限り表層DSi濃度が低下した。それらの沈降する1-3か月後に底層のDSi濃度が増加した。また冬季の躍層解消に伴い、DSi濃度は全層で均一化された。これらの事象に伴い流出水のDSi濃度は変化した。春~秋季にかけては、流入DSi濃度に比較して流出DSi濃度が低下する傾向にあった。一方、冬季には流入DSi濃度に比較して流出DSi濃度が増加するため、年間のダム湖内に捕捉されるDSi量が緩和されていた。日向神ダム湖内に捕捉されるDSiの量は2010年度で-2.0%、2011年度で10.9%であり、全観測期間を通じての平均的な捕捉率は5.2%であった。
  • 丸尾 知佳子, 藤林 恵, 相川 良雄, 西村 修
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_277-III_283
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,干潟を代表する生物である二枚貝(イソシジミ)の生育状況に影響を与える餌料源を,炭素安定同位体,脂肪酸組成および脂肪酸中の炭素安定同位体を用いて検討した.その結果,バルクレベルの炭素安定同位体比では,餌料源として利用している大まかな種類しか明らかにならなかったが,脂肪酸組成分析を用いることで,EPAとDHAが重要であることが明らかとなった.さらに,各脂肪酸中の炭素安定同位体を分析することで,EPAとDHAの中でも陸域に由来するものが重要であることが示された.よって,餌料源を推定する方法の一つとして,脂肪酸中の安定同位体比が有用であることが示唆された.今後,生物種レベルでの餌料源解析が進められ,より良い干潟環境保全へ繋がるものと期待される.
  • 端 昭彦, 稲葉 愛美, 片山 浩之, 古米 弘明
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_285-III_296
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     石巻沿岸域では東日本大震災以降,下水処理場で活性汚泥処理が行えない状況が続いたため,水や水産養殖物の喫食に由来する健康被害が懸念されている.本研究では石巻沿岸域において,健康被害の重要因子である腸管系ウイルス及び指標微生物の定量的検出を試みた.ウイルス濃縮法として,従来の小容量法と新たに開発された大容量法をそれぞれ用い,ウイルスの陽性率及び検出濃度を比較した.内部標準を用い,ウイルス核酸抽出及びRT-qPCRの効率をそれぞれ評価した.アイチウイルス,GII-,GIII-F特異RNAファージが特に高濃度かつ高頻度で検出された.さらに,ウイルス性胃腸炎の主要因であるノロウイルス,サポウイルスも検出された.下水処理場からの放流後,ウイルス及び指標微生物が,海水による希釈を受けながら水平方向及び鉛直方向へ拡散する様が観察された.大容量ウイルス濃縮法は小容量法と比較し,高いウイルス/ファージ陽性率を示したが,RT-PCR阻害が生じやすかった.RT-PCR阻害の原因物質は,254 nmの紫外光を吸収する高分子(>10 kDa)有機物であると推定された.本研究により,石巻沿岸域での病原ウイルス分布が明らかとなるとともに,RT-PCR阻害の効率的な軽減手法の必要性が示唆された.
  • 信田 紗希, 神野 有生, 山本 浩一, 田中 陽二, 関根 雅彦
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_297-III_305
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     広大な干潟を有し,自然再生の取り組みが活発な山口湾では,アサリ・カブトガニの浮遊幼生の輸送などに関連して,基礎情報としての流動特性の把握が強く求められている.そこで本研究ではまず,山口湾に3次元数値流動モデルを適用し,実測した流速時系列を良好に再現することに成功した.次に,この流動モデルを用いて,平均的な気象・海象条件下での流動場の計算,および中立粒子を浮遊幼生に見立てた粒子追跡を試みた.その結果,風や密度差の存在が,山口湾の流動場や粒子の輸送に大きく影響することを示した.さらに,既往研究では他の干潟との幼生の交換が少ないと考えられていた南潟について,近傍の中潟との粒子交換の可能性を明らかにした.
  • 髙島 正信, 中木原 江利, 池本 良子
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_307-III_315
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     混合下水汚泥の高温嫌気性消化における高負荷化(HRT10日)を目指し,余剰汚泥の加熱処理(170℃,1時間)と微量金属(NiおよびCo)の添加について検討した.余剰汚泥を加熱処理した下水汚泥を用いると,無処理の場合よりVS分解率で約6%,VSS分解率で約9%上昇し,消化汚泥の脱水性も顕著に改善された.微量金属の添加は,固形物分解には影響しなかったが,有機酸濃度をやや低下させる効果があった.DGT法によれば,消化汚泥中の溶解性濃度のうちNiは大半,Coはごく一部が生物利用性であると推定され,さらにCoの場合は下水汚泥中の含有量自体も多くないことが懸念された.PCR-DGGE法による古細菌叢解析の結果,消化汚泥中にはMethanosarcina sp.およびMethanosarcina thermophilaに相同性の高い古細菌が検出された.
  • 大下 和徹, 高岡 昌輝, 水野 孝昭
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_317-III_324
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究は,下水汚泥のエネルギー価値に着目し,焼却-発電システム導入の有効性について検討することを目的とし,従来焼却方式と燃料化方式,および機内2液調質型遠心脱水を前提とした発電付焼却方式について,異なる処理規模において,ユーティリティーコストならびに温室効果ガス排出量低減の観点から比較評価を行った.その結果,発電付焼却方式は,一定規模以上にて,他の処理方式と比較して最もコストが抑制され,従来焼却方式に対して約30%低減できると試算された.また,温室効果ガス排出量については,発電付焼却方式は,燃料化方式と比較して低減効果は低いが,下水処理場の自立を考えた場合は最も低減され,従来焼却方式に対して90%以上低減されることが明らかとなり,導入の有効性が示された.
  • 日髙 平, 内田 勉
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_325-III_332
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     全国の処理場8ヶ所を対象として,消化状況についてのヒアリング調査を行うとともに,汚泥特性やメタン発酵特性についての実験的検討を試みた.現場で測定しているVSベース消化率はおおむね6割程度であった.混合汚泥および消化汚泥の全CODCr/VS比および固形性CODCr/VSS比は1.7程度であり,回分式実験でのCODCr基準メタン転換率も,現場での測定と同様に6割程度の値が得られた.模擬食品工場廃棄物を添加した場合,いずれの処理場の汚泥でもメタン発酵は順調に進行した.処理場毎の汚泥の性状の違いやCODCrによる物質収支などを議論する上で,実際現場で測定されているTS,VSやガス発生量などの測定値は,十分に活用可能であることが示された.
  • 鈴木 裕識, 田中 周平, 藤井 滋穂, Chinagarn Kunacheva , 林 益啓, 齋藤 憲光
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_333-III_340
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,下水処理場生物処理工程におけるペルフルオロオクタン酸(PFOA)の挙動の把握を主目的とし,処理場から採取後すぐの活性汚泥と馴養した活性汚泥を用いて,室内実験を行った.主な結果として,(1)PFOAを添加した合成下水の半回分式生物処理実験では,生物反応槽内のPFOAの懸濁態比と存在量が増加し,(2)実下水が処理槽に流入する実験系では,PFOAの総排出量が総投入量に比べ2.0倍となった.(3)8日間の活性汚泥上澄み液存在下における1H, 1H, 2H, 2H-Perfluoro-1-decanolの分解実験では,添加モル量に対して2.9%のPFOAが生成した.このことから,生物反応槽におけるPFOAの存在量増加には, 活性汚泥への吸着による循環と実下水中に存在する前駆体からのPFOAの生成が影響していることが示唆された.
  • Pattarawan CHULARUEANGAKSORN, Shuhei TANAKA, Chinagarn KUNACHEVA, Shig ...
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_341-III_349
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     有機フッ素化合物類(PFCs)は難分解性,毒性, 生物濃縮性を持つ人工化学物質であり,都市下水処理場は水環境に対するPFCs負荷源として懸念される.本研究は, タイ・バンコクでの都市下水処理場において11種のPFCsの汚染実態を検討するものであり, 7箇所の都市下水処理場において, 主要な下水処理工程ごとに試料を採取した. なお、すべての下水処理場で標準活性汚泥法を用いていた. 調査の結果,Chong Nonsi下水処理場放流水で総濃度63.6 ng/Lの最大値を検出した.放流水中, ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタンカルボン酸(PFOA)は他のPFCsに比べて高濃度で検出され,それぞれ2.7-5.6 ng/L,2.2-7.4 ng/Lであった.放流水中PFCs濃度は流入水中濃度より高く,標準活性汚泥法による下水処理ではPFCsを除去できていないことが示唆された.長い炭素鎖のPFCsは短い炭素鎖のPFCsに比べて,懸濁態の比率が高かった.他の国と比較すると,処理場流出水におけるPFOS,PFOA濃度はデンマーク,台湾,シンガポールより低かったが,数種類のPFCsが検出され,都市下水処理場が環境中におけるPFCs負荷源のひとつであることが示唆された.
  • 尹水鐵 , 中田 典秀, 山下 尚之, 田中 宏明
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_351-III_358
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,2箇所の下水処理場においてN-ニトロソアミン類(NDMA, NDEA, NDPA, NPYR, NMEA, NPIP, NMOR, NDBA)及びそれらの生成能の挙動に関して実態調査を行った.2つの下水処理場の流入下水中のN-ニトロソアミン類の濃度は,ND~237 ng/Lの範囲であった.生物処理におけるN-ニトロソアミン類の除去率は28~>99%の範囲であり,処理過程での塩素消毒における生成率は14~66%であった.両下水処理場におけるN-ニトロソアミン類の生成能には数倍の差があり,生成能の除去率は2~94%,放流水中のN-ニトロソアミン類生成能はND~848 ng/Lであった.これらの残留N-ニトロソアミン類生成能は放流された後,下流の浄水処理場や再利用水の消毒段階でN-ニトロソアミン類を生成する可能性があると考えられる.
  • 西村 文武, 岡田 由希子, 増田 理子, 中川 佑子, 日髙 平, 藤原 拓, 津野 洋
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_359-III_367
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     オゾン添加活性汚泥法では,汚泥の性状改善とともに汚泥発生量削減が特に注目されているが,一方でオゾンの酸化力により汚泥の液化と同時に,実下廃水中に含有される難分解性物質(EDCs)や生物活性を阻害する物質(フェノール)の酸化分解も期待される.オゾン添加により,これまで注目されてきた余剰汚泥減容効果,沈降性改善効果に加え,処理水質の向上と生物活性阻害の低減効果も図れると考え,その可能性について実験により調査すると共に,オゾン添加時の汚泥減容と阻害性物質除去の比率等の反応動力学について検討した.オゾン添加活性汚泥法は,生物活性阻害性物質除去と生物活性(硝化活性)維持の観点からも,従来法よりも優れていることが分かった.発生汚泥量削減の観点から開発されたオゾン添加活性汚泥法であるが,処理の安定性向上及び微量汚染物質除去の観点からも利点があることを明らかにした.
  • 惣田 訓, 穴見 泰崇, 筒井 裕文, 橋本 くるみ, 松田 真佐美, 井上 大介, 清 和成, 池 道彦
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_369-III_377
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の除去率の向上のため,その分解酵素をコードする伝達性プラスミドpJP4を持つ細菌を活性汚泥にバイオオーグメンテーションした.2,4-Dを資化できるCupriavidus necator JMP134 (pJP4)を導入した活性汚泥の2,4-D除去率は,導入直後は100%であったが,JMP134が一時的に減少した7日目は12%となった.2,4-Dを資化できないEscherichia coli HB101 (pJP4)を導入した活性汚泥は,7日目まで2,4-D除去率が20%以下であった.7日目には,いずれの活性汚泥からもpJP4を受容したPseudomonas plecoglossicidaが検出されたが,これは2,4-Dを資化できなかった.16日目以降は,いずれの活性汚泥でも2,4-D除去率がほぼ100%に向上し,2,4-Dを資化できるBurkholderia sacchariが検出された.
  • 窪田 恵一, 山口 隆司, 珠坪 一晃
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_379-III_386
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では、中間代謝低級脂肪酸(プロピオン酸、酪酸)含有排水の微生物燃料電池による分解特性並びに発電特性の把握を目的として、一槽型微生物燃料電池を用いた回分処理試験を行った。その結果、外部抵抗100Ω接続時にCOD除去率86.7%、クーロン効率59.9%を発揮し、対照系である酢酸処理系と同程度の処理性能が得られた。また、低級脂肪酸群処理系では酢酸系に比べ外部抵抗値による有機物分解速度への影響が大きく、39Ω接続時では1,000Ω接続時の1.7倍の分解速度を発揮した。この他、プロピオン酸やn-酪酸の分解速度は接続外部抵抗によって変化し、高外部抵抗接続時ではn-酪酸が、低外部抵抗接続時ではプロピオン酸の分解速度が高まる傾向を示した。
  • 寺嶋 光春, 安井 英斉, 須藤 孝一, 井上 千弘, 野池 達也
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_387-III_394
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     排水中の固形物を除去する沈殿槽について,原水の温度上昇による槽内の流動状態変化及び処理水の悪化をCFD計算を用いて調べた.さらに,熱対流時に温原水が上昇して直接処理水出口に向かう流れを防ぐことと温度成層を壊して早期に元の状態に戻ることを意図した熱対流抑制板の効果について検討した.通常の沈殿槽では,原水と処理水の密度の逆転がある5℃の原水温度上昇で,槽内に温度成層が形成された.HRTの4.5倍の時間が経過してもSS流出率は2倍以上となった.熱対流抑制板を設置した沈殿槽は,温度変動が無い平常時はSS流出率がやや高くなるものの,温度上昇時には最大SS流出率が低く,また,元に戻るまでに要する時間が短くなった.
  • 吉川 栄史, 佐々木 貴史, 樅山 央, 佐藤 美喜雄, 遠藤 昌敏
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_395-III_400
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     これまでに常温でヒドロキシアパタイトHApを生成させホウ素を従来の1/10の時間で処理できる除去法と反応機構を報告した.ここでは本処理法における反応温度,Ca(OH)2の粒径および不純物を含む消石灰の影響について検討を行い.また,ガラス系工業廃水および最終処分場廃水などのホウ素含有実廃水に対し本処理法を適用し,排水基準値以下までホウ素を処理できることを明らかにした.実廃水に対するホウ素除去は処理剤の純度と溶存成分の影響が関係していた.
  • 胡 勇, 荊 肇乾, 劉 予宇, 李 玉友
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_401-III_408
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究はエタノール・酢酸・硫酸塩を含む人工廃水を用いてHRTを48 hから2 hまで変化させた連続実験を行い,UASB処理に及ぼすCOD容積負荷の影響を評価した.COD容積負荷が12.3 g-COD/L/dの条件で,86.5%以上の高いCOD除去率が得られた.HRT3~12 hの条件において流入CODの47.5~54.4%がバイオガスメタンに変換され,21.4~28.0%が硫化物に変換された.UASBリアクターに保持されたグラニュールの平均粒径は1.8 mmであり,その平均沈降速度は96.5 m/hであった.また,グラニュールのメタン生成活性(MPA)と硫酸塩還元活性(SRA)の測定結果に基づき高濃度硫酸塩条件下でのエタノールの分解経路を考察した.
  • 砂庭 崇之, 高橋 慎太郎, 若原 慎一郎, 李玉友 , 原田 秀樹
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_409-III_417
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     メタンガス回収や汚泥生成量削減の可能性から,嫌気性処理と膜分離技術を組み合わせた浸漬型嫌気性膜分離法(SAMBR)が近年注目を集めている.本研究では,25℃の室温条件において溶解性人工下水を処理するラボスケールSAMBRの連続処理実験を約110日間行い,処理性能に与える水理学的滞留時間(HRT)の影響を評価した.HRTは48hから6hまで4段階に分けて変更した.HRT 12hでは,COD,BODの除去率はそれぞれ94%,96%であり,その結果,流入CODの72%がメタンに転換し,汚泥発生量は0.1gVSS/gCODremであり,その値は活性汚泥法の約1/3であった.また,逆洗浄や化学薬品による膜の洗浄処理無しに約70日間の連続運転が可能であった.
  • 米谷 貴志, Songkeart Phattarapattamawong , 越後 信哉, 森田 悠斗, 大河内 由美子, 伊藤 禎彦
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_419-III_428
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     わが国で水再生利用を目的とした地下浸透処理を行った場合の,下水処理水中の残留医薬品類に対する除去能を評価するための基礎検討実験を行った.具体的には地下浸透を模した回分式実験により,真砂土を用いた短期間の処理における生分解能と土粒子への収着傾向を評価した.さらに生分解された物質についてその分解生成物の探索を行い,地下浸透処理の物質分解機構に関する知見の収集を図った.その結果,医薬品類に対する除去性には物質により大きな差が見られ,下水処理・浄水処理との適切な連携が必要であることが示された.また,原体の基本骨格を保持した数種の微生物分解生成物が検出され,対象物質原体が減少する一方で新たに非意図的に生成される物質があることを示した.
  • 髙橋 直樹, 松橋 仁, 西村 修, 須藤 隆一
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_429-III_434
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では近年普及の進んでいる性能評価型浄化槽に着目し,塩素消毒前の工程における大腸菌群の除去効果,および塩素消毒による除去効果を解析した.さらに大腸菌群の除去特性について他の水質項目の除去効果と比較しながら解析した.その結果,調査した浄化槽25基のうち24基で塩素消毒前の大腸菌群数が排水基準値である3,000cfu/mL以下を満たすことが確認された.また,塩素消毒によって全ての浄化槽において1,000cfu/mLを下回るものの,残留塩素濃度が2mg/L以上検出されても大腸菌群数が200cfu/mL以上検出される場合もあった.大腸菌群数はSSと正の相関が,硝化率と高い負の相関が認められ,SSおよび窒素を高度に除去できる浄化槽によって大腸菌群数を低下させることが可能であることがわかった.
  • 加藤 雅彦, 後藤 真悟, 佐藤 健
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_435-III_442
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     本研究では,結晶性や不純物量が異なるアパタイト試料を供試し,アパタイトの溶解性と鉛収着量,収着メカニズムとの関係を明らかにすることを試みた.加えて,クエン酸によるアパタイト中のリン溶解量から鉛収着量を予測可能か検討した.アパタイトからのカルシウム溶出量と鉛収着量とには直線的な関係が認められた.アパタイトへの鉛収着メカニズムは,鉛とリンとの反応による緑鉛鉱の生成,アパタイトへの表面錯体形成によるものと考えられた.表面錯体形成による鉛収着量は,溶解性が異なるアパタイトであっても同一で,アパタイトの溶解性が高まることで緑鉛鉱の生成が高まり,鉛収着量が高まることが明らかとなった.0.01Mクエン酸溶液によるリン溶解量から最大鉛収着量が予測可能であることが示された.
  • 土手 裕, 関戸 知雄, 後藤 吉史, 鈴木 祥広
    2012 年 68 巻 7 号 p. III_443-III_451
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/15
    ジャーナル フリー
     豚ふん尿の熱処理によるメタン発酵性能への影響を評価するために、バッチおよび連続式のメタン発酵を行い、熱処理温度がメタン発酵に及ぼす影響を評価した。その結果、200℃まではVSSの可溶化が進むが、高分子の溶存性TOC成分のVFA化はあまり進まないことが分かった。熱処理温度が高くなるとメタン発酵開始時期およびメタン発酵速度が遅くなり、250℃で処理した場合はメタン発酵しなかった。150℃で熱処理した場合、投入VSあたりメタン発生量は1.2倍になり、熱処理による効果が見られた。エネルギー回収の観点からは、熱処理を行う場合は不利であり、SS濃度を2.3倍以上に濃縮した液を熱処理することで、熱処理なしに比べて正味のエネルギー回収が多くなると見積もられた。
feedback
Top