土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
74 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
和文論文
  • 土田 大輔, 中島 淳, 熊谷 博史, 古閑 豊和, 松本 源生, 石橋 融子
    2018 年 74 巻 2 号 p. 48-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー
     水生生物の保全に係る水質環境基準を適用する水域の区分は「個々の水域の水生生物の生息特性(地域特性)」を踏まえて行うこととされているが,地域特性を把握する手順は示されていない.本研究では,福岡県那珂川水系の淡水魚類の群集解析に基づき,地域特性を把握する手法を検討した.群集解析の結果,出現地点の標高および各魚種の生活史型により,出現魚類47種は5グループに分類された.5グループを環境省が示した水域区分の指標種と対比し,低温域および高温域を好む魚種に分けた分類表を作成した.この分類表を用いて博多湾に流入する6水系を評価した結果,全ての調査地点で指標種または指標種に相当する地域魚種が出現していることを確認した.以上の検討結果を踏まえ,淡水魚類相の地域特性を把握する手法を提案した.
  • 中村 謙吾, 伊東 玄樹, 川辺 能成, 駒井 武
    2018 年 74 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー
     1,4-ジオキサンは,環境動態が科学的に未解明であるため,従来のVOCsに比べて土壌汚染調査が困難である.本研究では,真砂土,黒ボク及び黒泥を対象として,土壌中の固相及び液相中の1,4-ジオキサンの分配の基礎的な検討を行った.各種分配試験(pH依存性,土壌含水比及び保水性)の結果では,分配試験初期に与えた1,4-ジオキサン濃度とほぼ同値の濃度となり,固相への分配割合は0.1~数%であった.しかし,高アルカリ条件では,1,4-ジオキサンが20%固相へ分配される可能性がある.土壌の保水性に着目すると1,4-ジオキサンは,有機分の少ない土壌で間隙水による希釈の影響によって濃度変化する可能性がある.このことから,特殊な環境(高アルカリ,低保水性)に移行しない限り,環境中に放出された1,4-ジオキサンは,間隙水または地下水へ移行することが示された.
  • 毛利 光男
    2018 年 74 巻 2 号 p. 67-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,フローテーションを用いた土壌洗浄法の処理性能を評価することを目的に,水銀,農薬,ダイオキシン類,鉱物油,および放射性Csの汚染土壌を用いて実験を行ない,無次元ロードカーブによる特性把握と土壌洗浄処理の性能評価を行なった.サイクロンによる除去率は平均68.8%であったが,フローテーションを追加することで平均90%以上の除去率が得られた.実験データを有害物質が付着したフロス(泡沫)の発生割合と濃縮倍率の関係で図示することで,フローテーションの機能を視覚的に評価することが可能となった.ダイオキシン類,農薬,水銀についてはフロスの濃縮倍率が25~41倍と高く,フロス発生割合も5%以下と低いことから,フローテーションが非常に効果的に機能したと判断された.
  • 玉置 哲也, 野澤 亘, 馬奈木 俊介
    2018 年 74 巻 2 号 p. 79-90
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
     地球温暖化に向けた対策が喫急の課題として議論されている現在,経済水準の維持と地球温暖化に対する適応策・緩和策をバランスよく取り組むことが求めらえている.本研究では,Nordhausにより提案されたDICEモデルを改良し,今まであまり考慮されてこなかった生態系への影響が分析できるモデルの開発を行う.また,CO2のバックストップ技術として様々な技術が提案されている現在,どのような技術を利用するべきなのか分析を行う.本稿では,複数のバックストップ技術を用いて2度目標や1.5度目標の実現を目指す際に,生態系への影響が効用に与える大きさの違いによって,バックストップ技術の利用方法に異なる傾向がみられる可能性を明らかにした.
  • 松本 美紀, 住谷 航大, 山岡 暁, Dicky MUSLIM
    2018 年 74 巻 2 号 p. 91-101
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
     インドネシア共和国では,河川上流部の水質は良好であるが,下流部は汚染が深刻な状況といわれている.そのため,河川上流域の住民による環境配慮行動の促進が重要な課題とされている.そこで,本研究では,インドネシア西ジャワ州チマヌク川上流域住民を対象に,河川に対する環境配慮行動を促すための個人的規範がどのように形成されるのか,その心理過程と形成要因を調査分析した.分析は中学生を対象に行った.その結果,中学生の個人的規範は,重要性認知の程度,知的関心や排水行為に対する責任感が複雑に関連して形成されることが明らかになった.特に,知的関心は,河川への排水行為による影響の重要性を認知しているか否かによって,形成要因の要素となるか判断できることがわかった.
  • 田中 恒夫, 唐 文軒, 林 秀謙
    2018 年 74 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
     硝酸塩による地下水汚染は,その健康影響が懸念されることから依然として大きな関心事である.本研究は,硝酸塩汚染地下水の原位置脱窒浄化において,ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルを外部電子供与体として用いることを提案し,その可能性について検討した.HPCゲルを充填したモデル帯水層を用いた実験より,地下水の全窒素(TN)濃度は流下に伴い減少することがわかった.モデル帯水層における脱窒効率は15%程度と低かったが,砂層閉塞や異臭発生などの問題は観察されなかった.モデル帯水層より採取したサンプルより脱窒に関与すると考えられる細菌が検出されたことから,地下水のTN濃度の減少は,脱窒細菌による硝酸塩の窒素ガスへの還元と考えられた.原位置脱窒浄化において,HPCゲルは電子供与体として利用できることがわかった.
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