日本義肢装具学会誌
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30 巻, 3 号
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巻頭言
特集 障がい者スポーツの現在
  • 陶山 哲夫
    2014 年 30 巻 3 号 p. 120-124
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    障がい者スポーツは,1943年英国のグットマン博士が脊髄損傷者に導入し,1952年国際大会の開催によりスポーツの効果が認知された.本邦では1964年第2回東京パラリンピック大会以降,1965年日本障害者スポーツ協会の設立により日本中に徐々に浸透した.1988年長野パラリンピックにより日本の障がい者スポーツはますます興隆し,2013年IOCが2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を東京に決定し,2014年障がい者スポーツの管轄が厚労省から文科省に移管し,日本の障がい者スポーツは大きく変革しようとしている.障がい者スポーツは義肢や車いす,チェアスキー,その他の装具の要因が大きく関与するため,スポーツ用装具の研究と開発が重要といえる.
  • 臼井 二美男, 沖野 敦郎
    2014 年 30 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    2020年のオリンピック・パラリンピックが東京開催に決定した.日本の夢を実現した立役者として女子走幅跳びの佐藤真海選手・下腿切断は「招致の女神」として活躍し,義肢使用選手の牽引役としても活動している.彼女を生みだした環境や今後,東京大会に向けて義肢装具分野において必要な支援体制や製作技術等について陸上競技を主に言及する.
  • 齋藤 隆子
    2014 年 30 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    切断者を中心とするスポーツグループに参加するなかで,義肢装具ユーザーの方々から,貴重な声を多く聞くことができた.そこで今回は,登山・バドミントン・ウェイクボードについては,義肢ユーザーの方々から,義肢の特徴・工夫,そしてそのスポーツへの思いを述べていただいた.また,日本での歴史の浅いアンプティサッカーについては,日本代表監督よりその紹介と今後の課題を述べていただいた.
  • 松尾 清美
    2014 年 30 巻 3 号 p. 139-146
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    スポーツ用車椅子は,競技の特性やルールなどによって様々なものが考案され,競技性が高まるにつれて,軽量化と強度の増強のために材料や素材などが刷新されるだけでなくデザインも改良されており,それぞれの競技の特性に合わせてスピードや旋回性,加速性,安定性,適合性などが発展している.この発展は,日常用車椅子の発展にも大きな影響を与えており,車椅子使用者の社会参加や生活の質(QOL)の向上に貢献しているだけでなく,新たな球技も誕生している.本稿では,車椅子バスケットボール,車いすテニス,ウィルチェアーラグビー,電動車椅子サッカー,車椅子バドミントン,ボッチャ,卓球などの球技用車椅子について記述した.
  • 岩﨑 満男
    2014 年 30 巻 3 号 p. 147-151
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    ハンドバイクは,自転車と同様な推進機構を持ち,両手でクランクを回転させて進む乗り物である.通常,ハンドバイクは後輪二輪および操舵と駆動が可能な前輪で走行する三輪車である.身体障がい者の移動や健康管理の手段として,レクリエーションやスポーツにおいて,ハンドバイクは活用が期待されている.また,パラリンピック種目としてハンドバイクを使用する競技が増えており,競技面での強化や普及が必要となる.本稿では,ハンドバイクの動向やハンドサイクリング競技に必要なルール,仕様,課題などについて報告する.
  • 沖川 悦三
    2014 年 30 巻 3 号 p. 152-155
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    チェアスキーは立位でスキーをすることができない方が使用する,座位によるアルペンスキーの用具である.2014年3月にソチで開催された冬季パラリンピックで日本選手たちは大活躍し,また,日本製のチェアスキーを使用する海外選手たちの活躍もすばらしかった.チェアスキーの普及は1980年に日本チェアスキー協会が設立されたことに始まり,現在まで級別テストや指導員検定などを行いながら活動を継続している.協会公認の地域クラブもあり,気軽にチェアスキーを楽しめるようになってきた.レンタルチェアスキーも用意してある.重度障害者の場合,バイスキー等を使用し,サポーターが補助しながら安全で楽しいスキーをするお手伝いをしている.
  • 長沢 雅子, 川手 信行, 水間 正澄
    2014 年 30 巻 3 号 p. 156-159
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    広大な海という自然の中で行うサーフィン,健常者であっても多くのリスクを伴うアウトドアスポーツであるが,日本において障がい児者が楽しめる機会は徐々に広がっている.サーフィンに参加することにより精神的・身体的な向上を期待でき,また医療・リハビリテーション関係者が介入することで疾患や障がいの特性に合わせたリスク管理と,チームとしてのリハビリテーションアプローチが可能となるのではないか.アダプテッド・スポーツとしてのサーフィンにつき,既存の3団体を紹介しながら説明する.
原著
  • —歩行パターン別の検討—
    黒澤 千尋, 安井 匡, 村上 貴史, 斎藤 明, 山本 澄子
    2014 年 30 巻 3 号 p. 160-165
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    片麻痺者の歩行補助のための継手付き短下肢装具(以下,AFO)で,処方されることの多い底屈制限AFOと底屈制動AFOが歩行に与える影響を明らかにするため,中等度の麻痺を呈する片麻痺者15名を対象とし筋電図学的・運動学的な歩行分析を行った.立脚初期の膝関節運動と立脚期の足関節角度から歩行パターンを分類し,底屈制限AFOと底屈制動AFOを使用した時の前脛骨筋・腓腹筋の筋活動,歩行速度,ケイデンス,ストライド長,非麻痺側歩幅,足関節最大背屈角度を比較した.その結果,底屈制動AFOと底屈制限AFOの違いは多くの項目で有意差がみられなかった.しかし,立脚期に膝関節が伸展する歩行パターンのうち,立脚期における足関節の背屈角度が不十分もしくは一歩行周期を通して足関節が底屈する片麻痺者では,底屈制限AFOで足関節最大背屈角度が増加した.一方,健常者のように立脚期の足関節底屈〜背屈運動がみられた片麻痺者では底屈制動AFOで足関節最大背屈角度が増大した.立脚期に膝関節が屈曲する歩行パターンの片麻痺者に関してはどの項目においてもほとんど有意差がみられず,AFOの底屈制限と底屈制動の違いは歩行に影響しないことがわかった.
  • —下肢装具使用状況に着目した検討—
    井元 大介, 青柳 陽一郎, 才藤 栄一, 沢田 光思郎, 鈴木 由佳理, 戸田 芙美, 菊池 航, 小野田 康孝
    2014 年 30 巻 3 号 p. 166-170
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    近年,ポリオ経験者に生じるポストポリオ症候群(post-polio syndrome ; PPS)が問題となっている.PPS診断基準に疼痛が挙げられ,訴えも多い.歩行自立したポリオ経験者70名を対象に,疼痛の実態を調査した.疼痛部位,特に良好側・不良側,下肢装具使用の有無に着目して分析を行った.対象のうち,52名(74.3%)に疼痛を認めた.疼痛発症率は,上下肢で比較すると下肢で,不良側と比較すると良好側で有意に高かった(p<0.05).良好側では特に膝関節,下腿で有意に高かった(p<0.05).装具使用者では,不良側(装具使用側)の膝関節,下腿で疼痛発症率が低かった.結論として,疼痛は良好側の膝関節より遠位に多かった.下肢装具使用により不良側遠位で疼痛発症率が低く,装具を含めて包括的に負担の軽減を図る必要性が示唆された.
技術報告
  • —脳卒中片麻痺患者による歩行評価—
    村山 稔, 岡田 陽子, 生巣 仁美, 加辺 憲人
    2014 年 30 巻 3 号 p. 171-173
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    筆者らは先行研究において,機能と外観を考慮した新しい機構の継手付きプラスチック短下肢装具を考案した.本研究では,考案した試作装具とタマラック足継手およびゲイトソリューション足継手を組み込んだプラスチック短下肢装具を製作し,脳卒中片麻痺患者の歩行評価を行った.結果は,試作装具はゲイトソリューションに比較して高い背屈方向モーメントを発揮すること(底屈時の抵抗)により,立脚中期での足関節底屈が抑えられ歩行速度が有意に速かった.また試作装具は,階段の下りで足継手が段鼻に干渉することもあったが,後方に位置する足継手が上方に向かい緩やかなテーパー形状をしているため,今回の評価実験では,段鼻への引っ掛りによる転倒の危険性は認められなかった.
講座 義肢装具発展の歴史とこれからのあり方─次世代に受け継ぐべきもの─
  • 渡辺 英夫, 平山 史朗, 島袋 公史, 藤﨑 拡憲
    2014 年 30 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 2014/07/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
    1988年に開催された日本義肢装具学会で展示された短下肢装具(以下,AFO)と2011年に脳卒中へ処方されたAFOに関する全国アンケート調査のデータを比較し,さらに最近のAFOに対する考え方の動向も加えて脳卒中のAFOの進歩を述べる.わが国で開発された脳卒中に処方されるAFOは8種類から15種類に増えていた.AFOの機能も多彩となり9グループに分類してみると,全てがアンケートに含まれており,病態に応じた選択がなされていると考えられる.装具歩行での足関節の底屈,背屈方向への適切な制動について,また初期背屈度や下腿前傾角度についての関心が高くなってきている.歩行周期での適切な制御をするAFOも開発されており,今後も発展が期待できる.
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