日本義肢装具学会誌
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29 巻, 4 号
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巻頭言
特集 上肢切断者と義手の評価と訓練方法
  • 陳 隆明, 柴田 八衣子, 溝部 二十四, 大庭 潤平
    2013 年 29 巻 4 号 p. 203-205
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション(以下リハ)チームアプローチは「言うが易く,行うは難し」実践行為であるが,上肢切断者の機能予後の改善やQOL向上に大きく寄与することは疑いない.上肢切断者は義手という代替療法を通して,リハ目標である機能改善や機能代償を獲得する.しかし,リハチームアプローチを適切に実践することは容易なことではなく,意外にも上肢切断者に対する義手訓練は全国どこの施設においても一様に標準的に行えているわけではないのが実情である.その原因として色々な要因が関与していると考えられるが,経験ある人材を有したチームアプローチを実施できる体制が整っていないことが重要な要因の1つである.
  • 住谷 昌彦, 緒方 徹, 四津 有人, 大竹 祐子, 宮内 哲
    2013 年 29 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    四肢切断後に現れる幻肢痛をはじめとする神経障害性疼痛の発症には末梢神経系と脊髄での神経系の異常興奮とその可塑性に加え,大脳を中心とした中枢神経系の可塑性が関与していることが最近の脳機能画像研究から確立しつつある.幻肢の随意運動の中枢神経系における制御機構をもとに,われわれが行っている鏡を用いて幻肢の随意運動を獲得させることによる臨床治療(鏡療法)についてその有効性と限界,そして今後の幻肢痛および神経障害性疼痛に対する新規神経リハビリテーション治療の可能性について概説する.
  • 増田 章人, 浜本 雄次
    2013 年 29 巻 4 号 p. 212-216
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    義手を製作する際に大事なことは,使用目的である.義手は決して万能なものではなく人間の手の機能を全て持たせることはできないが,対象者にとって目的となる動作を行う時には便利で必要なものである.それぞれの対象者の様々な目的によって,ソケット形状や義手の形式などを身体状況・断端の状態を評価しながら変えていく必要があり,それぞれに対応していく必要がある.選択した義手の能力を活かすためにも,ソケットの適合を良くしていくことが義肢装具士としての役割の1つである.これまでの経験をもとに,上腕義手・前腕義手・手義手のソケット製作について紹介する.
  • 高橋 功次
    2013 年 29 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    義肢装具は,医療・福祉の分野において公的支給制度のもとで使用者に提供されており,不特定多数の人が使用する一般消費物品に比べると,その流通形態や製作者と使用者の関係も独特な環境にある.支給制度の契約条項では,「差別的取り扱いのない懇切丁寧な対応」が義務付けられているので,製品の不具合にも十分な対応を実施していることと思われる.大きな破損や故障も支給制度で修理対応できるが,そうなる前の製品メンテナンスや自己調整方法などについて,十分な情報が提供されていない.これらを補うために,今回は義手に関して使用者自身が行えるメンテナンスや調整方法などを紹介する.
  • 大庭 潤平, 陳 隆明, 柴田 八衣子, 溝部 二十四, 古川 宏
    2013 年 29 巻 4 号 p. 222-226
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    義手の評価法について,2009年に Journal of Prosthetics and Orthotics 誌上にて“Upper Limb Prosthetic Outcome Measures”の報告がされた.今回,Work of The Upper Limb Prosthetic Outcome Measures Group の義手の評価に関する検討の報告をもとに国内外の義手の評価法に関する動向と代表的な評価法として,Assessment of Capacity for Myoelectric Control(ACMC),Prosthetic Upper Extremity Function Index(PUFI)などを取り上げて紹介した.
  • 森田 千晶
    2013 年 29 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    上腕切断者における義手使用は装飾用義手の使用がほとんどである.上腕能動義手は複式コントロールケーブルシステムであり使いこなすための訓練が必要なこと,また,上肢機能の補填としては制限があり補助手になることなどが挙げられるが,能動義手を使うことでADL, IADLの効率化を図ることができ,生活の質の向上につながる.今回,上腕切断者の身体機能に視点を置いた評価・訓練と上腕義手使用のための評価・訓練の基本を述べる.
  • 柴田 八衣子, 陳 隆明, 溝部 二十四, 大庭 潤平
    2013 年 29 巻 4 号 p. 232-239
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    能動義手はパーツの選択により,多様なバリエーションがあり,その使用方法は千差万別である.今回は,手先具を,能動フックとハンドに絞り,前腕能動義手を使いこなすための評価・訓練方法を紹介する.項目は,1.装着前,2.基本操作,3.応用操作,4.日常生活活動(ADL)・日常生活関連活動(IADL),の評価と訓練とした.まず,1.装着前では,断端と残存機能の診かたを中心に評価項目や阻害因子について.次に,2.基本操作では,操作のための運動や手先具特性の理解と,握り・放し練習の基礎について.さらに,3.応用操作では,両手動作と反復動作訓練,最後に,4.ADL・IADL について具体的なアプローチと指導のコツについて述べる.
  • 溝部 二十四, 陳 隆明, 柴田 八衣子, 大庭 潤平
    2013 年 29 巻 4 号 p. 240-245
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    2008年から厚生労働省による「筋電電動義手の研究用支給」が開始され,3年間で70人が支給対象となった.そして,2013年5月16日付の「義肢等補装具費支給要綱等の改正」で,一定の条件を満たす片側上肢切断者への筋電電動義手(以下,筋電義手)の支給が拡大された.兵庫県立総合リハビリテーションセンターでは,1999年より成人片側前腕切断者に,2002年からは先天性欠損児らを対象に,従来の能動義手に加え筋電義手の訓練プログラムを構築した.そこで今回は,成人を対象に行っている筋電義手訓練プログラムについて,基礎的な訓練から社会復帰に向けた日常生活訓練までを,訓練方法のポイントと指導のコツについて紹介する.
原著
  • 山本 篤, 浦田 達也, 小堀 修身, 伊藤 章
    2013 年 29 巻 4 号 p. 246-254
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,陸上競技短距離走で世界トップクラスの片側大腿切断者が全力疾走時の走動作を動力学的に明らかにすることである.2011年100 m世界ランキング4位の日本人選手1名を対象に全力疾走動作を行わせた.3台のデジタルビデオカメラを用いて走動作を撮影した.撮影した映像を基に,3次元座標値をもとめ,それらから各関節にかかるトルクを計算した.その結果,股関節トルクにおいて,スイング期では,義足,健足ともに同じ変化傾向を示した.すなわち,前半に屈曲トルクが発揮され,屈曲動作が行われた.続く後半には伸展トルクが発揮され,伸展動作が行われた.この結果は,脚を前に振り出すために屈曲トルクが働き,その後,脚を振り戻すために伸展トルクが働いたことを示している.一方,キック期では義足と健足で異なった傾向を示した.すなわち,義足では常に伸展トルクが発揮されていたが,健足では前半に伸展トルクが発揮され,後半に屈曲トルクが発揮された.この結果は,義足の股関節トルクの発揮は,キック中に推進力を得ながらも膝関節に伸展トルクとして作用し,膝折れを防ぐためにも働くことを示している.以上の結果から,キック期では義足と健足が違う傾向のトルクを発揮したことがわかった.つまり,トレーニングにおいて義足と健足を同じ方向だけでなく,異なるものとして取り扱うことも考慮する必要があると示唆された.
  • 小川 真, 小口 和代, 林 なぎさ, 齋藤 美樹, 森島 勝美, 加藤 良治, 宮田 尚彦
    2013 年 29 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    重度の体幹障害者がBWSTTを実施する際の問題点を検討し,体幹伸展位での歩行訓練を可能にするため体幹伸展機構を付加した新型ハーネスを開発した.3次元動作解析の結果,頸部・体幹伸展効果と体幹動揺の軽減効果があることが示唆された.新型ハーネスを使用することで,適切な運動学習を促す体幹伸展位での歩行訓練が可能となり,難易度調整機能や高い再現性などBWSTTの特徴を生かした訓練と効果判定への活用が期待できる.今回の検証は被験者が1名であり信頼性は低い.今後も被験者と対象疾患を増やし,実用化に向けて開発を進めていく.
短報
  • 髙木 治雄, 村井 史樹, 新堂 喬, 髙村 彰子, 伊藤 一也, 貞松 俊弘, 蒲田 和芳
    2013 年 29 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    GaitSolution(以下GS)短下肢装具は,歩容や歩行能力の改善に貢献するとされるが,GS付き長下肢装具(以下GS長下肢装具)が回復期脳卒中片麻痺患者の歩行能力に与える影響は報告されていない.本研究の目的を,GS長下肢装具の麻痺側単脚支持時間に及ぼす効果を検証することとした.片麻痺患者7名を対象とし,GS有りとGS無しの2条件での介助歩行を行い,歩行速度,歩数,麻痺側および非麻痺側支持時間を比較した.その結果,二群間で統計学的有意差は認められなかった.歩行距離,介助方法,装具調整の基準等の統一方法が課題として挙げられた.長下肢装具を必要とする麻痺患者において,GSの有無は歩容に大きく影響しないことが示唆された.
症例報告
  • 妹尾 勝利, 石原 健, 富山 弘基, 今川 裕輔, 井上 桂子, 小野 健一, 藤田 大介, 吉村 洋輔, 小原 謙一, 黒住 千春
    2013 年 29 巻 4 号 p. 266-269
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,我々が検討を行っているハーネスを用いない前腕能動義手を紹介することである.検討過程におけるこの義手の課題は,手先具の制御と義手の懸垂であった.手先具の制御は4段階のレバー式ロック機構によって,義手の懸垂はシリコーンライナーを使用することで改善した.改善した義手は,対象事例の日常生活場面で21カ月間使用し,破損部分への改良を行った.最終的に,作製した義手は岡山県において特例補装具として承認され,公費支給の対象となった.
講座 職場の健康管理
  • 太田 雅規, 大和 浩
    2013 年 29 巻 4 号 p. 270-277
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/10/15
    ジャーナル フリー
    定期健康診断の有所見率は,生活習慣病に関する項目を中心に増加しており,定年延長に伴い高年齢労働者の割合はさらに増加することから,この傾向は今後勢いを増す.一方,健康的な生活習慣を実践することでこれらは予防することが可能である.本年,「健康づくりのための身体活動基準2013」が出され,少しでも身体活動を増やすことの重要性が強調されるようになった.中小規模事業所においては,地域の健康増進活動の活用は有用と思われる.また,運動しやすい環境改善,階段利用や通勤での歩行など,運動以外の日常生活における活動の増加も効果的である.職域で健康増進活動を展開するためにも,仕事満足感や休業率,経済的評価などの仕事に関連する因子の評価も併せて行っていくべきである.
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