日本義肢装具学会誌
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33 巻, 3 号
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巻頭言
特集 地域包括ケアシステムにおける生活環境整備に必要な補装具の介入
  • 杉原 俊一, 濱本 龍哉, 箭内 一浩
    2017 年 33 巻 3 号 p. 146-150
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    北海道は広大な面積の中で人口が分散した居住環境となっており,医療従事者の地域偏在の格差も加わり,生活環境整備に必要な補装具フォローは地域課題の1つとなっている.地方では人口減少が著しいため,北海道では地域包括ケアシステムにより医療と介護の連携によるフォロー体制が必要不可欠である.不適合状態の装具利用者の発見,情報共有には専門的な知識が必要なため,「装具ノート」等による情報提供,スマートフォンで撮影したデジタルデータの分析が有用と考えている.このようなICTの活用により,広域分散の医療提供体制においても時間·空間的な制約を超え,多職種連携による包括的な補装具フォロー体制の構築が期待できる.

  • 久米 亮一
    2017 年 33 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    我々は,退院後の装具のメンテナンスや作り替えを専門分野と位置づけ15年に渡り取り組んできた.地域には「歩容の崩れ」,「足部の変形」,「装具の不適合」が多く存在し,今までの知識や技術,考え方では解決できない問題点に気づくことができた.装具について,自宅での未使用などが引き起こす不適合,介護保険非対象者がおかれる状況,老人保健施設における必要性,在宅ケアの実情などの「環境的問題」,および制御力の小さい短下肢装具のリスク,製作の遅れのリスク,装着練習の大切さ,予備の装具の重要性などを整理する.そして現在行っているケアマネジャーやセラピストとの連携や,講演活動によって地域環境に対する直接アプローチを紹介する.

  • 武山 政志
    2017 年 33 巻 3 号 p. 159-162
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    東日本大震災から6年が経過しようとしている.かつてないあの惨劇はいまだ忘れることができない.その後も,熊本の群発地震や豪雨災害など日本各地で様々な災害が起きている.どこに住んでいても災害から逃れることはできない.今回被災した自身の経験をもとに,義肢装具士としての役割を,訪問の事柄を中心に述べたい.震災直後,義肢装具に対する支援の需要はなかった.避難していた装具利用者が装具の作成,修理を求めてきたのは,震災後3カ月を過ぎたころからだった.移動手段のない被災者へ訪問対応が求められた.継続している在宅の訪問対応は,利用者の身体の状態変化に合わせて装具を調整するために必要である.装具の不具合をもつ利用者を抽出するため,他職種との連携が重要である.

  • 沖井 明
    2017 年 33 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    住み慣れた町で暮らしたいと願う補装具使用者にとって,補装具の不調は身体の不調と同様の緊急事態であり,修理や新規処方などの迅速な対処と不調を未然に防ぐ方略が求められる.地域包括ケアシステムに補装具見守りを定着させ保守の自助·互助を促していくことで職種間·事業所間の知識のばらつきを抑え,情報·意見交換を促すことができ,道具として圏域の実情に即したチェックリストや連携ノートが有用と考えられる.自助·互助の充実を支援·拡大し,適用する制度や住所地による支給内容の違いを埋めるために,公助·共助として立法·行政による医療·介護·福祉がより一体化した包括的ケア体制に向けた法整備や予算配分が求められる.

  • 川場 康智
    2017 年 33 巻 3 号 p. 170-173
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    高齢者人口の増加にともない,生活期における装具使用上のトラブルも増加すると予想されるなか,我々,義肢装具士の在宅分野への参入は他の関連職種と比べて遅れがちである.在宅対応で見かける装具は,経年劣化による破損や身体状況の変化から不適合となり,危険な状態で使用が継続されているものも多い.対策として,①装具の目的を理解し正しく使用していただけるよう,装具使用者またはその家族に対し指導することと,②地域の医療·介護職とネットワークを通じて連携し,トラブルの早期発見とその後の対応を円滑化する必要がある.

  • 永池 健太, 二宮 誠
    2017 年 33 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    2025年に団塊の世代が75歳以上になることを受け各地域では地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが行われている.長崎県五島市でも人口減少と高齢化が急速に進んでいる中,在宅で利用者に関わる介護士やリハビリテーションスタッフ,ケアマネージャーの補装具に関する知識の違いや離島ならではの時間の制約もあるため,十分なフォローアップができていない状況にある.本稿では離島での補装具に関する現状の報告と課題を明らかにしていく.

短報
  • —装具回診を全症例に実施した効果—
    遠藤 正英, 東 世智, 橋本 将志
    2017 年 33 巻 3 号 p. 179-181
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    脳卒中患者において早期から歩行練習を行うために早期から装具処方を行うことは重要である.当院では週1回装具回診を行うことにより早期からの装具処方を行うことが可能となったが,短下肢装具,未作製において装具処方が遅れていた.そこで麻痺,装具の必要性の有無に関わらず,脳血管疾患を有している全症例が入院週の装具回診に参加することを義務付けることで早期からの装具処方が可能となった.つまり,早期からの装具処方を行うためには,全症例ができるだけ早期に装具回診へ参加することが望ましいと考えられた.

症例報告
  • 武藤 光弘, 川本 友也, 近藤 拓也, 清水 新悟, 山本 美知郎
    2017 年 33 巻 3 号 p. 182-186
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    橈側列形成障害の重度例では母指や橈骨の欠損に加え尺骨も弯曲し,良好な上肢機能を獲得するには複数の要因を解決しなければならず難渋する.今回,生後3カ月の重度な橈側列形成障害症例に対しスプリント療法にて関節可動域の改善と尺骨の弯曲矯正を同時に意図した.加えて,上肢の発達段階に合わせてスプリントを外して手指で物を握ることや両手動作などを作業療法にて適宜実施した.その結果,成長も相まって関節可動域と尺骨の弯曲角度の改善が得られ,母指がなくても可能な動作は反対側とほぼ同時期に同等の発達が得られていた.そのため橈側列形成障害において本スプリントは効果的である.

講座 EBMに基づく研究・発表の進め方
  • 佐藤 元, 冨尾 淳, 藤井 仁, 湯川 慶子, 原 湖楠
    2017 年 33 巻 3 号 p. 187-196
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    義肢·装具を含む医療·福祉機器は,技術革新および社会的要請の高まりにより,開発研究が進められている.本稿は,まず義肢·装具を含む,医療·福祉機器の上市承認の制度,審査について解説する.これらの市場また研究·開発が国際化している現状を鑑み,日本に加え,欧州,米国における制度を合わせて紹介する.さらに,医療機器研究の有する特徴,人を対象とした研究(臨床研究)を実施する際に求められる(事前)登録制度を解説するとともに,義肢·装具関係の臨床試験の国際的な現状·動向を報告する.本領域の研究·開発の振興,また実施を意図する方々の理解が深まることを期待したい.

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