日本義肢装具学会誌
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32 巻, 3 号
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巻頭言
特集 3Dプリンターと義肢装具開発
  • 渡辺 崇史
    2016 年 32 巻 3 号 p. 148-153
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    3Dプリンターは,成形型を用いずに単品または少数のモデルが製作できる,形状の異なる複数のモデルを一度に短時間で製作できる等の特徴があることから,義肢装具も含め福祉用具や各種支援機器·道具に求められる“多様な個別性に対応する”という課題に対処できる可能性を持っている.3Dプリンターは,材料を1層ずつ積み上げて造形する「積層造形」であり,従来の加工方法では困難であった複雑な形状を有する立体物を,1回の工程で造形できるという利点も有する.そこで本稿では,積層造形方式の種類と特徴,3Dデータ作成から出力までの流れ,使用される素材の特徴等の基礎知識と,3Dプリンターの特性を活かしたモノづくりに求められるスキルについて概説する.

  • 吉川 雅博
    2016 年 32 巻 3 号 p. 154-159
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    能動義手や筋電義手は優れた機能性を持っているが,価格,重量,作業性,操作性,装着性などに課題があり,国内の多くの義手ユーザは装飾義手を使用している.この現状を踏まえ筆者らは,軽量·低価格で作業性と操作性に優れた3指電動義手「Finch」を実用化した.把持安定性の高い3指をシンプルな機構で制御することによって,高い作業性を実現し,3Dプリント技術も活用することで,軽量·低価格化を図っている.また,距離センサによる筋隆起検出に基づく操作システムや,容易に着脱可能なサポータソケットなど,操作性や装着性を改善する新しい提案を行っている.本稿ではFinchについて紹介し,福祉機器に3Dプリンタを活用するメリット·デメリットについて考察する.

  • 中川 昭夫
    2016 年 32 巻 3 号 p. 160-165
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    3Dプリンターをうまく活用して,主に小児用の能動義手を無償で供給,貸し出しているコミュニティ「Enabling the Future」と,そこで公開されている義手について紹介する.そのホームページでは,手関節や肘関節の屈曲を動力源とする能動義手モデルのデータを公開しているほか,一般の3Dプリンター所有者に呼びかけてプリントした義手部品を集め,ガールスカウトなどがボランティア活動としての組立会を開催して義手を組み立て,寄付金によって送料を賄うことによって,世界中に無償で供給したり貸し出したりしている.ここで提供されているデータを基に2種類の義手をプリントして組み立てた経験を紹介し,そこから3Dプリンター応用の可能性について考察する.

  • 金子 研一, 福井 哲也
    2016 年 32 巻 3 号 p. 166-171
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    視覚障害者が実物に触れて観察することが難しいものや現象を知る手段として,触察模型が有効なことがある.視覚特別支援学校等では,古くから教材として活用されてきたが,その多くが手作業による製作のため十分普及しているとはいえない.私たちは,触察模型製作に3次元造型機の利用が有効と考え,いくつか試作を行った.その結果,触察に耐える精度と触感で製作できることがわかったが,その工程はけっして簡単ではなかった.触察に適したデータの入手と加工,素材の選択,使用ソフトウェアの操作方法の習得等,多くの課題が明らかとなったので報告する.

  • 田中 真美
    2016 年 32 巻 3 号 p. 172-176
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    3Dプリンターで造形を行うためのデータ作成の方法には,三次元CADソフトにより作成する方法と,現物の形状を非接触式三次元測定機(3Dスキャナー)で計測したデータから作成する方法がある.形状測定や3Dプリンター入力用データの修正には,場合によっては多大な手間と労力を要することがある.また,目的にあった適切な機器の選定とノウハウの蓄積が必要である.本稿では,現物の形状測定による形状データの作成と3Dプリンター入力用データであるSTLデータの修正を中心に,三次元造形を行う際の一連の作業を,当センターの保有機器を使用した場合を例として紹介する.

原著
  • 矢吹 佳子, 棚橋 一将, 星川 英, 中村 達弘, 姜 銀来, 加藤 龍, 横井 浩史
    2016 年 32 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    本論文は,義手利用者の希望を叶える装飾手袋の開発を目指し,リアルな外観と電動ハンドのスムーズな動作を実現する装飾手袋の設計と製造方法について取り扱う.主要な設計要件を,外観,把持性能,耐久性,質感,柔軟性の5種類に分類し,おのおのは,形状·皺·指紋·爪·色など,人の手指の身体的特徴を模倣する外観を有すること,把持性能については把持対象物への馴染みを実現する厚みを有すること,そして,日常生活利用に対する耐久性と,ヒトの皮膚の粘弾性に近い質感,および,関節の駆動を妨げないスムーズな動きを実現すること.これら設計要件を備えた装飾手袋の開発と成果,および評価結果について述べている.

短報
  • 齊田 和哉, 森下 登史, 新宮 正弘, 百武 光一, 福田 宏幸, 左村 和宏, 塩田 悦仁, 井上 亨
    2016 年 32 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,上肢用の単関節型HAL® (single joint type of Hybrid Assistive Limb : HAL-SJ)に対して2種類の上肢支持装具を用いる有用性を検討することである.当院で脳卒中上肢リハビリテーションにHAL-SJを用いた中で,その支持装具としてポータブルスプリングバランサー(portable spring balancer : PSB)とHAL-SJ卓上固定器具(HAL-SJ tabletop mount : HSTM)の両方を使用した8例を対象とした.評価内容はBrunnstrom recovery stages (BRS)と対象者の印象による主観的評価,HAL-SJモニター上の電位波形などを比較検討した.その結果,BRS III·IVの場合はPSBに比べてHSTMの印象が良い結果となった.電位波形では,PSBは伸筋優位に,HSTMは屈筋優位に検出される傾向があった.それぞれの支持装具に特徴があり,麻痺の程度や使用目的に応じてテーラーメイドな治療を選択する必要がある.

症例報告
  • 米津 亮, 鈴木 淳也, 山縣 学, 齋藤 聡佳, 大橋 由佳, 小栢 進也, 淵岡 聡
    2016 年 32 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    柔軟性を有する炭素繊維強化プラスチックを用いて,中足指節関節の背屈運動を再現できる短下肢装具を試作した.本研究では,痙直型片麻痺を呈する脳性麻痺児1症例を対象に,試作した短下肢装具が歩行動作に及ぼす影響を検討した.そこで,対象児に試作した短下肢装具,既存の短下肢装具,裸足の条件で床反力計と同期設定した動作解析装置で歩行動作を記録した.その結果,既存の短下肢装具に比較して,足関節背屈角度が増大した(p<0.01).また,垂直分力が荷重応答期では有意な減少(p<0.05),立脚終期では有意な増加を認めた(p<0.01).これらの知見から,我々が試作した短下肢装具により,より正常な歩行動作を再現できたことが示唆された.

  • 中村 隆, 山﨑 伸也, 中川 雅樹, 田中 亮造, 高橋 剛治, 飛松 好子
    2016 年 32 巻 3 号 p. 194-197
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    四肢切断者のリハビリテーションと義肢の適応に関する症例報告である.57歳,男性.電撃性紫斑病による四肢末梢の虚血性壊死により,両前腕,両下腿の切断に至る.リハビリテーションでは移動の確保や義肢の自己装脱着といった課題が顕在化し,義肢の改良とデバイスの活用が必要であった.本症例は我々が経験した同疾病による3例目の症例であったが,過去2例と比較して訓練の遂行に問題はなく,両側能動義手(手先具 : フック)とライナーを使用した下腿義足の適応となった.皮膚状態に問題がなかったこと,両前腕切断と両下腿切断であったこと,先行2症例の経験を踏まえた適切な義肢を選択したことが,順調な結果に至った理由と考えられた.

講座 X線を用いた装具の効果
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