日本義肢装具学会誌
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29 巻, 3 号
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巻頭言
特集 下肢切断者の身体評価と義足の適合
  • 陳 隆明, 幸野 秀志
    2013 年 29 巻 3 号 p. 132-136
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    下肢切断の主要な原因は末梢循障害であり,日本も例外ではない.各診療科の枠を超えた集学的治療が日本でも積極的に行われるようになった結果として,切断者の中に占める高齢下腿切断者の割合が増加した.しかし,切断者が歩行機能を再獲得するためには,単に膝関節を温存する外科的努力だけでは不十分であり,下腿切断といえども,そのリハビリ成功率は依然と低い.その主要な原因の1つが,術後の断端マネージメントから的確な義足処方,そして適切なリハビリといった一連の有効なリハビリ戦略が確立されていないことが挙げられる.さらに下肢切断のリハビリを適切に行える人材と施設の不足も深刻な問題である.
  • 小嶋 功
    2013 年 29 巻 3 号 p. 137-146
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    高齢下肢切断者の理学療法に携わる際に留意すべき点として,様々な機能評価の中から下肢切断者の特性に応じた評価指標を適切に選択して,経過観察と同時に介入効果に対する検証方法を把握しておくことが大切である.高齢下肢切断者に対する理学療法において,代表的なガイドラインと文献レビュー等を引用・参考にしながら評価指標と理学療法の留意点を関連づけながら概説した.これらの評価指標をもとに,新しい研究計画による信頼性のある結果が求められている.運動療法ならびに歩行練習方法と併せて高齢下肢切断者にとって,より機能的な義足部品の開発とともに,生活機能向上を含めた包括的なリハビリテーションプログラムの充実が望まれる.
  • 米分 智子, 吉谷 理佐, 中嶋 昌代, 幸野 秀志, 森 和美
    2013 年 29 巻 3 号 p. 147-151
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    義足を使用した日常生活において,切断者の ADL や QOL を維持するためには,皮膚トラブルを予防していくことが重要であり,断端ケアが必要である.継続した断端ケアを行うことにより,皮膚のトラブル時の早期対策ができ,快適な日常生活を送ることができる.そのため,入院時から切断者自身が断端ケアや皮膚トラブル時の対処方法を行えるように指導していかなければならない.本稿では断端ケアの方法,起こりうる皮膚トラブルについて入院時から退院までの関わりについて記述する.
  • 東江 由起夫, 須田 裕紀, 大沼 雅之, 前田 雄
    2013 年 29 巻 3 号 p. 152-157
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    義肢は,切断によって失われた手足の形態または機能を復元する人工の手足であり,人間と生体が融合したマン・マシンシステムの1つである.その接合部のソケットは“義肢の命”として,切断者と義肢のインターフェースをつかさどる.そのためには切断者の断端にソケットが適合し,体重の支持,力の伝達,自己懸垂といったソケットの機能が引き出されていることが必須であり,これこそが義肢装具士がなせる究極の技術である.そこで本稿では,下腿義足の体重支持理論や適合評価方法,不適合時の対処方法等について,最近,筆者らが改めて重要だと考えている項目について説明する.またライナーを併用した義足ソケットについても触れる.
  • 野坂 利也
    2013 年 29 巻 3 号 p. 158-160
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    下肢切断者に対するソケット,膝継手,足部・足継手は近年著しい進歩がみられる.大腿および下腿義足ソケットではシリコーン素材を中心としたライナーを用いる比率が高くなっており,これらを用いることにより断端のボリュームの調整もある程度容易に行え,断端の傷の管理面でも良好なものといえる.膝継手では,立脚相制御としてバウンシング機構,イールディング機構を用いた立脚相で安定性の高い制御機構のものが多く用いられるようになってきている.足部・足継手では,選択の幅が広がっているが,価格,活動レベル,重量などを考慮して選ぶ必要がある.義足のパーツは,個々のパーツ選択というよりは総合的な義足全体としてのバランスを考え,選択されるべきである.
  • 大籔 弘子, 高瀬 泉, 東 祐二, 手塚 勇輔, 中塚 彩子, 陳 隆明, 幸野 秀志
    2013 年 29 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    末梢循環障害や加齢により体力低下はみられたが義足歩行を獲得した,大腿切断者3名と両側下腿切断者1名の在宅生活を紹介する.屋外は歩行補助具を使用して義足歩行を行っているが,屋内移動は各自のライフスタイルによって異なる.入院中のリハでは,義足の使用目的と移動方法の確立,「義足を装着したADL」と「義足非装着ADL」の練習・環境調整,義足装着が困難な事態(トラブル)への対応,断端ケアと義足管理の習慣化などが大切である.在宅では,短時間でも義足歩行を継続できるような支援,身体機能・ADLの評価が重要である.義足に関する技術支援が必要な際に,地域支援スタッフから切断義肢の専門スタッフへ連携できる体制が望まれる.
原著
  • 見木 太郎, 古町 克郎, 嶋村 正
    2013 年 29 巻 3 号 p. 168-174
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    高齢者の車いす座位において,骨盤の後傾した「仙骨座り」は仙尾骨部に圧力やずれ力をもたらすために,褥瘡の原因になると考えられている.しかし,骨盤の後傾と圧力やずれ力の関係性についてはいまだ明らかにされていない.そこで,本研究ではセンサユニットや計測用のイスを開発し,骨盤を0° /から30° まで後傾させた際の仙尾骨部と坐骨部にかかる垂直方向および水平方向の力の変化について検証をおこなった.60歳以上の標準体重の男女18名の計測結果から,骨盤後傾角度の増加にともなって仙尾骨部にかかる垂直方向の力と水平方向の力が増加することが確認された.これにより骨盤の後傾と仙尾骨部褥瘡の発生との関連性が示唆された.
調査報告
  • 倉本 理恵, 服部 順和
    2013 年 29 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2013/07/01
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    1971〜2011年までの40年間に当院整形外科において四肢切断術を受けた373名(407肢)を対象とし,ほぼ10年ごとにI期(1971~1980年),II期(1981~1990年),III期(1991~2000年),IV期(2001~2011年)に分け調査した.74.5%が男性であった.切断時平均年齢は経時的に上昇し,特に下肢切断ではI期からIV期で26.1歳上昇した.上肢切断原因の大部分は外傷であった.下肢切断はI・II期で外傷が80%以上であったが,IV期では循環障害が60%以上を占めた.下肢切断部位については下腿切断が増加傾向にあり,その背景として,III期以降循環障害による50~70歳代の下腿切断が増加したためであった.切断患者の総数は増加しているようにみえるが,全手術件数に対する切断件数の割合に著しい年度変化はなかった.
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