日本義肢装具学会誌
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39 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
日本義肢装具学会飯田賞本賞を受賞して
日本義肢装具学会飯田賞奨励賞を受賞して
特集 あの専門病院の義足リハビリテーション
  • 加藤 弘明
    2023 年 39 巻 1 号 p. 7
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー
  • —日下病院の取り組み—
    伊藤 大知, 吉田 真二, 堀田 貴弘, 加藤 弘明
    2023 年 39 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    日下病院の義足リハビリテーション(以下,義足リハ)について紹介する.当院は,義肢診察を週に一度,リハビリ室内にて行っており,診察時は患者と医師だけでなく,理学療法士(以下,PT)や義肢装具士(以下,PO)などの関係職種が集まりカンファレンスを行うなど,多職種協働して取り組んでいる.本稿では,このような義肢診療体制のもと行っている当院の義足リハの概要と詳細な訓練内容についてまとめた.訓練内容について,義足作製前の身体機能訓練,作製後の義足装着訓練,歩行訓練,階段昇降訓練など,主要なものについて述べた.各医療機関にて状況の違いはあるが,義足リハの経験が少ない医療機関であっても,多職種協働により義足リハを実施することができると考える.本稿が義足リハを行う医療従事者の皆様にとって一助となれば幸いである.

  • 梅澤 慎吾
    2023 年 39 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    高齢下肢切断者のリハビリテーションは,義足装着の目的を明確にすることが重要である.その結果,歩行獲得に至らずとも,立位や移乗を目的とした義足作製の可能性がある.本稿では提示された症例をリファレンスとして,65歳の普遍的要素や,臨床視点で阻害因子となる問題と,その対処について記した.多くの課題は大腿切断で起きており,その解決策の1つとして,不適な状況の義足や装着時期について軌道修正する必要性をあげた.

  • 小澤 里恵, 宮越 浩一
    2023 年 39 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    亀田総合病院(以下,当院)は千葉県南部にある急性期総合病院である.グループ内に急性期から生活期まで関連施設があり,安房医療圏を中心に地域包括ケアを広く提供している.当院では常勤の義肢装具士と療法士,リハビリテーション科医師の連携により義足リハビリテーション診療が行われている.高齢化により患者背景が複雑化する中,専門性を備えたチームにより生活期以降も継続して支援を行う必要性が高まっている.本稿では当院での義足リハビリテーション診療について紹介する.

  • 田中 麻由子, 今井 大樹, 中村 隆, 清水 健, 大熊 雄祐
    2023 年 39 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    国立障害者リハビリテーションセンター病院における高齢糖尿病切断者の義足リハビリテーションでは,義足歩行に加えて生活環境整備も重要な課題とし,多職種によるチームアプローチ,地域支援者との連携を通じた総合的な支援の実現を目指している.本稿では,病院の医療スタッフである理学療法士と義肢装具士双方の観点に基づき,切断者の個別性に応じた当院のリハビリテーションプログラムをソフトとハードの両面から紹介する.

  • 田中 洋平
    2023 年 39 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    JR東京総合病院の回復期リハビリテーション病棟では多くの下肢切断者を義足リハビリテーション目的で受け入れている.下腿切断,大腿切断とも基本となるリハビリテーションプログラムを構築し,下腿切断は2カ月から3カ月で,大腿切断は3カ月から4カ月で退院することを目標としている.入院中にキャストソケット義足,チェックソケット義足,訓練用仮義足と3種類の異なる義足を時期に応じて活用しているのが特徴である.義足リハビリテーションにおいては,義足を使いこなすための身体機能を向上させるのはもちろんのこと,生活動作を練習することや,義足と断端の自己管理を患者自身で実施できるよう指導することも大切である.

  • 陳 隆明
    2023 年 39 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    義足のリハビリテーションプログラムとは,訓練前評価に始まり,評価結果に基づく機能予後の予測(ゴール設定),予測に基づく義足パーツの選択,歩行訓練,訓練過程でのゴールの再設定(最終的なゴールの決定),在宅復帰や就労支援,といったすべて工程が包含される.これらプログラムが適切になされること重要である.特に大腿切断者では義足パーツの選択が機能予後を大きく左右する.訓練用に作成する仮義足の膝継手の選択は極めて慎重に行うことが求められる.不適切なリハビリがなされた場合の切断者が被る不利益は大きい.いずれにしても,切断者ができるだけ安全で快適な生活が送れるように支援するのが我々の役割である.

  • 渡辺 卓馬
    2023 年 39 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    回復期病院での義足リハビリテーション(以下,リハビリ)は下肢切断者の今後の生活において義足歩行が実用的になるか否かの重要な役割である.専門病院での成功率は高い一方で,医療従事者の義肢(切断)分野での知識・経験不足が課題である.医療のばらつきをなくす目的でクリニカルパスを使用されるが,下肢切断は最も少なく,標準化も進んでいない現状である.本稿では,義足リハビリの問題点を視覚化し,義足作製における全体の流れ,義足前・装着後のリハビリプログラムを作成し,その内容について述べる.

原著
  • 小関 弘展, 室田 浩之, 志田 崇之, 砂川 伸也, 松村 海
    2023 年 39 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    ひずみゲージ内蔵人工爪装置を用いて,掻破動作を運動学的観点から多角的に分析した.健常成人ボランティア4名(男性3名,女性1名)の示指~小指に人工爪装置を装着して掻破動作を行った.得られた波形から10秒間の振動数,振幅,積分値を算出し,4指別,強度別,身体の部位(前腕・大腿・上腕・頭部),着衣の有無で統計学的に比較,検討した.4指別比較では,振動数に差はなかったが示指と中指の振幅と積分値が高かった.掻破強度が増すに従って振幅と全振幅が増加した.部位別では,頭部を掻破する際に振動数が高く,全振幅が低い傾向を示した.着衣の上から掻破すると全ての項目が高値を示した.人工爪装置は掻破動作を定量化できることから,掻痒感の客観的評価法に応用できる可能性がある.

短報
  • 髙橋 忠志, 栗田 慎也, 山崎 健治, 久米 亮一, 前田 健志, 尾花 正義
    2023 年 39 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中患者に対して早期に長下肢装具を作製して歩行練習を開始することは,身体機能や日常生活動作の改善に有効である.長下肢装具の作製にあたっては,二次救急病院と三次救急病院で在院日数が異なることから,病院機能に応じて長下肢装具作製の判断を行うことが必要である.長下肢装具作製の有無を問わず重要なことは,急性期病院の備品装具の充実と歩行再建の方法について回復期リハビリテーション病院と連携することであり,作製にあたっては院内多職種連携が必要になる.今回,我々は二次救急病院として,長下肢装具作製の院内連携,院外連携を構築したので報告する.

  • —当院のデータから—
    栗田 慎也, 尾花 正義
    2023 年 39 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis:以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,病院の備品であるKAFO(以下,備品KAFO)は患者の下肢周径が大きく装着ができないことや備品KAFOの制限体重などの問題で使用できないことがある.本調査は2017年から2021年1月までに当院で本人用のKAFOを作製した脳卒中患者45例の診療録を後方視的に調査し,備品KAFOが使用できなかった要因を検討した.結果は45例のうち,30例が男性であり,男性の平均体重は69.6±15.7 kgであった.このうち,12例(約40%)は備品KAFOの制限体重以上であった.備品KAFOの制限体重以上の脳卒中患者でKAFOが必要である場合には,本人用のKAFOを早期に作製する必要が示唆された.

調査・研究報告
  • —NU-FlexSIVソケットの適応と意義について—
    戸田 光紀, 大島 隆司, 陳 隆明
    2023 年 39 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    片側大腿切断者3例を対象とした.2例にNU-FlexSIVソケット(以下,NU)を製作,1例に坐骨収納型ソケット(以下,IRC)を継続使用し6カ月の期間をおいて歩行・バランス能力,ソケット快適性,骨密度,MRIによる股関節周囲組織の解析を施行した.NU1例は疼痛で装着を中止,期間中は主にIRCを装着し,ソケット快適性,骨密度,MRIのみ6カ月後の計測が可能であった.結果として歩行,バランス能力はNU,IRC例で同等であり,快適性はNU例が優れていた.骨密度はNU例で切断側大腿骨頚部骨密度が上昇した一方,他の2例では低下していた.MRIでは,NU例で切断側股関節周囲筋の断面積が増加した一方,他の2例では減少していた.NUは既存のIRCと異なる力学的刺激を大腿骨・筋肉に与え,骨密度や軟部組織組成に影響を及ぼす可能性が示唆された.

  • 小川 秀幸, 西尾 尚倫, 高山 智絵, 中野 克己
    2023 年 39 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    生活期脳卒中者の短下肢装具継続使用における使用状況とトラブル発生との関係を検討した.入院中に短下肢装具を作製した脳卒中片麻痺者に質問紙調査票を配布し,回収された125例を分析対象とした.装具継続使用における4つの問題点(装具の破損,身体の変化,衛生面,制度や相談先)のトラブル発生割合を調査し,短下肢装具の使用状況(週間使用頻度,1日歩行時間)と4つの問題点のトラブル発生について解析した.4つの問題点についてトラブル発生がそれぞれ3割程度認められた.また,週間使用頻度が高い群は低い群に比べて4つの問題点全てにつき困っている方が有意に多かった.1日歩行時間が多い群は少ない群に比べて4つの問題点全てにつき困っている方は多いものの,有意差を認めたものは身体の変化と衛生面であった.生活期脳卒中者の短下肢装具継続使用において,4つの問題点について同程度困っており,短下肢装具の使用状況が増えることで4つの問題点全てについてトラブルが多くなることが明らかとなった.

講座 補装具支援と工学的基礎
  • —材料の基礎知識—
    中村 隆
    2023 年 39 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    補装具には従来から汎用材料が多く流用されてきたが,最近では炭素繊維強化プラスチック等のかつては特殊な材料とみなされていた複合材料を使用した義肢装具が普及し始めている.また,新たな製造手法として3Dプリンタが普及し始め,造形物の力学的特性が注目されている.一方,このような材料を取り巻く環境の変化は持続可能でよりよい世界を目指すSDGsの流れの中で,新たな課題を顕在化させている.複合材料と3Dプリンタを代表例にとりあげ,補装具に使用される材料と今後の展開について工学的基礎知識と共に解説する.

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