日本義肢装具学会誌
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38 巻, 4 号
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2022年度 日本義肢装具学会飯田賞受賞者
巻頭言
特集 動物用の義肢装具製作
  • 泉澤 康晴, 安部 玲央奈, 泉澤 有
    2022 年 38 巻 4 号 p. 278-284
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    犬や猫などいわゆる伴侶動物の運動器疾患は,解剖学的形状や大きさこそ人間のそれと異なるものの,多くは人間の場合と同様に発生し,同様に治療を受ける必要がある.伴侶動物の手術治療は,先駆けである人医療の恩恵を受けて大きく発展しているが,残念ながら治療の補助となる義肢装具に関しては未知数である.形態の多種多様性が,標準化確立の障壁となっていると考えられる.伴侶動物に多く見られる運動器疾患の代表例として,骨折(橈尺骨骨折,骨盤骨折,顎骨折),脱臼(股関節脱臼,膝蓋骨脱臼),前十字靭帯断裂に関する外科治療の現状を紹介する.獣医療に義肢装具医療の進んだ技術がより一層導入展開され,進化定着することを期待する.

  • 大村 敬
    2022 年 38 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    本稿は,現在世界各国で行われ,当協会でも行っている犬(セラピー犬)によるアニマルセラピーに主題を絞り,犬には,人を癒し,健康に,そして幸せにする力があると思った先人の気づきを科学的に解明しようとする調査研究の変遷と現在のアニマルセラピーの実際,ならびに当協会が目指すものを,犬を愛してやまない一人のアニマルセラピストが,その活動経験を交えて考察するものです.

  • 楠見 悟司, 林 満, 松本 芳樹
    2022 年 38 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,弊社が作製した犬用の義肢装具を,代表的な疾病別に紹介する.構造や工夫した点などをわかりやすくするために,それぞれの画像も添付した.本邦の犬猫飼育頭数は子供(15歳未満)の人口より多く,高齢化傾向にもあることから,ペットの義肢装具の需要は増える可能性がある.今後も獣医師からのご指導をいただき,新たな製品の開発や改良が必要と考える.

  • 斉藤 宏司
    2022 年 38 巻 4 号 p. 299-305
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    筆者はイヌやネコなどの動物に関する知識はほとんどなかった.飼育したくても住環境が厳しかった.そのような状態であったので,偏見を持たずにゼロから純粋に接することができた.背骨があって胎生である以上,尻尾があって多少の骨格の違いがあり,筋肉の付き方が違うだけである.疾患などのメカニズムもヒトと同様である.また,特別な材料などを用いずとも,発想やアイデア次第で必要とされるパーツなどは身近なものを代用・購入・加工することで必要な義肢・装具の機能を満たすようにできるようにしたいと考える.本文に掲載する数例の症例でも身近に手に入るようなものを用いて義肢・装具を製作し,成功も失敗も微妙であったケースも経て,ある程度の結果を得ることができたので紹介する.

  • 山田 哲生, 藤本 涼花, 石ヶ休 未樹
    2022 年 38 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    広島国際大学の学生が卒業研究で作製した犬の義肢や車いす,安佐動物公園より作製依頼されたアミメキリンの治療用装具について紹介する.両前脚切断である犬の義足については,義足長を調節できる義足を作製し,3本脚歩行の矢状面から見た重心位置の上下動を計測して評価を行った.犬の車いすについては,脊髄損傷に伴い両後肢麻痺をきたしていたが,前脚の脚力が低下していたため4輪車いすを作製した.4輪車いすは後輪位置を変更し加速度センサで推力を計測することで,前脚負担が少く安定走行可能な後輪位置を設定しようと考えた.アミメキリン両後肢先天性屈腱弛緩症の治療用装具は,装具作製における留意点と装具装着による治療効果について紹介する.

原著
  • 川北 大, 飯田 修平, 青木 主税
    2022 年 38 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究は機能的近赤外分光法(fNIRS)装置を用いて短下肢装具歩行とロボット型短下肢装具歩行の表面脳血流動態の違いを比較,検討をした.対象は脳血管障害片麻痺後遺症者10名.課題動作では短下肢装具歩行,ロボット型短下肢装具歩行の2条件の安静時と歩行時の各脳機能局在領域の局所脳血流oxy-Hbの変化量を比較した.非病巣側内側一次運動野,病巣側内側一次運動野,病巣側外側一次運動野,非病巣側運動前野,病巣側運動前野と推定される脳機能局在領域において,ロボット型短下肢装具歩行時のOxy-Hbの有意な増加がみられた.ロボット型短下肢装具を装着し足関節底背屈をアシストした歩行により運動関連領野への影響が推測された.

  • 昆 恵介, 春名 弘一, 中井 要介, 佐藤 健斗, 稲垣 潤, 清水 新悟, 関川 伸哉
    2022 年 38 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    多くの脳卒中片麻痺者ではフォアフットロッカーが消失する.本研究では単脚支持期間中に麻痺側の踵を挙上させフォアフットロッカーを機能させるための装具(HUS-AFO)の開発と評価を目的とした.HUS-AFOは4節リンク構造を有し,MP関節より近位に位置する仮想的なロッカー軸(HUS軸)と装具側方に位置する圧縮バネによって踵挙上をアシストするものである.背屈制動機能を有する短下肢装具の靴底底面にHUSデバイスを内蔵することで,歩行中の足関節底屈モーメントを増加させ,COPの前進をアシストするとともに,MP関節より近位に位置するHUS軸を床反力作用点が超えることで,単脚支持期間中に踵を挙上させることを明らかにした.

症例報告
  • 中村 康二, 中川 雅樹, 中村 隆, 長尾 陽子, 大熊 雄祐
    2022 年 38 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    上肢切断者のニーズに対して,どのような義手や手先具を選択すべきか,その判断は必ずしも容易ではなく,義手使用者の多様化に伴い,義手の訓練効果を十分に判定する評価法は少ないといわれている.今回,造園業を営む40代男性の片側手関節離断者に対して,義手を用いた復職を目標とし,リハビリテーション治療を実施した.復職に必要な8つの項目を評価する評価表を用いて,3種類の手先具を実際の作業環境にて評価した結果,それぞれの義手・手先具の特性を明らかにすることができ,造園業への復職に至った.義手・手先具の選択には,試用評価の実施と評価表の活用が有効であった.

調査・研究報告
  • 栗田 慎也, 髙橋 忠志, 勝平 純司, 尾花 正義
    2022 年 38 巻 4 号 p. 331-336
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    足関節果部骨折は,術後も長期で歩行速度や足関節底屈モーメント低下などを生じる.本研究は抗力を具備した継手付き体幹装具(TSC)とノルディックポール(NP)の使用が足関節果部骨折術後患者の歩行能力に与える影響を明らかにすることである.歩行が自立した12名の足関節果部骨折術後患者にTSCおよびNPを使用して歩行速度,歩幅,痛み,そして腓腹筋の筋活動電位の評価を行った.結果として,TSC装着前と比較し,TSC装着時とTSCを外した直後の歩行速度が有意に増加し,TSC装着時の患側腓腹筋の筋活動電位が有意に増加した.なお,NP使用時との間には有意差を認めなかった.足関節果部骨折術後患者へのTSC装着は歩行能力を即時的に改善させることが示唆された.

  • —車椅子適合支援の取り組みから—
    関川 伸哉
    2022 年 38 巻 4 号 p. 337-341
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,41名の介護老人福祉施設入所者を対象に,導入した車椅子サイズ,車椅子レンタルに関する使用期間,車椅子の種類等について分析を行った.導入された車椅子の98%は,座幅380 mm以下のサイズのものであった.市販されている車椅子座幅の多くが400 mm以上であることを考えると,現状の高齢者の車椅子の座幅は明らかに大きく,こうしたサイズ不良が車椅子座位時の姿勢不良の原因につながっているものと思われる.介入期間中に1人が使用した車椅子の数は,平均で1.6台だった.車椅子の使用期間は,平均469.6日で約1年3カ月であった.車椅子1台当たりの使用期間は,平均305.5日/台で10カ月程度であった.介入期間中に使用した車椅子は,自走型車椅子と多機能型車椅子に大別された.介入期間中に多機能型車椅子が使用されたケースは全体の54%であり,介護老人福祉施設での多機能型車椅子の使用ニーズが高いことを示している.本研究を通して,介護老人福祉施設の利用者や職員からの車椅子レンタルに関する質問への基礎的なデータを得ることができたと考える.

講座 感染症対策
  • 佐々木 伸
    2022 年 38 巻 4 号 p. 342-345
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

    ISPO(International Society for Prosthetics and Orthotics)は,1970年の設立から50年を迎えた義肢装具・福祉用具に携わる関連職種の国際団体である.日本語では国際義肢装具協会と呼ばれる.2020年3月に新型コロナウイルスによるパンデミックが宣言されてからのISPOの動きはとても早かった.次月には義肢装具サービスに関しての留意文書を発行,それが日本語訳された後,国内の関連団体へ紹介,配布された.現在8カ国語に翻訳されて公開されている.

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