有明海奥部海域に位置する諫早湾潮受け堤防からの排水がNH
4-Nの挙動に与える影響を評価するために,諫早湾内に9定点を設け,2012年9月18日から19日にかけて合計6回の高頻度観測を実施した。2012年9月18日16時頃に諫早湾潮受け堤防北部排水門の近傍において排水が確認された。排水直後には懸濁態窒素濃度が最大で100 μmol·L
-1に達した。一方,NH
4-N濃度については,排水時に大きな変化はないものの,潮位とともに変動し,9月19日の7時に最高値となる9.3 μmol·L
-1に達した。諫早湾奥部の排水門近傍における水柱積算NH
4-N量の時間変化をもとに,排水後のNH
4-Nの増加速度を見積もったところ,NH
4-N量の増加速度は平均1.8 mmol·m
-2·h
-1となった。これらの結果から,排水門近傍においては,有機物分解に伴うNH
4-Nの再生産が局所的に卓越することで,赤潮を支える栄養塩の供給源の1つとなる可能性が示された。
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