日本化學雜誌
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81 巻, 1 号
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  • 堀田 寛, 中村 治人
    1960 年 81 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    放射性物質による皮膚の汚染に対する除去剤として酸化チタンが使用されているが,これと他の除去剤・とくに粉末除去剤との用を比較する目的で,90Sr(NO3)2,核分裂生成物,およびH332PO4で汚染きせた生豚皮に対するそれら除去剤の効果を研究作し。この結果,アナタースと0。1N塩酸を約5:3の重量比でまぜたペーストがよいことがわかった。さらに, 吸着等関連したた諸実験を行なって,この種粉末除去剤の作用機構を検討した・本報では90Srによる実験が主なものであるが,90Srと90Yとの関係についても検討した。
  • 望月 隆仁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    延伸条件をかえてつくったポリビニルアルコール(PVA)繊維を種々の条件で熱処理した場合の微細構造変化を主としてX線回折によって研究した。すなわち回折図形の(101) と(101)の両反射を分離してそれぞれの反射強度を測定した。赤道線上での(101) と(101)の相対的な強度比は繊維の処理条件によって広範囲に異なり,約1:1から約1:0.6まで変化する。熱処理温度があまり高くない場合には,高延伸繊維ほど(101)のみかけの強度が低い。しかし240℃ の熱処理の場合には,低延伸繊維ほど(101)のみかけの強度が顕著に低下し,400%以上延伸した繊維では熱処理による強度低下は認められない。(101)のみかけの強度が極端に小さい繊維について,(101),(101)などの方位方向の強度分布を調べた。(101) は赤道線上にのみ強度の極大点を示すが,(100),(101),(200)は赤道線上のほかに子午線から30~40° の方向に第2の極大強度を示す。この強度分布から,PVAではまだ認められていない, 新らしい選択的配向をとった構造のあることがわかった。また水中浸漬時の繊維の収縮性などを測定して, 約300%の延伸で微細構造に特異な変化が生ずることを推定した。
  • 望月 隆仁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    吸湿量の 2, 3 異なった繊維状ポリビニルアルコール(PVA)を, 種々の温度の流動パラフィン中で熱処理し, 熱処理繊維の赤道線上の回折X線強度をX線デフラクトメーターで測定して, 熱処理効果におよぼす水の影響について研究した。吸湿した織維では, (101) と (101) の反射は低温の熱処理からすでに分離して観察される。同時に赤道線上では (101)の強度に対して (101) の強度の低下が認められる。両者の強度比I(101)/I(1O1)はある熱処理温度まで大きくなるが, それ以上の高温の処理では低下する。吸湿度が大きいほど,その熱処理温度は低い。反射強度にも同様な傾向が見られ, 最大強度を示す熱処理温度は吸湿量の増大とともに, ほぼ直線的に低下する。この変化から推定したみかけの融点は 223℃ であり, PVA皮膜で観察した値とよく一致する。また反射の半価幅と結晶性反射の強度から, 適度の水 (約5%) の存在でPVAの結晶化が促進されることを知った。
  • 望月 隆仁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高度に延伸したポリビニルアルコール(PVA)繊維を高温の空気中で種々の程度に収縮させ, これらの繊維についてX線的研究を行なった。収縮率約10%の繊維の赤道線上の反射は強度が大きく, かつ鋭い。これからいままでの報告よりもより多くの反射の分離した強度分布曲線を得た。その結果は a=7.805±0.010Å,c=5.485±O.O07Å,β=92°10' ±20' とすれば,もっともよく説明される。その他に収縮処理の繊維微細構造に与える影響を,反射の鋭さ,結晶度, 微結晶の平行性, 非晶領域からの散乱強度, X線小角散乱,比重,吸水率などで研究した。
  • 下沢 隆, 森野 米三
    1960 年 81 巻 1 号 p. 20-21
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフタリン誘導体の双極子モーメントの測定は,古くから行なわれている。既知のデーターについて,ナフタリンモノ置換体モーメントをα位とβ位轍分子について比較するとの双極子, β蹴の双極子モーメントはα置換体のそれにくらべて必ず二置換ナフタリンの双極子モーメントは,塩素圏換体についてすべての組合わせの分子について行なわれているが, ニトロ誘導体の測定は,1,5-および1,8-置換休のデーターがあるのみである。これらの化合物の双極子モーメントが今日まで測定されなかった理由は, おもに有機化学的な合成の困難さによるものと考えられる。今回,有機反応論の立場から, 既存置換基としてニトロ基をもつナフタリン環の環内電子の移動状況を知る目的で, 一連のモノニトロ,ジニトロナフタリンが合成され,試料確認および電子移動の推定手段の一つとして, 双極子モーメントの測定を行なった。
  • 下沢 隆, 永井 洋一郎
    1960 年 81 巻 1 号 p. 22-23
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレン型分子の二つの幾何異性体のうち, いずれがシス形でいずれがトランス型であるかを決定するには, いろいろの有機化学的な方法が用いられ, 主として経験則によって区別が行なわれている。双極子モーメントの測定によるシス・トランス幾何異性体の区別決定は, 有機化学的方法にくらべると直接的であり, 数多くの物理化学的決定手段のうちできわめて有効な方法の一つである。今回, 5種の 4,4' -二置換-α,α'ジメチルスチルペン (X-H4C6-C(CH3)=(H3C)-C-C6H4-X) に, 有機化学的見地からはそれぞれシス形およびトランス形と思われる異生体を2種ずつ得たので, それらの双極子モーメントを測定し, 直接にシス・トランス形の帰属を行なった。その結果は, -OCH3基を置換基とする化合物を除いては, 多くの有機化合物にみられる経験則, すなわち融点が高く溶解度の低いものはトランス形,融点の低く溶解度の高いものはシス形であるという結果と一致した。しかしながら, ジメトキシジメチルスチルベンの双極子モーメントは, シス形およびトランス形でほとんど区別がなく, 双極子モーメント測定による帰属は不可能であった。4,4' 二置換 -α,α'ジメチルスチルベンの置換基としては, -C1, -Br, -I, -NO2および -OCH3 の 5種類が得られた。これらの試料は, 4-置換アセトフェノンを出発物質として,.VarghaKovacsの方法 で合成した。反応混合物からクロマトグラフ法と, 分別再結晶法との併用によって分離した各幾何異性体は, さらに数回の再結晶によって一定の融点を示した。こうして精製された置換ジメチルスチルベンを, 双極子モーメント測定の試料とした。
  • 五十嵐 真登, 長 成吉, 染野 和雄
    1960 年 81 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    気体電子線回折法によってスチレンの分子構造を定めようとすると強度曲線に対するベンゼン核の寄与が大きすぎて側鎖の構造は正確に決定され難い。したがって Coulson らの理論的解析も実験的背景をともなわないものとなっている。そこで側鎖に散乱能の大きな臭素を入れた。ω-ブロムスチレンについて, 察法により構造決定を行なった。その結果,分子は平面構造をとり,側鎖のビニル基について,C-C:1,48±0.03Å, C=C:1.36±O.03Å, C-Br;1.86±0.03Å, ∠C-C=C:120±2°, ∠C=C-Br:119±2°という値をえた。これらの値は,スチレンの分子構造を推定するのに大いに役立つものと考えられる。
  • 小塚 多吉
    1960 年 81 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報において,液体の表面自由エネルギーと凝集力とは比例すべきものであることを指摘したが,その過程で,理想液体の凝集力を一般の液体へ適用することについて考察した。本報告では,その考察の正しさを支持するため,らせん鎖分子系液体とでも称すべき,パラフィン系炭化水素およびその誘導体の液体について,その凝集力と沸点の関係に同様の考察を行ない,この結果からも予期のように,これらの一群の液体の20℃から沸点までの温度差は,20℃におけるこれらの凝集力に比例する,という関係のあることを認めたので報告する。なお本報告においては,パラフィン系炭化水素およびその誘導体分子の炭素原子のらせん配列を図示して,これらの物質が,分子の炭素数の奇数と偶数とによって,その物理化学的性質を交互に異にする現象は,その原因が,分子のらせん鎖構造にあることを指摘するとともに,また,らせん構造をもつ尿素アダクツの結晶は,その内部に包接せられているこれらのらせん鎖分子のらせん性に誘引せられて生ずるべきものであることを推定した。
  • 広田 鋼蔵, 三道 喜一郎, 畑田 元義
    1960 年 81 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレングリコールにγ-線照射を行なうと, (a)水素, (b)メタン, (c)-酸化炭素, (d)エタン, (e)アセトアルデヒド, (f)メタノール, (g)エタノール, (h)酢酸, (i)酢酸ヱチル, (j)アセトアルデヒドエチレンアセタール,(k)グリコールモノアセテートおよび(l)水が生成する。これら生成物のG値は,吸収エネルギーとともに,(f)・(e)・(h)は不変, (b)・(d)・(g)・(i)は増加,(a)・(j)・(l)は減少する。また1.5×1021ev/ml のエネルギー吸収の際の,それらのG値はつぎのとおりである。G(a)=1.9, G(b)=9.7×10-2, G(c)=1.5×10-2, G(d)=5.8×10-2, G(e)=4.0, G(f)=1.7, G(g)=2.5, G(h)=1.1, G(i)=5.7, G(j)=48, G(l)=83 これら生成物のうち, (a)・(b)・(e)・(f)は1次生成物で, 他は2次生成物と推論される。
  • 高橋 サク
    1960 年 81 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    40M cycle の高周波羅光放電によって低圧で水蒸気を分解して過酸化水素の生成を行った。その結果反応管内で進む HO+HO→H202・HO+H→H2Oの二つの反応のうち後者はほとんど進行していないことが実験的に判明し水素,実験的にえた過酸化の最高収率は約80%で, 60%内外が最高値とされている理論値より高い値がえられた。
  • 高橋 サク
    1960 年 81 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    周波数4.O M cycleの高周波電流による無極躍光放電により水蒸気を分解し過酸化水素を生成した。反応は流通法で反応ガス圧は 1.OmmHgである。このとき高濃度の過酸化水素をつくるためには反応ガスを比較的長時間放電帯内に置くことが必要であり,また放電管そのものを液体空気で冷却すればきわめて高濃度の過酸化水素 (95%) が比較的多量にえられる目安が基礎的実測 (流速 1.5gH20・hr-1, 反応管内の滞在時間 .08×10-2 分,収率 48%)でわかった。
  • 望月 隆仁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) の子午線反射 (020) に注目して, PVA繊維の延伸機構をX線的に研究した, 延伸温度と延伸率に無関係に (020) の回折角は一定であり, その回折角から PVA 結晶の繊維週期は 2.533Åであると計算される。一方, 低圧法ポリエチレンの繊維週期は 2.541Åと求められた。(020) 反射の半径方向の半価幅は延伸率の増大とともに減少し, また延伸温度が高いほど小さい。PVA 繊維で求められた (020) の半価幅は, 最小の値でも, ポリエチレンやラミーの子午線反射の半価幅よりも明らかに大きい。また PVA の(020) の反射強度はポリエチレンの子午線反射の強度にくらべていちじるしぐ小さい。両者の強度比からみかけの温度因子の差を計算し, 約 4Å2を得た。これらのことから繊維軸方向では, PVA の結晶はポリエチレンの結晶にくらべて乱れの多い構造であることが推定された。そのほか (020) 反射の方位方向の強度分布から微結晶の平行性を求める方法を示した。
  • 望月 隆仁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    広角度回折用X線デフラクトメーターによって, 十分精度の良い,再現性に富んだX線小角散乱の測定が行なえることを確かめ, 延伸温度および延伸率のいろいろ異なったポリビニルアルコール (PVA) 繊維のX線小角散乱を測定した。PVA 繊維は繊維軸方向に鋭い小角干渉のピークを示すが, 赤道線上では散乱角の増大とともに単調に減衰する強度分布を示す。いろいろの方位方向の散乱強度を測定して子午線干渉であることを確かめた。子午線上の小角干渉の強度は約 100% の延伸まで増大するが, それ以上の延伸では低下する。干渉ピークの位置は延伸条件によって変化し, ピークの中央から計算した繊維軸方向の大週期は 145Å と 226Å の間にある。一般に延伸率が大きいほど, また延伸温度が高いほど大きい大週期が見られる。前報に示した (020) の半価幅から微結晶の縦の長さを計算して, これと大週期の値を比較し, また比重との関係を調べた。これらの結果から PVA の結晶領域および非晶領域の構造は試料の延伸温度と延伸率によってそれぞれ異なることが推定された。
  • 坂下 潔
    1960 年 81 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3-クロルシクロヘキセン-(1) および 3-ブロムシクロヘキセン-(1) について液体のラマンスペクトル, 気体, 液体および溶液の赤外線吸収スペクトルを測定し, これらの分子の反転異性について考察を行った。その結果両分子ともに, その反転異性体である a, e 両構造が, 気体, 液体, 溶液のいずれにおいても共存していることが明らかになった。液体における安定形はいずれも a 構造で, 両構造のポテンシァルエネルギー差はクロル誘導体が 0.64 kcal/mol, ブロム誘導体が 0.70 kcal/molである。クロル誘導体ついては溶液におけるエネルギー差をも測定した。気体における両構造の存在比は液体におけるそれに近い。
  • 宮本 弘
    1960 年 81 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素水溶液における臭素酸銀の溶解度を15°20°25°および30℃において測定した。溶液の尿素濃度は 0~39.143% の 5種で,それらの誘電率は 76.75~99.34 の範囲であった。ついで,難溶塩の溶解度と溶媒の誘電率との関係を示す既報の理論式を中心に,測定結果を考察した。その結果,溶解度の対数と溶媒の誘電率の間に,尿素の全濃度範囲にわたり,ほぼ比例関係の成立するのを知った。また理論式を用いて算出した溶媒和半径は 5.5~7.6Å あった。
  • 山本 隆雄
    1960 年 81 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    線状高分子電解質において, ある電離基の電離は両隣の基の電離によって影響を受けるものと仮定し, 解離度および中和現象に関する理論式を導いた。電離が相互に妨害的に働く場合には二塩基酸または二酸塩基類似の挙動を示す。
  • 杉原 健
    1960 年 81 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鳥取県三朝温泉の主要成分である Cl-, HCO3-, SO42- と pH ならびに泉温の変化を測定した結果, 個々の源泉では, 1) ラドン含量と Cl- 濃度とがほぼ比例する源泉と反比例する源泉, 2) ラドン含量の対数と pH とがほぼ反比例する源泉がある。また三朝温泉全体から見ると, 3) ラドン含量の対数とpH との間には負の相関があり, 4) Cl- 濃度と泉温との間には正の相関があって三朝群と山田群の各温泉群で, それらの間の勾配が異なる。5) Cl- 濃度と SO42- 濃度とは, 正の相関があり, 同一の供給源に由来するものが多いと考えられる。6) ラドン含量の対数値と, HCO3- 濃度との間には負の相関がある。 またHCO3-/Cl- との等量曲線を描くと, その値が小さい範囲は温泉の中心部と思われる地域にあり, 周辺部になるにつれて増加する傾向にあることが明らかに認められ, HCO3- は Cl- と供給のされ方が異なることが知られる。さらに, pHとHCO3-/Cl- との間には正の相関があり, 周辺になるにつれて pH がアルカリ性に向う傾向がある。
  • 小川 ミヤコ, 新村 陽一, 槌田 竜太郎
    1960 年 81 巻 1 号 p. 72-74
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種の新錯塩[CoIII (NH3)4(β-alan)] SO4, [CoIII en2 (β-alan)] Cl2・2H20 および [CoIII en (β-alan)2]ClO4 を合成した。これら錯塩においては β-アラニンのイオンが二座配位子としてコバルト (III) に配位し, 6員キレート環を形成している。また, これら錯塩の可視紫外吸収スペクトルを測定し, 対応する α-アミノ酸錯塩のそれと比較考察した。[Co en (β-alan)2] ClO4 は, 直接配位している原子について考えると [CoN402] 型に属するが第I吸収帯が分裂していることからこの錯イオンの構造は酸素原子に関してトランス型であると推定される。
  • 森本 哲雄
    1960 年 81 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸バリウムの沈降容積に対する混合電解質の影響を検討した。その結果混合塩の影響がそのいずれか一方の単独塩の影響とあまり変わらない場合もあるが,硝酸バリウム-クエン酸ナトリウムおよび硫酸カリウムの混合溶液においてはいずれもほぼ 0.002N の比較的低濃度において沈降容積の極小値が現れることを知った。この極小値はおのおのの単独塩の場合には現れなかったか,または高濃度において見られるものであった。これら二つの混合溶液中における沈降容積は同じ溶液中における硫酸バリウムのζポテンシアルの測定値とみごとな対応を示した。
  • 杉原 健
    1960 年 81 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    温泉水中の微量の銀のて定量法として, 銀の共沈剤にヒ素を用い,分離剤として, 陰イオン交換樹皮を使用して行なったもので, 銀を含む溶液を 0.1-0.2N の酸牲にして, ヒ素を添加し, 硫化水素を通じて銀を硫化物としてヒ素といつしよに共沈させる。沈殿を硝酸と塩酸の混合溶液に溶解したのち, 蒸発乾固をくり返して塩化物に変え 0.5N 塩酸酸性で, 陰イオン交換樹脂アンバーライト IRA-410 に通し, 銀を樹脂に吸着させる。樹脂の粒子の大きさは, 80-150 メッシュで, 直径 1cm, 長さ 15cm のカラムに 5g をつめて使用した。 流速は 0.7-1.0cc/min であった。 銀の吸着後 10N 塩酸溶液で溶出し, 溶出液の蒸発乾固をくり返して硝酸塩に変え, O.2N 硝酸酸性にて 5% EDTA の二ナトリウム塩溶液 1.0cc を加えてから, ジチゾン四塩化炭素溶液で銀の滴定を行なった。その結果, 鉛, 銅, ビスマス, 金, パラジウム, 水銀等の妨害元素の影響は除去され, 0-20γ の銀に対して平均誤差 O.85γ で滴定可能であった。
  • 後藤 秀弘, 池田 重良, 須藤 恵美子
    1960 年 81 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炎光分光分析法でランタンの定量を行なった。ランタンは酸水素炎または酸素アセチレン炎によって励起され, 帯スペクトルをあらわすが, この帯頭の波長のうち輝度の強い 560.5 および 442.2mμ の波長を使用し, ランタンの定量を試みた。この場合の測定条件, すなわちガス圧および酸の濃度等を検討し, 水素圧は 2lb/in2, 酸素圧 14~18lb/in2 で行なうときもっともよく, 硫酸は 0.003~6N, 塩酸は 0.7~2N, 過塩素酸は 0.005~0.15N の範囲がよく, 他のいずれの酸よりも過塩素酸の場合は非常に輝度が増大する。また鉄鋼中のランタンの定量のさい問題となるセリウムはランタンの約3倍量存在しても妨害とならないことを確かめ, これを鉄鋼中のランタンの定量に応用し満足な結果を得た。
  • 北川 豊吉
    1960 年 81 巻 1 号 p. 83-85
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    錯形成剤してトリリン酸ナトリウム (TPA) を用い, 過マンガン酸カリウムでマンガン酸化滴定する方法ついて検討した。終点指示には白金回転電極を用いる定電位電流滴定法を用いた。+0.35V(vs.SCE), +0.75V(vs.SCE) を設定電位とし, TPA 2g および Triton X-100 数的を加え, pH 6.5-7.0 で滴定を行った結果, 1.6-10mg のマンガンを相対誤差 0.8% 以内で定量できた。本法により数mgのマンガンを迅速に, かつ精度よく滴定することができる。なおコバルト, ニッケル, 鉄, クロムイオンの影響についても検討した。
  • 藤田 悦男
    1960 年 81 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリウムの定量分析法として, トリウム-アリザリンレッド-S の赤色水溶液錯塩を内部指示薬とし, 黄血塩標準溶液を用いる沈殿滴定法を検討した。イオン交換樹脂を用いて精製したトリウムの硝酸塩溶液を試料とした。この試料を100ml のパイレックスフラスコに採取し, pH を約 2.0 に調節の上, アリザリンレッド-S の飽和溶液を 1 滴加えて赤色錯塩を生成させ, ついで全体を 50ml になるように蒸留水を加えたのち, 0.05mol/l 黄血塩標準溶液を用いて滴定して, フェロシアン化トリウムの白色沈殿を生成させ, 赤色錯塩の脱色により黄色となる点を終点とした。本法により pH 2.4~1.6, 指示薬添加量 0.05~0.1ml, 液温 10°~30℃ の滴定条件で 154.8~7.74mg Th4+/50ml のトリウムを定量することができる。黄血塩溶液およびトリウム塩溶液と酸化還元および沈殿生成反応をなす共存イオンは妨害となる。
  • 石橋 雅義, 藤永 太一郎, 永井 外代士, 角本 進
    1960 年 81 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種支持電解質における銅, 鉛, カドミウムおよびビスマスイオンのクロノポテンシオメトリー的挙動について検討し, 四分波電位, せん移時間定数, 還元電極反応に関与する電子数を測定した。これらの定数をそれぞれポーラログラフ法における半波電位および拡散電流定数と比較し, 概して良好な対応をうることができたが, 通常ポーラログラフ法では 0.01% のゼラチンを共存させるため, ゼラチンが電極反応にいちじるしく関与するような場合の拡散電流定数は, ゼラチンを加えないクロノポテンシオメトリーでのせん移時間定数に対して良い対応を示さなかった。またクロノポテンシオグラムには, ポーラログラムと異なり極大現象はないが, 1N 過塩素酸,硫酸, 硝酸中における銅イオンの場合, O.OO1% ポリアクリルアミドの共存により波形が改善されることを見いだした。
  • 永井 外代士
    1960 年 81 巻 1 号 p. 93-94
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種支持電解質における銅, 鉛, カドミウムおよびビスマスイオンのクロノポテンシオグラムにおよぼす 0.001% ポリアクリルアミド (PAA) またはゼラチンの影響について検討した。それらの影響をつぎの三つの場合に分類することができた。(1)塩化カリウム, 塩酸, 塩化アンモニウム・アンモニアまたは水酸化ナトリウム支持電解質中の銅, 鉛, カドミウムおよびビスマスイオンのように, これらの界面活性剤の共存によって, そのクロノポテンシオグラムになんら異常現象がみとめられない場合。(2)過塩素酸, 硫酸,硝酸支持電解質中の銅およびカドミウムイオンおよび 0.1mol EDTA 支持電解質中のビスマスイオンのように, 0.001% ゼラチンの共存によってクロノポテンシオグラムにいちじるしい異常現象がみとめられる場合。(3) 1N 硝酸中の銅イオンのように O.OO1% PAA の共存によって, クロノポテンシオグラムに良好な影響のみとめられる場合。
  • 岩瀬 秋雄
    1960 年 81 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イッテルビウム (III) イオンのポーラログラフ的行動について検討した。ゼラチンを含まない塩化リチウム支持塩溶液中で Yb3+→Yb2+ (E1/2=-1.448±O.002V vs. SCE) および Yb2+ → Yb0 (E1/2= -2.046±O.O02V vs.SCE, pH 3.4) の還元にもとづく 2 段波を与えるが, 第 2 波は極大波をともなう。この極大電流はイッテルビウムおよびゼラチン濃度に依存し, [Yb3+] > 10-4 mel/lであらわれ, その濃度の増加にしたがって増大する。またゼラチンの添加によっても増大しゼラチンの濃度と極大電流の関係は Langmuir による等温吸着式にしたがう曲線を示すことを認めた。拡散電流定数はそれぞれ 1.52 ± 0.04(0.1mol/l シウ化テトラエチルアンモニウム, pH 4.5~6.0), 3.04 ± O.04 (0.05 mol/l 塩化リチウム, pH 3.4 ± 0.1) を得た (25°±0.1℃)。さらに第 1 波を希土混合物 (サマリウム, ネオジム, ランタン) 中のイッテルビウムの定量に用いるための基礎的実験を行なった。
  • 尾崎 徳郎, 中山 隆男
    1960 年 81 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    側面に白金線電極をそなえた電解ソウ中において, 滑車型木製円板 (パラフィン塗布) を水平に定速度 (600~1200rpm) で回転し溶液を定常的に流動させることにより1種の新らしい対流電極を得た。この電極を用いてヨウ素イオン(4~12×10-5 mol/l) およびカドミウムイオン (1~10×10-5 mol/l)を含む 0.1N 硝酸カリウムおよび塩化カリウム溶液について,いろいろの条件においてそれぞれヨウ素の酸化波およびカドミウムの還元波を検討した。加電圧速度および温度の変化は影響が少なく,濃度および円板回転数と限界電流値とはそれぞれ直線関係にあり, 適当な濃度範囲内では 2% 以下の平均偏差で良好な再現性のあることを知った。またヨウ素とカドミウムにおける「感度」を比較した結果, 同一回転数においては両者はよく一致し, 対流律速であることがわかった。カドミウムの場合, 酸素除去剤として加える亜硫酸ナトリウムの量を検討し最適条件を求めた。
  • 中川 元吉
    1960 年 81 巻 1 号 p. 102-104
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アンチモン,ヒ素(III),(V)が共存する場合の銅の電解分析法に,錯形成剤としてジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を添加した電解液を用いる方法について検討した。ききに報告したビスマスの場合と異なり,アンチモン,ヒ素(III)のDTPAキレート化合物は安定度が小さいためにDTPAを単独に加えた電解液では,アンチモン,ヒ素(III)と共存する銅の定量にあまりよい結果が得られなかったが,酒石酸ナトリウム-DTPA溶液を電解液として用いることによって銅の電解分析に対するアンチモン,ヒ素(III)の妨害を除去することができた。ヒ素(V)についてはアンチモン,ヒ素(III)の場合と異なりDTPA電解液を用いt場合でも,陰極電位-0.60V(SCE)で銅を電着させて定量することができf。さらにビスマス・アンチモン・ヒ素が共存する場合の銅の電解分析に酒石酸ナトリウム-DTPA溶液を電解液として用いる方法について検討し,電解液のPH4.0~5.0で,陰極電位を-0.4~-O.45V(SCE)にたもって銅を電着すれば,他の金属は銅と共析出せず好結果が得られた。
  • 中井 敏夫, 矢島 聖使, 岡田 実, 柴 是行, 茂木 照十三
    1960 年 81 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種電極材料用および原子炉材料用黒鉛中のバナジウムとアルミニウムの同時定量法を確立した。JRR-1原子炉の 3×1011n/cm2/secの中性子束で照射して試料中に生じた3.76min52Vの1.44MeVのγ線と2.27min 28A1の1.78MeVのγ線をγ スペクトロメーターによって計数し,両元素とも10-1ppmまで定量することができた。
  • 中井 敏夫, 矢島 聖使, 岡田 実, 柴 是行, 茂木 照十三
    1960 年 81 巻 1 号 p. 107-109
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオウ中およびイオウ化合物中の微量のセレンに対する迅速定量法として JRR-1 原子炉による中性子放射化分析法の研究をおこない良好な結果を得た。すなわち3×1011n/cm2/secの中性子束を試料に 20 秒間照射し,生じた 17.5sec77mSe の O.162MeV のγ線を 256 チャネルγ線スペクトロメーターによって観測し,約 10-1ppm までのセレンを定量した。
  • 河合 和三郎, 堤 繁
    1960 年 81 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルキル金属は数多く知られているが, アルケニル金属は比較的その例が少ない。本報は二臭化アリルアルミニウムとアリルリチウムの合成について報告し,前者は非極性溶媒(n-ヘプタン)中でスチレンをきわめてすみやかに重合させることを知った。
  • 新宮 春男, 岡本 邦男
    1960 年 81 巻 1 号 p. 111-121
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第3級ブチルフェニルエーテルは同時に生成する塩化水素と反応して第3級塩化ブチルとフェノールとに分解するため,少量の第3級ブチルフェノールのみを生ずることを明らかにした。この現象を速度論的に解析して,これらフェノール溶媒中の反応が2段反応機構による典型的な solvo1ytic reaction であり, 第1段で生成したイオン対中間体が第2段でナトリウムフェノラートならびにフェノール分子と反応して生成物を与える反応であること, また第1段反応のイオン対中間体生成速度はフェノラート濃度の大なる場合の1次反応速度定数の最大極限値として実測されることを示した。その他,塩化テトラメチルアンモニウムの共存による反応抑制効果を認めこれがイオン対不安定中間体と塩素材ンとの交換反応によって出発物質第3級塩化ブチルが逆生する特殊な共通イオン効果として解釈されること, またレゾルシン添加による反応促進はこの分子がフェノール分子よりも第1段反応をよりつよく促進することに基づくこと, また求核性がフェノラートイオンより弱いイオン塩基や各種アニリン核置換体はフェノール溶媒中ではフェノラートイオンを生成することによって第3級ブチルフェニルエーテルを反応生成物として与えることをそれぞれ明らかにした。さらにこの型の反応は第3級塩化ブチルのみでなく,ハロゲン化アラルキルにも認められることを速度論的に示した。
  • 中林 利平
    1960 年 81 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    β-(1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-ナフチル)プロピオン酸を水素化ホウ素ナトリウムで還元して,表題の立体異性体(IVとV)を得た。異性体の転位, 脱水反応, および IV, V の水素化アルミニウムリチウム還元生成物である 3-(1-オキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-ナフチル) プロパノール-(1) の2種の異性体(XIとXII) の脱水反応の難易から, IVがトランス, Vがシスラクトンであると決定した。
  • 岡本 浩一
    1960 年 81 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポーラログラフ的に新規の化合物である三重結合を有する有機水銀化合物 13種について, 農薬効果とポーラログラフィーとの関連性を見いだしうるか否かを最終目的として, 基礎的デ一タを求めた。使用した溶媒は, (C2H5)4N+ を支持イオンとするジオキサン混合緩衝溶液, および非緩衝溶液である。検討した化合物は, いずれも C-Hg 結合の切断による第1波, および -C≡C-結合への水素添加を基とした第2波を示し, 前者は -1.1~-1.6V vs. SCEに, 後者は -2.0~-2.5V vs. SCEに現われる。これらの還元波はすべて不可逆であるが拡散電流によるものであることがわかった。また電極反応機構の概要について若干の考察を行なった。
  • 小倉 勲
    1960 年 81 巻 1 号 p. 129-130
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ロンギフ -1,2- ジオンの過酸化水素酸化によって得られる α- ロンギホール酸をジメチル硫酸でエステル化するとモノメチル -α-_ロンギホーレート(mp63°~64℃)を,さらにこれをグリニャール反応するとmp156°~157℃のモノ酸を生成した。モノ酸をロンギホーレンのクロム酸酸化と同条件で酸化すると,多量の未変化物と淡黄色樹脂状酸の少量を得た。樹脂状酸は結晶析出が困難であったが, p-プロムフェナシルブミドおよび 2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応して結晶性誘導体を生じ, ケト酸の生成していることを知った。メチルロンギホーレートのグリニャール分解においても樹脂状酸を生ずるが, 同様に処理してメチル -α- ロンギホーレートとまったく同一のケト酸の生成を認めた。
  • 脇 健
    1960 年 81 巻 1 号 p. 131-133
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水素を脱着したラネーニッケル上に, 1,8- シネオールを通すと, 200℃ からシネオールの変化が始まり, 270℃ではシネオールの 91.5% が変化し, ジペンデン(主生成物), p-シメン, α-テルピネン, テルピノレンおよび α-テルピノオールを生じた。また350℃ では p-シメン(主生成物), ジペンテン, α-テルピネン, テルピノレンおよび p-メンタンに変化し, 未変化シネオールは残存しなかった。水素を脱着したラネーニッケルは脱水,異性化および脱水素の反応を促進するが, 高温 (350℃) ではさらに不均化反応をも促進するようである。
  • 浜島 求女
    1960 年 81 巻 1 号 p. 134-140
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    γ-線線源にコバルト 60 約 300キュリーを使って, 真空下における重合反応を 9° ~30℃ で行なった。(i)スチレンのみの場合は重合温度が高い方が高分子量の重合物が得られることを確かめた。29°±1℃における 100eV あたりのエネルギー吸収による単量体の消失分子数は 470(すなわち5kca1/mo1), また 2°土2℃ における重合の活性化ヱネルギーの算出値は 5.1kca1/mol となった。(ii) スチレンに対して 0.1mo1/l の濃度に約70種の添加物を入れて重合させた場合, このような希薄な濃度でも重合速度や重合物の分子量にいちじるしい影響を与える。促進効率 RE(=RP×RM, RP, RMは純スチレンと添加物の存在する場合との重合速度の比および重合物の平均分子量の比) の値は同一系統の添加物内では反応温度に無関係な一定の値を示す。 REの大きな添加物から順にならべるとハロゲン化合物>オキシ化合物≧ 酸, 酸無水物>ケトン>エーテル>エステル≧ 炭化水素となった。
  • 国近 三吾, 榊原 保正
    1960 年 81 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムの合成を最終目的とし, まず, 本報では 1,4-ブタンジオール (BD) あるいはテトラヒドロフラン (THF) から塩化水素(ガス)によってテトラメチレンクロルヒドリン (TMCH)を, ついで TMCHからテトラメチレンクロルブロミド (TMCB)を合成する場合の反応条件について検討を行なった。BDから TMCHを合成するときの最適温度は70°~80℃, そのときの収率は74~79%であり, THFを原料とするときはそれぞれ 60°~70℃, 77~80%であった。ほかのグリコールからクロルヒドリンを生成する場合とくらべて, BDは反応性において大きな相違を示した。また, BD, THFのいずれから出発しても, この反応では終局においては平衡:〓 の成立が推察され, この平衡関係にもとづいて考察すると実験結果がよく説明される。TMCBは TMCH, あるいは THF に塩化水素を反応させて得たままの粗製 TMCHを臭素化剤で処理して得た。後者を原料とする場合, 上記の平衡の考えにもとづいて, 適当な条件を選ぷと, その収率は THFに対し 87% (三臭化リンを使用したとき;臭素とリンを用いると 82%)であった。
  • 国近 三吾, 榊原 保正
    1960 年 81 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムの合成を最終目的とし, 前報にひきつづきつぎの反応径路にしたがって, テトラメチレンクブルブロミド (I) から δ-シアノ吉草酸エチル (IV) までの合成を行ない, 各段階の反応条件を検討した。テトラメチレンクロルブロミド (I)→δ→クロルバレロニトリル(II)→δ-クロル吉草酸エチル(III)→δ-シアノ吉草酸エチル(IV)。 IIの合成;Iを含水エタノル中, 約 60℃ でシアン化カリウムで処理すると, 反応率 92~99%, 収率 83~87% で II が得られた。III の合成; IIを塩化水素を溶解した無水エタノールと還流下で加熱すると, 最高収率 92% で III を与えた。また, この反応の化学量論的な関係を明らかにし, 反応径路についてもいくらかの知見を得た。IVの合成; IIIをシアン化カリウムで処理して得た。溶剤としてジメチルホルムアミドが最適であり, その還流下で III を滴下して反応させると, 収率は 92~95% であった。
  • 国近 三吾, 榊原 保正
    1960 年 81 巻 1 号 p. 150-154
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    δ-シアノ吉草酸エチル(I) から ε-アミノカオウロン酸エチル(II)を経て, ε-カプロラクタム(III) を合成する反応条件を研究し, 在来法にくらべて操作が簡便で, しかも好収率で得られる方法を案出した。一般には,還元触媒の存在下でオートクレーブを用い I を II へ還元し, そのままの状態でさらに温度を高めて (20°~230℃) 環化反応を行ない III をうる方法と, 還元触媒を除いて環化を行なう方法とがあるが, 後者の方法がよい結果を与えた。また, エチレングリコール (EG) はいちじるしく環化を促進し, 約 110℃でさえ環化が可能であり, EGを含む溶剤を使うと, 前者の方法でも III の収率は 82~86% であった。しかし上の 2 方法では, II の分子間アミノリシスを抑制するために, 希薄溶液を用いねばならないので, 大型のオートクレーブを使うか, あるいは少量ずつにわけて実験せねばならない不便があるが, II (粗製物)を加熱 EG 中に滴下する方法を採用することによつて, 環化反応にオートクレーブを使う必要もなく, 一時に多量の試料を環化することができ, しかも III の収率は 91% に向上することを見いだした。
  • 川崎 一郎
    1960 年 81 巻 1 号 p. 154-156
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    川骨アルカロイド,デスオキシヌファリジンに小竹らは分解反応の結果からその化学構造として 1,7-ジメチル-4-(3-フリル)-キノリジジンなることを報告したが, 著者はこの構造式を合成的に確かめるため, まずα-ピコリンを原料として数段階を経てデスオキシヌファリジンよりメチル基の1個少ない 4-(3-フリル)-1-メチル-キノリジジンを合成することができた。合成物の赤外線吸収スペクトルあるいは諸性質がデスオキシヌファリジンと似ていることから基本骨核構造を等しくするものと思われる。
  • 川崎 一郎
    1960 年 81 巻 1 号 p. 156-158
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    デスオキシヌファリジンそのものを合成するため前報に述べたα-ピコリンからデスメチルデスオキシヌファリジンの合成法を 2,5- ルチジンを原料として行なった。すなわちルチジンのジメチロール化, 無水酢酸による脱水アセチル化, マロン酸エチルとの縮合, ピリジン核と二重結合の還元後加水分解, エステル化後塩化フロイルによるアシル化, ソーダ石灰との乾留による閉環脱炭酸,最後に接触還元の過程を経て dl-ムデスオキシヌファリジンまたはその立体異牲体を合成することができた。合成物の赤外線吸収スペクトルは天然物とほとんど一致した。
  • 横山 正明
    1960 年 81 巻 1 号 p. 158-166
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化トリホスホニトリルとメルカプタン類から, ヘキサチオアルキルシクロトリホスホニトリルの合成を試み つぎの 3 方法, すなわち (a) 加熱脱塩化水素縮合, (b) 塩基としてピリジンを用いる脱塩化水素縮合, (c)ナトリウムメルカプチドを用いる脱塩化ナトリウム縮合反応を行なった。(c)法により目的物を得,赤外線スペクトルの結果からも本品が P3N3 環の誘導体であることを推定した。(a)法では全く反応せず, (b)法では目的物は得られず, 別の反応が起きたようにみられた。
  • 横山 正明
    1960 年 81 巻 1 号 p. 161-166
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化トリボスホニトリル (P3N3Cl6,I) とアルコールは, 直接加熱により塩化水素を放って縮合するが, 同時にその塩化水素により副反応が起きて, 生成したエステル (P3N3(OR)6, II) は加水分解を受け, トリホスホニトリル酸 (P3N3(OH)6, III) を生じ, さらに開環分解して, 二, 三のイミドリン酸をへて, 最後にリン酸, アンモニアに分解する。Iとアルコールの直接接加熱縮合反応は, エステル (II) の合成法としては適当でない。この反応において各種の反応中間体を検討することにより, 第2次的な分解反応の機構を推定することができた。
  • 部谷 好昭
    1960 年 81 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カンフェンと同一条件で R-ホモカンフェンに四酢酸鉛を作用させた。 実験試料は分離困難な 2 種の R-ホモカンフェン, すなわち環外に二重結合を有する 4,4-ジメチル-2-メチレン-ビシクロ (1,2,3)-オクタン(II)と環内に二重結合を有する 2,4,4-トリメチル-ビシクロ(1,2,3)-オクテン- (2) (II') の混合物を使用したが前者のみが酸化をうけ後者はほとんど酸化されなかった。主反応成績体として R-ホモカンフェングリコールジアセテートを得, その他に遊離カルボニル体として R-ホモカンフェンが環拡張を行なって生成したと考えられる 7 員環ケトン, ならびに第ニアルコール体のアセテートを得, それぞれの構造を推定した。
  • 湖浜 重実, 福川 貞臣
    1960 年 81 巻 1 号 p. 170-172
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アリルアルコールと各種オルガノクロルシランの反応をナトリウムアルコラートで完結させ, おのおのトリメチルアリルオキシシラン, ジメチルジアリルオキシシラン, メチルトリアリルオキシシラン, フェニルトリアリルオキシシラン, ジフェニルジアリルオキシシラン, フェニルジメチルアリルオキシシラン, p-メチルフェニルジメチルアリルオキシシラン, p-クロルフェニルジメチルアリルオキシシランを合成し, その赤外線吸収スペクトルを記録した。B. P. O. を重合触媒とする単独重合および酢酸ビニルとの 1:1 混合物の共重合はいずれも変化が認められない。その他 二,三 の反応性を検討した。これら 8 種類のアリルオキシシランは文献未知である。
  • 吉野 持
    1960 年 81 巻 1 号 p. 173-174
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    いろいろの分子内錯塩存在下におけるルミノールの化学発光中に過酸化水素の分解にもとづいて発生する酸素ガスの量を測定した。 また, ルミノールと類似構造をもった数種の化合物についてその化学発光能を調べた。 キノリン酸ヒドラジドの銅, ニッケル, コバルト, マンガン, マグネシウム, 亜鉛, カドミウム, バリウム および鉛の金属錯塩を合成した。これらの金属錯塩のあるものはアルカリ溶液に溶解する。
  • 北脇 六郎
    1960 年 81 巻 1 号 p. 175-179
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モノメチルシアナミドの重合物が, これの 3 量体であるトリメチルイソメラミンであることは従来からよくしられている。著者はトリメチルイソメラミンを溶融状態に 2, 3 時間保持すると, トリメチルメラミンに異性化する現象を見いだした。モノメチルシアナミドの重合物は鉱酸で加水分解すればトリメチルイソシアヌル酸とアンモニアに分解するが, 溶融状態に保持した物質を同様に加水分解すればシアヌル酸とメチルアミンに分解する。この結果前者は従来どおりトリメチルイソメラミンであることを再確認し, 後者は異性体であるトリメチルメラミンであることが明らかとなった。したがってトリメチルイソメラミンを溶融状態に保持することにより, トリメチルメラミンに異性化することが証明された。なおトリメチルメラミンは紫外部および赤外部吸収スペクトルによってもこれを確認した。
  • 下村 脩
    1960 年 81 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    約 5kg の良質な乾燥海ホタルから海ホタルルシフェリンの結晶約 70mg をうることができたので, これを用いて吸収スペクトル,酸化および還元による変化, 呈色反応などについて調べ, 加水分解によって構成成分を知り, また分子量測定および元素分析により分子式を求めた。その結果,海ホタルルシフェリンの構造中にはイソロイシン, γ-グアニジノ酪酸およびトリプタミンの骨格を含み, 分子式 C21H28O2N6・2HCl を有することを知った。
  • 下村 脩
    1960 年 81 巻 1 号 p. 182-185
    発行日: 1960/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    海ホタルルシフェリンおよびその講体について前撫でに得られた知見をもとにし, あらたにいくつかの実験を行ないノこれらに考察を加えて, ヒドロルシフェリンの構造をIII, 海ホタルルシフェリンの構造を IXと推定した。
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