整形外科と災害外科
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68 巻, 3 号
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  • 河野 俊介, 北島 将, 江頭 秀一, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 387-390
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    股関節骨切り術後症例に対する人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)は,術後の癒着や骨切りに伴う解剖変化のため,手術手技が難しいとされている.今回,2010年以降に当院で亜脱臼性股関節症に対してTHAを行った2836股を対象とし,骨切り術の有無で2群に分類し,患者背景,手術時間,出血量,周術期合併症数,追加手術数を比較検討した.骨切りあり群は276股で,体重・年齢が有意に低く,術前可動域が有意に減少していた.手術時間・出血量は有意に増加し,合併症を10股に認めた.術中骨折(2股)と深部感染(3股)は骨切りあり群で多かったが,合併症総数は両群間で有意差を認めなかった.追加手術は骨切りあり群が7股で多かった.股関節骨切り術後症例に対するTHAは,手術時間,出血量,術中骨折が増加するが,implantの固定性は問題なく,脱臼や神経障害は増加していなかった.多数回手術となるため,厳重な感染予防も必要である.

  • ~今後24時間以内に手術を行うためには
    村岡 辰彦, 戸田 雅, 岡村 龍, 公文 崇詞, 栗原 典近
    2019 年 68 巻 3 号 p. 391-393
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    大腿骨近位部骨折は受傷後24時間以内に手術を行うことで死亡率を下げると言われている.救命のための早期手術の有用性が証明されたが,それを行うためのハードルは高い.今回大腿骨転子部骨折に絞り,当院での手術時期を後ろ向きに調査した.2016年4月~2017年3月に骨接合術施行した大腿骨転子部骨折86例86肢を対象とし,①手術待機期間,②24時間以内に手術できた割合,③24時間以内に手術できなかった理由について調べた.平均手術待機期間は2.08日,24時間以内に手術できた症例は33例(38.4%)で,22例が当科麻酔での手術であった.24時間以内に手術できなかった理由で最大のものは施設側の問題であった.全身状態が安定している症例に関しては当科麻酔での早期手術を行っているが,受傷後24時間以内に施行できた症例は4割に満たなかった.大腿骨近位部骨折治療を整形外科単科で行うには限界があるため,今後病院全体に働きかける必要がある.

  • 太田 真悟, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司, 杉原 祐介, 野中 俊宏, 朝永 育
    2019 年 68 巻 3 号 p. 394-399
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】当院では麻酔科の協力の下,抗凝固薬(ACD),抗血小板薬(APD)内服中の大腿骨近位部骨折患者に対しても可能な限り腰椎麻酔下に早期手術を行っている.過去に我々はACD,APD内服中の大腿骨近位部骨折手術105例の検討を行い早期手術の有効性を報告した5).今回さらに症例を追加し報告する.【方法】2012年9月から2017年12月までに本院に本骨折で受傷した763例中,受傷後48時間以内に手術を行えたのは585例であった.そのうちACD,APD内服有無の差を調べた.ACD,APD内服している患者のうち8例に手術後48時間以内に腰椎MRIを行い麻酔の影響を調べた.【結果】ACD,APD内服患者で予後に直結する有害事象はなかった.術後腰椎MRIが撮影できた症例では血種形成は見られなかった.

  • 堀川 朝広, 久保田 健治, 原 慎太郎, 坂本 圭, 河上 純輝
    2019 年 68 巻 3 号 p. 400-403
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】内側楔状開大式高位脛骨骨切り術は術後に膝蓋大腿関節の変性が発生するとの報告が散見される.我々は膝蓋大腿関節変性を起こさない手技として近位骨片に脛骨粗面を連続させ骨切りを行う方法(distal tuberosity osteotomy,以下DTO)を施行してきた.【目的】OWDTOの周術期合併症を検討すること.【対象と方法】2008年4月から2018年4月までDTOを施行した85例102膝を対象とし,術中および術後早期の合併症を検討した.また合併症なし群(N群)82膝と粗面不安定性・骨折群(T群)20膝を比較・検討した.【結果】創部の深部感染を2膝(1.9%)に認めた.術中に粗面部に不安定性あり8膝(7.8%),術中の粗面骨折11膝(10.8%),術後粗面骨折1膝(0.98%)であった.両群間の年齢,身長,体重,BMIおよび骨切り部の平均開大幅に有意差はなかった.【考察】粗面部での合併症の原因として,粗面骨切り部の固定性不良,菲薄等の手術手技的問題が考えられた.

  • 伊東 孝浩, 上田 幸輝, 水城 安尋, 内村 大輝, 烏山 和之, 江﨑 克樹, 山田 恵理奈, 萩原 博嗣
    2019 年 68 巻 3 号 p. 404-406
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】Open wedge high tibial osteotomy(以下OWHTO)における深部静脈血栓症(以下DVT)の発生に関する報告は最近増えてきているが,そのほとんどは術後に抗凝固薬を使用しているため,今回術後抗凝固薬を使用しなかったOWHTOにおけるDVTの発生について検討した.【対象と方法】対象は2017年10月~2018年10月まで当院で施行したOWHTO16例とし,DVTの発生率とDVTあり群となし群とで年齢,BMI,Kellgren-Lawrence分類,術前FTA,矯正角度,手術時間,ターニケット駆血時間,術後3~5日目のHb低下量とDダイマー値,トランサミン使用の有無を比較検討した.【結果】DVTは16例中7例(44%)に発生し,全て末梢型であった.また,DVTあり群となし群とではどの項目とも有意差は認めなかった.【考察】本研究の限界として症例数が少ないことが挙げられるが,少なくとも術後抗凝固薬を使用した諸家の報告と比較しDVTの発生率はほとんど変わらなかった.

  • 山家 健作, 椋 大知, 尾﨑 まり, 永島 英樹, 南崎 剛, 遠藤 宏治
    2019 年 68 巻 3 号 p. 407-411
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転移性骨腫瘍の手術成績を報告する.【対象と方法】2006年1月-2018年6月の22例23肢で,男性8例8肢,女性14例15肢,平均年齢64.5歳,平均観察期間540.6日,診療録を調査した.【結果】原発は乳腺9肢,肺5肢,肝3肢,甲状腺2肢,舌,子宮,食道,胃がそれぞれ1肢,病的/切迫骨折:11/12肢,骨接合術/人工関節(骨頭)置換術:15/8肢,術後放射線治療あり12肢,輸血あり13例,術後局所合併症は5肢で生じた.Mirelsスコアは平均10.0点,新片桐スコアは平均4.9点,手術時間は平均135分,出血量は平均353g,術前後の疼痛は改善/不変/悪化:22/1/0肢,術前後のperformance status(PS)は改善/不変/悪化:13/9/1肢,1年生存率は65.3%だった.病的骨折群は新片桐スコア,術前PS,術前疼痛が高く,手術による疼痛の改善を得た.生存率は病的骨折群が予後不良な傾向だった.【考察】手術により痛み,PSの改善が得られるため全身状態が許せば積極的に手術を行うべきである.

  • 福元 哲也, 橋本 伸朗, 前田 智, 中馬 東彦, 松下 任彦, 平井 奉博, 田畑 聖吾, 島田 真樹, 谷村 峻太郎
    2019 年 68 巻 3 号 p. 412-414
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】前方系人工股関節置換術において短外旋筋及び関節包靭帯温存手術がなされるようになってきたが,温存により,手術困難や股関節可動域制限が残存するとの意見がみられる.今回関節可動域に対する短外旋筋の影響を調査したので報告する.【対象及び方法】骨性拘縮も考えられた症例も含めた人工股関節置換術15股に対し股関節周囲靭帯と癒着のある短外旋筋群と小殿筋を剥離のみ行った前後での屈曲,内外旋角度を計測した.また内閉鎖筋の80%未満の萎縮の有無による角度変化も計測した.【結果】剥離前後の可動域は平均でそれぞれ屈曲86.7°から103.6°,内旋4.3°から27°,外旋20.7°から38.7°と全例に改善がみられた.また内閉鎖筋の萎縮がみられた症例でも内旋は17.5°の改善がみられた.【結論】関節拘縮の原因として骨性要素や関節周囲靭帯の拘縮以外に短外旋筋群の可動性が大きく関与していることが示唆された.

  • 浦田 健児, 坂本 哲哉, 木下 浩一, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 415-417
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】骨盤骨折術後,比較的早期に変形性股関節症(Osteoarthritis以下OA)を発症し,人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty以下THA)に至る例が報告されている.骨盤骨折術後にOAを発症する要因及び治療成績について考察する.【対象・方法】2000年1月から2017年7月の間に当院で,骨盤骨折術後にTHAを施行し,1年以上経過観察可能であった5例5股(男性3股,女性2股,平均年齢48.8歳),経過観察期間は1年~17年3ヵ月を対象とし,骨折型,THAまでの期間,JOA score,合併症で評価を行った.【結果】症例は全柱+後方半横骨折が2例,両柱骨折が2例,前柱骨折が1例,THAまでの期間は平均19.4ヵ月,JOA scoreは術前平均40.6から術後平均85.2(p<0.05)と有意に改善を認め,合併症は総腓骨神経麻痺の1例,Cupのルースニングと術後感染の2例で再置換の症例を認めた.【考察】THA後の臨床成績は比較的良好であったが,複雑な骨折型はOA発症及び再置換に至るリスクが高いと考えられた.

  • 前田 昌隆, 川畑 英之, 松田 倫明, 前之園 健太, 富村 奈津子, 恒吉 康弘, 吉野 伸司, 川内 義久
    2019 年 68 巻 3 号 p. 418-420
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    脛骨顆外反骨切り術(TCVO)に対してTriSプレートを用いた症例に対して,術後撮影したCTを用いプレートの設置位置,近位後方スクリュー角度,プレートと脛骨との接触程度を調査して,高位脛骨骨きり術(HTO)群と比較した.プレート設置位置はTCVO群で有意に前方寄りであった.近位後方スクリュー角度は有意差はないもののTCVO群のほうがHTO群よりやや大きい数値を示した.プレートの非接触面積ではTCVO群のほうがHTO群より有意差を持って大きく,Plateがより骨にfitしていない可能性が考えられた.

  • 重田 幸一, 木山 貴彦, 佐伯 和彦, 前山 彰, 鎌田 聡, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 421-423
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】高位脛骨開大骨切り術(OWHTO)施行時,円板状半月(DLM)を有するケースを経験する.当院ではDLMを有する症例全例に対して鏡視下形成術を施行している.【目的】OWHTOにおいてDLMが臨床成績に影響するかを検討する.【対象】当院にて2009年から2014年の間にHTO施行した190膝のうちDLMを有していた20膝中フォロー可能であった13膝を対象とした.【方法】%MAの変化,外側OAの進行の有無,JOAスコア,追加手術の有無,外側軟骨損傷の進行の有無について比較検討した.【結果】%MAは-2.3%から56.3%に改善.JOAスコア60.5から95.3に改善.外側OAの進行した例は1例.外側の軟骨損傷が悪化した症例は大腿骨側で0膝,脛骨側で1膝であった.追加手術を行った症例はなかった.【結語】臨床成績は良好であったが1例のみ外側OAの進行した例があった.文献的考察を加え,報告する.

  • 金岡 丈裕, 山岡 康博, 河野 祥太郎, 池田 裕暁, 片岡 秀雄, 山本 久司, 藤 真太郎, 富永 俊克, 城戸 研二, 田口 敏彦
    2019 年 68 巻 3 号 p. 424-426
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折術後の整復位損失因子を明らかにするため本研究を行った.対象は当院で大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を施行し,髄外型もしくは解剖型を得られた125例129股(男性/女性:10/115,平均年齢:85.6歳).術後転位群(n=25)と非転位群(n=104)に分類し,腸骨大腿靭帯(IFL)と前方骨折線の位置関係,受傷時骨折型,回旋防止implantの使用の有無,術後整復位,TAD,Lag screw刺入方向について比較検討を行った.また,術後転位を認めた症例の術後整復位の内訳を検討した.整復位損失群で回旋防止implantの使用率が有意に低く,IFLより近位の骨折の割合とLag screwが後方から前方へ刺入された割合が高く,Lag screwが前方から後方へ刺入された症例はなかった.また,回旋防止implantを使用し転位した症例は術後整復位が解剖型である割合が有意に多かった.適切な整復位を得た上での回旋防止implantの使用は術後整復位損失を予防でき,Lag screwの刺入方向とIFLと骨折線の位置関係が重要である.

  • 末永 英慈, 住吉 康之, 髙田 真一
    2019 年 68 巻 3 号 p. 427-430
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    大腿骨近位部骨折術後の深部静脈血栓症と下肢静脈血流の変化について検討した.2017年4月より2018年3月における手術症例のうち,深部静脈血栓症の検索,および大腿近位部での静脈血流を計測できた24人48肢(男性3人,女性21人,平均年齢84歳)を対象とした.術前,術後1,2,3週目に,下肢超音波検査により血栓の有無を検索,さらに大腿近位部にて大腿静脈と大伏在静脈の平均血流速度と血流量を計測した.48肢のうち40肢(83%)に血栓を認めた.全長100mm以上の高リスク血栓群15肢,100mm未満の低リスク群33肢の2群に分けると,高リスク血栓群は,術後1週目の大伏在静脈の平均血流速度,2週目の大伏在静脈の平均血流速度および血流量において低リスク群より有意な増加を示した.高リスク血栓は,深部の大腿静脈よりも表在の大伏在静脈において,血流変化を生じやすいと思われた.

  • 松下 優, 横山 良平, 堀田 忠裕
    2019 年 68 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】初診時に原発不明の転移性骨腫瘍患者に対してどのように原発巣を診断すべきかを検討すること.【対象および方法】2014年1月~2018年5月までに紹介された初診時に原発不明であった転移性骨腫瘍患者20例を対象として原発巣の診断方法について検討した.【結果】20例のうち,初診時に既往歴と身体所見より原発巣が推定できたのが4例,腫瘍マーカーと胸部から骨盤までの単純CTで診断できたのは10例,生検が必要だったのは3例,最後まで特定できなかったのは3例であった.原発巣の内訳は肺7例,腎3例,肝2例,前立腺,乳腺,甲状腺,胃,悪性黒色腫が各々1例,原発不明が3例であった.腎癌は病巣の拍動を触れることで,肺癌はCTで検出できることで診断できる傾向が高かった.【結論】病歴,身体所見,腫瘍マーカー,単純CTは比較的簡便で初診時に施行できる有用な方法と考えられた.

  • 椋 大知, 山家 健作, 尾﨑 まり, 永島 英樹
    2019 年 68 巻 3 号 p. 435-437
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当科で肉腫以外の悪性腫瘍と診断された症例の臨床的特徴を検討した.2007年4月~2018年6月の11年間に,当科初診時は診断が未確定で,初診以後に肉腫以外の悪性腫瘍と診断された33症例をretrospectiveに調査した.初診時年齢は24歳~89歳(平均66.0歳),男性19例,女性14例であった.原発組織は肺癌11例,造血器腫瘍8例,前立腺癌5例,大腸癌2例,その他7例であった.初診症状は疼痛23例で多くは疼痛であった.初発部位は体幹が31例で多かった.観察期間は1か月~48か月(平均14か月),予後は腫瘍死8例(肺癌4例,大腸癌2例,膵癌1例,皮膚癌1例)であった.本調査群は高齢者で体幹痛で初発する例が多く,その場合悪性腫瘍の可能性を考える必要がある.速やかに診断後,該当科へ紹介し予後が改善できる可能性がある.

  • 野中 俊宏, 古市 格, 前原 史朋, 朝永 育, 杉原 祐介, 太田 真悟, 小河 賢司, 村田 雅和
    2019 年 68 巻 3 号 p. 438-441
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    人工膝関節全置換術(TKA)後のインプラント周囲骨折のうち,大腿骨顆部骨折が生じた報告は少ない.今回我々はTKA術後3か月以内に同側の大腿骨顆部骨折を起こした4症例を経験したので,この原因や治療法について検討した.骨折の発生原因として,1例は高度外反の関節リウマチ(RA)症例で骨脆弱性が考えられること,また3例ではTKAの大腿骨骨切り後にトライアルインプラントを設置した際にピンで固定する操作手技により不顕性骨折を誘発しやすい状況をつくった可能性が考えられた.治療法は1例に人工膝関節再置換術を行い,3例に保存加療を選択した.最終観察時点で,全例で疼痛なく歩行が可能であったが,2例に可動域制限が残存した.

  • 森戸 伸治, 保利 俊雄, 髙宮 啓彰, 園田 玲子, 保利 喜英
    2019 年 68 巻 3 号 p. 442-446
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【抄録】有痛性分裂膝蓋骨の治療は,スポーツ休止やリハビリを中心とした保存的治療が原則であるが,分離部の骨癒合は必ずしも得られるわけではない.今回,ギブス固定による治療を施行し,全例で骨癒合を得たので報告する.2009年から2017年に当院で保存的治療を行った患者を対象とした.対象は,8症例10膝で男性5例女性3例.初診時年齢は6歳から14歳で平均9.9歳,Saupe分類はⅡ型1例,Ⅲ型9例.経過観察期間は2から10ヵ月間で平均4.2ヵ月間であった.全例でスポーツ活動を中止し大腿から足部のギプス固定を施行し,ギプス固定は1ヵ月から1ヵ月半で平均1.45ヵ月間であった.全例で疼痛軽快し,最終診察時のX線もしくはCT検査で分離部の骨癒合を得た.6歳から14歳という若年者に対するギプス固定は有効である.

  • 山本 俊策, 二之宮 謙一, 合志 光平, 牟田口 滋, 佐々木 大, 浜崎 彩恵
    2019 年 68 巻 3 号 p. 447-448
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    アルカプトン尿症はまれな疾患であり,主な臨床像は尿の黒変,組織黒変(オクロノーシス),脊椎症,関節症(アルカプトン尿症性関節症)である.初期には症状が軽度であるため進行して診断される症例が多く存在する.今回我々は膝関節鏡手術を契機にアルカプトン尿症の診断に至った1例を経験したので報告する.症例は50歳男性 特に誘因なく右膝関節痛が出現し当科受診された.右膝関節の可動域は屈曲120度 伸展0度であった.日本整形外科学会膝関節機能判定基準は55点であった.画像所見:単純X線で右膝関節内側裂隙の狭小化を認めた.高位脛骨骨切術を目的として入院となり,関節鏡を行ったところ,黒色に色素沈着した滑膜組織の増生を認め,関節軟骨も黒色に変色していたため骨切りを中止とした.術後,尿検査でホモゲンチジン酸が陽性であったため,アルカプトン尿症と診断した.

  • 工藤 悠貴, 生田 拓也, 田中 秀明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 449-452
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    抄録:痛風性膝関節炎は母趾中趾節関節に発症することが多く,膝関節で起こることは比較的まれである.今回,我々は痛風性膝関滑膜炎に対して,滑膜切除術を施行した1例を経験したので報告する.30歳男性.2年半バレーボール後に右膝の疼痛,腫脹が出現し,関節穿刺を5回程度施行した.腫脹は改善したが,関節拘縮が残存し,右膝の伸展,可動域制限を認め当院紹介受診した.右膝関節MRIでは,関節内包縁に結節状に滑膜の肥厚を認めた.術前は腫瘍性病変や色素性絨毛結節性滑膜炎などを疑い,手術を施行した.手術所見では白色の関節面が露出し,白色の結晶が付着した滑膜の増殖,ACL付着部に鶏卵大の結晶の塊を認めた.病理診断では尿酸塩として矛盾しない所見であった.以上より,痛風性膝関節炎の診断とした.術後よりROM訓練を施行し,ROM改善傾向である.

  • 吉村 直人, 緒方 宏臣, 山下 武士, 川谷 洋右, 竹村 健一, 橋本 憲蔵, 中西 浩一朗, 米村 憲輔
    2019 年 68 巻 3 号 p. 453-455
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    遅発性脊椎骨端異形成症(Spondyloepiphyseal dysplasia tarda以下,SEDtarda)は脊椎および長管骨の骨端核の遅発性の形成障害で,幼年期以降の低身長および変形性関節症を主症状とする遺伝性疾患である.今回われわれはSEDtardaの患者で膝ロッキング症状を呈し,関節鏡治療を要した1例を経験したため報告する.症例は13歳男性.10歳時より持続する右膝痛を主訴に当院受診となった.既往歴として,当院小児科にてSEDtardaと診断されていた.X線検査にて大腿骨骨端部の低形成を認めた.膝関節MRI検査では大腿骨外顆部の軟骨損傷を疑う所見を認めた.膝関節に対しては関節鏡手術を施行し,外顆荷重部に軟骨から連続する遊離体を認め,摘出した.術後膝関節痛は軽快し,6ヶ月経過後も症状の再発は認めていない.

  • 千々岩 芳朗, 西尾 淳, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 456-461
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    神経鞘腫は被膜を有し,Schwann細胞への分化を示す腫瘍細胞よりなる良性腫瘍である.この中で筋肉内に発生する筋肉内神経鞘腫は非常に稀であり,治療についてもわずかな報告例を認めるのみである.また,一般的な神経鞘腫と比較して微小神経から発生することが多いため,Tinel signのような神経学的所見も乏しく術前診断が難しいとされている.2009年1月から2018年12月までの期間に当院で手術を施行され,筋肉内神経鞘腫と診断された11症例を対象に発生部位・臨床所見・術前造影MRI検査所見・術後神経脱落症状の有無を含む術後合併症について検討したところ,発生部位はやや体幹部に多く,Tinel signは全症例で陰性であった.造影MRI検査ではLow signal margin・Fascicular sign・Target sign・Hyperintense rimを高頻度に認めた.いずれの症例でも神経脱落症状を含む術後合併症は認めなかった.

  • 藤善 卓弥, 佐々木 裕美, 永野 聡, 齋藤 嘉信, 南曲 謙伍, 瀬戸口 啓夫, 谷口 昇
    2019 年 68 巻 3 号 p. 462-465
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
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    【はじめに】褐色脂肪腫は褐色脂肪組織に由来するまれな軟部腫瘍であり,悪性軟部腫瘍,とくに脂肪肉腫との鑑別が問題となる.褐色脂肪腫はFDG-PETで高度集積を来すことが報告されており,脂肪肉腫との鑑別としてFDG-PETが有用であるとされる.【症例】40歳女性,4か月前より背部の腫瘤を自覚.MRI上,僧帽筋下に脂肪成分を含み造影効果を有する80mm大の腫瘤を認めた.FDG-PETにてSUV59.5→70.5と非常に強いFDGの集積を認めたため開放生検を施行し,褐色細胞腫と診断されたため辺縁切除術を施行した.術後2年の現在,再発もなく術後経過良好である.【考察】褐色脂肪腫は一般的にFDGの高度集積を来すことが報告されているが,なかにはFDGの集積が低い症例も報告されている.褐色脂肪に対するFDGの集積は外気温や薬剤による影響を受けやすく,注意が必要と考えられた.

  • 藤井 勇輝, 井原 和彦, 島田 信治, 竹下 都多夫, 佐藤 陽昨, 中川 憲之, 井上 知久, 蛯原 宗大, 吉河 康二
    2019 年 68 巻 3 号 p. 466-469
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【症例】36歳女性.左母指の腫瘤,疼痛を主訴に当院皮膚科受診.直視下生検術施行,病理結果でFlorid Reactive Periostitis(以下FRP)の診断となり当科紹介となった.Xpで軟部陰影の石灰化,MRIでT1低信号,T2高信号の辺縁不明瞭な腫瘤を認めた.腫瘍摘出術を施行した.病理結果は類骨あるいは骨梁が線維芽細胞に富む線維組織を背景に散在し,辺縁部や内部に骨芽細胞が見られた.悪性の所見はなかった.術後2年6か月で再発は認めず,疼痛や痺れの症状も沈静化した.【考察】FRPは画像で骨erosionや骨膜反応を呈する場合があり,悪性も含めて他の腫瘍や腫瘍様病変と誤りやすく,一連の反応性病変を認知しておくことが重要である.

  • 松下 任彦, 橋本 伸朗, 福元 哲也, 前田 智, 中馬 東彦, 平井 奉博, 田畑 聖吾, 島田 真樹, 谷村 峻太郎
    2019 年 68 巻 3 号 p. 470-473
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨梁は海綿骨により形成される構造であり,機能で2種類に分類される.大腿骨近位部で圧迫骨梁は押される力を骨幹部へ伝達し,引っぱり骨梁は伸ばされる力を骨幹部へ伝達する働きをしているが,骨梁自体の3次元走向を直接示した報告は見当たらない.そこで2症例のCTからvolume rendering画像を作成し,主骨梁の走向とその機械的な性質を検討した.その結果,主圧迫骨梁は骨頭上側から転子部の後方内側まで,主引っぱり骨梁は骨頭内側から転子部の前方外側まで存在していることが判り,両骨梁が立体的な位置関係にあって3次元の応力に対応するように走向していると考えられた.また,加齢に伴って骨梁の萎縮が進行するが,骨折が生じやすくなる原因には骨密度の減少だけではなく骨梁も関係していることから骨梁が減少するために応力が逃げにくくなって骨折が生じると思われ,骨強度の減少は柔軟性の減少でもあると考えられた.

  • 國武 真史, 胤末 亮, 井戸川 友樹, 篠原 道雄, 井上 雅文, 白濵 正博, 志波 直人
    2019 年 68 巻 3 号 p. 474-476
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    大腿骨頚部骨折に対するTresLock(以下T群),Prima Hip Screw(以下P群)を用いた骨接合術の治療成績を比較検討した.対象は2016年8月から2018年3月に手術を行ったT群7例,P群16例である.平均手術時間はT群:43.1分,P群:24.9分で統計学的に有意差を認めた(P<0.001).Garden Alignment Index変化量や歩行再獲得率に有意差はなかったが,平均telescoping量はT群で少ない傾向を認めた.術後合併症はP群で大腿骨転子下骨折を2例認めた.2群間で統計学的な差があったのは手術時間のみであったが,T群でtelescoping量が少ない傾向を認めた.TresLockは強固な固定力があり,日本人の大腿骨頚部骨折に対して,有用な内固定材料であると考えられた.

  • 江良 允, 前田 純一郎, 佐藤 十紀子, 朝長 匡, 宮本 俊之
    2019 年 68 巻 3 号 p. 477-479
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    Stryker Gamma3用のナビゲーションシステムであるADAPT systemの有用性を検討した.対象は2017年7月から2018年7月の間に当院で大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を行った73例(男性:11例,女性:62例)(ADAPT使用群(以下A群):46例,非使用群(以下M群):27例)とした.骨折型,執刀医の経験の有無で分けて,Tip Apex distanceが10㎜以上20㎜以下だった割合を比較した.経験のある術者ではA群,M群とも全例でTADは10㎜以上20㎜以下で,ナビゲーションの使用によるメリットはそれほど大きくなかった.経験の少ない術者の場合,TADが10㎜以上20㎜以下だった割合はA群:92.9%,M群:64.3%と,ナビゲーションを使用することでラグスクリューをより安全な位置に挿入することが可能となっていた.Stryker ADAPT systemは経験の少ない術者の教育ツールとして有用であると考えられた.

  • 嵐 智哉, 古江 幸博, 川嶌 眞人, 田村 裕昭, 永芳 郁文, 本山 達男, 佐々木 聡明, 渡邊 祐介, 後藤 剛, 川嶌 眞之
    2019 年 68 巻 3 号 p. 480-482
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    若年者の大腿骨頚部疲労骨折を2例経験したので報告する.〈症例1〉33歳男性,特に誘引なく,起立動作で右股関節痛が出現した.MRIで右大腿骨頚部骨折を認め,手術を施行した.〈症例2〉29歳男性,特に誘引なく,起立動作や階段昇降時に左股関節痛が出現した.MRIで左大腿骨頚部骨折を認め,手術を施行した.両者とも自動車製造業に従事しており,スポーツ習慣はない.現在は両者とも抜釘術を行い,経過良好で就労復帰している.大腿骨頚部疲労骨折は比較的頻度の低い疾患である.骨折型によっては転位や大腿骨頭壊死に至る可能性があるため,十分な注意が必要である.日常診療において,特に誘引のない股関節痛の場合には鑑別疾患の1つとして念頭に置く必要がある.

  • 杉木 暖, 大隈 暁, 久保 壱仁, 畠山 英嗣
    2019 年 68 巻 3 号 p. 483-487
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨頭骨折は比較的まれであり手術アプローチ法など治療方針に苦慮することが多い外傷である.今回,股関節後方脱臼に伴う大腿骨頭骨折を経験したため若干の文献的考察を含め報告する.【症例】(症例1)22歳男性,自動車を運転中に電柱に衝突し受傷.左大腿骨頭骨折(Pipkin分類typeⅡ)を認めたため骨折観血的手術施行.Smith-Peterson Approachで展開し,骨頭骨片をメイラ社製DTJスクリューを用いて固定した.術後3年,骨頭骨片に明らかな壊死像認めず,疼痛なく仕事に復帰している.(症例2)24歳男性,自動車を運転中に停車中のトラックに衝突し受傷.右大腿骨骨頭骨折(Pipkin分類typeⅡ)を認めたため骨折観血的手術施行.Hardinge Approachで展開し,骨頭骨片をタキロン社製スーパーフィクソーブスクリューを用いて固定した.術後1年,骨頭骨片に明らかな壊死像認めず,疼痛なく仕事に復帰している.

  • 岡口 芽衣, 杉 修造, 薄 陽祐, 小澤 慶一
    2019 年 68 巻 3 号 p. 488-491
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨転子下骨折術後,骨癒合不良のためdynamization,偽関節手術の2回の再手術を要した症例を経験したため報告する.【症例】69歳男性.机から転落して左大腿骨転子下骨折(Seinsheimer分類gradeIIb)を受傷した.骨接合術後より超音波骨折治療を導入したが骨癒合が得られず,術後1年1カ月で遠位固定スクリューを抜去しdynamizationを行った.その後7カ月経過をみたが骨癒合なく,偽関節手術を施行した.偽関節部を新鮮化し,自家骨および人工骨移植を行い,プレート固定を行った.【経過】術後4週免荷後,全荷重を許可した.その後,仮骨形成がみられ,術後6カ月のXp・CTで骨癒合の進行を確認した.

  • 田上 裕教, 中野 哲雄, 越智 龍弥, 安岡 寛理, 中原 潤之輔, 平山 雄大, 酒本 高志, 松原 秀太
    2019 年 68 巻 3 号 p. 492-494
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】鎖骨骨幹部骨折は,保存療法で良好な成績が得られるとされてきたが,転位が著明な場合や粉砕骨折で整復位の保持が困難な場合は観血的治療も考慮される.今回,鎖骨骨幹部骨折に対して手術を施行した症例について調査した.【対象】症例は2014年4月から2017年10月における鎖骨骨幹部骨折に対して手術を施行し1年以上経過観察ができた31例(Robinson分類type 2A2 1例,type 2B1 25例,type 2B2 5例),および保存的治療を選択したtype 2B 5例.【結果】手術群はいずれも骨癒合不全や感染,implant折損は認めなかった.type 2B1群と2B2群間において年齢,手術までの待機期間,骨癒合期間,及び術後最終肩関節屈曲可動域に有意差は認めなかった.保存的治療群では偽関節を1例認めた.【考察】鎖骨骨幹部骨折type 2B群については観血的治療を選択すべきである.

  • 副島 悠, 伊藤田 慶, 中村 哲郎, 中尾 侑貴, 手島 鋭, 中山 恵介, 中川 剛, 進 悟史, 岩崎 賢優, 土屋 邦喜
    2019 年 68 巻 3 号 p. 495-498
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【症例】33歳男性,ランニング中の転倒により鎖骨骨幹部骨折を受傷し手術加療が選択された.術中のプレート仮固定操作の際にK-wireを胸腔内に誤って刺入,術後のX線では異常を認めなかったが,翌日のX線で気胸が確認された.呼吸器科にコンサルトし,保存的に経過観察となり,悪化することなく治癒した.【考察】鎖骨の手術は一般的に血管,神経損傷,医原性気胸など様々な合併症があり,部位によってそのリスクは異なる.鎖骨周囲の解剖像を熟知した上で手術に臨む必要がある.また鎖骨骨折は保存治療の良好な成績が報告されており,手術自体を慎重に適応すべきである.ドリリングなどの操作を必要とする手術では鎖骨骨折に限らず,ある一定のリスクを伴うためそのリスクは最小限に抑えるべきである.リスクの軽減に期待してドリルストッパーの使用も一つの手段である.

  • 古閑 丈裕, 安樂 喜久, 堤 康次郎, 安藤 卓, 立石 慶和, 上川 将史, 今村 悠哉, 柴田 悠人
    2019 年 68 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    鎖骨骨幹部骨折に対しミドリードプレートを使用した症例について検討した.対象は2017年10月から2018年10月までに骨接合を施行した8例で,年齢は22歳から76歳(平均52.5歳),性別は男性6例で女性2例,術後平均経過観察期間は8.0カ月であった.骨折型はロビンソン分類でType2A2が1例,Type2B1が5例,Type2B2が2例であった.本プレートは,違和感を低減させるべくロープロファイルであり,引き抜き強度を向上させるべく隣接するスクリューを2度ずつ傾けている.術後の平均肩関節可動域は,屈曲156.9°,外転150°であり,疼痛の訴えはなかった.1例で術後早期に最近位スクリュー部での不全骨折と同部でのバックアウトを認めたが,最終的に骨癒合が得られ,その他の合併症はなく全例で骨癒合が認められた.今後さらに症例数を増やし検討していく予定である.

  • 松原 秀太, 田上 裕教, 中野 哲雄, 越智 龍弥, 安岡 寛理, 中原 潤之輔, 平山 雄大, 酒本 高志
    2019 年 68 巻 3 号 p. 503-505
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】3D-CTで肋骨骨折を確定診断した症例におけるX線像での正診率,および合併症である血気胸のX線像での正診率を後ろ向きに調査すること.【対象と方法】症例は2015年8月~2018年3月までに当院で肋骨骨折と診断され,X線と3D-CTを1週間以内に撮影した42症例である.年齢は22~95歳(平均年齢69.1歳),性別は男性18例,女性24例であった.調査項目を3D-CTで肋骨骨折と診断した症例のX線像での正診率,骨折部位別での正診率,CT撮影にて血気胸と診断した症例のX線像での正診率とした.【結果】肋骨骨折の正診率は23.8%(10/42例)で,骨折部位においては中位前方肋骨骨折の正診率が9.1%(1/11例)と低い傾向にあった.血気胸の正診率は0%(0/6例)と低く,中位肋骨骨折で血気胸の合併が高かった.【まとめ】肋骨骨折,血気胸におけるX線像での正診率は低く,確定診断には3D-CT撮影が必要である.

  • 細山 嗣晃, 桐谷 力, 松本 英彦, 東 努
    2019 年 68 巻 3 号 p. 506-511
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    肩峰骨折は骨折部に転位や不安定性がない例は保存療法となるが,大きな転位やsuperior shoulder suspensory complex(SSSC)の不安定性がある場合には手術療法の適応となる.手術療法は8字鋼線締結法が選択されることが多く,近年はプレート固定の有効性も示されている.当科では2014年3月以降,肩峰骨折7例を経験した.小川分類ではTypeⅠが5例,TypeⅡが2例であった.肩甲帯部重複損傷を5例で認めた.固定法として8字鋼線締結法が6例,中空スクリューが1例であった.8字鋼線締結法では全例骨癒合が得られ,中空スクリューで固定を行った症例は経過観察中に偽関節となった為,8字鋼線締結法での再固定と骨移植を行い骨癒合が得られた.8字鋼線締結法は良好な術後成績が得られ,有用な方法であった.

  • 中村 厚彦, 尾上 英俊, 岩本 良太, 山﨑 裕太郎, 橋野 悠也, 黒木 文裕, 白井 隆之, 萩原 秀祐, 秀島 義章
    2019 年 68 巻 3 号 p. 512-515
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    高齢者の上腕骨遠位端骨折に対して内外側のアナトミカルロッキングプレート固定が行われることが多いが,骨折線が遠位骨幹端に及ぶ場合は固定法に迷うことがある.3例の治療を経験したので報告する.【症例1】87歳女性.既往は関節リウマチ,認知症,骨粗鬆症.受傷機転不明で肘関節腫脹が出現し受診.LCP-DHP後外側用プレートで固定した.PTH製剤と術後4週間の外固定を併用し骨癒合したが,可動域制限が残存した.【症例2】91歳女性.既往は不整脈,心筋梗塞,糖尿病など.転倒して受傷.DHP後外側用プレートで固定した.術後3週間の外固定を併用した.【症例3】75歳女性.既往は高血圧のみ.転倒して受傷.DHP内外側プレートで固定し外固定は術後5日で除去した.【考察】本骨折はプレートや髄内釘が適応となる.遠位骨片の固定性を考慮しプレート固定を選択した.片側プレート固定では外固定を併用し骨癒合を得た.

  • 向井 順哉, 田口 憲士, 金山 周史, 森 圭介, 西野 雄一朗, 土居 満, 宮本 俊之, 尾﨑 誠
    2019 年 68 巻 3 号 p. 516-519
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【症例】84歳男性.農作業中に転倒,左肘を打撲した.単純レントゲン像で左上腕骨遠位骨幹部骨折あり,小児期上腕骨外顆骨折後の変形が著明であった.手術では,直視下に骨折部を整復,プレート固定し,術中X線透視画像下で屈伸時摺動面の不適合を認めなかった.術後3日目よりシーネ除去し自動屈伸を開始した.【考察】小児期骨折後変形,腕尺関節脱臼あり,可動方向の限定はあったが生活に支障はなかった.機能回復を目指すために受傷前の変形を推察,受傷前の関節摺動面を考慮し整復,骨接合術を行なった.正常解剖を参考にした整復が困難であっても,機能回復を目指すために変形を推察し,受傷前の関節摺動面を考慮した治療,機能的整復を行うことが必要である.

  • 田原 慎太郎, 吉田 健治, 白石 絵里子, 小倉 友介, 井上 貴司, 中村 英智, 志波 直人
    2019 年 68 巻 3 号 p. 520-523
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    肘頭骨折と上腕骨外側顆骨折の合併は比較的稀であり,今回3症例を経験したため文献的考察を加えて報告した.症例1,7歳男児,下校中に転倒し近医で左上腕骨外側顆と肘頭骨折の診断で翌日当科を紹介された.受傷後2日目に肘頭骨折に対して経皮的鋼線固定術,上腕骨外側顆骨折に対しては転位がなかったため保存療法を行った.術後1年の単純X線検査,理学所見ともに異常所見は認めなかった.症例2,6歳女児,1mの高さから転落し受傷した.近医を受診し右上腕骨外側顆骨折の診断で同日当科を紹介された.画像検査で肘頭骨折を認めた.受傷後4日目に上腕骨外側顆骨折に対してtension band wiring(以下TBW)を施行した.術後2年,臨床的に異常所見認めなかった.症例3,2歳男児,50cmの高さの遊具から転落し受傷した.近医を受診し左上腕骨外側顆骨折と肘頭骨折の診断で同日当科を紹介とされた.受傷後2日目に上腕骨外側顆骨折に対してTBWを施行した.術後2年,臨床的に異常所見を認めなかった.今回,我々は比較的稀な肘頭骨折と上腕骨外側顆骨折を合併した3症例を経験し,肘頭骨折の骨折型とその発生メカニズムについて文献的考察を加えた.

  • 佐田 潔, 梶山 史郎, 松尾 洋昭, 尾﨑 誠
    2019 年 68 巻 3 号 p. 524-528
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    〈症例1〉59歳女性,自宅で転倒し受傷.X線およびCTで内側に転位した小結節裂離骨折を認めた.受傷から1カ月半後に直視下手術を行った.deltopectral approachで展開し,母床内側にアンカーを挿入後,骨片に付着する肩甲下筋腱に縫合糸を導入した.結節間溝と大結節に外側アンカーを挿入し,bridging suture法による骨接合術を行った.術後6カ月のCTで整復位および骨癒合良好であった.〈症例2〉40歳男性,階段で転倒し受傷.X線およびCTで小結節裂離骨折を認め,症例1と同様,直視下手術を施行した.骨折は結節間溝に及び,上方の外側アンカーを大結節外側の皮質骨に挿入した.術後6カ月のCTで整復位および骨癒合は良好であった.〈考察〉bridging suture法での小結節骨片の骨接合において,上方の外側アンカーを大結節の皮質骨に挿入することでより強固な固定が可能であった.

  • 小禄 純平, 三宅 智, 新城 安原, 柴田 光史, 伊崎 輝昌, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 529-531
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    腱板断裂を合併した肩関節拘縮に対して腱板修復術と関節授動術を一期的かつ鏡視下に施行した症例の治療成績を検討した.保存療法に6ヶ月以上抵抗し,他動挙上角度が120度以下かつ外旋角度が30度以下の条件を満たし術前MRIにて腱板の完全断裂を認めた8例8肩を対象とした.鏡視下授動術は全例関節包全周性切離術を施行した.肩関節可動域は術前(挙上77.5度,外旋21.3度)から術後(挙上151.3度,外旋51.3度)に,日本整形外科学会治療判定基準は術前48.0点から最終観察時95.9点まで有意に改善した.最終観察時までに,再断裂,再拘縮,神経麻痺が合併した症例はなかった.

  • 米村 光信, 菊川 憲志, 小田 勇一郎, 白石 大偉輔, 田村 諭史, 福間 裕子, 浦田 泰弘
    2019 年 68 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】腱板断裂性肩関節症(cuff tear arthropathy;CTA)に対するリバース型人工肩関節置換術(reverse shoulder arthroplasty;RSA)の術後短期成績を評価した.【方法】対象はCTAに対してRSA施行後6か月以上経過観察可能だった15肩(男性3肩,女性12肩)で,手術時平均年齢は79.3歳(72~86歳)であった.評価項目は術前,術後3か月,術後6か月におけるJOAスコア,Shoulder36,肩関節自動可動域(屈曲,外転,外旋,内旋)で,一元配置分散分析法で解析を行った.【結果】JOAスコアは総点,機能において,術前から術後3か月,術後3か月から術後6か月で有意に改善し,疼痛スコアは術前から術後3か月で有意に改善した.自動屈曲・外転,Shoulder36の疼痛・可動域・筋力・日常生活動作の項目も同様の結果であった.自動外旋,内旋は有意な変化を認めなかった.【結論】CTAに対するRSAは,臨床成績,自動外旋・内旋を除く肩関節可動域を術後短期間で改善させることが示された.

  • 山下 武士, 緒方 宏臣, 川谷 洋右, 竹村 健一, 橋本 憲蔵, 中西 浩一朗, 吉村 直人, 米村 憲輔
    2019 年 68 巻 3 号 p. 536-539
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では2018年1月よりリバース型人工肩関節置換術(RSA)の施行を開始した.その短期成績を報告する.【対象と方法】術後6ヶ月以上経過観察が可能であった4肩(男性1肩,女性3肩),手術時平均年齢78.3歳.対象疾患は広範囲腱板断裂が2肩,腱板断裂を伴う一次性変形性肩関節症が2肩であった.機種は上腕骨側にTM Reverse,関節窩側にComprehensive Reverse(Zimmer Biomet社)を使用した.術前後の肩関節可動域,日本整形外科学会肩関節スコア(以下JOAスコア)を調査項目とした.【結果】自動屈曲:82.5度から151.3度,自動外転:71.3度から157.5度に改善した.JOAスコアは47.0点から80.0点に改善した.合併症は認めなかった.【考察】RSAの短期術後成績は良好であった.今後も長期的な経過観察が必要である.

  • 古賀 唯礼, 本多 弘一, 後藤 昌史, 中村 秀裕, 久米 慎一郎, 志波 直人, 大川 孝浩
    2019 年 68 巻 3 号 p. 540-543
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    〈目的〉拘縮肩に対するサイレントマニピュレーション(SM)の治療成績を検討した.〈対象と方法〉拘縮肩症例26肩(平均年齢57.5歳)に対し,皆川らの方法に準じSMを施行し,経時的に評価した.〈結果〉術前/術後6ヵ月後の各平均値は,屈曲:109±25.4°/148±12.2°(P<0.0001),外転:96±38.8°/152.9±23.9°(P<0.0001),外旋:26.4±14.3°/43.8±18.7°(P<0.0001),内旋:L5±3.3/Th11±2.7椎体(P<0.0001)といずれも改善を認めた.またJOAスコア:40.9±9.6/65.6±9.6(P<0.0001),UCLAスコア:15.9±3.9/27.3±5.5(P<0.0001),およびVisual analogue scale(VAS)はVAS rest:26.3±33.8/5.1±10.9(P=0.0123),VAS night:38.1±33.6/4.7±8.9(P=0.0007),VAS motion:67.5±24.7/17±15(P<0.0001)といずれも改善した.〈結語〉SMは拘縮肩に対して有効な治療法と思われる.

  • 尾崎 知佳, 南川 智彦, 柴田 陽三, 蓑川 創, 石橋 卓也, 川﨑 英輝, 長松 晋太郎, 中谷 公彦, 伊﨑 輝昌, 三宅 智, 柴 ...
    2019 年 68 巻 3 号 p. 544-548
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】当院では反復性肩関節脱臼に対し,鏡視下Bankart法(B法)あるいは直視下Latarjet法(L法)を行っている.今回,両術式における術後可動域,治療成績を比較検討したので報告する.【対象と方法】対象は,2012年1月から2018年1月までに当院で手術を施行したB法59例,L法26例,平均年齢はそれぞれ26.7歳,26.5歳,平均観察期間はそれぞれ18.5ヵ月,17.3ヵ月であった.術前後の可動域(外転,外旋,内旋,水平外旋,水平内旋),JOAスコア,JSS instability score,JSS sports score,術後再脱臼数を比較検討した.【結果】2群間比較では,術前可動域に有意差なく,術後はL法において内旋,水平外旋で有意に低値を示した.各種スコアは2群間で有意差を認めなかった.術後再脱臼はB法7例(11.9%),L法0例(0%)であった.【考察】L法は,B法に比し,高い脱臼制動効果をもたらすが,術後内旋及び水平外旋可動域が低下した.

  • 関 昭秀, 唐杉 樹, 徳永 琢也, 中村 英一
    2019 年 68 巻 3 号 p. 549-552
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【症例】63歳,男性.1年前から誘因なく右肩痛が出現し,近医で保存療法を受けていたが疼痛が継続し,当院外来を受診した.採血検査にてCRP値の上昇(4.34 mg/dL)を認め,肩関節穿刺にて黄白色の関節液を採取し,細胞数の上昇(95,200/μL)を認めたため,右化膿性肩関節炎と診断した.関節鏡視下に滑膜切除と持続洗浄ドレナージ術を2回施行した.2回目の術後1週目にD-ダイマー値の上昇(14μg/mL)を認め,下肢超音波検査にて深部静脈血栓症(以下DVT)を認め,造影CTで肺血栓塞栓症を認めた.下大静脈フィルターを留置し抗凝固療法を開始した.入院34日目の造影CT検査で肺血栓は消失し,49日目にCRPが陰性化し,71日目に退院した.退院後の精査にてプロテインC活性低下を認め,先天性プロテインC欠損症と診断した.【考察】本症例は,当科のガイドラインに沿ったDVT対策を行ったことにより,肺血栓塞栓症の早期の発見及び治療介入が可能であったと考えられた.

  • 原 純也, 田中 潤, 信藤 真理, 柴田 達也, 川越 麗, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 553-555
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当院においてはAnderson type 2の歯突起骨折に対し積極的に前方固定術を施行しており,本研究の目的はその治療成績を検討することである.対象は2013年1月から2017年12月までの5年間に,当院でAnderson type 2の歯突起骨折に対して前方固定術を施行した6例である.全例男性で,手術時平均年齢は45.5歳,平均手術時間は66分,平均出血量は6ml,平均経過観察期間は14.3ヶ月であった.骨癒合率は83.3%(骨癒合5例,偽関節1例)であり,偽関節の1症例は骨粗鬆症・糖尿病の既往があり喫煙歴を認めた.骨癒合不全のリスクファクターとしては骨粗鬆症,喫煙,受傷後2ヶ月以上経過した陳旧例,整復不能例,スクリューの不適切な設置位置といったことがあげられる.これらリスクファクターのある症例に対しては前方固定術に加えてhalo-vestの併用や後方固定術の検討も必要と考えられた.

  • 川越 麗, 信藤 真理, 田中 潤, 柴田 達也, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 3 号 p. 556-559
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】頚椎症性筋萎縮症は上肢の運動障害と筋萎縮が起こる一方で,知覚障害は軽度である場合が殆どである.その運動障害は近位型と遠位型に大別される.今回,近位型頚椎症性筋萎縮症に対しての術後成績を検討し報告する.【対象および方法】2016年2月から2017年1月までに手術を行った5例(男性4例,女性1例)である.筋力低下発症から手術までの期間は平均7.6ヶ月(3ヶ月~1年4ヶ月),手術時年齢は平均65才(58~81歳),術後経過観察期間は平均1年5ヶ月(6ヶ月~2年2ヶ月)であった.【結果】すべての症例で術後MMTが2段階の改善を認め経過良好であった.【考察】麻痺発生後より3ヶ月以内の症例は術後成績が良好であるといわれているが,今回の検討により麻痺発症後1年経過症例でも手術により麻痺が改善する可能性が考えられた.

  • 李 容承, 益田 宗彰, 前田 健, 久保田 健介, 林 哲生, 森下 雄一郎, 坂井 宏旭, 髙尾 恒彰, 森 英治, 河野 修
    2019 年 68 巻 3 号 p. 560-562
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当センターにおける頚椎後方椎間孔拡大術の短期成績について報告する.対象は2008年10月から2018年1月まで本術式を施行した24例で,手術時年齢は平均52.8歳であった.手術成績の評価項目は頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニアを含む)では疼痛,頚椎症性筋萎縮症ではMMTとし,0~3点の4段階で評価した.原疾患は,頚椎症性神経根症が7例,頚椎症性神経根症と椎間板ヘルニアの合併が5例,椎間板ヘルニアが9例,頚椎症性筋萎縮症が3例であった.手術高位はC5/6が8例と最も多く,次がC5/6とC6/7の合併で6例であった.手術時間は平均108.5分,出血量は平均51g,入院期間は平均17.6日,観察期間は平均9.8ヵ月であった.手術成績は平均2.4点であった.椎間孔前方のヘルニアを摘出しなかった8例でも症状改善を認めた.椎間孔前方に骨性病変を認めた12例中2例が成績不変であったが,前方除圧固定術を追加し症状が改善した.

  • ―初診時脳梗塞と誤診された1例と術後脳梗塞を生じた1例―
    今井 さくら, 比嘉 勝一郎, 親富祖 徹, 島袋 孝尚, 金城 英雄, 金谷 文則, 金城 幸雄, 宮平 誉丸, 大城 義竹, 島尻 郁夫
    2019 年 68 巻 3 号 p. 563-566
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    頚椎特発性硬膜外血腫は初診時片麻痺で発症する場合があり,脳梗塞と誤診され抗血栓療法が行われると麻痺が悪化することがある.また脊椎手術の患者の高齢化に伴い,抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者が増加しており,周術期の休薬の是非や休薬期間が解決すべき課題となっている.今回初診時脳梗塞と誤診され抗血栓療法により麻痺が悪化した1例と,抗血小板薬の休薬により術後脳梗塞を発症した1例を経験したので報告する.【症例1】80歳男性.突然後頚部痛が出現し救急搬送,右半身麻痺を認め,TIAが疑われヘパリン点滴治療が開始された.麻痺は徐々に増悪し,頚椎MRIで頚椎硬膜外血腫を認めた.緊急手術により術後麻痺は改善した.【症例2】84歳男性.後頚部痛と左半身麻痺を認め救急搬送,頚椎特発性硬膜外血腫と診断した.緊急手術により麻痺は改善傾向であったが,術後4日目に意識レベル低下と右半身麻痺を認め,頭部MRIで広範囲脳梗塞を認めた.

  • 青野 誠, 齊藤 太一, 糸川 高史, 入江 努, 田中 哲也, 中原 寛之, 柴原 啓吾
    2019 年 68 巻 3 号 p. 567-569
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊髄クモ膜下血腫は稀な疾患である.さらに稀とされる非外傷性の内因的因子もない症例を経験したので報告する.【症例】36歳,男性.麻雀中に急激な腰痛が出現し前医へ救急搬送された.2病日から頭痛・発熱・下肢筋力低下が出現し増悪したため,6病日に当院へ紹介搬送された.搬送時,右優位の下肢麻痺・知覚鈍麻を認めた.全脊椎MRIおよび血管造影検査から特発性クモ膜下出血と診断した.同日,椎弓切除術および血腫除去術を施行した.術直後から下肢筋力の改善を認め,独歩で自宅退院となった.【考察】非常に稀な特発性胸椎クモ膜下血腫の1例を経験した.手術加療により経過は良好であった.

  • 原田 哲誠, 吉田 裕俊
    2019 年 68 巻 3 号 p. 570-573
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    症例1:60歳女性.腰背部痛,T-SPOT陽性から結核性脊椎炎疑いで当科紹介.12年前に掌蹠膿疱症発症,肺結核の既往はなし.骨シンチで胸腰椎と両側胸鎖関節に異常集積あり.MRIで胸椎4椎体に信号変化を認めるが,椎間板は保たれており,SAPHO症候群として治療.治療開始後2年時点で骨破壊なく経過.症例2:54歳女性.頸部痛,X線で骨破壊あり化膿性脊椎炎疑いで当科紹介.4年前に掌蹠膿疱症発症.骨シンチで頸椎と左胸鎖関節に異常集積あり.MRIでは頸椎3椎体に信号変化と椎間板腔の狭小化あり.血液検査でCA19-9の上昇認めたが,上下部消化管内視鏡・CTで悪性腫瘍の所見はなし.前後方固定術を行い,採取組織の培養・細胞診・病理組織検査で有意な所見はなし.術後SAPHO症候群として治療.SAPHO症候群は,脊椎病変において感染性脊椎炎や転移性脊椎腫瘍と鑑別が必要となり,診断に難渋することも多い.今回診断に難渋した2例について報告する.

  • 山川 慶, 野原 博和, 宮里 剛成, 島袋 孝尚, 金谷 文則
    2019 年 68 巻 3 号 p. 574-577
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    我々は比較的稀なガス含有腰椎椎間板ヘルニアの1手術例を経験した.症例は54歳男性で主訴は右臀部から下肢への放散痛である.CTでL4/5椎間板及びL5椎体レベルの脊柱管内やや右側にガス像を認め,MRIでL5椎体レベルにT1,T2,STIRで境界明瞭な低信号の腫瘤を認めた.以上からガス含有腰椎椎間板ヘルニアと診断し手術を行った.術中所見で右L5神経根の肩口から腋窩部にかけてガス含有椎間板ヘルニアを認めた.L5神経根は圧排され緊張が強く可動性がほとんど見られなかった.硬膜とヘルニア腫瘤の癒着を剥離している際に「パン」と破裂音とともにヘルニア腫瘤が縮小.縮小した腫瘤はピースバイピースで摘出した.病理組織像は硝子化をともなった線維結合組織であった.術後12日目のCTではL4/5椎間板腔,脊柱管内にガス像を認めたが3カ月目ではほとんど消失していた.現在右下肢痛無く経過している.

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