整形外科と災害外科
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67 巻, 2 号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
  • 阿部 隆之介, 濱田 哲矢, 平岡 弘二, 庄田 孝則, 松田 光太郎, 志波 直人
    2018 年 67 巻 2 号 p. 195-197
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    骨外に発生する良性軟骨性腫瘍は,関節内病変と軟部組織に発生するものに大別される.関節内に発生するsynovial chondromatosisは比較的遭遇する機会があるが,腱鞘より発生し四肢末梢である手指,足指に好発するtenosynovial chondromatosisは稀である.足底に発生した症例を経験したので報告する.症例は,28歳女性.3年前に右足底部の腫瘤に気がついていたが放置していた.徐々に増大するために近医を受診,MRI検査を施行され足底部の軟部腫瘍が疑われ当院を紹介された.右足底部に1×1 cm,3×4 cmの硬い腫瘤を2個触知した.単純エックス線検査では,わずかに石灰化と思われる陰影を認め,MRIで腫瘍は,長母趾屈筋腱を取り囲むように存在し,T1 low,T2で不均一にhighの分葉形態を示す腫瘍と多発する小腫瘤を認めた.診断確定の為に切開生検を施行した.結果は軟骨腫であり,画像と合わせてtenosynovial chondromatosisを疑い,辺縁切除施行した.腫瘍は長母趾屈筋腱周囲に多発しており,tenosynovial chondromatosisと診断した.tenosynovial chondromatosisは,synovial chondromatosisの亜型で,関節外病変の同一病態と考えられており,再発が多く注意深い経過観察が必要である.

  • 田原 慎太郎, 平岡 弘二, 濱田 哲矢, 長田 周二, 松田 光太郎, 大島 孝一, 久岡 正典, 志波 直人
    2018 年 67 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    小児の小指MP関節掌側に発生したlipofibromatosisの1例を経験したので報告する.症例,8歳女児.2か月前より左小指MP関節掌側の小豆大の腫瘤に気付いた.その後2か月で2倍以上の大きさに増大したため近医受診後当院紹介となった.当科初診時,左小指MP関節掌側に径1 cm,弾性硬の腫瘤を触知した.疼痛は認めなかった.MRIではT1 low,T2で不均一にhighの辺縁不明瞭な腫瘍を認めた.炎症性腫瘤など疑い腫瘍切除施行した.腫瘍の辺縁が不明瞭であったため,周囲脂肪組織で切離摘出した.病理組織では脂肪組織と線維成分の間に短紡錘形細胞の増殖が見られ,lipofibromatosisと診断された.Lipofibromatosisは小児の手足の皮下に好発する非常にまれな腫瘍である.術後再発の多い腫瘍であることを念頭に切除する必要があり,そのためには画像による術前診断が重要である.

  • 有馬 嵩博, 岡 潔, 佐藤 広生, 末吉 貴直, 水田 博志
    2018 年 67 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    稀な疾患である骨原発myoepitheliomaの1例を経験したので報告する.症例:53歳女性.4年前より右足部の疼痛が出現し,症状が持続するため近医を受診した.画像検査にて右第2中足骨の腫瘍性病変が疑われたため,当科紹介受診となった.単純X線では右第2中足骨に周囲の硬化像を伴う,辺縁整の骨透亮像を認めた.MRIでは病変部はT1WIで低信号,T2WIで高信号,Gd造影にて造影効果を呈していた.内軟骨種などの良性骨腫瘍が疑われたため,骨腫瘍掻爬及び人工骨移植術を施行した.病理検査の結果,myoepitheliomaの診断であった.考察:myoepitheliomaは全唾液腺腫瘍の1%以下で発生する稀な疾患であり,骨原発myoepitheliomaは我々の渉猟しうる範囲では20例を認めるのみであり,良性例は12例,悪性例は8例であった.

  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2018 年 67 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    [はじめに]比較的稀な手に発生した石灰化,骨化を伴う脂肪性腫瘍の症例を報告する.[症例]症例1.72歳,女性.1年程前に右手掌の1 cm大の腫瘤に気づき,その後右手背にも同様の腫瘤がある事に気づいた.腫瘤が徐々に増大したため近医を受診し当科紹介受診となった.単純X線にて右第3,4中手骨間に石灰化を伴う腫瘤をみとめた.切開生検を行った後に辺縁切除術を行った.病理診断は軟骨脂肪腫であった.症例2.74歳,男性.1年半程前に右母指,示指間の腫瘤に気づき近医を受診した.経過観察されていたが,腫瘤が増大したため当科紹介受診となった.単純X線にて右第1,2中手骨間に骨化を伴う腫瘤をみとめBPOPが疑われた.辺縁切除術を行い病理診断は骨化性脂肪腫であった.[考察]脂肪腫が軟骨化または骨化を伴う事は稀とされており,更にこのような腫瘍が四肢末梢に発生する事は稀とされている.文献的考察を加えて報告する.

  • :コラボレーションの重要性
    塚本 伸章, 前 隆男, 増本 和之, 里 学, 加藤 剛, 小宮 紀宏, 屋良 卓郎
    2018 年 67 巻 2 号 p. 212-216
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    重症開放骨折の治療における課題を探るために当院で治療したGustilo分類type IIIb, IIIcの四肢長管骨開放骨折の症例11例11肢を対象とした治療経過の調査を行った.骨折部内訳は上肢4例,下肢7例であった.全例受傷日にデブリドマンがなされ,type IIIcの2例では血管外科医と共働で血行再建が行われた.受傷から骨折内固定手術までの日数は4~17日であった.全例とも皮膚軟部組織欠損の治療は形成外科医と共働し植皮術,皮弁術などを用いた創閉鎖が実施された.8例では内固定と創閉鎖が同時手術で実施された.追加手術を要した合併症は3例(27.3%)に認め,すべて感染によるものであった.最終観察時において全例骨癒合を得,上肢骨折の2例では上肢機能は良好であり,下肢骨折の6例では独歩可能であった.重症開放骨折は依然感染率が高い.骨や軟部組織の複合的な損傷に対して時機を逃さず治療し良好な経過を得るためには診療チームの連携強化と治療経験の蓄積が必要である.

  • 坂本 和也, 土屋 邦喜, 宮崎 幸政
    2018 年 67 巻 2 号 p. 217-219
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【背景】増加する脊椎変性疾患に対し,近年はMIStが施行されるようになった.【目的】MIStの低侵襲性を検証するため,MISt-PLIFとOpen-PLIFの術後成績を検討した.【結果】手術時間ではOpen群が有意に短く,JOAscore術後3ヶ月ではMISt群が有意に良好であった.術中出血量,在院日数,術後CRP値,JOAscore術後1年も,MIStの成績が良い傾向にあった.【考察】手術時間にはLearning Curveがあり,当院でも今後症例を重ねればMIStの手術時間が有意に短くなると思われた.また,MIStは短期JOAscoreが良好であるため在院日数も短縮した可能性が示唆された.【結語】当院におけるMIStの成績は良好で,治療法として今後も有用だと考えられた.

  • 長友 雅也, 井田 敬大, 木下 栄
    2018 年 67 巻 2 号 p. 220-222
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性で,大腿骨頭壊死を認め,人工関節置換術を施行.その後の経過は良好であったが,術後5年で前のめりにしゃがんだ際に股関節に違和感および疼痛が出現.人工関節の脱臼と診断され,静脈麻酔下に徒手整復を行った.初回整復2週後に再脱臼をきたしたため,初回整復5週後にカップの置換術を行った.ステムの前捻が42.5度であったため,やや前捻をつけてカップを設置.画像評価にて外方開角53度,前捻7度であった.しかし,術後18週,21週,24週にも脱臼を繰り返した.術後24週で拘束型の人工股関節に再置換し,スクリューを1本追加で固定した.術後6ヶ月の時点で再脱臼は生じておらず1本杖歩行も可能である.

  • 前原 史朋, 古市 格, 小河 賢司, 志田 崇之, 荒木 貴士, 水田 和孝, 新見 龍士
    2018 年 67 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨骨幹部骨折に対し,NCB® Periprosthetic Femur Plate(以下NCB plate)を用い骨接合術行った1年後にプレートが折損した症例を経験したのでこれを報告する.【症例】89歳女性.左大腿骨髄内釘と人工膝関節置換術(以下TKA)の間の大腿骨骨幹部骨折に対しNCB plateにて骨接合術を行った.10か月後に歩行中に転倒しプレートが折損し再骨折した.転倒前の歩行状態はシルバーカー歩行が可能であった.これに対し偽関節の診断で再度,骨移植及び同プレートを用いて骨接合術を行った.【考察】NCB plateは主に人工関節周囲骨折に用いるロッキングプレートである.特徴としてポリアキシャルなロッキングスクリューホールを有し,プレートは非常に厚く強度としても優れ,折損の報告はほとんどない.しかし大腿骨の近位及び遠位ともにインプラントが挿入され,骨幹部に応力が集中しやすいこのような骨折ではNCB plateであっても折損する可能性がある.

  • 木下 栄, 井田 敬大, 長友 雅也
    2018 年 67 巻 2 号 p. 227-230
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】軽微な外傷後に進行した脆弱性骨盤骨折に対し保存療法を行ったが骨折の進展を認めた症例に観血的治療を行い良好な結果を得た1例を報告する.【症例】71歳,女性.屋外歩行時の転倒による受傷であった.Xpでは左恥骨上枝に骨折を認めており,CTでは仙骨周囲に骨折なく,保存療法とした(Rommens分類:typeⅠa).退院後に疼痛増強にて再診となりCTで新たに転位のない仙骨骨折を認めた(typeⅡc).PTH製剤の使用にて保存加療継続とし自宅退院となったが,その後の経過CTにて仙骨骨折部の骨癒合遷延(typeⅢc)を認め受傷80日目に観血的治療を行った.術後6か月後のXpでは恥骨上枝,仙骨ともに骨癒合を認めた.【考察】脆弱性骨盤骨折の多くは低エネルギーによるものであり,Rommens分類:typeⅡ以下に対しては保存療法が原則である.観血的治療の厳密な適応はないが諸家の報告と同様にRommens分類:TypeⅡからTypeⅢへの進展が観血的治療の目安になると考える.

  • 中山 宗郎, 宮本 俊之, 福島 達也, 田口 憲士, 森 圭介, 上木 智博, 木下 直江, 尾﨑 誠
    2018 年 67 巻 2 号 p. 231-233
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    非骨折性急性コンパートメント症候群の診断が遅れたために,コンパートメントデブリドマンを行った1例を経験したので報告する.症例は15歳男性で,サッカー中に明らかな外傷なく左下腿痛が出現した.帰宅したが疼痛持続あり近医受診した.安静および鎮痛薬内服で経過観察されていたが,下肢痛増悪し受傷3日目にMRI精査したところ,長短腓骨筋の腫脹,輝度変化を認め,受傷4日目に感覚障害も出現したために当院紹介となった.当院で外側区画内圧測定したところ109 mmHgと著明な上昇あり,疼痛のコントロールも含めて減張切開を行った.手術所見では長短腓骨腱筋が変色しており,4C徴候から筋壊死と判断し,コンパートメントデブリードマンを行った.術後は深腓骨神経領域に知覚鈍麻,運動障害を認めたが,サッカー部に復帰できた.非骨折性急性コンパートメント症候群は,しばしば診断が遅れ機能障害が残存する.徐々に増悪する下肢痛がある患者に対してはコンパートメント症候群を疑わなければならない.

  • 吉村 直人, 入江 弘基, 中村 英一, 水田 博志
    2018 年 67 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    仰臥位手術後に発症したwell-leg compartment syndrome(WCLS)の稀な1例を経験したので報告する.【症例】43歳,女性.子宮頚癌に対して全身麻酔下に開腹子宮腫瘍切除術を施行された.両下腿に弾性ストッキングを装着し,仰臥位で5時間46分の手術であった.麻酔覚醒直後より右下腿の疼痛と腫脹を認め,コンパートメント圧は前方区画58 mmHg,浅後方区画57 mmHgであった.compartment syndromeと診断し,術後6時間経過時点で減張切開術を施行した.術後5週間で植皮なく閉創可能となった.術後2年経過した現在も下垂足が残存し,短下肢装具を使用している.【考察】WLCSのリスク因子として体位(砕石位,トレンデレンブルグ位),長時間手術や弾性ストッキング装着等が挙げられる.過去の報告では砕石位手術が多く,仰臥位で発症した例は稀である.術直後の下肢compartment syndromeとして本疾患の存在を認識して対応する必要がある.

  • 神保 幸太郎, 西田 一輝, 森戸 伸治, 岡崎 真悟, 田邉 潤平, 塚本 祐也, 南 公人, 原口 敏昭, 重留 広輔, 中村 秀裕
    2018 年 67 巻 2 号 p. 238-242
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    観血的治療を行った距骨頚部骨折17例の成績について検討した.男性14例,女性3例,平均年齢32.3(17~71)歳,平均経過観察期間42.1(12~140)か月だった.骨折型はCanale-Kellyらの分類を用い,Ⅰ型7例,Ⅱ型4例,Ⅲ型3例,Ⅳ型3例だった.8例に観血的整復を行い,内訳はⅡ型2例,Ⅲ型3例,Ⅳ型3例だった.壊死はMRIの輝度変化とX線の骨硬化で診断し8例に認めたが,圧壊したのは2例のみだった.壊死の発生頻度はⅠ型14%,Ⅱ型50%,Ⅲ型100%,Ⅳ型67%だった.術後2,3か月のMRIの輝度変化と壊死の一致率は100%(8例/8例),Hawkins signと壊死の一致率は94%(16例/17例)だった.Hawkins signと術後2,3か月のMRIの輝度変化は壊死の兆候を示しており,荷重時期の参考になる.

  • 荒川 大亮, 佐羽内 研, 森 俊陽, 川﨑 展, 吉田 周平, 嵐 智哉, 塚本 学, 元嶋 尉士, 岡田 祥明, 酒井 昭典
    2018 年 67 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    [目的]関節リウマチの前足部変形に対して,我々は母趾MTP関節にはスクリュー2本を交差刺入して固定術を行ってきた.しかし,適合性のよい関節面を作製し,適切な外反母趾角と背屈角を術中に決定することが困難な場合や,術後に骨癒合遷延・偽関節となった症例が散見された.これらの問題を解決するためにZimmer Biomet社のA.L.P.S. Total Foot System® MTP fusion plateを導入したので,その特徴と治療成績に関して症例を交えて報告する.[方法]対象は関節リウマチ女性患者17症例23足で,MTP関節をスクリュー2本で固定した群(スクリュー群)とMTP fusion plateとスクリュー1本で固定した群(プレート群)について,後ろ向きに調査を行った.プレート群では,付属のリーマーを用いて適合性のよい球状の母趾MTP関節を作製し,プレート中央部につけられた背屈14°,外反5°の形状を目安に固定した.各群の骨遷延癒合・偽関節の有無と骨癒合期間について評価した.[結果]スクリュー群では81%に骨遷延癒合,19%に偽関節が生じた.一方,プレート群では術後3ヵ月の時点で全症例において骨癒合が得られていた.[結論]MTP fusion plateは母趾MTP関節固定を行う際に固定角度決定の指標となり,良好な骨癒合が期待できる.

  • 後藤 久貴, 髙橋 良輔, 馬場 一彦, 青木 龍克, 村山 雅俊, 末次 宏晃, 西 紘太朗, 竹内 潤, 内山 迪子, 水光 正裕, 小 ...
    2018 年 67 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    CPP法は,外閉鎖筋と方形回内筋の一部を切離し,梨状筋,上双子筋,内閉鎖筋,下双子筋を温存する股関節後方進入法である.【対象,方法】大腿骨頚部骨折に対しCPP法で人工骨頭挿入術を行った30例(男性7例,女性23例,平均85.1歳)を対象とした.ステムはExeter 12例,Taper wedge型17例,Zweymuller型1例であった.手術時間,術中出血量,腱損傷の程度,ステムアライメント,術中合併症,術後脱臼を調査した.腱損傷を,損傷なし,下双子筋損傷,腱実質損傷,腱完全断裂のGrade 1~4に分類した.【結果】手術時間60.8分,出血量161 g,腱損傷はgrade 1 8例,grade 2 15例,grade 3 7例,grade 4 0例であり,4°以上の内外反は3例であった.術後脱臼は認めてない.【まとめ】CPP法は人工骨頭の術後脱臼予防に有効な後方進入法である.

  • 竹村 健一, 米村 憲輔, 緒方 宏臣, 山下 武士, 川谷 洋右, 岩本 克也, 永田 武大, 浦上 勝
    2018 年 67 巻 2 号 p. 251-253
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    人工骨頭置換術(BHA)における出血予防法として,2013年12月までドレーンクランプ法及びトラネキサム酸(TXA)2 gの局所注入(A群)を行ってきた.2014年1月からドレーン留置を中止し術後TXA 1 g関節内注入(B群)を開始,2015年4月よりB群に加え術前TXA 1 g静脈注射を追加(C群)した.3群の術中・術後出血量について比較検討した.対象は2012年1月より2017年3月までに当院で行ったBHAの内,入院時Hb値が10以上あり術前輸血の必要がなかったものとした.術中出血量は3群で有意差を認めなかったが,時間当たりの出血量はC群が低い傾向にあった.B・C群において手術時間が90分以内であったものを抽出したB’・C’群で検討を行ったところ,時間当たりの術中出血量は有意にC’群が低かった.術後1 d・2 dのHb値は,C群がA・B群に対し有意に高かった.C群における術中及び術後の出血抑制効果の増強は,TXA静脈注射と関節内注入の併用による影響と思われた.

  • 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 千葉 恒, 木寺 健一, 中添 悠介, 尾﨑 誠
    2018 年 67 巻 2 号 p. 254-256
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】我々はK-L grade 3,4の内側型変形性膝関節症に対して脛骨顆外反骨切り術(TCVO)を行っているが,術後に屈曲拘縮が存在する症例を時に経験するため,その原因を調査した.【対象と方法】2008年から2016年までにTCVOを行った66膝(平均年齢61歳,男性17膝,女性49膝)を対象とし,術前および術後1年の伸展可動域およびX線学的計測値を調査した.【結果】全症例の平均伸展角度は術前-2.7度,術後-3.0度だった.術後の伸展角度が術前より悪化したのは18膝,変化がなかったのは32膝,改善したのは16膝だった.術後に5度以上の屈曲拘縮が存在した24膝を屈曲拘縮群,それ以外の42膝を正常群とすると,両群間に有意差があったのは術前伸展角度と術後脛骨関節面後方傾斜角(PTS)であった.性別,年齢,mLDFAおよび術前後のJLCA,MPTA,%MAに有意差はなかった.【結語】TCVOでは術前屈曲拘縮があれば術後も屈曲拘縮が生じやすいため,慎重な適応判断が必要である.また,術中はPTSが増大しないよう留意する必要がある.

  • 吉里 広, 高山 剛, 嶋崎 貴文, 竹下 修平, 江頭 秀一
    2018 年 67 巻 2 号 p. 257-259
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    解剖学的プレートであるLocking compression plate(LCP)を用いたCondylar Stabilizing(CS)法によりOWHTO術後の脛骨後方傾斜角(TPS)増大を防止できるか検討を行った.Olympus社製Tris plateを使用しOWHTOを行った5例5膝を対象とした.手術は骨切り開大部に同種骨を移植し近位Screw 4本を軟骨下骨へ固定後,あらかじめ脛骨稜前方に偏位させておいたplate遠位を後方へずらすことで後傾を減じてから遠位Screw固定を行った.これらCS法を行った5膝と従来法8膝における術前,術後TPS,TPS変化量を調査した.術前後TPS,TPS変化量はCS法では8.0±2.5°,8.4±3.4°,0.4±3.8°,従来法7.6±2.1°,9.6±3.2°,2.0±2.5°であった.両群間で有意差は認められないものの,TPS変化量はCS法で低値であった(P=0.31).また3度以上後傾が増大した症例は従来法で4膝であったのに対しCS法では1膝と少なく(P=0.10),逆に3度以上後傾が減少した症例はCS法で有意に多く認められた(P=0.02).TPS増大を防ぐ手段としてCS法は有用であることが示唆された.

  • 椎木 栄一, 平田 健司, 鎌田 敬子, 関 寿大
    2018 年 67 巻 2 号 p. 260-265
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    両側外反膝で膝蓋骨脱臼を繰り返すEllis-van Creveld症候群(EVC)の18歳の女性に対して両側の大腿骨遠位骨切り手術(DFO)と外側軟部組織の解離術を行った.左膝蓋骨は術後早期に膝蓋骨の再脱臼を来した為,再癒着した軟部組織解離と大腿二頭筋腱を切離して外側側副靭帯の補強を行う追加手術を行った.術後5年の時点では,両膝ROM 0/150,JOA 100/100と良好で患者満足度は高い.

  • 美山 和毅, 松田 匡弘, 王寺 享弘
    2018 年 67 巻 2 号 p. 266-269
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】膝内側半月板(MM)後角断裂は変形性膝関節症(OA)の進行や骨壊死(SON)の原因となる.人工膝単顆置換術(UKA)症例におけるMM後角断裂の関与について調査した.【対象及び方法】2013年3月から2016年6月までにUKAを施行した91例100膝を対象とした.(男性33例女性58例,平均年齢77.9歳)術前MRIにて後角断裂群(T群)27膝とその他の群(N群)73膝(横断裂14膝半月板切除後7膝その他52膝)に分けJOAスコア,立位膝外側角(FTA),%MA(立位%Mechanical axis),原疾患,前方ストレスレントゲンによる前方動揺性について調査した.【結果】T群は27%であった.アライメント,臨床評価で有意差を認めなかった.原疾患がOAの時T群16膝(20%)N群64膝(80%),SONではT群11膝(55%)N群9膝(45%)でSONにT群の占める割合が高かった.T群で有意に前方動揺性の増加を認めた.【考察】SONを原疾患とするUKA症例において,MM後角断裂が原因となることが多いと考えられ,術前前方動揺性が見られる傾向にあった.

  • 富永 冬樹, 松田 匡弘, 王寺 享弘
    2018 年 67 巻 2 号 p. 270-273
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】膝内側半月板後角断裂に対して鏡視下縫合術を予定したが中止となった症例について検討した.【症例】2013年10月~2016年11月に後角断裂に対して鏡視下手術を行った104膝のうち,縫合中止となった14例14膝(13.5%)を対象とした.男性1例,女性13例で,手術時平均年齢は70.8歳であった.術中の断裂形態,軟骨の状態(Outerbridge分類),どの時点で縫合をやめたかとその理由を調べた.【結果】断裂形態は横断裂9例,斜断裂5例で,縫合をやめたのは,鏡視の時点が10例,糸かけまでしてが4例であった.鏡視でやめた10例の理由は,断裂形態が7例(うち斜断裂5例),半月板の質が1例,軟骨の状態が2例であった.糸かけまでした4例は,いずれも半月板の質が理由であった.【結語】斜断裂は縫合が困難な場合があり,また軟骨の状態が悪いと後角縫合のメリットが少なくなるため,術前に縫合中止になる可能性を説明すべきである.

  • 津田 智弘, 上原 昌義, 上原 健, 金城 仁, 若林 創, 中里 結花, 内間 良二
    2018 年 67 巻 2 号 p. 274-278
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    我々は椎間板ヘルニアに類似した症状を示す,腰椎椎間板嚢腫の2例を経験した.2例とも腰痛と片側下肢痛が主訴で,神経根障害を呈していた.MRIで腰椎硬膜管内に片側神経根を圧排し,椎間板に連続するT1強調画像でlow-intensity,T2強調画像でhigh-intensityを示す嚢胞性病変が認められた.1例は造影MRIでrim enhancementを呈し,discal cystに類似した.もう1例は画像上,椎間板変性が高度でCTで嚢胞内にガス像が認められた.2例とも手術治療を行い,椎間板に連続する嚢腫の摘出を行った.術後症状は消失した.被膜化されて発生する腰椎椎間板嚢腫は自然消失しにくいことが予測され,手術治療を念頭におき診断治療をすすめる必要がある.

  • 井上 三四郎, 吉田 裕俊, 幸 博和
    2018 年 67 巻 2 号 p. 279-282
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    (目的)結核病棟を有する当院における化膿性脊椎炎の患者背景や治療成績を調査すること.(対象)2013年4月から2016年10月までの間に当院で入院加療を行った化膿性脊椎炎35例.患者背景と治療成績を調査し,さらに脊椎カリエスが鑑別に挙げられ紹介された患者の特徴を調査した.(結果)平均年齢は70.5歳であり,免疫不全患者が22例を占めた.症状出現から平均6.4週で当院初診し,当院受診前に医療機関受診歴がない患者は2例のみであった.起炎菌が同定された症例は15例であった.脊椎カリエスが鑑別に挙げられ紹介された患者は13例であった.他の22例と比較して,入院時CRPが有意に低値であった.(考察)諸家の報告同様,化膿性脊椎炎の患者は高齢化していた.紹介医は化膿性脊椎炎としては非典型的な低いCRP値を見た時,脊椎カリエスを鑑別に挙げていると推測された.

  • 宮口 文宏, 川畑 直也, 松永 俊二, 今給黎 尚典, 佐々木 裕美, 小宮 節郎
    2018 年 67 巻 2 号 p. 283-287
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    胸腰椎破裂骨折に対してshortに固定するなら前方固定術が必須である.当院では胸腰破裂骨折に対して後方固定術後,二期的に内視鏡視下前方固定術を施行している.しかも可能な限り罹患椎体を含めて頭側へ1椎間固定術を施行している.今回我々は,胸腰椎破裂骨折に対して二期的に内視鏡視下前方固定術を施行した42症例を前方1椎間固定したG1群(18例)と前方2椎間固定したG2群(24例)に分類し,罹患椎体の圧潰率,罹患椎体の楔状角・Cobb角から比較検討した.椎体前縁の圧潰率はG1で受傷時が平均61.1%でSchanz後99.1%に矯正されさらに前方固定術後に101.6%に矯正されるも,フォロー時96.0%と5.6%矯正損失を認めた.G2では受傷時が平均61.1%とG1と同等でSchanz後90.2%とG1より矯正率は低く,前方固定術後に96.5%矯正されるも,フォロー時92.6%と4.9%の矯正損失を認めた.胸腰椎破裂骨折に対する前方1椎間固定術と前方2椎間固定術では,固定術後の矯正損失において有意差を認めなかった.

  • 原口 和史, 吉野 興一郎, 濱崎 将弘, 永吉 信介, 家入 雄太, 日野 敏明, 松浦 恒明
    2018 年 67 巻 2 号 p. 288-291
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】骨粗鬆症診断における腰部椎体骨折評価の重要性を調査する.【方法】腰椎X線検査とDXAによる骨密度測定を受けていた265例を腰部(Th11~L5)椎体骨折の程度により,N群(椎体骨折なし),F群(SQ-Grade 2以下の椎体骨折1個),SF群(SQ-Grade 3,または2個以上の椎体骨折)の3群に分け,腰椎,Total hip,大腿骨頸部の骨密度,および骨密度が正常で腰部椎体骨折を認めた症例の割合を調査した.【結果】骨密度は腰椎,Total hip,大腿骨頸部ともN群,F群に有意差なく,SF群はF群比べ有意に低値であった.測定部位別の骨密度が正常で腰部椎体骨折を認めた症例の割合は腰椎31.7%,Total hip 24.8%,大腿骨頸部15.8%であった.【結論】骨粗鬆症の診断は脆弱性骨折の評価なしに骨密度(特に腰椎骨密度)のみで行うべきではない.腰椎X線像のよる既存腰部椎体骨折の評価は骨粗鬆症の診断に重要である.

  • 石松 哲郎, 前山 彰, 森山 茂章, 大澤 恭子, 佐伯 和彦, 木山 貴彦, 鎌田 聡, 山本 卓明
    2018 年 67 巻 2 号 p. 292-295
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    目的:気孔率の違う3種のβ-TCPについて圧縮試験を行い,その強度や弾性係数を検討した.方法:臨床応用されているBonish®,OSferion60®,SUPERPORE®の3種を10個ずつ使用.圧縮試験は小型卓上試験機(EZ-LX)を使用し圧縮力と弾性係数を測定し3群間比較を行った.結果:圧縮力はBonish 1666.3±139.5 N,OSferion 3353.3±351.0 N,SUPERPORE 1005.9±361.6 Nで3群間に有意差を認めた.弾性係数はBonish 397.0±24.1 MPa,OSferion 465.2±5.9 MPa,SUPERPORE 408.8±101.6 MPaでありBonishとOSferion間でのみ有意差を認めた.まとめ:OSferionが強度・弾性係数ともに高値であり,圧縮強度を有する場合には推奨され得ると考えられた.

  • 徳重 厚典, 今釜 崇, 関 万成, 田口 敏彦
    2018 年 67 巻 2 号 p. 296-299
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)加療におけるイグラチモド(IGU)の有効性と安全性について検討した.【対象と方法】当院通院加療中のRA患者のうち,IGU使用中・使用歴のある61例を対象とし,IGUの処方状況,併用薬,継続状況と副作用,投与開始前から52週までの疼痛関節数,圧痛関節数,患者・医師VAS,疾患活動性について調査した.【結果】IGUの処方状況は追加併用38例,切り替え4例,第一選択薬として1例で処方され,全例csDMARDsが併用され,プレドニゾロン49%,生物学的製剤16%の併用を認めた.服薬継続例42例,副作用中止17例,効果不十分中止2例であった.圧痛関節数,腫脹関節数は投与開始後8週で,患者VASは8週,医師VASは12週で有意に低下,疾患活動性指標であるDAS28-CRP,SDAI,CDAIも8週で有意に低下していた.IGU有効群は投与開始前の疾患活動性の低い症例であった.

  • 片江 祐二
    2018 年 67 巻 2 号 p. 300-301
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】NSAIDsで鎮痛効果が不十分な慢性疼痛患者にデュロキセチンを投与し有効性と副作用を調査した.【対象と方法】2016年4月からの11か月間に当院でデュロキセチンを新規投与した65例(男性11例,女性54例,年齢45~90歳[平均75.0歳])を対象とした.調査項目は1)投与前うつ性自己評価尺度(SDS),2)疾患の内訳,3)併用薬剤,切換薬剤,4)維持用量,有効率,5)痛みNRS,6)副作用,中止率,中止理由である.【結果】1)投与前のSDSは平均41.4点で正常の基準値内であった.2)腰椎疾患が52%,変形性膝関節症が27%であった.3)併用薬剤はNSAIDsが,切換薬剤はトラマドール製剤とNSAIDsが多かった.4)32例が有効で継続し,20 mg/日投与が最も多かった.有効率は55.4%であった.5)痛みはNRSで処方開始時8.4が3.9に低下した.6)副作用は嘔気,眠気・ふらつき,便秘が多く,副作用による中止率は26.1%であった.【考察】デュロキセチン20 mg/日での維持用量が最も多く,NRS 3.9と鎮痛効果が得られた.副作用に対する対策を講じれば,NSAIDsに代わる有用な慢性疼痛薬であると考える.

  • 片江 祐二
    2018 年 67 巻 2 号 p. 302-303
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】NSAIDsで鎮痛効果が不十分な慢性疼痛患者にトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(以下T/A錠)を投与し有効性と副作用を調査した.【対象と方法】2016年5月からの8か月間に当院でT/A錠を新規投与した79例(男性14例,女性65例,年齢33~93歳[平均75.5歳])を対象とした.調査項目は1)疾患の内訳,2)併用薬剤,切換薬剤,3)維持用量,有効率,4)痛みNRS,5)副作用,中止率,中止理由である.【結果】1)腰椎疾患が49%,変形性膝関節症が26%であった.2)併用薬剤,乗換薬剤ともNSAIDsが最も多かった.3)43例が有効で継続し,うち2錠/日が24例で最も多かった.有効率は62.0%であった.4)痛みはNRSで処方開始時8.1が4.5に低下した.5)副作用は,嘔気,便秘,眠気・ふらつきの順に多く,副作用による中止率は22.8%であった.【考察】T/A錠少量の維持用量で,NRS 4.5と鎮痛効果が得られた.中止理由で多かった嘔気に対して留意が必要と考える.

  • 片江 祐二
    2018 年 67 巻 2 号 p. 304-306
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】診療所におけるテリパラチド連日製剤(D剤)の導入は難しい.【対象と方法】2016年10月からの5カ月間に当院でD剤導入にあたり質問票を用いた87例(女性86例,平均79.2歳)を対象とした.質問項目は4つのカテゴリー(自己注射,骨粗鬆症治療注射,社会的・対人的制約,骨粗鬆症)からなる計17項目である.D剤の導入ができた群(導入群)と導入できなかった群(非導入群)で患者の項目について検討を加えた.【結果】導入群は25例,非導入群は52例,返事の保留が10例であった.非導入群は導入群に比べて,「自己注射を面倒に思う」,「2年も打つのが嫌だ」,「注射をする理由がわからない」,「生活が制限され活動が狭まる」,「高価な薬は使いたくない」,「他人に知られるのは嫌だ」,「骨折は起こさないと思う」の項目が有意に高かった.【考察】骨粗鬆症マネージャーがいなくても,質問票で患者の不安を把握し解消することで,D剤の導入率を上げることができた.

  • 大山 龍之介, 中川 剛, 中村 哲郎, 山本 典子, 坂本 和也, 岩崎 賢優, 進 悟史, 矢野 英寿, 宮崎 幸政, 土屋 邦喜
    2018 年 67 巻 2 号 p. 307-311
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】非転位型大腿骨頸部骨折に対して当院で骨接合術を施行した症例の治療成績を検討した.【対象と方法】2007年3月から2016年12月までに当院で骨接合術を施行した非転位型大腿骨頚部骨折の症例のうち,術後3ヶ月以上経過観察が可能であった72例を対象とした.男性13例,女性59例,平均年齢は73.5歳,GardenⅠ型:22例,Ⅱ型:50例であった.合併症を調査し,合併症を来した症例については固定材料,GAI(Garden Alignment Index)の項目で比較検討を行った.【結果】合併症は骨頭壊死:10例(13.4%),偽関節・遷延癒合:5例(6.9%),転子下骨折:2例(2.8%)であった.転子下骨折を来した2例では正面GAI値が有意に小さかった.偽関節・遷延癒合を来した5例では正面GAI値が有意に大きく,側面GAI値は小さい傾向が見られた.【考察】頚体角が小さい場合は転子下骨折の危険性が増す可能性がある.転位が大きい場合は不安定性を考慮し,より強固な固定や整復操作を考慮すべきと考えた.

  • 宮里 和明, 森 俊陽, 塚本 学, 川﨑 展, 佐羽内 研, 酒井 昭典
    2018 年 67 巻 2 号 p. 312-314
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】関節鏡視下清掃術が化膿性股関節炎に対して有効な治療法であるかどうかは明らかではない.本研究の目的は,関節鏡視下清掃術が化膿性股関節炎に対して有用な治療法であるか否かを開創術と比較することによって明らかにすることである.【対象および方法】対象は2008年11月から2016年8月に化膿性股関節炎に対して手術を行った17例で,関節鏡群(AS群)13例,開創群(OP群)4例であった.両群の術中出血量および術後CRP改善率を評価した.【結果】術中出血量はAS群24.6 ml,OP群311.7 mlであり,AS群の術中出血量が有意に少なかった(p<0.01).また,術後7日目のCRP改善率は,AS群60.3%,OP群90.2%であり,AS群が有意に低値であった(p<0.05).【結論】AS群はOP群と比較し,術中出血量が有意に少なかったが,術後7日目のCRP改善率は有意に低値を示していた.

  • 吉留 綾, 帖佐 悦男, 坂本 武郎, 関本 朝久, 濱田 浩朗, 池尻 洋史, 中村 嘉宏, 舩元 太郎, 日吉 優, 川野 啓介, 藤田 ...
    2018 年 67 巻 2 号 p. 315-317
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】放射線照射後に生じた骨脆弱性を伴う股関節症に対する治療は非常に難渋する.今回我々は寛骨臼再建を併用した人工股関節置換術(THA)を行うことで股関節を再建しえた1例を経験したので報告する.【症例】79歳女性.子宮頸癌に対し子宮全摘+両側付属器切除,放射線治療を行われた12年後より右股関節痛が出現し,寛骨臼骨欠損を伴う両股関節の高度破壊像を認めた.右側は上方に高度骨欠損を認め,plateによる後柱再建後,骨移植と閉鎖孔フック付き十字プレートを用いてTHAを行った.左側は後柱再建と同種骨移植を併用しセメントレスカップでTHAを行った.現在術後1年で,経過良好である.【考察】放射線照射後の股関節症に対しての治療は骨再生能の低下,骨欠損と骨脆弱性が問題となり,治療に難渋する.良好な股関節の再建のためには,術前の股関節の状態の把握を含め,入念な術前計画ならびに寛骨臼の再建と骨欠損への十分な骨移植が重要と考えられる.

  • 平良 啓之, 仲宗根 哲, 石原 昌人, 山中 理菜, 親川 知, 松田 英敏, 東 千夏, 神谷 武志, 大城 裕理, 金谷 文則
    2018 年 67 巻 2 号 p. 318-321
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【症例】35歳男性.習慣飲酒歴あり(ビール700 ml/日×15年),喫煙歴あり(20本/日×15年),ステロイド全身投与歴,外傷歴,潜水歴なし.25歳時に右ONFH(type C2, stage 3A)と診断されたが,その時点で左大腿骨頭に明らかな壊死はなかった.当院で右大腿骨頭前方回転骨切り術を行い,外来経過観察した.34歳時に誘引なく左股関節痛出現し,Xpで帯状硬化像,骨頭圧潰を認め,MRIで低信号バンド像を認め(type C1,stage 3A),左大腿骨頭回転骨切り術を行った.術後半年で原職の運送業へ復帰した.【考察】片側罹患ONFH例の追跡研究で反対側の骨頭壊死の出現はほとんどないと報告されている.本症例は片側罹患後に反対側に発生した稀な症例と思われた.

  • 戸田 雅, 森 治樹, 河野 勇泰喜, 山口 洋一朗, 関本 朝久, 帖佐 悦男
    2018 年 67 巻 2 号 p. 322-324
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回当院において高齢者大腿骨頚部骨折に対するカラードステム人工骨頭置換術の短期固定性を単純X線写真で検討した.【対象】2014年6月~2017年3月までに当院でMDM社MA HIP SYSTEMカラードステムを用いたセメントレス人工骨頭置換術を施行し,術後3ヶ月以上経過観察できた145例148関節で,平均年齢85.8(64~101)歳であった.【方法】最終観察時の単純X線写真正面像での大腿骨髄腔形状をNobleらの方法によりCanal flare index(CFI),Cortical index(CI),髄腔内占拠率(Canal filling ratio; CFR)を算出した.またsinking(沈下2 mm以上と定義する),Pedestal sign(PS),Radiolucent line(RLL)の有無について評価した.【結果】最終観察時にsinking,RLLを認めた症例はなかったが,PSを認めたものが8関節あった.【考察】ステムの固定性が術後成績に与える影響は大きく,一般的にセメントレス人工骨頭の沈下率は10-15%であり,本研究ではsinkingを認めた症例はなく,良好な成績と考えられた.【結語】骨質不良が比較的多いと考えられる高齢者に対して短期固定性の確保のためカラードステム使用も選択の一つと考えられた.

  • 三溝 和貴, 穂積 晃, 木寺 健一, 千葉 恒, 前田 純一郎, 中山 宗郎, 尾﨑 誠
    2018 年 67 巻 2 号 p. 325-328
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    人工股関節周囲の腫瘤ではadverse reaction to metal debris(ARMD)や軟部腫瘍,血腫,感染等を鑑別する必要がある.人工股関節置換術後に鼠径部偽腫瘍を生じた2例を経験したので報告する.症例1:79歳女性.4年前に右人工股関節全置換術施行.誘因なく右下肢腫脹あり受診.画像検査では右股関節前方の嚢胞状腫瘤による大腿静脈の圧排を認め,腫瘤切除と再置換術をおこなった.病理でARMDと診断した.症例2:73歳女性.3年前に前医で右人工股関節全置換術おこなわれている.転倒後より右鼠径部痛あり,その後右下肢腫脹が出現.右股関節前方の嚢胞状腫瘤による大腿静脈の圧排を認め,腫瘤切除と再置換をおこなった.病理ではchronic expanding hematoma(CEH)の診断であった.術前検査で両者の鑑別は困難であった.確定診断には腫瘤切除と病理診断が必須である.

  • ―整形外科外傷を中心に―
    城下 卓也, 井本 光次郎, 岡野 博史, 細川 浩, 林田 洋一, 岡村 直樹, 岡田 二郎, 宮本 和彦, 本多 一宏, 佐久間 克彦, ...
    2018 年 67 巻 2 号 p. 329-331
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    2016年4月の熊本地震により被害の大きかった益城町,南阿蘇村,西原村から最も近い基幹災害拠点病院である当院では,発災後1週間で2,836人の患者を受け入れた.外傷手術の90%以上は整形外科関連であり,発災後1週間で37例の整形外科外傷手術を行った.家屋,ブロック塀の倒壊を原因とする開放骨折の手術が多かったが,一方で避難所での転倒を原因とする大腿骨近位部骨折などの脆弱性骨折の手術も多数行った.災害時の外傷手術対応の問題点として,手術室の稼働状況,余震による影響,手術インプラントの確保,入院病床の確保などが挙げられる.16日の本震により手術室機能の一部が停止したが,対応可能な緊急手術を引き続き行った.しかしながら,余震が続く影響で脊椎外傷と骨盤外傷は広域搬送とした.今回,被災地の基幹災害拠点病院において,多くの救急外傷対応と整形外科外傷手術を行った.発災直後の救急対応,外傷手術の内訳と問題点について報告する.

  • ―非手術例との比較―
    原口 和史, 吉野 興一郎, 日野 敏明, 細井 由美, 中野 唯, 鈴木 裕也
    2018 年 67 巻 2 号 p. 332-335
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】TKA術後は十分に膝関節機能(臨床評価と運動機能)を再建しているかを調査する.【方法】膝関節X線検査と運動機能検査を受けていた65~85歳の612例の外来通院患者を対象に,重症側膝関節のK-L分類を参考に,N群:膝OAなし(n=82),M群:軽度膝OA(n=82),S群:高度膝OA(n=190),UT群:片側TKA(n=115),BT群:両側TKA(n=143)の5群に分類.JOA Score,JKOM,膝屈曲角度,膝伸展筋力,下肢筋量,TUG(Timed Up & Go Test),OLST(One Leg Standing Time)を比較検討した.【結果】UT群,BT群は全ての項目でM群より劣っており,UT群の膝伸展筋力とTUG以外は有意差を認めた.BT群のOLSTはS群より有意に劣っていた.【結論】TKA例は全ての項目で軽度OA例に及ばず,「高齢者の正常膝」を再建できるとは言い難い.

  • 末永 英慈, 住吉 康之, 髙田 真一
    2018 年 67 巻 2 号 p. 336-341
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    大腿骨近位部骨折手術例における深部静脈血栓症と下肢周囲径の変化について検討した.2014年11月より2017年2月の手術例のうち,術前に下肢超音波検査にて深部静脈血栓症の有無を検索した59人(男性17人,女性42人,平均年齢84歳)を対象とした.術後2,7,14日に大腿近位部,下腿,足関節部の周囲径を計測,術前との差を検討した.新たな血栓を疑う場合は超音波検査を追加した.超音波検査にて59人のうち19人(32.2%),118肢のうち28肢(23.7%)に血栓を認め,そのうち遠位型,器質化を示す低リスク血栓は20肢,中枢型,多発,増大を呈した高リスク血栓は8肢(手術側3肢,非手術側5肢)であった.高リスク血栓群は,術後7日の大腿近位部の有意な周囲径増加を認めたが,下腿,足関節周囲径に明らかな傾向はなかった.術後の大腿近位部の周囲径増加は,高リスク血栓の存在を疑う必要があると思われた.

  • 末田 麗真, 溝口 孝, 小澤 慶一
    2018 年 67 巻 2 号 p. 342-346
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    アルカプトン尿症はホモゲンチジン酸酸化酵素の欠損によりホモゲンチジン酸が体内に蓄積する先天性代謝障害であり,常染色体劣性遺伝を示す稀な疾患である.今回,アルカプトン尿症性関節症に対して両人工膝関節全置換術(TKA),人工股関節全置換術(THA)を施行し良好な結果を得たため,若干の文献的考察を加えて報告する.【症例】62歳男性.乳幼児期から度々下着の変色の経験があったが放置していた.55歳時に近医での右肩手術後にアルカプトン尿症と診断された.2004年に両膝関節痛を主訴に当院を初診され,両側とも関節症性変化を認めTKAを施行した.術中所見で関節軟骨,軟骨下皮質,半月板,滑膜に黒色の色素沈着を認めた.2013年に右THA,2016年に左THAを施行し,同様に骨頭,臼蓋軟骨の黒色変色を認めた.いずれも術後患者満足度は高く良好に経過した.

  • 水光 正裕, 田口 勝規, 土居 満, 杉山 健太郎
    2018 年 67 巻 2 号 p. 347-349
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【はじめに】長期透析の合併症であるアミロイドーシスは,時に骨嚢胞を形成し,骨脆弱性による機能障害をもたらす.今回アミロイド骨嚢胞が原因と考えられた大腿骨頚部骨折の1例を経験したので報告する.【症例】透析歴17年の65歳,男性.2ヵ月前に自宅で転倒し,右股関節痛を生じるも歩行可能であったが,徐々に股関節痛は増強し,歩行困難となったため当院を受診した.X線検査で右大腿骨頚部から大転子にかけて骨透亮像を認め,CT検査で同部に頚部内側皮質の破綻を伴う骨嚢胞を認めた.骨接合は困難と判断し,セメント使用の人工骨頭を選択した.【病理所見】嚢胞内容物に,Congo Red染色陽性のアミロイド沈着を認めた.【考察】本症例の骨折は,アミロイド骨嚢胞による病的骨折と考えられた.長期透析患者では,大腿骨頚部に生じる骨嚢胞が骨折の原因となることがあるため,詳細な画像検査に加え,予防的手術も考慮する必要があると考える.

  • 原口 和史, 吉野 興一郎, 濱崎 将弘, 永吉 信介, 家入 雄太, 日野 敏明, 松浦 恒明
    2018 年 67 巻 2 号 p. 350-353
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】サルコペニア肥満と変形性膝関節症(膝OA)の重症度との関連を調査する.【方法】著者の外来通院患者データベースより,膝関節X線検査とDXAによる全身スキャンを受けていた194例を,重症側のK-L分類により,N群:膝OAなし(n=46),M群:軽度膝OA(n=41),S群:高度膝OA(n=107)の3群に分類.四肢筋量(SMI/H2,SMI/W),体脂肪率(F%)およびサルコペニア肥満の有病率を比較検討した.【結果】SMI/H2,SMI/W,F%などのすべての項目でN,M群間には有意差なく,S群とN,M群間とは有意差を認めた.なお,F%とSMI/Wとは負の相関をしていた.サルコペニア肥満の有病率は筋量をSMI/Wで評価するとN群2.2%,M群4.9%,S群16.8%で高度OA群が高値であった.【結論】重症膝OAではサルコペニア肥満との関連が示唆された.

  • ―Image free navigationを用いた検証―
    清原 壮登, 城戸 秀彦, 加茂 健太, 城戸 聡, 太田 昌成
    2018 年 67 巻 2 号 p. 354-357
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)においてimage free navigation system(以下Navi.)を使用し,大腿骨遠位・前方,脛骨近位の術中骨切り手技の誤差について検討した.【対象】内側型変形性膝関節症に施行したTKA 67膝とした.男性17膝,女性50膝,平均年齢は78歳であった.【方法】Navi.にて大腿骨遠位・前方,脛骨近位の骨切り面を設定,それに合わせて骨切りガイドを設置して骨切りを行った.骨切り手技の精度をNavi.で検証し,目標の誤差1°未満になるまで骨切りを追加した.【結果】初回の骨切りで目標域に達した割合と誤差は,大腿骨遠位の矢状面における屈曲伸展角度で36%,伸展1.6°,内外反角度で76%,内反0.1°,大腿骨前方で63%,屈曲0.1°であった.また脛骨近位の後傾角度で81%,前傾0.5°,内外反角度で85%,外反0.1°であった.【結論】大腿骨遠位の矢状面における骨切りはガイドの設置より伸展位となる傾向が強く,骨切りの際には特に注意を払う必要がある.

  • 太田 昌成, 城戸 秀彦, 加茂 健太, 城戸 聡, 清原 壮登
    2018 年 67 巻 2 号 p. 358-363
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    【目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)術後疼痛における持続大腿神経ブロック,坐骨神経ブロックの有用性と問題点について関節周囲多剤鎮痛カクテル注射と比較検討を行った.【対象】当院にて2014年12月よりTKAを施行した63膝(ブロック群22膝,カクテル群41膝)を対象とした.【方法】検討項目はVAS scale(術直後,3時間,6時間,翌日,3日後,4日後,7日後,14日後,退院時),歩行開始までの日数(歩行器見守り,歩行器自立,1本杖見守り,1本杖自立),入院日数,麻酔開始から執刀開始までの時間,術後鎮痛薬使用回数とした.【結果】術直後のVAS scale,術後鎮痛薬使用回数はブロック群が有意に少なく,1本杖見守りまでの日数,麻酔開始から執刀開始までの時間はカクテル群が有意に少なかった.【考察】ブロック群は鎮痛効果が大きいものの手術室滞在時間延長やリハビリテーションの遅れにつながる可能性が示唆された.

  • 当真 孝, 山口 浩, 森山 朝裕, 大湾 一郎, 金谷 文則
    2018 年 67 巻 2 号 p. 364-366
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    外傷後急速に破壊が進行した肩関節症に対し,人工肩関節全置換術を行った症例を報告する.84歳,女性.1.5カ月前に転倒,右肩関節を打撲した.近医を受診し単純X線像では異常は指摘されなかった.その後,疼痛が増悪したため,当院を紹介された.初診時所見は,肩関節屈曲10度,外旋-30度,内旋L1,JOA scoreは36点であった.当院初診時単純X線像,CTでは上腕骨頭の扁平化,関節窩骨欠損を認めたが,MRIでは腱板断裂を認めなかった.急速破壊型関節症と診断し,関節窩骨欠損部への骨頭骨移植を併用した人工肩関節置換術を施行した.術後24カ月で疼痛はなく,肩関節可動域は屈曲130度,外旋40度,内旋L1(健側は屈曲130度,外旋40度,内旋Th8)でJOA scoreは85点まで改善した.

  • 中島 三郎
    2018 年 67 巻 2 号 p. 367-370
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端骨折に対して,整容的アプローチとして2ヵ所の横皮切による掌側ロッキングプレート固定を行った.症例は15例.男1例,女14例,右7例,左8例,手術時年齢は56~82歳(平均70.1歳),受傷から手術までの期間は平均1.4日.骨折型は全例背側転位で,AO/OTA分類ではA2:1例,A3:4例,C1:1例,C2:6例,C3:3例であった.内固定には全例HEARTY PLATE®を使用した.観察期間は4~54ヵ月(平均20.8ヵ月)であった.最終観察時のX線像の平均値は,RI:24.1°,VT:11.5°,UV:0.5 mmと良好なalignmentが得られた.術後に正中神経領域のしびれを2例に生じたが,術後4ヵ月までに完全に回復した.手術創瘢痕に肥厚性瘢痕を生じたものはなく,患者の満足度は高かった.

  • 小倉 友介, 吉田 史郎, 仲摩 憲次郎, 松浦 充洋, 白濵 正博, 川﨑 優二, 秋吉 寿, 中江 一朗, 志波 直人
    2018 年 67 巻 2 号 p. 371-375
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    前腕デグロービング損傷に伸筋腱損傷をともなう橈骨開放骨折に対して,骨軟部組織再建および一期的に腱移行を施行し,良好な成績を得たので報告する.【症例】35歳,女性,普通乗用車同士の交通事故にて右前腕を車外に押し出され受傷した.前腕は広範なデグロービング損傷であり,長母指伸筋腱(EPL)断裂,橈骨遠位端開放骨折を認めていた.2回のデブリードメントを施行し,陰圧閉鎖療法(NPWT)を併用し受傷後14日目に一期的に再建術を施行した.手術は骨折部をプレートにて固定し,EPL断裂部は固有示指伸筋(以下EIP)を腱移行した.皮膚欠損部は前外側大腿皮弁術および全層植皮術にて再建した.術中,皮弁の血流増悪認め再度血管吻合したが,その後の血流増悪は認めなかった.術後は2週間シーネで固定し,以降より可動域訓練開始した.術後5週目には自動車運転が可能な程度まで改善した.

  • 岩崎 元気, 阿久根 広宣, 松口 俊央, 松下 優, 馬場 省次, 中川 剛, 小田 竜, 菊池 直士
    2018 年 67 巻 2 号 p. 376-379
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    下垂足で発症したChurg-Strauss症候群の一例を経験した.【症例】72歳男性.気管支喘息に対して治療が開始された3ヶ月後,両下肢の痛み,しびれ,右下垂足が出現した.腰椎レベルでの障害を疑い腰椎MRI撮影を行った.腰椎MRIではL4/5高位に椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症を認め,腰椎疾患に伴う症状を疑った.手術を念頭に置いて術前検査を行ったところ,WBC 24520/μl(好酸球78.4%)で著明な末梢血好酸球の増加を認めた.先行する気管支喘息,血管炎症状が確認されたため,Churg-Strauss症候群と診断した.治療はステロイドパルス療法と免疫グロブリン大量療法を行い,歩行可能となった.【考察】気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行症状としてあり,好酸球増多や多発単神経炎を認めた場合Churg-Strauss症候群の可能性を考慮するべきである.

  • 田中 希, 小島 安弘, 小島 隆治, 熊谷 優
    2018 年 67 巻 2 号 p. 380-385
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    高齢者の転位型寛骨臼骨折に対して手術侵襲の低減と必要十分な固定を考慮し,iliofemoral approach(以下IFA)によるcolumn screw fixationを行った一例を経験したので報告する.症例は74歳の女性であり,立位から転倒し左寛骨臼骨折(AO分類:62-C2.2,Letournel分類:T型骨折,前壁骨折)と左仙骨骨折を受傷した.受傷8日にIFAで展開し,後柱・恥骨・前壁をそれぞれスクリューで固定した.手術時間192分,出血量360 mlであった.術後経過は問題なく,荷重歩行が可能となった.高齢者の転位型寛骨臼骨折は前方要素の骨折を伴うことが多く,保存治療では機能予後が不良である.全身状態が許せば解剖学的整復を目指すべきであるが,高齢者に対する観血的手術は平均手術時間236分,出血量707 mlとの報告もあり,その侵襲は大きい.本法は侵襲に配慮した上で必要十分な固定が可能と思われ,高齢者に対する治療選択肢の一つとなりうると考えられた.

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