整形外科と災害外科
Online ISSN : 1349-4333
Print ISSN : 0037-1033
ISSN-L : 0037-1033
71 巻, 1 号
選択された号の論文の40件中1~40を表示しています
  • 木下 浩一, 坂本 哲哉, 瀬尾 哉, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】50歳未満に対する人工股関節全置換術(THA)の長期成績を調査した.【対象及び方法】2000年1月から2005年12月までに当院でTHAを行った50歳未満かつ10年以上経過観察が可能であった患者を対象とした.結果に記載する評価項目を調査した.【結果】患者データは51例59股(男:20股,女:39股),手術時平均年齢42.7歳,手術時平均Body mass index 23.9kg/m²,術後平均観察期間は15.8年であった.固定性はカップ1股,ステム1股でunstableであり,いずれも再置換術を行った.1股でライナー摩耗に対する再置換術を行った.術後15.8年で非感染性のゆるみに対する再置換術をエンドポイントとした1)カップの生存率は98.2%(95% confidential interval(CI):94.7-100%),2)ステムの生存率は97.3%(95% CI:92.1-100%)であった.脱臼を1股で認め,深部感染を認めなかった.日本整形外科学会股関節機能判定基準は術前平均49.6点から最終経過観察時平均85.5点へ有意に改善した.【結語】50歳未満に対するTHAのインプラント生存率,脱臼率は,過去の報告および,50歳以上を含む集団の報告と同等であった.

  • 久米 慎一郎, 原口 敏昭, 山木 宏道, 林田 一友, 後藤 昌史, 大川 孝浩, 志波 直人
    2022 年 71 巻 1 号 p. 4-6
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】若年者に対して施行したTHRの患者背景,治療成績を検討し,長期安定した成績を得るための条件(考え方)を考察した.【対象と方法】2008年12月以降,当院で行った40歳以下(平均年齢33歳:最年少16歳)のTHR症例,51例に関して調査した.術後合併症,JOAスコア,再置換の有無,使用機種に関して検討した.【結果】原疾患はION 31例,OA 16例,RA 2例,血友病性関節炎2例,両側例は7例であった.術後合併症はカップの脱転(血友病例)を1例に認め,再置換術を行った.無菌性の緩み,脱臼,感染,骨折の合併症は認めなかった.使用機種は,ハイブリッドTHRが41例(Exeter stem 35例 SC stem 5例 CMK stem 1例)セメントレスTHRが10例(MIA stem 9例 Centpillar stem 1例)であった.【考察】若年者THRにおいては,再置換術を考えた機種選択,手術時期を十分考慮し,長期経過観察の必要性を説明することが重要である.

  • 上妻 隆太郎, 土井 俊郎
    2022 年 71 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】胸腰椎移行部の骨粗鬆性椎体骨折(Osteoporotic vertebral fracture;OVF)に対してBalloon Kyphoplasty(BKP)に後方フック固定を併用し良好な成績を得られたので報告する.【方法】神経症状を呈した胸腰椎移行部OVF症例7例(フック併用群;女性7例,平均年齢85.4歳)にBKP後に上位椎体の棘突起,下位椎体の椎弓にフックをかけロッドを締結した.同椎体レベルでBKPのみを施行した症例19例(BKP群;男性3例,女性16例,平均年齢79.5歳)と術後局所後弯角の臥位/坐位の差,隣接椎体骨折・再手術の有無を比較した.【結果】術後局所後弯角の臥位/坐位の差はフック併用群で4°±0.7 S.D., BKP群で9.6°±6.1 S.D.でフック併用群の安定性が優れていた(p<0.01).隣接椎体骨折はフック併用群で1例,BKP群では10例でうち4例に追加のBKPを施行した(有意差なし).【結論】後方フック固定を併用したBKPは制動性に優れ,隣接椎体骨折の抑制効果が期待できる.

  • ―高齢者に対して低侵襲な術式を探る―
    山下 彰久, 渡邊 哲也, 太田 浩二, 原田 岳, 橋川 和弘, 田所 耕平, 前田 稔弘, 川本 浩大, 徳永 修
    2022 年 71 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対する手術においては可能な限りBKPを行っている.しかし,椎体圧潰や神経障害では脊柱再建術が適応となる.今回我々は夫々の侵襲を調査した.【対象と方法】対象は2016年1月から2020年12月まで,70歳以上のOVFに対し脊柱再建術を施行した41例(男5女36,平均年齢80.1歳).術式は椎体形成+オープン後方固定(固定群)18例,前方VCR(vertebral column resection)(A-VCR群)9例,後方VCR(P-VCR群)14例で,手術時間,出血量,合併症に加えADL改善や画像所見も加味し侵襲について比較検討した.【結果】手術時間は固定群185分,A-VCR群304分,P-VCR群278分で固定群が有意に短かった.術中出血量は固定群179g,A-VCR群117g,P-VCR群483gでP-VCR群が有意に多かった.合併症は術後感染をP-VCR群に2例,術後の肺塞栓症による死亡を固定群に1例認めた.【考察】再建が必要な場合,固定群が比較的低侵襲であることが示唆された.しかし,いずれにおいても周術期合併症には注意を要する.

  • 井上 三四郎
    2022 年 71 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で経験した肘頭骨折とそれに引き続き生じた脱臼の診断遅延を振り返ること.【症例】76歳,女性.統合失調症の既往あり.軽自動車運転中の自損事故,ドクターカーが出動し,救急救命科医が初療にあたった.当院搬送後に精査を受け,総合診療科へ入院した.3日目に当科コンサルト,肘頭骨折と診断した.初日のCTレポートで既に骨折は指摘されていた(この時脱臼はなし).3日目に術前作図のためレントゲンが撮影され脱臼していたが,翌日に別の整形外科医に指摘されるまで脱臼に対する治療は行われなかった.【考察】要因として,CTレポートの未確認以外に,不適切なレントゲンの撮影部位,不十分なセカンダリーサーベイ,多忙な勤務状態,種々の認知バイアス,不十分な監督体制,コミュニケーション不足などが挙げられる.要因は多様であり解決策も多彩であるが,その一つとして多職種連携を挙げたい.

  • 川谷 洋右, 福田 雅俊
    2022 年 71 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】87歳・女性.左大腿骨転子部骨折の術後にデノスマブを投与,アルファカルシドールを併用した.投与後6日に血清補正カルシウム(Ca)値は8.0mg/dLまで低下したが,2週で11.2まで上昇したためアルファカルシドールは中止とした.術後2ヶ月意識障害で搬送時,補正Ca値は7.0と著明に低下,intact PTH(i-PTH)400pg/mLと高値を認めた.二次性(腎性)副甲状腺機能亢進症と診断,アルファカルシドールを再開しCa製剤を開始した.Ca値は速やかに回復し,1ヶ月後にi-PTHは81まで低下した.【考察】本症例は副甲状腺機能亢進による骨代謝高回転がベースにあり,デノスマブ投与で骨吸収が急激に抑制されたため著明な低Ca血症を発症したと考えられた.本骨折を起こす高齢者は腎機能障害を有する割合が高く,デノスマブ投与前にi-PTH測定するなど対策が必要かもしれない.

  • 小西 俊己, 竹内 直英, 小薗 直哉, 花田 麻須大, 堀田 忠裕, 池村 聡, 赤崎 幸穂, 藤原 稔史, 津嶋 秀俊, 山田 久方, ...
    2022 年 71 巻 1 号 p. 29-30
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(以下RA)患者において,Sauvé-Kapandji法(以下,SK法)術後3年以上経過後のX線学的変化を検討すること.【対象と方法】2007年から2019年にSK法を施行したRA17例18手の内3年以上の経過観察をし得た6例6手である.全例女性,手術時平均年齢は60歳(45-70歳),平均経過観察期間は100か月(36-160か月)であった.術後1週,最終経過観察時の単純X線を用いてCarpal height ratio(CHR),Palmar carpal subluxation ratio(PCSR),Ulnar translation index(UTI)の各値について術後1週を1とし変化率を評価した.また,この6例を含む17例18手について,術前と術後1週にて術前を1とし変化率の評価を行った.統計学的検討にはWilcoxon検定を用いて5%未満を有意差ありとした.【結果】術後1週と最終経過ではCHRは-1%,PCSRは+7%,UTIは+23%であり,UTIにて有意差を認めた(p=0.0028).また術前と術後1週の比較ではCHRは-4%,PCSRは+11%,UTIは±0%であり,PCSRのみ有意差を認めた.【考察】RAにおけるSK法では3年以上の経過例で,術直後に対して尺側偏位が進行することが示唆された.

  • 朝永 育, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司
    2022 年 71 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】75歳女性.右膝腫脹と疼痛による歩行困難を認めた.他院で左人工膝関節術後感染があり,当院で感染治療を行った既往がある.感染治療後の抗菌剤アレルギーによる好酸球増多症に対してステロイド内服加療中に右膝の巨大滑液包による膝関節炎と関節破壊を認めた.血液生化学所見で有意な自己抗体は認めず術前に確定診断に至らなかった.術前関節液培養と術中滑膜の細菌迅速検査で陰性を確認し右人工膝関節置換術を行い術後1年経過良好である.術後の多関節症状出現により血清反応陰性関節リウマチの診断となった.【考察】巨大滑液包による関節炎は疼痛を伴いADL低下の原因となる.治療については関節破壊を伴う場合は人工膝関節置換術が選択されるが,原疾患についても多岐にわたり完全な感染の否定は困難である.本症例では,血清反応陰性関節リウマチによる膝関節炎と診断された.人工膝関節置換術後1年経過は良好である.

  • 水田 康平, 仲宗根 素子, 高江洲 美香, 小浜 博太, 宮田 佳英, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    2歳,女児.1mの高さの遊具から転落し,Gartland分類3型の右上腕骨顆上骨折を受傷.初診時pulseless pink handを認めた.神経障害の評価は困難であった.鎮静下で徒手整復を行ったが,整復位保持は不能であった.入院後上腕シーネ固定し,翌朝手術を施行した.エレバトリウムを用いて整復,pinningを行い整復位は良好であったが,橈骨動脈は触知せず,エコーで骨折部での血管途絶を認めた.肘関節前方アプローチで血管展開を追加し,上腕筋・上腕動静脈の骨折部への嵌入を認めた.嵌入を解除後も橈骨動脈は触知不可であったが,エコーにて骨折部以遠で拍動の改善を認めたため,血行再建は行わず経過観察とした.術後2日で橈骨動脈の触知が可能となり,術後3日で上腕ギプス固定とし,退院とした.術後2か月で骨癒合が得られ,Baumann角80°,carrying angle 4°,tilting angle 46°であった.術後3か月,伸展0°/屈曲140°,回内90°/回外90°で神経障害はなく,橈骨動脈の拍動に左右差は認めなかった.

  • 園田 裕樹, 佐藤 陽昨, 中川 憲之, 竹下 都多夫, 島田 信治, 井原 和彦, 松本 直之
    2022 年 71 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児膝蓋骨sleeve骨折は上極と下極に好発するが,外側の報告は非常に少ない.今回我々は稀な小児膝蓋骨外側sleeve骨折の1例を経験したので報告する.【症例】11歳男児,体育の授業中真っすぐ走っていたところ右膝に轢音とともに疼痛が出現した.前医を受診しX線,超音波検査にて右膝蓋骨外側sleeve骨折の診断でknee braceによる保存加療を行っていた.受傷から1週間後転位増悪したため加療目的に当院紹介となった.CTとMRIにて4mm転位した骨片とそれに伴う関節面の不整を認めたためpull-out法を用いた骨接合術を行った.関節鏡にて骨接合前後で骨折部のtiltが改善したことを確認した.術後疼痛は消失し,術後2週からROM訓練,術後4週から部分荷重を開始した.術後8週で骨癒合を得た.【考察】外側膝蓋支帯の牽引による小児膝蓋骨外側sleeve骨折と思われた.過去の報告通り超音波検査とMRIが診断に有用で,転位が大きい場合は骨接合術が有効と思われた.

  • 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    [はじめに]今回,腫瘍用人工膝関節挿入術後20年以上経過観察出来た3症例について検討した.[症例と結果]1991~2000年に腫瘍用人工膝関節(TKA)挿入術を行い,当科外来にて経過観察を継続している3症例を対象とした.症例は全例女性で,初診時年齢は13,16,25歳(平均18歳)であった.診断は悪性線維性組織球腫腫1例,骨肉腫2例であった.Howmedica modular resection system(HMRS)TKA術後経過観察期間は,20~29年(平均24年)であった.最終経過観察時膝関節可動域の平均は伸展0度,屈曲40度で,2例は独歩可能であったが1例は長下肢装具を装着し1本杖歩行であった.X線上緩みはなかったが,大腿骨に萎縮を認めた.[考察及びまとめ]腫瘍用TKAの長期成績の報告は少ない.今回術後20年を経過した症例は全例女性で,膝関節屈曲が不良であったが,人工関節の緩みは無く,就業出来ていた.

  • 岩永 隆太, 三原 惇史, 坂井 孝司, 村松 慶一
    2022 年 71 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    (はじめに)末梢動脈から発生する動脈瘤の原因として,動脈に対する鈍的外傷または貫通性の外傷,医原性,腫瘍による占拠性病変が報告されているが,稀に外傷歴なく発症する場合もある.軟部腫瘍との鑑別を要した動脈瘤2例を報告する.(症例1)84歳女性.外傷歴無く10か月前より増大する左大腿近位後面の軟部腫瘍のため来院した.画像所見で10cm大の石灰化を伴う軟部腫瘍があり,切開生検を行ったところ止血困難であった.生検結果は血管壁であり動脈瘤と診断し塞栓術を行い,腫瘍は消退した.(症例2)69歳女性.外傷歴無く2か月前より増大する右大腿近位前面の7cm大の軟部腫瘍のため来院した.造影MRIで造影効果が高い部分があり,さらに大腿深動脈と連続性があったため追加で造影CT,CT-angioを行った.動脈瘤と診断し塞栓術を行い,腫瘍は消退した.(結論)軟部腫瘍の鑑別に動脈瘤も挙げることが肝要である.

  • 久保田 悠太, 田仲 和宏, 岩﨑 達也, 河野 正典, 糸永 一朗, 津村 弘
    2022 年 71 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【背景】進行軟部肉腫に対する一次治療の標準はドキソルビシンであるが,二次治療以降の標準は未だ定まっていない.エリブリンはL-sarcomaを対象とした第3相試験において有効性が証明されている.今回当科におけるエリブリン使用例について検討したので報告する.【対象・方法】2016年11月~2020年6月に当科で進行軟部肉腫に対してエリブリン投与を行った7例で,平均年齢は64.0歳,病理診断は脱分化型脂肪肉腫3例,類上皮肉腫2例,粘液型脂肪肉腫1例,未分化多型肉腫が1例であった.【結果】OS中央値は11.0ヶ月,PFS中央値は3.2ヶ月,投与回数中央値は3コースであった.奏効例はなく,12週DCRは57%だった.Grade 3以上の有害事象は貧血7%,白血球減少23%,好中球減少20%,肺炎,気胸が1例ずつあったがいずれも回復していた.【考察】エリブリンの腫瘍縮小効果は弱いが一定期間の病勢コントロールが得られ,高齢者でも比較的安全に使用できる薬剤と考えられた.

  • 櫻井 立太, 中村 哲郎, 坂井 崇一郎, 松口 俊央, 畑中 敬之, 伊藤田 慶, 河野 裕介, 土持 兼信, 岩崎 賢優, 土屋 邦喜
    2022 年 71 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院の化膿性脊椎炎症例について調査したので報告する.【対象・方法】化膿性脊椎炎の診断で入院加療を行った48例を対象とした.男性28例,女性20例,平均年齢74.4歳,平均経過観察期間は217日であった.基礎疾患の有無,罹患部位,起炎菌,検査(血液・椎間板培養,心エコー,造影CT),合併症,転機等を調査した.【結果および考察】基礎疾患は糖尿病22例,心血管疾患12例,血液透析9例であった.起炎菌はMSSA 7例が最も多く,60.4%で同定できた.罹患部位は頚椎3例,胸椎14例,腰椎31例であった.血液培養42例,椎間板培養26例,心エコー27例,胸腹部造影CT検査16例が施行されていた.抗菌薬投与期間は平均96日であり,44例が軽快し,内科疾患の増悪等により4例が死亡退院となった.化膿性脊椎炎治療は菌の同定,抗菌薬加療であり,感染性心内膜炎や多発膿瘍などの合併症評価も重要である.主治医による差をなくし,系統的な治療を行う必要がある.

  • 北堀 貴史, 森 治樹, 池尻 洋史, 福永 幹, 神谷 俊樹, 塩月 康弘
    2022 年 71 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    近年,骨軟部組織感染症に対する新しいdrug delivery systemとして局所高濃度抗菌薬灌流療法(intrasoft tissue antibiotics perfusion; iSAP/intra-medullary antibiotics perfusion;iMAP)が報告され良好な成績を得ている.当院でも骨折観血的手術後の深部感染及び化膿性関節炎など計4例(iSAP 3例,iMAP 1例)に同治療を行った.手術室での十分なdebridementおよび全身抗菌薬投与に加えiSAP/iMAPを併用した.局所に投与する抗菌薬はゲンタマイシンを選択し,全身に投与する抗菌薬は細菌培養検査の感受性に応じて適宜変更を加えた.全例でゲンタマイシンによる副作用は認めず,感染再燃なく治療しえた.iSAP/iMAPは骨軟部組織感染症に対するdrug delivery systemとして有用な選択肢と考えられる.

  • 渋田 祐太朗, 生田 拓也, 沼田 有生, 小笠原 正宣
    2022 年 71 巻 1 号 p. 66-68
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    鎖骨骨折術後感染に対してのiMAPを用いて治療を行った.症例は19歳 男性.サッカー中に転倒受傷し,前医にて左鎖骨骨幹部骨折の診断でロッキングプレートによる骨接合術後,感染を認め,加療されていたが改善せず,術後1ヶ月で当院紹介となった.受診時,創部は発赤,熱感を認め,また不良肉芽が出現していた.少量であったが漿液性滲出液を認めた.X線所見では骨癒合は認めていない状態であった.採血ではWBC 6910/μl,CRP 0.86mg/dlだった.前医創部培養からPropionibacterium acnesが検出され,起炎菌と考えられた.入院後,iMAP(intra-medullar antibiotic perfusion)による加療を行った.iMAP術後11日目にチューブ抜去し,術後15日目に創部改善確認し,自宅退院となった.比較的髄腔径の小さい鎖骨に対してもiMAPによる治療は可能であり,有効な治療の一つとして考えられた.

  • 徳丸 達也, 籾井 健太, 屋良 卓郎, 花田 麻須大, 中島 康晴
    2022 年 71 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    Sweet病とは好中球浸潤を伴う皮疹を有する好中球性皮膚症の1つである.皮膚壊死様外観を呈した場合に重症皮膚軟部感染症との鑑別に難渋する.今回,急性骨髄性白血病に伴ったSweet病の症例を経験したので報告する.症例は66歳男性.左手を金槌で打撲し受傷.左母指球部に血腫を形成し前医での加療が行われた.治療中の血液検査から血液疾患が疑われ,精査の結果,急性骨髄性白血病の診断となった.左母指球部の血腫部は潰瘍を形成し,手関節周囲まで病巣の拡大を認めた.広域抗生剤での加療を行ったが,翌日に前腕部へ色調不良部位の拡大認め,緊急で洗浄・デブリードメント・筋膜切開を施行した.術翌日からステロイド投与を開始し,創閉鎖を得られた.好中球性皮膚症にて皮膚壊死を呈した患者の多くが壊死性筋膜炎と誤診され,適切な治療が遅れたと報告されている.皮膚壊死疾患の鑑別として好中球性皮膚症を念頭におく必要がある.

  • 伊波 優輝, 我謝 猛次, 大島 洋平, 金城 健, 仲宗根 哲, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    非定型抗酸菌症(Nontuberculous Mycobacterium:以下NTM)が全身性に播種することは稀で治療に難渋する.今回,全身性非定型抗酸菌脊椎炎・関節炎に対して8回の手術を行ったので報告する.潰瘍性大腸炎のため約6年間ステロイド内服しており,56歳時に全身の関節に症状が出現し,57歳時に行った左肘頭部への穿刺でNTM(検出菌:Mycobacterium intercellulare)が確認された.左上肢病変に対し左肘滑液包切除,左手背腱鞘切除術,腰椎炎に対し腰椎前後手術,左股関節炎に対して左股滑膜切除を行った.左股滑膜切除後1年で亜脱臼と骨頭圧潰に対して左人工股関節置換術(THA)を行った.その14ヵ月後,胸椎炎に対して胸椎前後手術を行った.更に半年後に腰椎炎の再燃に対して再掻爬と固定術を行い,歩行器歩行が可能となり退院した.

  • 吉村 優里奈, 水溜 正也, 井上 哲二, 畠 邦晃, 川谷 洋右, 中西 浩一朗, 阿部 靖之
    2022 年 71 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】79歳女性【臨床経過】腰臀部痛を主訴とする左腸腰筋膿瘍に対して当院でX-10年にエコーガイド下ドレナージ術及び抗生剤治療,X-1年に左腸腰筋膿瘍とL2.3椎体炎を指摘され抗生剤内服で軽快し経過していた.今回腰臀部及び左大腿外側部痛の訴えがありMRIで左腸腰筋膿瘍の増大及びL2.3椎体炎,硬膜外膿瘍を指摘され近医より紹介となった.CTガイド下ドレナージを行い10ml程度の黄白色の膿汁を採取した.抗酸菌検査で結核菌PCR陽性を確認し,イソニアジド,リファンピシン,エタンブトールによる結核治療を開始した.結核の既往や曝露歴はなく,胸部X線とCTで肺結核の指摘はなかった.また,一般細菌検査は陰性だった.椎体炎に対してコルセット及び床上安静での保存療法を行なった.【考察】今回紹介時まで抗酸菌検査を行っておらず,既往の腸腰筋膿瘍が結核菌によるものかは不明だった.数年に渡り繰り返す腸腰筋膿瘍では結核も原因菌として鑑別に挙げる必要がある.

  • 松浦 充洋, 吉田 史郎, 仲摩 憲次郎, 岡崎 真悟, 志波 直人, 白濱 正博
    2022 年 71 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】デグロービング損傷では剥脱した皮膚をそのまま縫合すると,大部分の皮膚が壊死に陥ることがあり,初期治療範囲の決定が困難である.今回,デグロービング損傷を伴う下腿開放骨折の1例を経験し,遊離広背筋皮弁での軟部組織の治療を行い,良好な経過を得たため報告する.【症例】25歳,男性.自転車で走行中にトラックに巻き込まれ当院搬送となった.下腿に皮膚欠損(5×10cm)とデグロービング損傷(20×30cm)を認めていた.単純X線ではAO分類42B1を呈しており,Gustilo分類は3B,土田分類:第3群であった.受傷同日にデブリードマンと創外固定を行い,受傷後2日目に腓腹筋内側頭とヒラメ筋による筋弁を行った.筋弁後7日目に内固定を行うも筋弁部は徐々に壊死傾向を認めたため受傷後16日目に遊離広背筋皮弁を行った.軟部組織の生着は良好で術後5か月で走ることも可能となった.【考察】皮膚欠損を伴う開放骨折の治療はFix & Flapが主流だが術者や時間などの制約が多くハードルが高いのが現状である.軟部組織の生存範囲の決定は今後の検討課題であるがFix followed by flapにより感染を増悪させずに良好な結果が得ることができた.

  • 千々岩 芳朗, 金澤 和貴, 戸倉 晋, 泉 秀樹
    2022 年 71 巻 1 号 p. 89-90
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    100歳以上の大腿骨近位部骨折9症例9股の術後生命予後と歩行能力の変化について検討した.術後30日以内死亡率は22.2%で,平均余命は1.77年であった.術後歩行再獲得率は43%であり,術前より約1.3段階の歩行能力の低下を認めた.100歳以上の超高齢者であっても生命予後及び術後歩行再獲得率が有意に低下するわけではなく,充分な術前評価と周術期管理を行った上で積極的に手術療法を行うべきであると考えられる.

  • 井手 貴之, 土持 亨, 川上 広高, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    Pilon骨折は軟部組織障害の合併や固定手技の難しさから治療に難渋することが多い.プレート固定が主流の本骨折に対し髄内釘固定を行った2症例について報告する.1例目は68歳女性,高所より転落し受傷.AO分類43-C1の閉鎖骨折で,主骨折線の関節面からの距離は23mmであった.2例目は76歳女性,バイク事故で受傷.AO分類43-C1の閉鎖骨折,主骨折線-関節面距離は24mmであった.いずれも外側傍膝蓋アプローチ,Stryker社T2 Alpha Tibia Nailing Systemにて内固定を施行.それぞれ術後6週より荷重開始し,皮膚軟部の合併症なく骨癒合が得られた.今回の2症例においては,術前計画で遠位に最低2本のスクリューが挿入可能と判断し髄内釘固定を選択した.さらに遠位スクリューにロッキング機構を有する髄内釘を使用し,関節面骨片固定にCCSを追加することで固定力を強化した.生物学的活性を保てることが骨癒合及び皮膚軟部組織温存に有利に働き,髄内釘は本骨折において有用な固定法であると言える.

  • 今村 清志郎, 青野 誠, 中原 寛之, 田中 哲也, 入江 努, 糸川 高史, 齊藤 太一
    2022 年 71 巻 1 号 p. 95-97
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【背景】鎖骨骨折は成人の全骨折の2.6%,小児の全骨折の10-15%を占める非常に一般的な骨折であるが1),同一鎖骨内に複数ヶ所の骨折を合併することは稀である2)3).今回我々は鎖骨骨幹部骨折と遠位端骨折を合併した稀な症例を経験したので報告する.【症例】50歳男性.路上を歩行中にふらつき転倒し受傷.X線にて左鎖骨骨幹部骨折と遠位端骨折を認めた.入院翌日に骨接合術(骨幹部はプレート固定,遠位端はtension band wiring)を施行した.術後経過は良好で,術後1週で自宅退院となった.術後7ヶ月の時点で,左肩関節の可動域に制限なくX線学的にも経過良好である.【考察】鎖骨骨幹部骨折と遠位端骨折を合併することは比較的稀であるが,起こり得る1つの骨折型として認識しておく必要がある.若干の文献的考察を交え報告する.

  • 白濵 善彦, 平川 洋平, 南谷 和仁, 橋田 竜騎, 志波 直人
    2022 年 71 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的稀な外傷である遠位上腕二頭筋腱断裂の1例を経験したので報告する.【症例】54歳男性,運送業で荷下ろし中に右肘痛出現し近医を受診後5日後に当院を受診した.初診時,右肘関節前方の痛みあり.病歴より遠位上腕二頭筋腱断裂を疑い,MRIにて診断した.受傷後10日目に手術を施行した.手術は肘関節前外側侵入にて展開,上腕二頭筋腱は遠位断端で完全断裂しておりKrackow sutureを行い,橈骨粗面にtension slide techniqueを用い,腱固定をinterference screwで固定した.【考察】本疾患に対する断裂腱の固定法について,bone tunnel法・suture anchor法・endbutton法の中でendobuttonが最も強いとされており,本症例にendbuttonを用いtension slide techniqueを選択しさらにinterference screwを追加補強し術後1年で良好な結果が得られたが骨孔の拡大がみられた.

  • 生田 拓也
    2022 年 71 巻 1 号 p. 103-105
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【要旨】踵骨骨折術後変形治癒例に対して手術治療を行ったので報告した.症例は3例である.受傷時の骨折型はSanders分類に従うとⅡA:2例,ⅢAB:1例であった.3例とも初回は前医にて手術治療が施行されていた.初回の手術方法は3例とも経皮的もしくは小切開の上,K-wireもしくはCCSにて固定が行われていた.全例足関節痛を主訴として受診した.診察所見では外顆および踵部外側壁の圧痛を認めた.CT所見では全例骨癒合は得られていたが踵骨外側壁の膨隆および腓骨筋腱母床部の骨片の突出もしくは遊離骨片が認められた.全例,外側壁膨隆部の骨切除,腓骨筋腱母床部の骨切除および骨溝作成を行った.全例,疼痛は軽快した.踵骨骨折において腓骨筋腱母床部の骨片突出および外側壁の膨隆を放置すると愁訴が残存し,再手術の必要性が高くなりその整復が重要であると考えられた.

  • 吉里 広, 高橋 良輔, 鳥越 雄史, 中尾 公勇, 糸瀬 賢, 岩﨑 俊介, 池永 仁, 小島 迪子, 田中 奈津美, 馬場 秀夫, 小西 ...
    2022 年 71 巻 1 号 p. 106-108
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部骨折に対するshort femoral nailによる骨接合術でのCT計測による髄腔径と髄内釘遠位径の差(mismatch)がX線学的なパラメータに与える影響について検討する.【方法】2019年8月から2020年7月までに当院で大腿骨転子部骨折に対してinterTAN short femoral nailによる骨接合術が行われた54例(男3例,女51例)を対象とした.検討項目はCT計測による髄腔径と髄内釘サイズのmismatch,整復型変化,髄内釘内反の有無,術後頚体角の変化,lag screwのsliding量とした.mismatchが5.1mm以上の症例をm群,5.1mm未満の症例をn群とした.【結果】整復型が変化した症例はm群で3例認め(P=0.08),髄内釘が内反した症例は各群2例ずつ認めた(P=0.94).頚体角減少の中央値はm群で4°,n群で3°(P=0.39),lag screwのsliding量の中央値はm群で2.2mm,n群で2.9mmであった(P=0.17).【考察】mismatchとX線学的なパラメータとの間に有意な関係は認められなかった.

  • 大隈 暁, 畠山 英嗣, 花田 修平, 岡田 宗大, 杉木 暖
    2022 年 71 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    久留らは,通常の転子部骨折とは異なり,転子間を貫通するようかのような骨折線が存在する症例を報告し,大腿骨転子貫通骨折と呼称している.本骨折に対する当科での治療成績について検討した.当科で骨接合を施行した大腿骨転子部骨折680例の内9例(1.3%)に存在した.平均年齢は86歳.受傷は,低エネルギー4例,比較的高エネルギー5例であり,高齢者の低エネルギー外傷でも本骨折を認めた.全てフェモラルネイルを用いて骨接合を行った.1例に観血的整復を行ったが,8例は,小皮膚切開でエレバトリウムを挿入操作する事で整復できた.術後2週の平均sliding量は7.1mmで,当科における大腿骨転子部骨折の平均sliding量3.6mmより高値であった.9例中2例でカットアウトを生じた.骨癒合までに,12~14mmのslidingを3例で認めた.本骨折は,骨片に付着する筋の作用により,非常に不安定性が強く,フェモラルネイルでは,整復保持に限界がある事が示唆された.

  • 町田 透, 佐保 卓, 桑畑 健太郎, 音羽 学, 海江田 光祥, 有島 善也, 東郷 泰久, 小倉 雅, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 1 号 p. 112-114
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    日本MDM社製ASULOCK®はlag screwに加えて1本のAnti-Rotation screw(AR screw)と2本のAnti-Rotation pin(AR pin)を追加することで不安定型大腿骨転子部骨折の近位骨片の回旋予防を期待できる.当院で施行した不安定型大腿骨転子部骨折に対するASULOCKの手術成績を評価し,その有用性や問題点について考察した.対象は2019年4月から2020年の12月にCTで不安定型大腿骨転子部骨折と診断し,ASULOCK®を用いて骨接合術を施行し,少なくとも術後3ヶ月以上フォローした38症例である.男性8例,女性30例,平均年齢は87.6歳,平均観察期間は34.2週であった.3D-CT分類ではtypeⅠ3 part Bが10例,typeⅠ3 part Cが2例,typeⅠ3 part Dが2例,typeⅠ4 partが24例だった.術後合併症に関しては,AR pinのバックアウトが2例,うち1例はバックアウトしたAR pinのみ除去した.10mm以上のスライディングを認めたのは1例のみで,カットアウトやネイル折損は認めず,後外側骨片を固定可能なASULOCK®は不安定型大腿骨転子部骨折に対する有用なインプラントであることが示唆された.

  • 江口 大介, 小澤 慶一, 江崎 克樹, 森 詩乃
    2022 年 71 巻 1 号 p. 115-117
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】稀な骨端線閉鎖後の上腕骨内側上顆骨折を経験したため報告する.【症例】20歳男性.スノーボード中に転倒し受傷.左肘内側に腫脹,圧痛を認めた.単純X線写真で左上腕骨内側上顆骨折を認め,骨折型はA0分類13-A1であった.受傷2日目に内側アプローチを用いて整復後にtension band wiring(TBW)で固定した.術後ギプスシーネ固定行い,3週後より可動域訓練を開始し,術後5週現在で肘関節可動域は伸展-30°,屈曲110°である.【考察】上腕骨内側上顆骨折の手術適応を決める際に単純X線正面像による転位量を用いて評価されてきたが,正面像では前腕屈筋群の牽引力による前方転位を過少評価する可能性もある.本症例では斜位像やCTにて前方転位があり手術適応とした.【結果】稀な骨端線閉鎖後の上腕骨内側上顆骨折に対し,TBWを用いて観血的整復固定を行い,現在のところ良好に経過している.

  • 福井 駿介, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 森 圭介, 中村 憲明, 寺嶋 慎也, 笠原 峻, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    開放骨折では,受傷時のzone of injuryを認識することがその後の固定法や軟部組織再建を検討する上で重要となる.しかし,皮膚疾患を有する場合その判断に難渋することがある.症例は30歳男性,交通事故にて受傷した.尋常性乾癬に伴う鱗屑を全身に認めた.全身精査後,右下腿骨幹部開放骨折(AO/OTA 42A2)と判断し,同日創外固定とデブリドマンを施行したが,鱗屑を除去することでzone of injuryの判定が困難となったため,第2病日にセカンドルック,第4病日にサードルックを行い,第5病日にFix & Flapを施行,良好な経過を得た.本症例は初療時,外観上zone of injuryの判断が困難であり治療方針の決定が大幅に変更となった.尋常性乾癬の病態上易感染性はなく,鱗屑を取り除き通常通りデブリドマンを行うことで問題なく治療することができた.

  • 明島 直也, 荒木 貴士, 本川 哲比古, 田口 勝規
    2022 年 71 巻 1 号 p. 124-127
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    外傷性股関節脱臼における骨頭骨折の合併頻度は18~31%と報告されており,他には頚部骨折や寛骨臼骨折など様々な骨折を合併する.今回,骨頭骨折を伴う外傷性股関節脱臼の経過中に同側の大腿骨転子部不全骨折を生じた1例を経験したので報告する.症例:36歳男性,交通事故にて受傷し当院搬送となった.右股関節の後方脱臼と骨頭骨折を認めたため観血的整復術を行った.骨頭骨折は非荷重部のPipkin分類TypeⅡで,整復位が良好であったため保存的加療とした.術後2日目のMRI検査では骨頭骨折以外の骨折は認められなかった.2週間の介達牽引後,6週後より部分荷重を開始したが,7週後のMRI検査で同側の大腿骨転子部に骨折線を認めたため,CHSとCCSを併用した骨接合を行なった.現在術後8ヶ月で後遺症なく良好に経過している.長期免荷を要する症例では若年者であっても荷重開始後に予期せぬ骨折を生じる可能性もあるためMRI検査での定期的な経過観察は重要であると考える.

  • 村岡 智也, 村田 雅明, 築谷 康人, 上村 篤史, 中澤 一樹
    2022 年 71 巻 1 号 p. 128-130
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨骨幹部骨折に対する逆行性髄内釘の適応と問題点を明らかにすること.【対象】2010年4月以降当院で手術を行い術後6か月以上経過観察可能であった症例のうち,複合骨折を除いた13例.【方法】逆行性髄内釘の選択理由,骨癒合,Knee Society Score(KSS),術後膝関節症状について調査した.【結果】選択理由は,牽引手術台等での順行性髄内釘使用困難が6例,infra-isthmal fractureのみが7例であった.骨癒合は11例(85%)で得られ,KSSは91.8点であった.術後膝関節症状が4例(遠位スクリュー周囲による痛み:3例,エンドキャップ脱転による痛み伸展制限:1例)あり,30~60歳代でいずれもinfra-isthmal fractureのみの症例であった.【結論】大腿骨骨幹部骨折に対する逆行性髄内釘は,順行性髄内釘の使用が困難な場合ではよい適応であるが,膝関節への影響を考慮し年齢に応じた慎重な選択が必要であることが問題点と思われた.

  • 桑畑 健太郎, 町田 透, 佐保 卓, 音羽 学, 海江田 光祥, 有島 善也, 東郷 泰久, 小倉 雅, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 1 号 p. 131-133
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【要約】活動性の高い患者の転位型大腿骨頚部骨折に対する前方アプローチでの人工股関節全置換術(THA)で,術中後方脱臼傾向の出現を2例経験した.症例は69歳女性と59歳女性,アプローチはそれぞれAntero-Lateral supine approach,Direct anterior approachであった.いずれも大転子での骨性インピンジメントはなかったがトライアル時に後方脱臼傾向あり,ライナートライアルをフード付きに変更して解決した.後方への脱臼にはインピンジメントやcombined anteversionの不良など他の要因も考えうるが,後方支持組織の破綻に着目して文献的考察を含め報告する.

  • 真島 久, 北村 貴弘, 上原 航, 坂本 和也, 堀田 謙介, 仙波 英之, 生田 光
    2022 年 71 巻 1 号 p. 134-138
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    小児大腿骨頚部骨折は全ての小児骨折の1%以下と稀な骨折である.骨頭壊死,偽関節,早期骨端閉鎖,内反股等の合併症をきたすリスクが成人と比較し高いと言われている.過去の発表では手術加療が多く,保存加療について詳細に述べた報告は少ない.我々は本骨折2例に対して保存加療を行った.男児1例,女児1例,受傷時平均年齢は13歳,平均経過観察期間は9か月であった.基礎疾患は2例共に無く,受傷機転は転落1例,不詳1例であった.骨折型はDelbet-Colonna分類を用い,Ⅱ型2例であった.1例は受傷時に軽度転位を認めたが,2例共に免荷による保存加療を行い,合併症なく経過している.Ratliffの評価は2例共にgoodと治療成績良好であった.今回経過観察が9か月と短期間であった.受傷から1年前後は骨頭壊死を起こすリスクがあるとの報告もあり,今後も慎重な経過観察が必要である.

  • 川本 浩大, 太田 浩二, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 田所 耕平, 前田 稔弘, 徳永 修, 山下 彰久
    2022 年 71 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】髄内釘固定後の大腿骨偽関節の発生率は4.4-12.5%程度と言われている.当院における大腿骨骨幹部・転子下骨折に対しての術後偽関節リスクファクターに関して検討した.【対象と方法】2017年4月から2020年3月に当科で骨接合を行った30例の内,術後1年経過観察可能であった17例(男性4例,女性13例)を対象とした.観血的整復の有無,術後整復位,髄内釘長,髄腔占拠率,遠位スクリューの本数,ワイヤリングの有無について調査した.【結果】整復位の良否で術後偽関節の発生率に有意差を認めた(p=0.02).その他の項目では有意差を認めなかった.【考察】術後の整復位が不良であることは,偽関節のリスクファクターであると考えられた.これを踏まえ,転位の大きな転子下骨折に対して側臥位にて整復後,髄内釘手術を行うことで良好な整復位を獲得できている.側臥位での手術は良好な整復位の獲得のための一つの選択肢と考えられ,文献的考察を含め報告する.

  • 森本 辰紀, 加茂 健太, 城戸 秀彦, 城戸 聡, 竹内 龍平, 河野 通仁
    2022 年 71 巻 1 号 p. 144-148
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】術中術後のステム周囲骨折およびLag screwの骨頭穿破症例に対し,SAを用いたBHAおよびTHAを経験し,良好な結果が得られたので報告する.【症例】75歳女性.左大腿骨頸部骨折に対してSAによるBHAを施行した.術中ステム周囲骨折を認め,ネスプロンケーブルによる締結とセメントステムへの変更を行った.89歳男性.左大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を施行した.術後6ヶ月XpにてLag screwの骨頭穿破を認め,SAによる抜釘術およびTHAを施行した.両症例とも術後の歩容は良好である.他2例も経験しており合わせて報告する.【結果】SAによるサルベージ手術は術中に脱臼肢位をとらないため安定性が残り,術後脱臼リスクが低いと考える.また,Lag screw骨頭穿破例のSAによるサルベージ手術は従来のアプローチと比較し,同一皮切で展開するため手技も容易となり,比較的低侵襲で手術可能である.

  • 木下 英士, 濱田 貴広, 北 拓海, 兵藤 裕貴, 大山 龍之介, 戸次 大史, 今村 隆太, 泉 貞有, 井口 明彦, 有薗 剛
    2022 年 71 巻 1 号 p. 149-153
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【背景】後外側の支持性を失った不安定型大腿骨転子部骨折に対しAnterior support screw(以下AS2)を挿入することで前方骨皮質の支持性を向上させることが報告されている.今回,AS2の挿入を試みたが,挿入が困難であった症例に関する検討を行った.【方法】当院において2017年9月から2021年2年に手術を行い,AS2の挿入を試みた後外側欠損型(CT中野分類3partB・4part)の大腿骨転子部骨折43例を対象に,骨折型や大腿骨頸部の径の太さなどをAS2挿入可能であった群と挿入不可能であった群で比較検討した.【結果】AS2挿入が可能であった症例は37例,困難であった症例は6例であった.骨折型はCT中野分類を用い,3partBが18例,4partが25例であった.2群間に身長・体重・健側頚体角に有意差は認めなかった.しかし,CT水平断で測定した大腿骨頸部の横径ではAS2挿入が困難であった群で有意に小さかった.【考察】Lagスクリュー刺入位置は両群間で有意な差を認めなかった.AS2挿入が困難であった群では,健側大腿骨頸部の横径が有意に小さいことが示された.そのような場合にはAS2挿入が困難となる可能性が高いことを考慮し術前計画を行う必要がある.

  • 舛本 直哉, 馬場 秀夫, 山口 貴之, 今井 千恵子, 三溝 和貴, 小西 宏昭
    2022 年 71 巻 1 号 p. 154-156
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    稀な軸椎骨折を伴った環軸関節片側脱臼骨折に対し後方固定術を行った一例を経験したので報告する.症例は71歳男性,牛小屋の中から運搬機で外へ出る際に天井の梁で左前額部を強打し受傷,頚部痛が出現し同日当院に救急搬送となった.来院時,頚部痛認め頚椎右側屈位であったが,明らかな神経学的異常所見は認めなかった.X線,CTで左環軸関節脱臼と軸椎骨折Anderson分類Type3を認めた.ガードナー牽引開始し負荷を増量し整復を試みたが整復困難であったため,翌日に全身麻酔下に徒手整復術を施行し整復位を得ることができた.4日後に後頭骨-C3後方固定術を施行し,術後経過は良好で,術後5年の現在,骨癒合も得られ不安定性も認めていない.

  • ―術前Xp評価による骨掘削が必要な高難度症例の予測―
    泉 貞有, 吉兼 浩一, 菊池 克彦, 大江 健次郎, 西井 章裕
    2022 年 71 巻 1 号 p. 157-161
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】Full endoscopic discectomy(FED)法は最小侵襲手術であるが,L5/S1ヘルニアに対するFED-IL法で骨掘削が必要な高難度症例の特徴を術前の腰椎正面Xpを評価して明らかにすること.【対象と方法】2009年から2018年まで,L5/S1ヘルニアに対するFED-IL法を施行した354例を対象とした.術前の腰椎正面Xpでinterlaminar window(以下,ILw)の横径&高さ,腰椎MRIでヘルニアの位置・大きさを調査した.ドリルで骨掘削例(D群)とドリル使用なし例(N群)の2群に分けて比較した.【結果】骨掘削例(D群)は25例(7%)であった.ILwの横径&高さはD群では平均21.6mm&7.9mm,N群では平均27.7mm&11.4mmであり有意差を認めた.一方,ヘルニアの位置・大きさはD群,N群の両群間に有意差を認めなかった.【考察】ILwの横径や高さが小さいと骨掘削が必要であった.一方,横径が27mm以上かつ高さが11mm以上の症例ではドリル使用は皆無であった.術前XpでILwの大きさを評価する事で,術前に高難度症例か否かを簡便にスクリーニングが可能と考えられた.

  • 小田 琢也, 松下 昌史, 飯田 圭一郎, 幸 博和, 川口 謙一, 松本 嘉寛, 中島 康晴
    2022 年 71 巻 1 号 p. 162-166
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】透析患者における腰椎椎弓切除術後の経時的なレントゲン変化について検討した.【対象と方法】当院で腰椎椎弓切除術術施行された血液透析患者15例を対象とした.男性11名,女性4名,平均年齢69.0歳(52歳~82歳),平均透析歴10.3年(1年~33年)であった.術前,1年,2年時での腰椎単純X線画像(正面,側面,前後屈側面)を用いて,圓尾らのStage分類(Stage0:変化なし,Stage1:辺縁侵食期,Stage2:終板侵食期,椎間板狭小化,Stage3:椎体癒合),椎間板高,腰椎すべり度,手術椎間後弯角,手術椎間Cobb角について計測を行った.【結果】透析歴,手術前の手術椎間Stageは,術後のStage進行と有意に相関を認めた.また,透析歴10年以上の症例では10年以下の症例と比べ,手術椎間Stage,椎間板腔,手術椎間Cobb角において有意に増悪認めた.【考察】術前Stageの高い症例および10年以上の透析歴患者では,椎弓切除術後の脊椎症変化が早期に進行する可能性が示唆された.

feedback
Top