整形外科と災害外科
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70 巻, 3 号
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  • 長嶺 隆二, 川崎 展, 勝呂 徹
    2021 年 70 巻 3 号 p. 367-373
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    【目的】矢状面における膝の解剖学的バリエーションを明確にし,人工膝関節置換術のコンポーネント設置への影響を検討した.【方法】膝側面レントゲン像にて大腿骨・脛骨・膝蓋骨において16個の指標を計測し,各指標間での相関を調査した.【結果】脛骨顆部は後方回転にて関節面の後方傾斜を持ち,また,顆部後方回転角度は膝蓋骨の長さ,Insall-Salvati ratio,脛骨粗面からの脛骨および大腿骨関節面の位置,膝蓋骨および膝蓋腱の屈曲角度と相関を示した.また,大腿骨遠位で骨幹端は骨幹に対して屈曲し,骨端は骨幹端に対して伸展していた.【考察】顆部後方回転により脛骨関節面は後方・遠位へ偏位し,その結果,大腿骨関節面および膝蓋骨も後方・遠位へ偏位した.TKAにおいては,解剖学的バリエーションは大腿骨および脛骨コンポーネントのアライメントに影響を与える事が明確となった.

  • 帖佐 直紀, 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 永井 琢哉, 李 徳哲, 黒木 智文, 帖佐 悦男
    2021 年 70 巻 3 号 p. 374-377
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【抄録】乳児の頸椎疾患に対しての手術は稀で本邦でも報告数は少ない.今回,点状軟骨異形成症の乳児に対して手術を施行した稀な症例を経験したので報告する.【症例】生後50日,女児.妊娠37週2日で出生.胎児期から鼻の低形成が疑われていた.出生時に第1啼泣なく陥没呼吸が強いため人工呼吸器にて管理された.画像所見にて点状石灰化や環軸椎亜脱臼による脊髄圧迫の所見の他,鼻根部低形成などの特徴的顔貌から点状軟骨異形成症が疑われた.手術目的に転院となり,環椎後弓切除術と大後頭孔減圧術を施行した.術後は四肢の麻痺や筋力低下なく経過し,術後の画像所見でも圧迫が解除されていた.【考察】点状軟骨異形成症の頸椎病変に対する治療の基準は確立されていない.本症例では生後50日と乳児のため環椎後弓切除術と大後頭孔減圧術のみとし,今後不安定性が残存する場合は固定も考慮される.児の年齢や罹患場所に応じた治療を選択する事が重要である.

  • 立山 誠, 武藤 和彦, 相馬 史朗, 片山 修浩, 二山 勝也, 川添 泰弘, 土田 徹, 宮崎 眞一, 池田 天史
    2021 年 70 巻 3 号 p. 378-381
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】石灰沈着性頚長筋腱炎は急性発症の頚部痛,嚥下時痛,頚部可動域制限を来たし,頚部X線・CTにて環椎前面に石灰化を呈する比較的稀な疾患である.2例経験したので報告する.【症例1】45歳女性,数日前から頚部痛,嚥下時痛があり当科受診,CTにて環椎前面の淡い石灰化像を認め診断した.【症例2】52歳女性,嚥下時痛を主訴に当科受診し,炎症反応上昇とX線にて後咽頭部の浮腫を認め,咽後膿瘍を疑い耳鼻咽喉科でファイバー検査するも咽頭には異常所見はなく,MRIでも化膿性脊椎炎は否定された.最終的にCTにて頚長筋に石灰化をみとめ診断した.いずれの症例もNSAIDsとH2blocker内服薬にて保存的に治癒し,X線での環椎前面の石灰化像は消失した.【まとめ】石灰沈着性頚長筋腱炎は炎症反応上昇,後咽頭部の腫脹などを呈するため,咽後膿瘍や化膿性椎体炎などの感染性疾患との鑑別が重要になる.

  • 金城 英樹, 勢理客 ひさし, 比嘉 勝一郎, 屋良 哲也, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 382-385
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【要旨】症例:45歳 男性 職業:プロレスラー 主訴:両側中指・示指の痺れ,右肩甲骨内側部痛および大胸筋・上腕三頭筋の左右差当科受診3カ月前から生じた上記症状を主訴に近医から精査加療目的に当院へ紹介受診となった.深部腱反射の減弱・亢進はなく,筋力は正常,神経根症状誘発テストも陰性だった.MRIではC6高位脊柱管内右側にT1WIで低輝度,T2WIで等輝度,Gdでほぼ均一に造影される楕円状の占拠性病変を認めた.症状の改善がみられなかったことから手術を行った.右C6椎弓切除および右C5,7部分椎弓切除を行い,椎間関節内側1/4を切除し脊柱管内に達した.発生源と考えられたC6神経根の腹側糸を温存し腫瘍は全切除(核出術)した.病理所見では,神経鞘腫と矛盾しない所見だった.術後半年でプロレスラーに復帰したが,右大胸筋の萎縮による左右のバランスに悩んでいた.その後,大胸筋の萎縮も漸次改善し,術後3年の段階で現役のプロレスラーとして活躍している.

  • 平塚 嘉香, 田中 潤, 塩川 晃章, 宮原 聡, 白石 武史, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 386-388
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    胸椎ダンベル型腫瘍に対する治療法として,近年胸腔鏡を併用したvideo-assisted thoracic surgery(VATS)の有用性が報告されている.当院でも呼吸器外科と連携手術を行っておりその治療経験を報告する.2016年-2019年の4年間に当院にてVATS併用手術を行ったダンベル型腫瘍症例は4例.年齢,性別,腫瘍の発生高位,各種画像検査(MRI,CT),病理検査,手術時間,出血量,術中・術後合併症を後ろ向きに調査した.4症例とも片側椎弓切除後に腫瘍発生根を結紮切離し,胸腔鏡下に腫瘍摘出術を行った.平均手術時間は236分(174-276分),平均出血量は172ml(31-306ml)で,全例とも術中・術後合併症は認めなかった.胸椎ダンベル腫瘍に対するVATS併用手術は有用と考えられた.

  • 吉岩 豊三, 中村 英次郎, 高谷 純司, 原 克利, 藤川 陽祐
    2021 年 70 巻 3 号 p. 389-393
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    椎間板内酵素注入療法は,保存療法と手術療法の中間に位置する有用な治療方法である.今回,保存療法に抵抗性であった腰椎外側椎間板ヘルニアに対して椎間板内酵素注入療法を施行したので治療経験を報告する.症例1は41歳,女性であり,左下肢痛のため体動困難となり,入院となった.画像では,L3/4に外側椎間板ヘルニアを認め,神経根ブロック等を施行するも症状が持続するため,椎間板内酵素注入療法を施行した.症例2は,47歳,女性,主訴は右下肢痛であり,画像上は,L5/S1に外側椎間板ヘルニアを認めた.外来通院での神経根ブロック等の保存療法に抵抗性であり,椎間板内酵素注入療法を施行した.いずれの症例も治療後1週間経過した時点で下肢痛は軽減しており,治療3か月後のMRIにおいてヘルニアの縮小を認めた.椎間板内酵素注入療法は,腰椎外側椎間板ヘルニアに対して有効な治療法の一つであると思われた.

  • 石津 研弥, 柳澤 義和, 大賀 正義
    2021 年 70 巻 3 号 p. 394-397
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    2018年から保険適応となった腰椎椎間板内ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法の治療成績報告は未だ少ない.当院での椎間板内酵素注入療法の短期経過を報告する.症例は従来の保存的治療に抵抗性の腰椎椎間板ヘルニア患者で,術後3ヶ月以上経過観察できた6例である.平均年齢は48.5歳,男性5例女性1例,ヘルニア高位はL4/5が2例,L5/Sが4例,穿刺はいずれも患側から行った.重篤な副作用はなく,3ヶ月後のMRIでヘルニア塊の消失が1例,縮小が2例,不変が3例だった.ヘルニア内にT2高信号領域があった2例では消失もしくは縮小した.Pfirrmann分類や穿刺針先位置で有意差はなかった.観察期間が3ヶ月と短期であるが,本治療法は腰椎椎間板ヘルニアの手術回避へ向けた有用な方法であると考える.

  • 伴 卓郎, 塩川 晃章, 田中 潤, 柴田 遼, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 398-401
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    腰椎椎間板ヘルニアは日常診療でも多く遭遇する病態である.しかし,ヘルニアの脱出側と反対側の下肢症状が出現することは比較的稀である.今回われわれはヘルニアの反対側に症状を呈した1例を経験したので報告する.症例は36歳,男性.特に誘因なく両下肢の痺れと疼痛が出現.左下肢の痺れと疼痛は改善したが右下肢の疼痛は持続し右足関節の背屈低下が出現したため当院紹介となった.MRIにてL4/5レベルで左優位のヘルニアを認めた.身体所見では,右臀部~下腿外側の疼痛・痺れを認め,右前脛骨筋はMMT1と下垂足を認めたが左下肢に筋力低下や明らかな神経学的異常所見は認めなかった.紹介翌日にL4/5の椎弓切除術およびヘルニア摘出術を施行した.術後下肢痛や痺れは改善し術後3ヶ月の時点で右前脛骨筋の筋力はMMT5まで改善している.

  • 竹内 龍平, 加茂 健太, 河野 通仁, 森本 辰紀, 城戸 聡, 城戸 秀彦
    2021 年 70 巻 3 号 p. 402-405
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    腰部脊柱管狭窄症は高齢者に好発し,本邦の推定患者数は約240万人と,頻繁に経験する疾患である.一方,閉鎖孔ヘルニアは痩せた多産高齢女性に好発するが,比較的稀な疾患である.閉鎖孔ヘルニアも下肢症状を来たしうるため,整形外科が初診となる場合がある.放置すれば絞扼性イレウスに至る可能性があり,常に念頭に置く必要がある.今回,第4腰椎椎体骨折後の右下肢痛,筋力低下の精査目的に他科から紹介された.腰部脊柱管狭窄症と診断したが同日,血便が出現し外科にて閉鎖孔ヘルニアと診断され緊急手術された.しかし術後5日経過しても腰痛と右下肢痛が改善せず,他の原因が示唆され再度当科紹介となり,腰部脊柱管狭窄症と診断した.プレガバリン50mg内服開始したところ症状は次第に改善し,歩行器歩行可能となった.腰部脊柱管狭窄症と閉鎖孔ヘルニアが合併していることは念頭になく,本症例から,閉鎖孔ヘルニアを疑う症状や所見を考察し報告する.

  • 今給黎 洸志, 田中 潤, 塩川 晃章, 柴田 遼, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 406-409
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    近年PEEKの周囲に骨親和性の高いtitanがcoatingされたtitan coating PEEK cageが導入され,良好な成績の報告が散見される.当院におけるPEEK cage(P群)とtitan coating PEEK cage(TP群)の治療成績・画像評価を比較検討したので報告する.術後1年での骨癒合率はP群78.5%(11/14例),TP群80%(8/10例)であり有意差はなかった.骨癒合不全を示唆するCTでの各種項目(end plate cyst,pedicle screw loosening,Cage subsidence(2mm以上),Cage周囲の透亮像)でも2群間に有意差は認めなったが,end plate cystの発生はP群で50%(7/14例)とTP群20%(2/10例)に比べ高い傾向であった.Titan coating PEEK cageはend plate cystの発生が低い傾向であり,初期の骨癒合に有利に働く可能性が考えられた.

  • 戸澤 興治, 福永 拙, 岩崎 達也, 和田 晃房
    2021 年 70 巻 3 号 p. 410-412
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    二分脊椎症児の股関節脱臼について,その治療を選択する際には麻痺レベルは重要な項目の一つである.今回,両股関節脱臼を生じた一症例の治療を経験し,考察を加え報告する.【症例】5歳 男児 第4~5腰椎レベルでの二分脊椎症(Sharrard分類III,Hoffer分類nonfunctional ambulator)在胎37週3日で選択的帝王切開にて出生し,日齢1日,第4~5腰椎レベルの脊髄髄膜瘤の修復術を行った.水頭症に対しては日齢17日にVPシャント術を施行された.【現病歴】1歳2か月,前医より紹介され当センターでの理学療法を中心としたリハビリテーションを開始した.初診時はつかまり立ちが可能であった.3歳になり歩行能力の向上が見られたが両股関節の脱臼は徐々に進行してきたため3歳9か月右股関節に対し長内転筋切離,観血的脱臼整復,大腿骨減捻内反短縮骨切り,骨盤骨切りを行い,さらに4歳9か月で左股関節に対し右股と同様の術式にて手術を行った.再脱臼傾向なく杖歩行を練習中である.

  • 荒木 貴士, 明島 直也, 中村 郁也, 田口 勝規
    2021 年 70 巻 3 号 p. 413-417
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    小児の骨折のうち,大腿骨骨幹部骨折は比較的稀な骨折である.当院では基本的に保存的治療を行っているが,6歳以上の学童期では,近年は早期学業復帰を目指し手術加療を選択している.今回,小児の大腿骨骨幹部骨折に対して,弾性髄内釘固定であるTEN(titanium elastic nails,Synthes社)を用いて骨接合術を行ったので,その有用性について報告する.【症例1】9歳,女児.自転車走行中転倒.受傷5日目にTENを用いて骨接合術施行.術後4週で部分荷重開始し,術後8週で全荷重とした.経過は良好で,術後10ヶ月で抜釘施行し機能障害はない.【症例2】11歳,男児.交通事故で受傷.受傷5日目にTENを用いて骨接合術施行.術後4週で部分荷重開始し,術後8週で全荷重とした.経過は良好で,術後10ヶ月で抜釘施行し機能障害はない.TENは低侵襲で行え,早期復帰可能であり,小児の大腿骨骨幹部骨折に対して有用なインプラントと思われた.

  • 落合 舞, 坂本 哲哉, 瀬尾 哉, 小林 知弘, 木下 浩一, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 418-420
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    予測因子を用いた小児化膿性股関節炎についての検討をしたため報告する.2000年から2020年までに当院で化膿性股関節炎と診断された12歳以下の10例12股を対象とした.Cairdの予測因子を用いた臨床像,起因菌,術前の抗菌薬投与,治療までの期間を後向きに調査した.12股の予測因子は5項目0股,4項目3股,3項目5股,2項目3股,0項目1股であった.関節穿刺にて起因菌を同定できたのは4股であり,黄色ブドウ球菌3股,表皮ブドウ球菌1股であった.術前の抗菌薬投与に関しては,投与ありが7股であった.症状出現から治療までの期間は1-4日(平均2日)であった.術後8-28日(平均14日)で炎症反応の改善を認めた.予測因子4項目を満たす症例は全例受診まで1日と短く,治療開始が早かった.予測因子は診断に有用であったと考えられるが,関節穿刺,理学所見など総合的に判断する必要がある.

  • 堀川 朝広, 関 昭秀, 唐田 宗一郎, 福田 雅俊, 今村 悠哉, 山下 武士, 緒方 宏臣, 原 慎太郎, 久保田 健治, 坂本 圭, ...
    2021 年 70 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    円板状外側半月板断裂後に患肢のみの外反膝を呈した小児1例を経験したので報告する.【症例】9歳,女児.【現病歴】2年前より誘引なく右膝痛出現し,走り方に違和感があることを親が気付いた.近医整形外科にて右膝外側半月板断裂を認め紹介受診となった.【所見】外側関節裂隙に圧痛と屈曲時痛を認め,立位長尺X線検査ではHKAの健側との差7°(172.6/179.1°)と著明に外反を呈していた.MRI検査では右膝外側半月板は断裂し顆間部に陥入したバケツ柄断裂を認めた.【術式】鏡視下に外側半月板断裂部の形成および縫合術を施行した.【術後経過】術後1年,HKAの健側との差は4.4°(174.2/178.6°)と改善し,可動域制限もなくスポーツに復帰した.【考察】円板状外側半月板断裂においては,亜全摘後の関節症変化の進行や,離断性骨軟骨炎の発生が危惧される.本症例では形成・縫合術を行うことにより外反膝の改善を得たが,長期の経過観察が必要と考えられた.

  • 大中 敬子, 普天間 朝上, 米田 晋, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 426-429
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【対象と方法】症例は3例(男性2例,女性1例)。手術時年齢は17,18,61歳。診断は尺骨茎状突起偽関節2例,尺骨頭骨折変形治癒1例(橈骨遠位端骨折合併1例)であった.回旋障害の機序,尺骨茎状突起骨片の転位量,手術内容,可動域,疼痛を調査した.【結果】尺骨茎状突起は基部骨折2例,基部から骨端部骨折1例で,全例に尺骨頭の背側亜脱臼を認めた.また,1例では尺骨頭関節面の変形も合併していた.転位量は2.5,2.7,5.0mmであった.手術は,全例でTFCC深層の整復を行った.尺骨頭関節面の変形を合併した1例では,尺骨頭関節面の矯正を追加した.可動域は,術前主に回外制限を認めたが,術後回内外ともに改善した.疼痛は全例で改善した.【考察】TFCC深層が付着した骨片の転位癒合による前腕回旋軸の変位のため回旋障害をきたしたと考えた.1例は尺骨頭関節面の変形も一因となった.尺骨茎状突起骨片の転位量とDRUJの不安定性を3D-CTのaxial像で評価した.

  • 春田 真一, 辻本 律, 田中 奈津美, 松林 昌平, 尾﨑 誠
    2021 年 70 巻 3 号 p. 430-433
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】多中心性細網組織球症(Multicentric Reticulohistiocytosis:MRH)とは組織球や多核巨細胞の増殖による破壊性関節炎や皮疹をきたす全身疾患であり,高頻度に手指DIP関節に骨破壊を来たす.今回,MRHによる母指CM関節病変を経験したので報告する.【症例】62歳女性.持続する左母指CM関節痛のため紹介となり,左母指CM関節は背側に亜脱臼し,CTで関節面の虫食い様骨破壊を認めた.また,両母指IP関節,両手指DIP関節にも骨破壊が認められ,画像所見からMRHが疑われた.母指CM関節病変に対しては関節形成術(Thompson法),症状のある手指DIP関節に対して関節固定術を施行し,除痛を得ることができた.病理診断は母指CM関節,手指DIP関節ともにMRHであった.術後2年で母指IP関節の関節破壊が進行し関節固定術を追加したが,母指対立運動は良好に保たれた.【結果】MRH症例における母指CM関節病変に対しては,将来的なIP関節破壊の可能性を考え,関節固定術ではなく関節形成術を選択すべきである.

  • 三尾 亮太, 田中 祥継, 村岡 邦秀, 田中 秀明, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 434-438
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    母指CM関節症では付随したMP関節の過伸展変形を多く認める.当科で行っているLigament Reconstruction Suspension Arthroplasty(LRSA)について,本術式前後におけるMP関節を評価し,複数の項目との関連性について考察を行った.対象はLRSAを行った29例30関節(男性3例,女性26例,平均67.8歳).それぞれにおいて年齢,性別,術前後の橈側外転,掌側外転での関節可動域,VAS,X線学的評価としては大菱形骨間隙を第一中手骨長で除したTM比,母指の最大橈側自動外転位側面像でのMP関節伸展角度について検討した.経過観察期間においてMP関節過伸展による母指列のzigzag変形に対し,LRSAはおおむね良好な結果が得られた.

  • 関 昭秀, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 唐田 宗一郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 439-442
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】母指以外でのCM関節脱臼骨折は比較的稀な症例であり,尺側CM関節脱臼骨折においては,有鉤骨体部骨折に第4,第5CM関節脱臼骨折あるいは第5CM関節脱臼骨折を伴うことは多いが,第4CM関節単独の脱臼骨折は稀な症例といえる.【症例】32歳,男性.仕事中にドアを殴打し,右手を受傷し,当院を受診した.画像検査にて右環指中手骨骨折,有鉤骨骨折を認め,観血的手術を施行した.疼痛や可動域制限などはなく,良好な経過であった.【考察】第4CM関節単独脱臼骨折に有鉤骨骨折が合併した症例の報告は,本邦においても少なく,本症例では,手術と適切な術後管理により良好な術後経過を得ることができたと考えられた.

  • 上田 章弘, 副島 修, 密川 守, 佐伯 和彦, 森 俊, 蛭崎 泰人, 原 純也
    2021 年 70 巻 3 号 p. 443-446
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    今回,有鉤骨鉤での磨耗によると思われる小指屈筋腱皮下腱断裂の症例を2例経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.1例は77歳女性,物を持とうとした際に右小指が引っかかり過伸展・外転強制されて受傷,その直後より右小指DIP関節の屈曲障害が出現し持続した.症状より小指屈筋腱皮下腱断裂が疑われMRIで診断,その他明らかな骨傷等は伴っておらず,腱移行術を施行した.術後3ヶ月ほどで日常動作に支障ない程度となり半年ほどでリハビリ終了となった.もう1例は36歳男性で精肉作業中に引き抜こうとした牛の筋が抜けきれず手を弾くようになり受傷,直後より右手掌部痛および小指屈曲障害も出現した.当院受診後,単純X線CT検査・MRI検査にて有鉤骨鉤偽関節及び小指屈筋腱皮下腱断裂が明らかとなり,骨片摘出・腱移行術を施行した.現在術後7ヶ月となるが大きな支障なく経過している.

  • 山本 俊策, 二之宮 謙一, 合志 光平, 牟田口 滋, 佐々木 大, 坂本 悠磨, 蛯原 宗大
    2021 年 70 巻 3 号 p. 447-448
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    【緒言】手指粘液嚢腫に対する手術治療は嚢腫を切除し,皮膚欠損部に皮弁形成術を行うのが一般的である.近年,嚢腫の原因となる関節包と骨棘を切除する手術治療が報告されており当院もこの方法を実施しているので報告する.【対象】2012年4月から2018年11月までに手術治療を行った25例で,男性2例,女性23例,平均年齢73歳(51-84歳)平均経過観察期間18ヶ月(12-84ヶ月)罹患指は母指4指,示指8指,中指8指,環指4指,小指1指であった.【結果】再発は認めなかった.【まとめ】嚢腫の切除は行わず,関節包および骨棘切除を行い良好な結果が得られ有用な方法と考えている.

  • 入舩 拓, 村岡 邦秀, 田中 祥継, 田中 秀明, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 449-452
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    当施設から過去に進行期のKienböck病に対する橈骨楔状骨切り術の成績を報告した.一方で,初期のKienböck病に対する橈骨楔状骨切り術の有効性は知られているものの,まとまった報告は少ない.今回我々は当院で行った初期Kienböck病に対する橈骨楔状骨切り術の3例について報告する.2014年から2019年の間に当院で橈骨楔状骨切り術を行った初期Kienböck病3例3手を対象とした.全例stageⅡの女性,平均年齢30歳,平均経過観察期間は19.6か月であった.手術は矯正角15度による橈骨楔状骨切り術を行い,1例は短縮骨切りを併用した.診療録を後ろ向きに調査した結果,全例で術前の症状改善を認め,特筆すべき合併症の出現はなかった.単純X線評価では全例骨癒合が得られており,stageは進行せずLCRの上昇を認めた.月状骨被覆率改善による圧分散は良好と思われ,術後比較的早期の症状改善認めたこと,尺骨変異に関係なく選択可能なことからも橈骨楔状骨切り術は有用な術式である.

  • 宮坂 悟, 田中 奈津美, 宮崎 洋一, 吉里 広, 下永吉 洋平, 岩元 俊樹, 根井 吾郎, 高橋 良輔, 小島 迪子, 鳥越 雄史, ...
    2021 年 70 巻 3 号 p. 453-456
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    手指MP関節側副靱帯損傷は母指に多く,母指以外の指では頻度が少ないとされており,その愁訴は疼痛や不安定性が主である.指交叉を伴う示指MP関節側副靱帯損傷を経験したため報告する.症例は45歳女性,牛の手綱と柱に左示指が挟まれたため,自分で手を引き抜いて受傷.単純X線,CT検査では明らかな骨折等はなく保存療法を行った.経過観察中に指交叉が出現したため,MR検査を施行したところ,骨傷や介在物などはなく,MP関節橈側側副靭帯の断裂を認めた.受傷後5ヵ月後に手術を施行した.示指MP関節橈側側副靭帯は中手骨付着部で断裂し瘢痕状となっており,スーチャーアンカーで縫着したところ,指交叉は改善した.指交叉を生じた場合,指骨骨折を伴うことが多いが,明らかな骨折を認めない場合はMP関節側副靭帯損傷の可能性を念頭において治療することが必要と思われた.

  • 田中 光, 村岡 邦秀, 田中 祥継, 田中 秀明, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 457-458
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    手根管症候群(CTS)に対する鏡視下手根管開放術(ECTR)の有効性は広く知られているが,85歳以上のCTS患者に対するECTRの効果についてまとまった報告は少ない.今回われわれは当院で行なった85歳以上のCTS患者に対するECTR症例を後ろ向きに調査し,その効果について検討した.2009年から2019年の間に,85歳以上のCTS患者に対してECTRを行なった12例14手(男3例,女9例,平均年齢89.4歳)を対象とした.これらの症例に関して診療録を後ろ向きに調査し,夜間痛を中心とした症状改善の有無,合併症・再発の有無について調査した.14手中11手で術前主訴の改善を認めていた.特に夜間痛を主訴としていた8手では全例で術後速やかに消失していた.合併症は2手で,表層感染の1手は保存的に治癒し,pillar painは術後3ヶ月で改善していた.経過観察期間中での再発はなかった.ECTRは85歳以上のCTS高齢者に対しても正確な診断と術前説明の元に積極的に行っても良い治療である.

  • 徳丸 達也, 小薗 直哉, 竹内 直英, 花田 麻須大, 畑中 均, 鍋島 央, 中島 康晴
    2021 年 70 巻 3 号 p. 459-463
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    舟状骨近位部骨折は血流障害によりしばしば偽関節を生じ治療に難渋する.今回,術前造影MRIにて舟状骨偽関節術後の舟状骨近位端骨壊死が評価困難であった症例を経験したので報告する.症例は20歳女性.サッカー中に左手を受傷し手関節痛が出現.受傷3カ月後に前医受診,陳旧性舟状骨骨折の診断で遊離骨移植術・観血的骨接合術が施行された.外来加療継続するも偽関節となり,造影MRIでは舟状骨遠位骨片は造影効果を認めるも,近位骨片はインプラントのアーチファクトで正確な評価困難であった.初回術後11カ月後にZaidemberg法に準じた血管柄付き骨移植術を施行,術中評価では近位骨片に血行を認めなかった.近位骨片への血流評価に関しては,舟状骨近位端の骨壊死に対する造影MRIの特異度が高い一方,感度は低いという報告もあり,本症例のような内固定術後の画像による血流評価に関しては留意する必要があると考えられた.

  • 井上 三四郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 464-467
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部患者における当科麻酔の基準としての米国麻酔科学会術前全身状態分類(ASA PS)の一致度を検討すること.【予備調査】26人の医師に対面調査したところ,84.6%(22/26)がASA PSⅡまでを当科麻酔の対象と回答した.よって,ASA PSⅡ以下を当科麻酔対象の低リスク群,ASA PSⅢ以上を麻酔科依頼対象の高リスク群と定義した.【対象と方法】大腿骨近位部骨折患者109例を対象とした.まず整形外科医が術前のカルテを基にASA PSを判定した.次に麻酔科医のそれを後ろ向きに調査した.最後に両者の一致度を検討した.【結果】整形外科医は59例を低リスク群,50例を高リスク群と判定した.一方麻酔科医は72例を低リスク群,37例を高リスク群と判定していた.κは0.34であり,判定はfairであった.【考察】ASA術PSをⅡとすべきかⅢとすべきか,判断に迷う症例は少なくない.それらは当科麻酔の分岐点でもあり,一致度を低下させていた.

  • 吉村 郁弘, 木下 浩一, 坂本 哲哉, 小林 知弘, 瀬尾 哉, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 468-470
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】INHERITOR stemを用いた人工骨頭置換術後のステムの初期固定性を検討する.【対象及び方法】2017年10月から2020年3月までに大腿骨頚部骨折に対し,当院でINHERITORS stemを用いて人工骨頭置換術を行い,術後3か月以上経過観察可能であった症例を対象とし,結果に記載する患者データ及びX線学的評価項目を調査した.【結果】患者データは15例15股(男:3股,女:12股),手術時平均年齢81.5歳,平均Body mass index 19.7kg/m²,術後平均観察期間は9.6か月,術前のGarden分類3)はStage 3が4例,Stage 4が11例であった.固定性は全例Stable2)であり,Stem sinkingや,Radiolucent lineの出現はなかった.また,ステムの内外反設置例はなく,1例にCortical hypertrophyの出現を認めた.全例にStress shieldingを認め,Enghの分類1)grade 1:0例,2:8例,3:7例,4:0例であった.【考察】INHERITOR stemの初期固定性は良好であることが示唆された.

  • 中尾 公勇, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 森 圭介, 尾﨑 誠
    2021 年 70 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    直腸断裂を伴う開放性骨盤骨折は稀な外傷であり致死率が高い.今回,直腸断裂を伴う右股関節開放脱臼骨折を経験したので報告する.症例は60代男性,自家用車駐車中に壁に挟まれ受傷,右臀部後方より右股関節開放脱臼骨折,不安定骨盤輪骨折を認めた.出血性ショックに対して緊急で動脈塞栓術施行後に,デブリードマン,脱臼整復を行った.術後,会陰部開放創認め直腸断裂と判明し早急に双孔式人工肛門造設を行った.最終的には右骨盤半裁を行い,徹底したデブリードマン・洗浄をくり返し,抗菌剤治療の継続,2回の植皮術を施行した.受傷後79日目にリハビリ転院となり,現在は松葉杖2本で歩行良好である.開放性骨盤骨折に直腸損傷が合併する場合,糞便汚染により敗血症を生じ死亡率が大幅に上昇するため早期に人工肛門造設し感染コントロールを行うことが重要である.また,治療には迅速に他診療科と連携し治療戦略を立てる必要がある.

  • 小林 弘明, 萩 健太朗, 鎌田 敬子, 越智 康博, 木戸 健司
    2021 年 70 巻 3 号 p. 474-477
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨頸部骨折の骨接合術後,過度なtelescopingに伴う予後不良例が散見されるため検討した.【方法】非転位型大腿骨頸部骨折に対し骨接合術を施行した28例28股を,術後3ヶ月以内にtelescopingが6mm以上みられた5股と6mm未満の23股に分け2群間で比較検討した.使用機種はHanssont Pin 15股,Femoral Neck System 6股,Prima Hip Screw 7股.検討項目は年齢,性別,BMI,術前待機日数,Pauwels角,術前後のGarden alignment index,術前後のposterior tilt,telescoping量,術後人工骨頭置換術の有無,術後歩行能力低下の有無とした.【結果】年齢,術前posterior tiltの絶対値に有意差がみられ,術後の歩行能力低下は過度なtelescoping群で有意に観察された.【結論】非転位型骨折においても年齢や術前画像を考慮し初回で人工骨頭置換術を検討する余地がある.

  • 八木 宏樹, 土持 兼信, 中村 哲郎, 岩崎 賢優, 河野 裕介, 伊藤田 慶, 畑中 敬之, 松口 俊央, 櫻井 立太, 坂井 崇一郎, ...
    2021 年 70 巻 3 号 p. 478-480
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の上腕骨外顆骨折と肘頭骨折を合併した2例を経験したので報告する.【症例1】3歳男児,2段の段差から転落し受傷.近医受診し左上腕骨外顆骨折の診断.翌日当科受診し,上腕骨外顆骨折と肘頭骨折を認めた.上腕骨外顆骨折に対し同日tensionとband wiring(以下TBW)を施行,肘頭骨折の転位はほとんどなく保存療法となった.【症例2】7歳男児,スケートボード中に転倒し受傷.近医受診し右上腕骨外顆骨折,右肘頭骨折の診断.同日,当科紹介.どちらも転位しており,受傷当日にTBWを施行した.【考察】小児上腕骨外顆骨折と肘頭骨折の合併は比較的稀である.上腕骨外顆骨折と肘頭骨折を合併する場合には,内反/外反力ならびに軸圧が関与すると考えられている.経験した2例では受傷時に内反力が働いたことが考えられた.上腕骨外顆骨折は転位が見られることが多い一方,肘頭骨折は比較的転位が少ないものが多く,見逃されることがある.我々のケースでも症例1では肘頭の転位がなく,見逃しに注意が必要と考えられた.

  • 松口 俊央, 土持 兼信, 坂井 崇一郎, 櫻井 立太, 畑中 敬之, 伊藤田 慶, 河野 裕介, 岩崎 賢優, 中村 哲郎, 土屋 邦喜
    2021 年 70 巻 3 号 p. 481-484
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端関節内骨折において関節面の転位残存による変形性関節症の進行が危惧される.術中の関節面の整復が透視のみでは不十分な例があり,術後の矯正損失を防ぐには確実な軟骨下骨支持が必要である.関節鏡を併用した整復,StellarにD Plateで固定を行った5例について報告する【代表症例】51才男性.AO Type C3,掌側への亜脱臼を伴う骨折に対して受傷当日に創外固定を行い,受傷6日後に関節鏡併用での骨接合術を施行.【結果】全症例において良好な関節面の整復(step off <1mm)が得られた.また全例で術後矯正損失は認めなった.【考察】橈骨遠位端関節内骨折に対して関節鏡併用で良好な整復位が得られ,Double-tiered Subchondral Support(DSS法)を用いた整復位保持においてStella D Plateは有効な固定材料と考えられた.

  • 倉光 正憲, 三宅 智, 田中 祥継, 村岡 邦秀, 田中 秀明, 石河 利之, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 485-488
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)橈骨頭・頚部骨折に対する人工橈骨頭置換術(以下,RHR:radial head replacement)の長期成績の報告は少ない.(対象と方法)2010年から2012年までに当院でRHRを施行し,7年以上経過観察可能であった3例3肘(手術時平均年齢;68歳,Morrey分類;Ⅱ型1例,Ⅲ型2例,平均経過観察期間;8.7年)の機能および画像所見を後ろ向きに調査した.使用インプラントは全例monopolar,intentionalr loose-fit,noncementタイプの同一機種だった.(結果)最終観察時のMayo Elbow Performance Score(MEPS),DASH scoreはそれぞれ平均95点,15点だった.MEPS indexではexcellent 2例,good 1例だった.小頭の関節症変化は1例に,radiolucent lineは全例に認められた.(まとめ)橈骨頭・頚部骨折に対するRHRの長期成績は良好だった.

  • 井上 隆広, 河野 勤, 大森 康宏, 森 達哉, 神宮司 誠也, 加治 浩三, 畑中 均, 今村 寿宏, 鬼塚 俊宏, 松延 知哉
    2021 年 70 巻 3 号 p. 489-492
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,非転位型大腿骨頸部骨折に対する骨接合術のレントゲン学的経過について検討することである.【対象と方法】2010年から2018年までに当院でsliding hip screwを使用して骨接合術を施行した非転位型大腿骨頚部骨折症例のうち,術後1年以上経過観察が可能であった49例を対象とした.術前の転位と術後の整復状況を評価し,術後1年時の画像より骨頭壊死やlate segmental collapseの有無,健側との脚長差と大腿骨オフセット差を計測した.【結果】LSCは8例に認め,これらは受傷時の外反転位が有意に大きかった.更に10mm以上の脚短縮もしくはオフセットの減少を生じた症例は17例あった.【考察】過度の外反や後捻残存を避けるよう整復に努めること,過度の頸部短縮を回避するように整復位を保持する工夫をすることが成績向上に寄与する可能性がある.

  • 唐田 宗一郎, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 関 昭秀, 岡本 実, 田中 睦郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 493-495
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨転子部骨折後の仮性動脈瘤は,稀な遅発性合併症として報告されている.【症例】83歳女性.左大腿骨転子部骨折に対して骨折観血的手術を施行した6か月後に大腿部腫脹を主訴に近医より紹介となった.単純X線像で小転子骨片の前方への転位を認めた.単純CTでは大腿部筋内血腫を,さらに単純MRIで仮性動脈瘤を疑う信号変化を認めた.下肢動脈超音波検査でも大腿動脈仮性動脈瘤を認めた.コイル塞栓術を施行し,術後は症状軽快している.【考察】大腿骨転子部骨折後の仮性動脈瘤は稀な合併症として報告されている.原因として手術時の損傷や術後早期のADL拡大による影響が指摘されているが,小転子骨片による動脈損傷の報告は未だ少ない.小転子骨片を有する骨折では,仮性動脈瘤の出現を念頭に置いた経過観察が肝要である.

  • 吉里 広, 高橋 良輔, 鳥越 雄史, 宮坂 悟, 下永吉 洋平, 三溝 和貴, 舛本 直哉, 岩元 俊樹, 根井 吾郎, 小島 迪子, 田 ...
    2021 年 70 巻 3 号 p. 496-499
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部骨折に対するshort femoral nailによる骨接合術において髄腔径と髄内釘遠位径の差(ミスマッチ)と髄内釘内反の有無,lag screwのsliding量,頚体角の変化との関連について検討する.【方法】2019年8月から2020年7月までに当院で大腿骨転子部骨折に対してinterTAN standard nailにより骨接合術を行った55例を対象とした.検討項目は術直後単純X線前後像におけるミスマッチ量,術後の頚体角の変化,lag screwのsliding量,髄内釘内反の有無とした.ミスマッチ量が2mm以上の症例をm群,2mm未満の症例をn群とした.【結果】m群は29例,n群は26例であった.髄内釘の内反はm群で4例認められ,n群と比較して有意に多かった(p<0.05).sliding量についてm群で3.0mm,n群で2.3mm(p=0.08),頚体角の減少についてm群で3.5°,n群で3.1°であった(p=0.43).【考察】髄腔径と髄内釘遠位径のミスマッチ量が大きいと術後に髄内釘の内反が引き起こされる可能性が示唆された.

  • 山下 勝, 山内 豊明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 500-502
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    糖尿病に合併した下肢壊疽は外来で稀に診るが,今回我々は引きこもりの未治療糖尿病に合併したガス壊疽を経験したため報告する.症例は53歳男性引きこもり10年,当科受診2か月前に自宅で左足背打撲し,発赤と熱感認めるも放置し,1か月前に近医受診した.糖尿病に対して内服と抗生剤開始したが改善無く,当科へ紹介となった.同日にガス壊疽の診断にて,大腿部から切断した.術後は特に問題なく,血糖値もコントロール良好となり,自宅退院となった.非Clostridiumガス壊疽(以下NCGG)は糖尿病等のcompromised hostに合併することが多い.早期発見すれば,創部洗浄,切断,デブリドマン,抗生剤,高気圧酸素療法(以下HBO)にて切断を防ぐこともできる.しかし,本症例では発見が遅れたために切断することになった.引きこもりの未治療の糖尿病に合併したガス壊疽を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 櫻井 立太, 中村 哲郎, 坂井 崇一郎, 松口 俊央, 畑中 敬之, 伊藤田 慶, 河野 裕介, 土持 兼信, 岩崎 賢優, 土屋 邦喜
    2021 年 70 巻 3 号 p. 503-506
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    化膿性仙腸関節炎の起炎菌としては稀なSalmonella infatisによる小児化膿性仙腸関節炎の症例を経験したので報告する.【症例】12歳・女児.初診1ヶ月前から腹痛・下痢により近医で加療を受けていた.スポーツ歴や外傷歴はなく,突然左大腿部・臀部痛が出現し,翌日には歩行困難となったため,当院小児科紹介受診となった.40℃の発熱,左臀部の腫脹・熱感・疼痛がみられ,WBC・CRPの上昇を認めた.MRI検査ではSTIR像で左仙腸関節周囲に高信号を示しており,化膿性仙腸関節炎の診断で黄色ブドウ球菌をターゲットに抗生剤加療を開始した.血液培養と透視下の仙腸関節穿刺液からSalmonella infatisが培養され,感受性に合わせて抗生剤加療を継続し,軽快した.【考察】化膿性仙腸関節炎は比較的稀な疾患である.起炎菌は黄色ブドウ球菌が最多で,肺炎球菌・大腸菌等の報告もあるがSalmonella菌の報告は稀である.本症例はSalmonella infatisが起炎菌であり,比較的早期に診断・治療することができた.

  • 永芳 郁文, 田村 裕昭, 川嶌 眞人, 川嶌 眞之, 本山 達男, 古江 幸博, 佐々木 聡明, 後藤 剛, 渡邉 裕介
    2021 年 70 巻 3 号 p. 507-510
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    オゾンナノバブル水を用いた局所持続洗浄療法を併用した2期的再置換術の治療成績とオゾンナノバブル水の特性についての検討を行った.対象はインプラント周囲感染10関節と,化膿性関節炎後の変形2関節を加えた計12関節であった.オゾンナノバブル水使用群7関節,非使用群5関節の比較では,成績に差はなく,全例に感染の沈静化を認めた.オゾンナノバブル水使用群の経過に異常は認められず,使用群においては持続洗浄期間中のチューブ閉塞がなく,管理しやすい傾向にあった.オゾンナノバブル水の特徴として,①殺菌作用,②物質分解・浄化・洗浄作用,③安全性,④帯電特性が挙げられたが,さらなる慎重な検証が必要である.

  • 笹栗 慎太郎, 戸次 大史, 濱田 貴広, 木戸 麻理子, 木下 英士, 兵藤 裕貴, 大山 龍之介, 今村 隆太, 井口 明彦, 有薗 剛
    2021 年 70 巻 3 号 p. 511-513
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    関節炎の確定診断には,培養検査による菌体同定,検鏡による結晶の同定が必須であるが,関節液の細胞数やグルコース値が補助診断となる.本研究の目的は,結晶誘発性関節炎の関節液を分析し疾患の特徴を明らかにすることである.2018年から2020年に当院で確定診断に至った痛風性関節炎(痛風)4例とピロリン酸カルシウム結晶沈着症(偽痛風)11例を対象とした.痛風は細胞数(/mm³)23700(5000-46150),グルコース値(mg/dl)120(104-173.5)であった.偽痛風は細胞数35600(10800-110400),グルコース値127(109-172)で,両群間に有意差は認められなかった.関節液細胞数と血糖値と関節液グルコース値の差は,痛風群(R2乗:0.98,p<0.01),偽痛風群(R2乗:0.75,p<0.01),痛風+偽痛風群(R2乗:0.77,p<0.01)と3群で相関を認めた.結晶誘発性関節炎の関節液結果は近似すること,結晶誘発性関節炎で細胞数が著明に増加した炎症の状態では大幅に関節液グルコースが消費される可能性が示唆された.

  • 谷口 善政, 吉村 一朗, 長友 雅也, 杉野 裕記, 石松 哲郎, 萩尾 友宣, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 514-517
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    足関節外側靭帯修復術術後に不安定性再発のリスクを有する例に対し,suture tapeを用いた足関節外側靭帯補強術が施行され,良好な臨床成績が報告がされている.当施設で足関節外側靱帯補強術を行い,術後1年以上経過例の臨床成績を検討した.13例14足(男7例7足,女6例7足)を対象とした.平均年齢は30.0±13.7歳,平均経過観察期間は20.2±6.3ヶ月であった.手術適応は,再手術例,Beighton score 7点以上の全身性関節弛緩を有する例,肥満を有する例,負荷の大きな職業やスポーツ選手,鏡視で靭帯の状態が不良と判断した例とした.JSSF scaleが術前70.9点から術後91.9点(p<0.05),Karlsson-Peterson scoreが術前45.3点から術後89.2点(p<0.05)と改善していた.足関節外側靭帯補強術は短期であるが良好な治療成績が獲得されていた.

  • 藤原 絃, 萩尾 友宣, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 石松 哲郎, 杉野 裕記, 長友 雅也, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 518-521
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    内反小趾は比較的稀な疾患であり,外反母趾(HV)に合併することがある.今回内反小趾を合併した外反母趾に対する低侵襲手術の治療成績について検討した.内反小趾を合併した外反母趾に対して母趾及び第5趾に中足骨遠位直線状骨切り術(DLMO)を施行した7例9足(男性2例,女性5例)を対象とした.術前,最終経過観察時の荷重位単純X線にてHVA,IMA,内反小趾角,M4M5角を評価し,臨床評価は術前,最終経過観察時のJSSF scoreを調査した.HVAは術前32.1度から最終観察時10.5度,IMAは12.4度から4.7度,内反小趾角は21.7度から5.1度,M4M5角は11.1度から4.4度に有意に改善した.JSSF scoreは母趾が術前60.7点から最終観察時92.7点,第5趾が術前66.4点から最終観察時95.4点と有意に改善した.内反小趾を合併した外反母趾に対する同時手術の治療成績は良好であり,低侵襲手術が有用である可能性が示唆された.

  • 百武 紘司, 萩尾 友宣, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 石松 哲郎, 杉野 裕記, 長友 雅也, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 522-525
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    リスフラン関節損傷の病態としては,リスフラン靭帯損傷によるものと靭帯付着部の裂離骨折(Fleck sign)によるものが存在する.当科におけるリスフラン関節損傷に対する観血的整復術の治療成績をFleck signの有無で比較検討した.リスフラン関節損傷に対し観血的整復固定術を行った14例14足(男性8例,女性6例)を対象とした.放射線学的評価は術前,抜釘前および最終経過観察時の荷重位単純X線における内側楔状骨-第2中足骨間(C1-M2)距離を測定し,単純CTでFleck signの有無を評価した.また,臨床評価は術後のJSSF mid-foot scaleを評価し,Fleck signの有無で比較検討した.術前単純CTでFleck signを14足中3足に認め,Fleck signあり群となし群では術後C1-M2間距離,術後JSSF mid-foot scoreに有意差は認めなかった.リスフラン関節損傷に対する観血的整復固定術の治療成績は良好であった.

  • 戸倉 晋, 金澤 和貴, 千々岩 芳朗, 泉 秀樹
    2021 年 70 巻 3 号 p. 526-529
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脛骨骨幹部骨折に足関節周囲骨折を合併する事が知られている.当院での合併率を後ろ向きに調査したので報告する.【対象及び方法】2010年5月~2020年4月に脛骨骨幹部骨折と診断した33例について検討した.【結果】脛骨骨幹部骨折の骨折型はAO/OTA分類にてA1:10例,A2:8例,A3:6例,B1:6例,B3:1例,C1:1例,C3:1例,骨折の位置は骨幹部近位3例・中間14例・遠位16例であった.腓骨骨折は28例に認めた.足関節周囲骨折は33例中7例(21%)で合併しており,内果1例・前下脛腓靭帯付着部1例・後果5例(原口分類1型:4例,2型:1例)であった.その内,後果骨折合併例はA1,B1症例であり,全例腓骨近位の骨折を認めていた.

  • 上原 航, 小林 孝巨, 堀田 謙介, 宮﨑 研丞, 真島 久, 坂本 和也, 北村 貴弘, 仙波 英之, 生田 光, 志田原 哲
    2021 年 70 巻 3 号 p. 530-535
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】脆弱性骨盤骨折(FFP)における骨折の進展は臨床的に問題になっている.しかしながら,脊椎骨盤アライメントと骨折の進展の関係に関する報告はない.本研究の目的は,FFPにおける脊椎骨盤アライメントと骨折の進展との関連性を調査することである.【方法】2017年1月から2019年12月に立位全脊柱・骨盤X線側面像を撮影したFFP28例を対象とした後方視的研究である.初診時と最終フォローアップ時の画像検査より,骨折の進展あり群(n=14)と進展なし群(n=14)に分類し,脊椎骨盤アライメント(PI,PT,SS,LL,TK,SVA,PI-LL mismatch)を比較した.【結果】進展あり群と進展なし群との間で,PI(68.9° vs. 68.5°,p=0.938),PT(35.2° vs. 33.5°,p=0.737),SS(33.1° vs. 35.0°,p=0.633),LL(25.0° vs. 32.1°,p=0.189),TK(49.0° vs. 50.5°,p=0.849),SVA(105.2mm vs. 97.3mm,p=0.670),PI-LL mismatch(44.0° vs. 36.4°,p=0.332)は有意差を認めなかった.【考察】FFPにおける脊椎骨盤アライメントと骨折の進展との関連性は認めなかった.今後は症例数を増やして検討する必要がある.

  • 高橋 洋平, 藤澤 武慶, 武藤 正記, 片岡 秀雄, 安部 幸雄
    2021 年 70 巻 3 号 p. 536-538
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    はじめに:当科では橈骨遠位端骨折患者を対象に腰椎,大腿骨,健側前腕の骨密度測定を行っている.前腕の骨密度のみが低下した症例について調査した.対象と方法:腰椎,大腿骨,健側前腕のDXAを行った橈骨遠位端の脆弱性骨折70例のうち腰椎,大腿骨でともにYAM 80%以上であった26例を対象として健側前腕の骨密度を検討した.結果:健側前腕のYAM 80%以上は11例,80%未満は15例であった.健側前腕のYAMが80%未満の症例で関節内や骨幹端の粉砕を伴う骨折が多くなっていた.考察:前腕は腰椎や大腿骨と比べて骨密度低下が早期に起こると言われている.本研究では前腕の骨密度が骨粗鬆症をより鋭敏に反映していると考えられた.結論:大腿骨,腰椎の骨密度測定だけでは診断できない骨粗鬆症が多くあり,前腕の骨密度やFRAXを診断基準に加えることで早期に治療介入できる可能性がある.また早期治療介入することで橈骨遠位端の粉砕骨折を少なくできる可能性が示唆された.

  • 鈴木 湧貴, 戸次 大史, 木戸 麻里子, 木下 英士, 兵藤 裕貴, 大山 龍之介, 今村 隆太, 濱田 貴広, 井口 明彦, 有薗 剛
    2021 年 70 巻 3 号 p. 539-540
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折患者における胸部大動脈石灰化の分布を部位別に検討する.【方法】大腿骨近位部骨折で術前に胸部CTを撮影した50例においてaxial像で評価した.石灰化が1/3周以下が3スライス以上,もしくは1/3周以上が1スライス以上の症例を石灰化+と定義した.【結果】大腿骨近位部骨折患者において50人中16人(32%)の上行大動脈に石灰化を認め,50人中40人(80%)の下行大動脈に石灰化を認めた.上行大動脈では有意に石灰化の発生率が低かった.【考察】局在により動脈石灰化のetiologyが異なる可能性が考えられた.

  • 白木 誠, 古賀 有香里, 髙山 剛
    2021 年 70 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    当院でロモソズマブを新規導入した骨粗鬆症患者を対象に治療成績および骨密度上昇予測因子,前治療薬の影響を検討した.投与6ヶ月で腰椎骨密度が7.2%有意に上昇したが大腿骨頚部・Total hipでは有意差を認めなかった.大腿骨強度は6.3%上昇したが有意差は認めなかった.骨形成マーカー(P1NP)は投与1ヶ月で有意に増加,骨吸収マーカー(TRACP-5b)は3ヶ月で有意に低下し,投与6ヶ月まで持続した.前治療薬の違いにより腰椎骨密度および骨強度の変化を比較したところ,骨密度上昇率は薬剤間で有意差を認めなかったが,骨強度上昇率に有意差を認めた.腰椎骨密度上昇と投与3ヶ月のP1NP絶対値が有意に相関し骨密度上昇の予測因子となる可能性が示唆された.経過中,心血管イベントの発生はなく比較的安全に使用可能であった.ロモソズマブは前治療薬に関わらず腰椎骨密度を上昇させる有効な治療法と考えられる.

  • 郷野 開史, 馬場 賢治, 岡田 祥明, 近藤 秀臣, 石倉 透, 福原 志東, 赤星 正二郎, 有田 忍, 沖本 信和
    2021 年 70 巻 3 号 p. 546-549
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】我々は長橈側手根伸筋起始部における上腕骨裂離骨折を経験した.渉猟しえた限りでは,同部位の骨折について,本邦での報告はない.【症例】症例は20歳男性,階段を仰向けに滑り落ちて左肘関節痛が出現した.肘関節単純X線斜位像とCTで左上腕骨外側顆上稜に骨折を認め,骨折部位と臨床症状から長橈側手根伸筋(ECRL)付着部断裂と診断した.前腕中間位,手関節軽度背屈,肘関節90°でギプスシーネ固定することで,受傷後1ヶ月で症状は軽快した.【考察】ECRL裂離骨折は,停止部裂離骨折である中手骨骨折の報告が散見される.一方で,起始部骨折はなく,類似する報告として腕橈骨筋(BR)裂離骨折の報告3件を認めるのみであった.手関節背屈位,肘関節伸展位でECRLが緊張しているときに,外力が加わり裂離骨折を来したものと推測した.【結語】我々はECRL起始部裂離骨折を経験した.単純X線正面像で骨折線がはっきりと認識できない場合,斜位像やCT検査の追加が望ましいと考える.

  • 古賀 陽一, 熊谷 達仁, 樋髙 由久, 西田 智
    2021 年 70 巻 3 号 p. 550-553
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    橈骨神経麻痺を伴う閉鎖性上腕骨骨幹部骨折に対して,術前に超音波検査で評価を行なった1例を経験した.86歳女性.自宅で転倒し受傷,前医で橈骨神経麻痺を伴う左上腕骨骨幹部骨折と診断され受傷後2日目に当院紹介受診.橈骨神経麻痺を合併していた.受傷後5日目に手術を行った.手術当日まで橈骨神経麻痺は改善せず,術中に橈骨神経を直視下に確認した上で骨接合術を行う方針とした.術前に超音波検査を行い,骨片間に存在する橈骨神経を確認した.術中所見で,近位骨片のSpikeが橈骨神経と接触し,神経の充血とくびれを認めた.橈骨神経の断裂は認めず.橈骨神経を剥離・保護したのち,骨片を整復し,順行性髄内釘による骨接合術を行った.橈骨神経麻痺を伴う閉鎖性上腕骨骨幹部骨折に対する超音波検査は,神経の損傷の病態評価や神経剥離時に展開する位置を評価するのに有用であると考えられた.

  • 小柳 真穂, 伊崎 輝昌, 三宅 智, 新城 安原, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 3 号 p. 554-556
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】新鮮骨折と骨折続発症に対するリバース型人工肩関節全置換術(RSA)の術後成績を比較検討する.【対象】肩外傷に対してRSAを施行した11例11肩(新鮮骨折8肩と骨折続発症3肩)を対象とした.男性3例,女性8例,手術時平均年齢は80.2歳,術後経過観察期間は27.8ヶ月.術後JOAスコア,UCLAスコア,前方挙上,外旋,内旋,結節癒合,合併症について検討した.【結果】術後JOAスコアは87.2点,UCLAスコアは29点,前方挙上106度,外旋97度,内旋L4レベル,結節偽関節1肩であった.術後可動域,臨床成績において両群間に有意差は認めなかった.【考察】肩外傷に対するRSA術後成績は,既存の腱板断裂,関節窩の変化や骨欠損,結節癒合の成否,合併症などが影響する.本研究でRSAは新鮮骨折,骨折続発症においても安定した術後成績が期待できることが示唆された.

  • 当真 孝, 山口 浩, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 比嘉 浩太郎, 上原 史成, 東 千夏, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 3 号 p. 557-561
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    我々は腱板断裂性関節症に対して腱板修復・大胸筋腱移行を併用したリバース型人工肩関節置換術(以下,RSA)を行っている.経験した2例を報告する.症例1,77歳,女性.既往歴は高血圧,糖尿病.5年前より右肩痛自覚.転倒し手をついた後に右腕が挙上困難となったため当院へ紹介された.術前は屈曲20°,外旋0°,内旋L1,JOAスコア45点.RSAを施行.術後5カ月リハビリテーションを施行.1年7カ月ROMは屈曲145°,外旋35°,内旋L1,JOAスコアは85点へ改善.症例2,77歳,男性.既往歴は高血圧,心房細動.10年前より左肩痛自覚.左手でドアを押した際に左肩痛増悪,左腕が挙上困難となったため当院へ紹介された.術前屈曲80°,外旋20°,内旋L1,JOAスコアは52点.RSAを施行.術後8カ月リハビリテーションを施行.1年7カ月ROMは屈曲145°,外旋60°,内旋Th1,JOAスコアは87点へ改善.

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