整形外科と災害外科
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70 巻, 4 号
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  • 神谷 俊樹, 日吉 優, 坂本 武郎, 舩元 太郎, 中村 嘉宏, 山口 洋一朗, 平川 雄介, 今里 浩之, 帖佐 悦男
    2021 年 70 巻 4 号 p. 595-598
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】コンパートメント症候群の中でも下肢の不適切な体位が原因となるWell-leg compartment syndrome(WLCS)の一例を経験したので報告する.【症例】38歳男性の直腸カルチノイドに対して砕石位で腹腔鏡補助下低位前方切除術・回腸人工肛門造設術を施行した.手術時間は6時間39分,麻酔時間は8時間5分であった.覚醒時より左下腿の疼痛を自覚し,下肢挙上台(レビテーター)に一致した圧迫痕と腫脹を認めた.血液検査にて経時的なクレアチンキナーゼ(CK)の上昇,コンパートメント内圧の上昇を認め,同日筋膜切開を行った.切開術直後より疼痛は改善し,後遺症を残すことなく経過良好であった.【考察】WLCSは砕石位で最も多いと言われる.砕石位は他科で汎用されるが,コンパートメント症候群は他科では馴染みの少ない病態であり,我々整形外科医が率先して手術室スタッフを含めた知識の共有を行うことで,予防,早期発見・治療が可能と思われる.

  • 柳澤 義和, 石津 研弥, 大賀 正義
    2021 年 70 巻 4 号 p. 599-601
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】ガイドラインではエピドラスコピーの推奨度は高くないが有用性は高い.当科では経仙骨的脊柱管形成術(以下,TSCP)にリハビリを併用した短期入院治療を行っている.今回,本プログラムの治療成績について検討した.【対象と方法】対象は本プログラムを施行した14症例(男女比2:12,平均年齢:76.6歳)で,疾患として多椎間腰部脊柱管狭窄症:7例,術後遺残疼痛:4例などであった.手術当日より離床開始し,約2~3週間体幹・下肢筋トレやADL訓練指導を行った.調査項目は,術後経過,再手術症例の有無と要した期間,JOAスコアの推移を調査した.平均経過観察期間:6.1ヶ月.【結果】術後経過はADL改善し経過良好:8例,痛み再燃し再手術:4例,痛み軽減するも手術:2例であった.再手術は除圧術:4例,TSCP:1例,固定術:1例であった.要した期間は平均68.5日であった.【考察】本プログラムは被曝の問題はあるが低侵襲なTSCPに術後リハビリを併用することで慢性腰下肢痛患者には有用である可能性が高いと考えられた.

  • 白石 絵里子, 吉田 健治, 南 公人, 井上 貴司, 中村 英智, 岩瀬 弘敬, 志波 直人
    2021 年 70 巻 4 号 p. 602-605
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】乳癌の骨転移治療中,両側非定型性大腿骨骨折Atypical Femoral Fracture(以下AFF)を生じた1例を経験したため報告する.【対象と結果】54歳女性,47歳時に進行性乳癌と診断され,多発骨転移に対してデノスマブを投与されていた.自宅内を歩行中,急に両大腿部の激痛と変形を来し救急搬送された.X線にて両大腿骨骨幹部骨折を認め,経過や画像所見からAFFと診断し,受傷3日後に両側の髄内釘固定を行った.術後は2週後より仮骨形成を認めたため全荷重歩行を許可した.デノスマブは受傷6週間前に最終投与しており術後3週で再開した.術後3か月でノルディックポールでの歩行が可能となり,骨折部の仮骨形成もさらに進行した.【考察】乳癌骨転移に対するデノスマブ使用によってもAFFが発生しうる.骨折後のデノスマブ再開については骨癒合の状態や予後など個々の症例に応じた対応が必要である.

  • 中尾 優風子, 北原 博之, 奥平 毅, 宮原 健次
    2021 年 70 巻 4 号 p. 606-609
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    ビスホスホネート(Bisphosphonate: BP)製剤は,強力な骨吸収阻害作用を有し,骨が脆弱となる様々な疾患の予防や治療に用いられている.一方,BP製剤の長期使用が増加したことにより非定型大腿骨骨折が近年問題となっているが,その発生頻度は明らかにされていない.当院では,悪性腫瘍の骨関連事象(Skeletal Related Event: SRE)予防として,ゾレドロン酸が使用されているが,3年間に4例6骨折の非定型大腿骨骨折が発生した.そこで,その発生状況を調べる目的で,当院でBP製剤を使用した1399例のうち,画像の追跡が可能であった1273例を調査した.非定型大腿骨骨折の累積発生率は,BP製剤が骨粗鬆症に対して用いられた場合,163か月で3.0%,SRE予防に使用した場合,102か月で52.5%であった.BP製剤がSRE予防に使用された場合,骨粗鬆症に対して用いられた場合と比較し有意に高い発生率(p<0.001)であった.

  • ~経過観察中止例の検討~
    樫本 翔平, 米倉 豊
    2021 年 70 巻 4 号 p. 610-612
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で大腿骨転子部骨折に対し骨接合術を行った症例の整復位と歩行能力について評価した.【対象及び方法】対象は2012年3月から2019年4月に当院で大腿骨転子部骨折に対して観血的骨接合術を施行した119例とした.平均経過観察期間は6.3か月であった.術後単純X線側面像で生田分類subtype A,NをAN群,subtype PをP群とした.平均年齢84歳,術後1年の経過観察の有無,最終診察時の歩行能力を調査した.【結果/考察】AN群94例,P群25例であった.術後1年間経過観察を行えた症例は47例(38%),経過観察中止例は72例(62%)であった.中止理由は高齢38例,認知症20例,死亡6例,その他不明が8例であった.術後1年以内の歩行可能例はAN群で46/94例,P群8/25例(P=0.13)であった.経過観察中止群の歩行可能例はAN群で23/56例,P群で2/16例(P=0.03)であった.経過観察中止例でP群は有意に歩行能力が低下しており,早期の歩行能力獲得には術中の適切な整復が重要であることが示唆された.

  • 宮﨑 研丞, 小林 孝巨, 堀田 謙介, 上原 航, 真島 久, 坂本 和也, 北村 貴弘, 仙波 英之, 生田 光, 志田原 哲
    2021 年 70 巻 4 号 p. 613-617
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部不安定型骨折に対する髄内釘において,後外側骨片の整復鉗子を使用する方法としない方法とで手術侵襲,画像所見,身体機能を比較する事である.【方法】2017年1月から2019年12月迄の大腿骨転子部不安定型骨折(Jensen type 3及びtype 5)に対して髄内釘を行った128例を対象とした後方視的研究である.入院期間を基準に整復鉗子(InterTAN AP Reduction Clamps)使用群37例と非使用群91例に分類した.両群で手術侵襲(手術時間,術中出血量),画像所見(術後スライディング量,後外側骨片癒合率),身体機能(術後1週間後のADL)を比較した.【結果】整復鉗子使用群と非使用群で手術時間(62.1分 vs. 68.4分,p=0.807),術中出血量(44.4 ml vs. 45.2 ml,p=0.833),術後スライディング量(2.8 mm vs. 3.3 mm,p=0.749),後外側骨片癒合率(94.1% vs. 96.5%,p=0.696),術後1週間後のADL(2.6 vs. 2.5,p=0.881)は有意差を認めなかった.【考察】整復鉗子使用群と非使用群で手術侵襲,画像所見,身体機能に有意差を認めなかった.今後は更なる検討が必要である.

  • 松田 昌悟, 平川 雅士, 長嶋 優, 池田 真一, 津村 弘
    2021 年 70 巻 4 号 p. 618-622
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】PS型TKAにおける術中屈曲伸展ギャップ差が術後の患者立脚型評価に与える影響を検討したので報告する.【方法】PS型TKAを施行し術後1年以上経過観察可能であった39膝を対象とした.Fit群(0~0.5 mm:20膝),Lax群(2~5 mm:19膝)でそれぞれの術前,術後1年の可動域,術後1年のKnee society score(KSS),術後1年の日本語版KOOSを比較した.【結果】Fit群/Lax群において伸展角度は術前-8.3±1.1°/-7.6±1.1°,術後1年0.0±0.0°/-1.3±0.5°となりFit群の方がLax群より術後1年の伸展角度が有意に改善していた(p<0.05).KSSは2群間で有意差は無かった.日本語版KOOSの各項目を比較するとADLとQOLでFit群よりLax群が有意に高値であった(p<0.05).【考察】屈曲伸展ギャップにある程度の差があった方が患者満足度を高めることが示唆された.

  • 棚平 健, 中島 三郎, 宮﨑 信, 沼田 亨祐, 吉野 孝博, 中原 達秀, 鮒田 貴也
    2021 年 70 巻 4 号 p. 623-625
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    外傷性膝関節脱臼は比較的稀な疾患であるが,我々は外傷性膝関節脱臼に対して人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した症例を経験したので報告する.症例は89歳,男性.高さ3 m程度の木の上で作業中に転落し当院へ救急搬送され,単純X線写真で左膝関節脱臼およびSegond骨折を認めた.手術を提案するも希望されずDONJOY装具固定としリハビリを行った.退院時はpick up walker歩行であった.外来再診時に移動の際の疼痛のため手術を希望され,Zimmer NexGen® LCCKによるTKAを施行した.術後経過は概ね良好で1本杖歩行で自宅退院となった.

  • 前田 純一郎, 野村 賢太郎, 富田 雅人, 神﨑 貴仁, 西野 雄一朗, 朝長 匡
    2021 年 70 巻 4 号 p. 626-629
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【症例】83歳女性,左膝の疼痛と高度可動域制限によるADL障害で当科紹介となった.左膝可動域は伸展+40°~屈曲0°と著明な反張を伴う伸展拘縮膝であり,レントゲンではFTA 205°と高度内反変形を認めた.立位は何とか可能であったが,荷重時に左膝が“posterior thrust”を呈するため歩行は困難な状態であった.反張を制御し得る拘束性の高いTKAの適応と考えられたが,膝屈曲が不可能なため通常の拘束型インプラントでは手術操作が困難と判断,腫瘍用人工関節(GMRS, Stryker)を選択した.手術は膝蓋腱を脛骨粗面より切離し関節内を展開,脛骨を関節面から100 mm遠位で骨切りすることで膝屈曲が得られ手術操作が可能となった.術後3か月で膝可動域は伸展0°~屈曲80°まで改善,歩行器歩行が可能となった.【考察】本症例のように非生理的可動域を有する拘縮膝においては,primary TKAであっても腫瘍用人工関節は治療の選択肢になり得ると考えられた.

  • 市川 賢, 前山 彰, 小田 大嘉, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 小林 知弘, 鎌田 聡, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 630-633
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景及び目的】内側型変形性膝関節症に対するOWHTOは良好な長期成績が報告されている.インプラントの長期留置に伴う破損,違和感等の合併症が報告され,本邦では抜釘術が行われる傾向にある.一方,抜釘術自体に伴う感染・神経損傷等の危険性もあり海外では抜釘術に関しては一定の見解はない.また,これまでに抜釘術の術後評価を行った研究はない.研究の目的はOWHTOの抜釘術の満足度を調査することである.【対象及び方法】2015年4月から2020年3月までにOWHTOの抜釘術を施行し術後満足度を調査可能であった25例28膝.抜釘術の満足度をアンケートを用いて評価し,術前後の臨床評価スコアとの関連を調査した.【結果】VAS,NRSが術前後でそれぞれ有意に低下を認めた(P<0.05).82%の患者に抜釘術に対して満足/非常に満足との回答が得られた.【結論】OWHTO後の抜釘術により患者満足度は向上する.

  • 長松 晋太郎, 石松 哲郎, 工藤 悠貴, 出口 直樹, 野尻 圭悟, 平川 善之, 花田 弘文, 藤原 明, 原 道也
    2021 年 70 巻 4 号 p. 634-637
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】内反膝に対する内側楔状開大式高位脛骨骨切り術(以下OWHTO)後に膝側方動揺性が低下する.しかし,術後に再内反をきたす症例も散見される.OWHTO術後の膝動揺性を加速度計を用いて測定し,術後膝動揺性に関与するX線学的因子を検討した.【方法】OWHTOを施行し,術後5週および1年時に歩行解析が可能であった58例58膝を対象とした.X線学的評価項目として術前,術後1年のWBL ratio,HKA angle,mLDFA,MPTA,JLO,JLCAを計測した.術後5週から1年時に内側・外側加速度の増加群と減少群に分け2群間比較した.【結果】内側加速度は増加群で術後WBL ratio,HKA angleが有意に小さく,外側加速度は増加群で術後JLCAが有意に大きかった.【結語】矯正不足の症例,術後JLCAが大きい症例は膝側方動揺性が再燃しており,再内反の原因になり得る可能性が示唆された.

  • 吉村 陽貴, 石松 哲郎, 宮﨑 弘太郎, 中山 鎮秀, 小林 知弘, 前山 彰, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 638-640
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】内反変形膝への内側開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)後に,膝蓋骨が低位化すると報告されている.一方で,Femoral patellar height index(FPHI)を用いた測定法では低位化しないとされているが,開大角との関連は不明である.【目的】OWHTO後の膝蓋骨高をFPHIで評価し,開大角との関連を検討すること.【方法】2017年~2018年にOWHTOを施行した39例39膝を対象とし,術前,術後3,12カ月の立位下肢全長X線のFPHIの変化量,並びに開大角との相関を検討した.また膝蓋骨低位群29膝と非低位群10膝に分け,術後JOAスコアを比較した.【結果】FPHIは術後3カ月間で有意に増加(低位化)したが(p=0.005),術後3,12カ月間で差はなかった.術前後のFPHI変化量は開大角と有意な相関を認めた(p=0.03, r=0.34).JOAスコアは2群間で有意差はなかった.【考察】膝蓋骨低位化は,FPHIを用いても術後3カ月までに生じ,開大角と相関した.膝蓋骨高の測定法として,FPHIが有用である可能性が示された.

  • 赤須 優希, 石松 哲郎, 宮﨑 弘太郎, 中山 鎭秀, 小林 知弘, 鎌田 聡, 前山 彰, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 641-643
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】joint laxityを有す内反変形膝へのOWHTOでは,軟部バランスを加味する必要があるが,その作図法に一定の見解はない.目的はjoint laxityを有す症例において有用な作図法を検討すること.【方法】対象は2017年~2020年にOWHTOを施行した92例95膝のうちJLCA 4度以上であった27例29膝.A群11例は立位下肢全長でJLCAを補正し矯正角を算出,B群16例は臥位下肢全長で矯正角を算出した.%MA 50~70%を至適とし,至適%MAを獲得した症例の割合並びに術前後X線にてcorrection errorの原因を検討した.【結果】至適%MAの割合はA群5膝(38%),B群13膝(81%)とB群で有意に多かった(p=0.023).【考察】joint laxityを有す症例の術前計画において立位下肢全長でJLCAを補正した作図法がより至適アライメントを得うる可能性が示唆された.

  • 酒井 政彦, 小林 知弘, 山﨑 裕太郎, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 前山 彰, 鎌田 聡, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 644-648
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】開大式高位脛骨骨切り術(以下OWHTO)の骨充填材料として用いられるβ-TCPはその気孔率や形状など様々な種類があるが,ヒンジ部に限局した骨充填材料の形状の違いによる骨癒合を比較した報告はない.【目的】OWHTOのヒンジ部におけるβ-TCPの形状が骨癒合に影響するかを検討すること.【対象と方法】2017年4月から2019年4月までに当院でOWHTOを施行した症例で,骨切り開大部の内側皮質部には気孔率60%のブロック状β-TCPを全例に使用し,ヒンジ部に気孔率75%のブロック状β-TCPを挿入した26膝をブロック群,顆粒状β-TCPを挿入した21膝を顆粒群とし,術後3,6,12ヶ月での骨癒合の割合を比較検討した.【結果・考察】術後3ヶ月において顆粒群が有意に骨癒合を認めた.ヒンジ部における顆粒状のβ-TCPは術後早期において骨癒合に有利である可能性が示唆された.

  • 中島 輝人, 小林 知弘, 工藤 悠貴, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 前山 彰, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 649-652
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】高位脛骨骨切り術(以下OWHTO)の術後臨床成績はRosenberg像と最も相関があると報告されている.しかし術前の撮影法でKL分類に相違がある症例が散見される.【目的】伸展位立位正面像とRosenberg像でgradeの異なる症例が術後成績に影響するかを検討すること.【対象と方法】2016年4月から2019年4月までに当院にて連続で施行したOWHTO 187例192膝のうち,術前Rosenberg像でKL grade 4の症例60例62膝を伸展位立位正面像でKL grade 2または3の症例38例39膝をA群,両撮影法ともgrade 4の症例22例23膝をB群に分け,両群を比較検討した.【結果】術後1年時でのJOA scoreはB群が有意に低値であった.【結語】術前評価においてはRosenberg像のみでなく伸展位立位正面像のKL gradeにも留意すべきである.

  • 小畑 彰, 平川 雅士, 松田 昌悟, 津村 弘
    2021 年 70 巻 4 号 p. 653-656
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】樹枝状脂肪腫は滑膜下組織が成熟細胞組織に置換され,滑膜が絨毛状に増殖することが特徴であるまれな良性関節内病変である.今回,両膝発症の樹枝状脂肪腫を経験したので報告する.【症例】患者は50歳男性.10年ほど前より誘引なく両膝の腫脹が出現し保存的に加療されていたが改善乏しく,膝痛・腫脹拡大に伴う屈曲制限認めるため当科紹介となった.当科初診時,両膝屈曲伸展動作で轢音著明であり,両膝ともに大腿部まで及ぶ水腫(右460 ml/左340 ml)を認めた.MRIでは膝蓋上嚢を主体とした滑膜の増生と水腫を認め滑膜炎の所見であった.治療,診断確定目的に両膝滑膜切除術を施行した.術後病理検査では,滑膜は成熟した脂肪織から構成されており樹枝状脂肪腫の診断となった.術後腫脹は改善し現在まで再発なく経過している.【考察】樹枝状脂肪腫はまれな疾患であるが慢性関節水腫,関節症を呈する患者の鑑別診断に含める必要がある.

  • 松田 匡弘, 王寺 享弘, 徳永 真巳, 松田 秀策, 井浦 国生, 富永 冬樹
    2021 年 70 巻 4 号 p. 657-662
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回,若年者アスリートにおける外側半月板損傷に対する縫合術の成績を報告する.【対象と方法】2012年から2018年4月まで17例であった.男性14例,女性3例で,平均19.2歳(14-35歳)で,経過観察期間は平均21.6か月であった.断裂形式は縦断裂が11例,横あるいは斜断裂が6例であった.再断裂率とスポーツ復帰率,術後臨床成績と画像所見を調査した.【結果】再断裂なしが14例(82%),ありが3例(18%)であった.再断裂なし群は,Tegner scoreは術後平均6.8点,Lysholm scoreは術後平均97.4点であった.再断裂ありの3例は部分切除後にスポーツ復帰した.【考察とまとめ】臨床成績良好であったが再断裂例も認めた.今後も強固な縫合や慎重な後療法の検討が必要と考えた.

  • 島袋 全志, 新垣 和伸, 東江 拓海, 川越 得弘, 渡慶次 学, 上原 史成, 比嘉 浩太郎, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 4 号 p. 663-665
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    【はじめに】当院では早期荷重歩行の実現を目指し,DLO施行時に大腿骨anterior flangeに前方からCCS固定を追加している.【対象および方法】対象は,2018年11月から2019年11月にDLOを施行し半年以上観察可能であった22例(男性15膝,女性7膝).平均年齢は67才(48~78才).観察期間は平均44週(25~75週).後療法は裴らの平行棒内プロトコールに準じて術後3日目より痛みに応じて荷重を開始した.評価項目は,術後3日目,1ヵ月毎のCTにて大腿骨側の骨癒合時期とヒンジ骨折の有無とした.【結果】平均19週(8~37週)で全例骨癒合した.術中ヒンジ骨折は認めなかったが,術後2ヵ月でヒンジ骨折を2例に認め,どちらも転位せずに骨癒合した.【結論】CCS固定は簡便であり,早期荷重の一助となり,ヒンジ骨折に対しても効果があると思われた.

  • 久米 慎一郎, 原口 敏昭, 山木 宏道, 林田 一友, 後藤 昌史, 大川 孝浩, 志波 直人
    2021 年 70 巻 4 号 p. 666-668
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】膝OA患者のなかで,中枢感作の有無によるデュロキセチン(DLX)の効果を検討したので報告する.【対象と方法】2017年11月からDLXを新規投与した43例を対象とした.DLXは全例20 mgを朝食後から開始し,評価は投与前と投与後平均3.2週に行い,評価項目は,NRS(Numerical Rating Scale)とJKOM(Japanese Knee Osteoarthritis Measure)で検討し,中枢感作の指標としてCSI(Central Sensitization Inventry)を用い,30点以上を中枢感作ありとして,中枢感作の有無によるJKOMの改善率を評価した.【結果】投与後のNRSは5.13に改善し,JKOMはVAS及び各項目全体は改善した.また,中枢感作なし群でのJKOMの点数に変化はなかったが,中枢感作あり群での改善率はすべての項目で中枢感作なし群より有意に高かった.【考察】DLXは膝OA患者に一貫した有効性を示し,特に中枢感作を疑う例では効果が大きく,除痛及びQOL改善に寄与する可能性が示唆された.

  • 熊谷 千尋, 塩川 晃章, 田中 潤, 柴田 遼, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    (目的)転移性脊椎腫瘍に対し,根治的手術が困難な場合は姑息的手術が選択される.本研究の目的は当院で転移性脊椎腫瘍に対して姑息的手術を行った症例の治療成績を検討することである.(方法)2013年4月から2020年3月の8年間で当院にて転移性脊椎腫瘍に対し手術を行った24例(男性16例,女性8例,平均年齢61歳)を対象とした.原疾患,転移部位,手術方法,徳橋スコア,SINS(The Spine Instability Neoplastic Score),PS(performance states),麻痺の程度(Frankel分類)を後ろ向きに調査した.評価方法は術前と術後のPSとFrankel分類を用いて1段階以上改善又は術前の歩行能力を維持できた症例を成績良好例とした.(結果)手術方法は除圧術9例,除圧固定術10例,固定術5例であった.成績良好例はPS評価で16例(67%),Frankel分類では,17例(71%)であった.(考察)化学療法の発展に伴い転移性脊椎腫瘍患者の生命予後も伸びており,PSを維持するためにも姑息的手術は有用と考えられた.

  • 眞田 京一, 大田 秀樹, 松本 佳之, 井口 洋平, 巽 政人, 田原 健一, 柴田 達也, 萩原 秀祐, 木田 浩隆, 竹光 義治
    2021 年 70 巻 4 号 p. 673-676
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    DISH椎体及びその隣接椎体骨折に対する手術成績を調査した(2015.1~2020.7).後方固定術は6例あり,DISH中間部に発生した椎体骨折4例,DISH下位隣接椎体骨折2例であった.BKPは29例で,DISH下端椎3例,DISH下位隣接椎体21例,下位隣接椎体より以遠椎体5例であった.DISH合併のない椎体骨折は68例であった.後方固定術は全例骨癒合した.BKPに関しては下位端骨折:全例腰痛改善し隣接椎体骨折は無かった.DISH下位隣接椎体:腰痛は7例残存,隣接椎体骨折は6例,再手術は1例に施行した.下位隣接以遠椎体:腰痛は4例残存,隣接椎体骨折は1例,再手術は1例に施行した.DISH合併のない椎体骨折へのBKPは腰痛が17例で残存,隣接椎体骨折は5例,再手術は無かった.DISH合併例においては骨折部に負荷が加わりやすく,椎体骨折をきたすと骨欠損が大きくなり安定性が得られにくい.

  • 櫻木 彬一, 大田 秀樹, 松本 佳之, 井口 洋平, 巽 政人, 田原 健一, 柴田 達也, 眞田 京一, 萩原 秀祐, 木田 浩隆, 竹 ...
    2021 年 70 巻 4 号 p. 677-680
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    びまん性特発性骨増殖症(DISH)では糖尿病,高血圧,肥満,呼吸機能障害など内科的併存症の有病率が高いとされる.当院にて脊椎手術時に判明したDISH症例における内科的併存症を調査し,周術期内科的合併症および脊椎手術後合併症について検討した.対象は83例で,男性65例,女性18例,年齢は平均76±9歳であった.83例中80例(96.4%)に内科併存症を認めた.内訳は糖尿病25例(30.1%),高血圧67例(80.7%),肥満39例(47%)であった.呼吸器疾患に関しては,COPD例はなく,喘息9例(10.8%)であった.いずれの疾患も日本人平均を大きく上回っていた.また,DISHは周術期内科的合併症および術後脊椎合併症の頻度も高いと言われている.当院においては,周術期内科的合併症の発生は幸いにも経験せず,脊椎術後合併症に関しては,糖尿病患者に創部深部感染を1例に認めるのみであった.

  • 上園 忍, 俵積田 裕紀, 徳本 寛人, 八尋 雄平, 河村 一郎, 冨永 博之, 谷口 昇
    2021 年 70 巻 4 号 p. 681-683
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】びまん性特発性骨増殖症(DISH)や強直脊椎炎(AS)のような強直脊椎骨折に大動脈損傷を合併した症例を2例経験したので報告する.【症例】症例は2例(DISH 1例,AS 1例),受傷機転は交通事故と階段からの転落であった.2例とも造影CTを施行され,脊椎骨折と大動脈損傷(仮性動脈瘤1例,大動脈解離1例)の合併を認めた.ステントグラフト内挿術を優先したのちに,脊椎固定術を施行した.【考察】強直脊椎骨折は,診断が遅れる可能性や遅発性神経麻痺のリスクが高く,骨折に伴う様々な合併症が報告されている.大動脈損傷の合併率は1.3%と少ないが,死亡率は60%と非常に高い.転機に多大な影響をもたらすため,強直脊椎骨折では造影CTによる血管評価が必要である.

  • 太田 浩二, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘
    2021 年 70 巻 4 号 p. 684-687
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術(BHA)は若手整形外科医が行う頻度が高く,成績不良例を経験することがある.大腿骨頸部骨折に対して整形外科非専門医(卒後3-7年目)が施行したBHA 115例,男性29例,女性86例,平均年齢83.8±7.9歳を対象とした.手術はFit and Fill型(F群; 19例),taper wedge型(T群; 72例),Zweymuller型(Z群; 24例)ステムを使用し,手術所見,術後X線所見について統計学的に検討した.Z群が2度以上の内反が最も多く,subsidenceはF群に最も多かった.経験が浅い術者ではインプラントによって術後X線異常を来たしやすい可能性がある.

  • 城間 大, 坂本 哲哉, 瀬尾 哉, 小林 知弘, 木下 浩一, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 688-690
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
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    人工股関節全置換術(THA)における正確なカップ設置は,術後の脱臼,インピンジメントなどを減少させると報告されている.本研究ではナビゲーションを用いたTHAにおけるカップの設置角度の正確度と精度について検討する.対象は初回THA 22例24股.前半の14股はナビゲーションを使用せず,後半の10股は使用した.正確度には術中ナビゲーション表示値と術後CT値の誤差,精度には標準偏差(95%信頼区間)を用いた.また,ナビゲーション使用の有無でLewinneck’s safe zone内の確率を調べた.ナビゲーション使用例でのカップ設置角度は,Inclination 42.4°±4.7°,Anteversion 20.5°±7.1°,正確度はInclination 3.3°,Anteversion 7.9°,精度はInclination 2.7°,Anteversion 4.5°であった.ナビゲーション使用例,未使用例でのsafe zone内の割合はそれぞれ100%,86%であった.ナビゲーション使用群の方がカップの設置角度,safe zoneの割合に関して良好な結果が得られ,THAにおいてナビゲーションは有用なデバイスであると思われる.

  • 山田 祐莉子, 渡邉 弘之, 相良 孝昭, 岡田 龍哉, 興梠 航, 酒本 高志
    2021 年 70 巻 4 号 p. 691-693
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    一般的に寛骨臼回転骨切り術(以下RAO)の手術成績は青・壮年期に比べ,中年期では成績が劣ると考えられている.当院では50歳以上でも関節温存を希望される場合,積極的にRAOを施行してきた.今回当院にてRAOを施行された50歳以上の症例について検討した.症例は1992年から2020年に当院でRAOを施行した50歳以上の症例77例82関節,手術時平均年齢54.5歳,経過観察期間は1~14年,平均5.0年であった.性別,JOAスコア,単純X線所見を比較した.病期の進行・THAへの移行をEndpointとした生存率を調査した.本研究では,病期進行しなかったのは91.5%,THAに移行しなかったのは97.6%と良好な成績がえられた.中年期以降にRAOを施行する際,術前評価で適応を厳しく選択したことが良好な結果につながったと考える.

  • 畑 直文, 瀬尾 哉, 坂本 哲哉, 小林 知弘, 木下 浩一, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 694-697
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】高位脱臼性股関節症に対する転子下骨切り併用人工股関節全置換術の手術成績を調査することである.【方法】2010年2月から2014年9月までに高位脱臼性股関節症に対し転子下骨切り併用人工股関節全置換術を施行し,術後5年以上経過観察可能であった9関節を対象とした.手術時年齢は平均66.6歳(56-76歳),経過観察期間は平均6.3年(5.0-8.4年)であった.臨床およびX線学的評価,合併症を調査した.【結果】骨切り量は平均39 mm±23 mm,脚延長量は平均25mm±5 mmであった.骨切り部の骨癒合は全例で認め(平均7.9±3.0ヶ月),ステム固定性は全例bone ingrowthであった.JOA scoreは術前54.9±13.0点から最終観察時81.3±8.0点へ改善した.合併症はstem周囲骨折が1関節,脱臼による再置換術が1関節であった.【結語】転子下骨切り併用人工股関節全置換術の中期成績は良好であった.

  • 日隈 康雄, 泊 一秀, 埜口 貴弘, 迫 教晃
    2021 年 70 巻 4 号 p. 698-702
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で行ったBiCONTACT Eステムを用いた人工股関節全置換術の短期成績について調査した.【方法】2015年3月から2018年7月までにBiCONTACT Eステムを用いて人工股関節全置換術を行った症例のうち,2年以上の経過観察が可能であった50関節を対象とした.女性49関節,男性1関節で,平均年齢は68.7歳であった.臨床評価およびX線学的評価を行った.【結果】術中の大転子骨折を1関節に生じた.術後大腿部痛を訴えた症例は無かった.3°以上の内外反設置は無かった.2 mm以上の沈下を2関節に生じた.cortical hypertrophyは16関節(32%)に認めた.【考察】本研究においてBiCONTACT Eステムは大きな設置アライメントの異常を生じず,良好な初期固定が得られており,ステム近位側で生物学的固定が得られていると考えられた.cortical hypertrophyを認めたが,臨床的に問題となるものは無かった.ウイング部分のラスピングの際,大転子内側の軟部組織が介在して大転子骨折を生じることがあるため,注意を要する.

  • 木戸 義隆, 田島 卓也, 山口 奈美, 長澤 誠, 大田 智美, 森田 雄大, 横江 琢示, 川越 秀一, 帖佐 悦男
    2021 年 70 巻 4 号 p. 703-706
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】高校空手選手の貧血について調査したので報告する.【対象・方法】2012-2019年の宮崎県某高校空手部1年生68名(男子39名,女子29名)を対象とし,2015-2019年の国民体育大会宮崎県代表候補選手のうち高校1年生160名(男子114名,女子46名)と比較した.【結果】男子はHb<13 g/dL,女子はHb<12 g/dLを貧血とした.【結果】空手選手では30.8%(男子28.2%,女子34.5%)に貧血を認め,全例正球性貧血だった.他競技の貧血例は陸上女子選手1例だった.空手選手の貧血群と非貧血群で血清鉄,網赤血球,フェリチン,不飽和鉄結合能に有意差はなく,貧血と鉄欠乏に関連はなかった.【考察】空手部の貧血が全例正球性貧血であったことから,空手の突き動作に伴い頻回に足を踏み込む動作で足底血管にて溶血をきたしたと考えた.空手選手のメディカルサポートの際には,貧血を考慮する必要があると考えられた.

  • 西村 博行, 浦上 泰成
    2021 年 70 巻 4 号 p. 707-712
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    回復期リハにおいて,リハに影響を与える急性疾患が生じることがある.今回,転院治療を必要とした運動器急性疾患の診断に有用であった検査を検討し,症例を呈示した.平成25年から令和1年に,当院回復期リハ病棟に入院した運動器疾患患者で,入院中に発症した運動器急性疾患の治療のため転院した患者31名を対象とした.転院を必要とした運動器疾患の最多は下肢静脈血栓症8名であった.化膿性脊椎炎および胸髄髄膜腫がそれぞれ1名であった.当院では診断困難で症状(疼痛)のみの転院は1名であった.診断に有用であった検査は,総数31名のうち,単純X線検査16名,血液検査11名で,両者の合計27名が総数に占める割合は87.1%であった.転院が必要な運動器急性疾患の約9割が単純X線検査と血液検査で診断されたが,化膿性脊椎炎と胸髄髄膜腫の診断にはMRIが有用であった.頸椎脱臼,化膿性脊椎炎および胸髄髄膜腫の3症例を呈示した.

  • 井上 三四郎
    2021 年 70 巻 4 号 p. 713-715
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    (目的)整形外科医が転科を希望する因子を同定すること.(対象と方法)2018年4月から2020年6月までに整形外科に入院した患者のうち主治医が転科を希望した患者143例を転科希望群とした.2019年4月から6月までに整形外科医に入院した患者のうち主治医が転科を希望しなかった患者245例を対照群とした.検討項目は,年齢や内科併存症等とした.両群について統計学的検討を行い,P<0.05を有意とした.(結果)単変量解析で,年齢,脆弱性骨折,治療法,循環器疾患,糖尿病,血液透析,精神疾患,肝疾患,脳血管障害,血液疾患,悪性腫瘍,消化器疾患,Charlson comorbidity indexに有意差あり.多変量解析で,年齢,治療法,循環器疾患,呼吸器疾患,血液透析,精神疾患,脳血管障害,悪性腫瘍に有意差あり.血液透析と治療法はオッズ比が高かった.(考察)整形外科医は,血液透析を始めとする内科的既存症を有し保存治療を選択した高齢入院患者の転科を希望していることが示された.

  • 田邉 剛, 髙﨑 実, 永野 賢, 原 正光, 金海 光祐
    2021 年 70 巻 4 号 p. 716-720
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    骨や腱などの血流が乏しい組織が露出した軟部組織欠損創に対して,新しいコラーゲン使用人工皮膚(真皮)OASIS®を使用して良好に治療することができた2症例を経験したので報告する.症例1:64歳男性.感染を伴う糖尿病性壊疽で足部壊死を認めたため,足趾切断及び壊死部と感染組織のデブリードマンを行ったところ,足背の腱・骨が露出した.包交時の洗浄と周期的持続灌流併用局所陰圧閉鎖療法などで感染を鎮静化させた後に,OASIS®で被覆固定し,良好な肉芽形成が得られたため,植皮を行い治癒した.症例2:64歳男性.下肢閉塞性動脈硬化症で左母趾先端の壊死を認め,血行再建後に当科でデブリードマンを行い,末節骨が露出した.骨露出部にOASIS®を被覆固定したところ,徐々に創治癒が得られた.OASIS®は生体内の細胞外マトリックスと同様の3次元構造を保持し,創傷治癒促進効果や抗炎症作用を有しているとされている.このため,骨や腱を露出した創でも良好な肉芽形成がなされたと考えられた.

  • 柴田 達也, 大田 秀樹, 松本 佳之, 木田 吉城, 井口 洋平, 巽 政人, 田原 健一, 眞田 京一, 萩原 秀祐, 木田 浩隆, 竹 ...
    2021 年 70 巻 4 号 p. 721-724
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    馬尾に多発する腫瘍を認めたが,一本の馬尾に蔓状に発生した長大な神経鞘腫であった.症例は70歳男性,1年前より両下肢のしびれと重だるさあり,徐々に歩行困難となった.MRIでL2-L4高位の馬尾にT1 low,T2 low~iso,造影効果のある大小不同の多発する腫瘍を認め,術中所見は一本の馬尾から蔓状に多発した全長約7 cmの腫瘍であった.根糸を切除し一塊に摘出,病理診断は神経鞘腫であった.術後に神経脱落症状はみられず歩行障害や頻尿は改善した.神経鞘腫が多発した場合,Neurofibromatosis type 2:以下NF2(神経線維腫症2型)およびSchwannomatosis(神経鞘腫症)との鑑別も必要であるが,本症例は一本の神経に多発した腫瘍であった.易腫瘍化とみなすかは異論があるが,今後も再発や他部位での腫瘍化に注意し経過観察を行う必要がある.

  • 松田 隆寛, 三宅 智, 伊﨑 輝昌, 新城 安原, 柴田 陽三, 蓑川 創, 南川 智彦, 柴田 光史, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 725-729
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)骨内ガングリオンは関節軟骨下に発生する良性腫瘍であり肩関節での発生は稀である.肩関節の場合,肩甲骨関節窩に接するように発生するため,痛みや可動域制限を生じるだけでなく,関節窩骨折を引き起こし得る.渉猟し得た限り,肩甲骨関節窩に発生した骨内ガングリオンに関する英文での報告は13例しかなく,いずれも1例報告であった.(対象と方法)2005年~2019年の間に当院で肩甲骨関節窩に発生した骨内ガングリオンに対して手術療法を行った3例(男性2肩,女性1肩,平均手術時年齢;40.7歳,平均経過観察期間;4年)の機能および画像所見を後ろ向きに調査した.全例Brodsky’s approachで進入し,病変の掻爬および骨移植を行った.(結果)3例中1例は再手術を要したが,最終手術からの再発はなく,平均JOA scoreは術前70.7点から最終観察時99.7点と改善した.

  • 三原 惇史, 岩永 隆太, 村松 慶一, 伊原 公一郎, 坂井 孝司
    2021 年 70 巻 4 号 p. 730-733
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】神経内ガングリオンはその発生機序,治療方針について議論が残るところである.我々はその治療方針として可能な限り神経機能の温存を目的にガングリオンの被膜切開排液による減圧術を行ってきた.その治療成績について報告する.【対象】症例は8例(男6,女2)で,平均年齢59歳,平均観察期間は19か月であった.発生箇所は腓骨神経4例,その他が4例であった.術前後神経所見,手術までの期間,手術所見,術前後のMRI所見について検討した.【結果】手術までの期間は平均5.5か月であった.全例神経機能の改善を認めたが,術前MMTが0-1の症例2例にてMMT 3-4の回復に留まった.神経機能が増悪した症例はなかった.5例に関節枝のガングリオンを認め,切除した.術後MRIを撮像した症例のうち75%の症例でガングリオンの残存を認めたが,症状の再発はなかった.【結語】神経内ガングリオンに対して被膜切開排液による減圧術は安全で有効な術式と考える.

  • 山城 正一郎, 當銘 保則, 大城 裕理, 青木 佑介, 石川 樹, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 4 号 p. 734-737
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】悪性軟部腫瘍が骨と近接している場合は,切除縁を確保するために骨の合併切除が必要になる.骨切除後の再建方法として温熱処理,凍結処理,放射線処理など様々な方法がある.【対象と方法】2009年8月から2019年5月までの間に当科で悪性軟部腫瘍と診断され,片側皮質骨切除後に自家液体窒素処理骨移植を施行した4例を検討した.検討項目は手術時年齢,性別,再建部位,組織型,経過観察期間,骨癒合までの期間,合併症の有無とした.【結果】手術時年齢は平均45.3歳(16~69歳),全例女性であった.再建部位は大腿骨,脛骨が各々2例で,組織型は滑膜肉腫,粘液型脂肪肉腫,胞巣状軟部肉腫,平滑筋肉腫が各々1例であった.経過観察期間は平均72ヵ月(12~122ヵ月)で,全例で骨癒合が得られた.骨癒合までの期間は平均8ヵ月(6~9ヵ月)で,全例で合併症なく,歩行機能を再獲得した.【結論】自家液体窒素処理骨移植は,悪性軟部腫瘍の広範切除の際に片側皮質骨切除を行った骨欠損に対して有用な再建方法と考えられた.

  • 大島 由貴子, 西尾 淳, 中山 鎭秀, 青木 光希子, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 738-741
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で経験した11例の紡錘形細胞脂肪腫(SCL)の臨床像,MRI所見,病理組織像を検討する.【対象と方法】2012年6月から2019年11月までに病理組織学的にSCLと確定診断された11例(男性6例,女性5例,平均年齢58.6歳)を対象に,発生部位,MRI所見,免疫染色の特徴,再発の有無を調査した.【結果】発生部位は後頚部4例,膝部3例,肩,上腕,手掌,大腿部が1例ずつで,局在はすべて皮下であった.MRIは全例で施行され,腫瘍の脂肪含有率は25%未満が1例,25-75%が9例,75%以上が1例であった.造影MRIを施行された6例中5例で非脂肪成分に造影効果を認めた.全例で辺縁切除術を施行し,再発は認めなかった.免疫染色ではCD34は全例陽性で,10例で行われたMDM2は全例陰性であった.【結論】SCLの臨床像,画像所見は多彩であり,確定診断には免疫組織学的検査が有用であると考える.

  • 岩永 隆太, 三原 惇史, 坂井 孝司, 村松 慶一
    2021 年 70 巻 4 号 p. 742-745
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)悪性腫瘍の骨転移は頻繁に経験するが,軟部転移はまれである.当院で経験した7例に対し文献的考察を交えて報告する.(対象)男性4例女性3例,平均年齢72歳(38-88),原疾患は肺癌3例,膵癌1例,原発不明癌1例,未分化多形肉腫1例,子宮頸癌1例であった.発生部位は大腿,背部,頚部,上腕,下腿に各1例,多発性が2例であった.主訴は腫瘤4例,疼痛3例であった.(結果)7例中6例が軟部転移を機に原疾患が判明した.腫瘍学的転帰はDOD 6例,AWD 1例であった.軟部転移が判明してからの平均生存期間は4.5か月(1-12)であった.(考察)骨格筋と軟部組織は体重の50%以上を占めるが,骨と比較し転移することは臨床上まれである.231例の軟部転移のレビューでは原疾患として肺癌が最多で40%を占めており,自験例も同様であった.(結論)軟部転移を呈する症例は予後不良であった.

  • 大林 賢司, 中山 鎮秀, 西尾 淳, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 4 号 p. 746-748
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    Desmoplastic fibroblastoma(DF)の2症例を経験したので報告する.(症例1)25歳女性.3年前から左大腿内側部腫瘤を自覚し当院紹介受診.腫瘤は4 cm大,弾性硬,可動性良好であった.MRI検査でT1強調像,T2強調像で共に低信号を呈し,Gd造影後T1強調像で辺縁を中心に不均一に造影された.辺縁切除術を施行し,再発なく経過している.(症例2)42歳男性.10年前から左上腕部腫瘤を自覚し当院紹介受診.腫瘤は11 cm大,硬,皮膚との可動性は不良であった.MRI検査でT1強調像,T2強調像で共に不均一な低信号を呈し,一部に脂肪成分と思われる領域を有していた.Gd造影後T1強調像で辺縁に強い不均一な増強効果を認めた.辺縁切除術及び分層植皮術を施行し,再発なく経過している.(考察)DFは稀な良性の線維性軟部腫瘍で,desmoid type fibromatosisなど局所侵襲性の高い腫瘍群との鑑別がしばしば困難である.鑑別には,造影MRI所見,病理組織学的所見,Fos-like antigen 1染色が有用であると考えられた.

  • 當瀬 雅大, 大田 智美, 坂本 武郎, 田島 卓也, 山口 奈美, 長澤 誠, 森田 雄大, 横江 琢示, 川越 秀一, 帖佐 悦男, 川 ...
    2021 年 70 巻 4 号 p. 749-753
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    〔はじめに〕腱鞘巨細胞腫は手指に多く発生することが知られているが,多発例の報告は稀である.上下肢3か所に多発した稀な腱鞘巨細胞腫の症例を経験したので報告する.〔症例〕45歳男性で,約4年前に左示指に釣り針が刺さった同時期より左示指,左肘,左膝の腫瘤を自覚した.MRIで3か所とも関節外にT1強調画像で等から軽度高信号,T2強調画像で低信号,造影で不均一に造影される境界明瞭な腫瘤を認めた.左膝腫瘤の切除生検を施行した結果,腱鞘巨細胞腫の診断に至った.生検と画像所見より,多発腱鞘巨細胞腫と判断し,3か所同時に腫瘍摘出術を施行し,最終診断もすべて腱鞘巨細胞腫であった.〔考察〕我々が渉猟しえた限りでは多発例は32報告で,上下肢に及ぶ2か所発生例,3病変の発生例はそれぞれ1例のみであった.本症例は上下肢に及ぶ3病変の多発例であり,稀な症例であると思われた.〔結語〕本症例は再発リスク因子が多く,今後の慎重な経過観察が必要と考える.

  • 横山 信彦, 横山 良平, 吉本 昌人
    2021 年 70 巻 4 号 p. 754-757
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】時に筋肉内脂肪腫などの深層発生脂肪腫(DSL)と異型脂肪腫様腫瘍(ALT)は画像による鑑別が困難な症例に遭遇する.近年様々な癌腫の予後予測因子として報告されている血液検査の好中球/リンパ球比(NLR)や血小板/リンパ球比(PLR)が軟部腫瘍の良悪性鑑別に有用とする報告もあり,脂肪性腫瘍の鑑別に適応できるか検討した.【対象と方法】2001年7月から2020年3月に当科にて初回手術を行った16歳以上の四肢・体幹壁のDSLおよびALT 58例を対象とし,MRIでの腫瘍最大径,術前NLR,術前PLRを評価項目として,DSLとALTについて検討した.【結果】DSL 38例,ALT 20例で,腫瘍最大径はDSL群で9.4±5.1 cm,ALT群で19.5±5.8 cm,NLR・PLRはそれぞれDSL群で1.74±0.68,124.5±48.0,ALT群で2.29±1.32,170.0±81.4と,いずれもDSL群で有意に低かった.【結論】NLR・PLRはDSLとALT間で有意差を認めた.

  • 貞松 毅大, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 森 圭介, 富田 雅人, 尾﨑 誠
    2021 年 70 巻 4 号 p. 758-759
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    転移性悪性腫瘍に伴う大腿骨病的骨折・切迫骨折に対して手術加療した症例の治療効果を検討した.対象は2013年8月~2019年12月に手術加療した23例25肢で,男性10例10肢,女性13例15肢,骨折時の平均年齢は71.5歳.病的骨折12例12肢,切迫骨折11例13肢,原発巣は乳癌が最も多くその他肺癌,血液疾患などであった.全例で髄内釘を使用した骨接合術を行い,平均手術時間は132分,平均出血量は218 gだった.受傷時の新片桐スコアは平均5.5点で,病的骨折における当院救急搬送後の術前待機日数は平均0.7日だった.術後は平均1.7日で離床が出来ており,術後14日時点でのCPOT(Critical-care Pain Observation Tool)は0~1点で良好な疼痛コントールが得られていた.最終観察時の転機は生存3例,死亡16例,不明4例,死亡例の術後生存期間は平均13.9ヶ月で,術後インプラント折損や感染の症例はなかった.

  • 鎌田 敬子, 小林 弘明, 萩 健太朗, 木戸 健司
    2021 年 70 巻 4 号 p. 760-764
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【要旨】両大腿骨転子下骨折を生じたFGF23関連骨軟化症を経験したので報告する.【症例】42歳,女性.身長151 cm,体重82 kg.既往歴は骨軟化症,左大腿骨頚部骨挫傷,肋骨骨折,高血圧であった.介護の仕事中に人を抱えてから右大腿痛を生じ,歩行困難となり当科受診.Xp・CT・MRIにて両大腿骨転子下骨折を認めた.またXpで両大腿骨に多発するLooser zoneを認め,血液検査ではP低値,BAP高値,血清FGF23高値を認め,FGF23関連骨軟化症と診断した.両大腿骨転子下骨折に対して全身麻酔下に髄内釘を用いて骨接合術を施行.術後活性化ビタミンD内服開始し,骨癒合傾向となった.【考察】FGF23関連骨軟化症にて微小骨折が石灰化障害にて修復されず,両大腿骨転子下骨折に至ったと考えられた.骨折を繰り返している症例については骨軟化症の既往を疑い,精査および治療介入が必要と考えられた.

  • 石川 樹, 當銘 保則, 大城 裕理, 青木 佑介, 山城 正一郎, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 4 号 p. 765-768
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院での骨原発Langerhans cell histiocytosis(LCH)の単一病変(Single system single site: SS-s)と多発病変(Single system multi-site: SS-m)の診断と予後に有用な因子に関して調査した.【対象と方法】2004年1月から2020年1月までに当院で診断された骨原発LCH 14例を対象とした.評価項目は年齢,性別,発生部位,CRP値,FDG-PETのSUVmax値,腫瘍体積とした.統計はStudent t検定とカイ二乗検定を使用した.【結果】SS-sは10例(男性8例),SS-mは4例(男性2例)で,平均観察期間は40ヵ月であった.発生部位は頭蓋骨と脊椎に多く,SS-sとSS-mの平均年齢は各々9.0歳と5.0歳,平均CRP値(mg/dL)は0.71と0.5,平均SUVmax値は8.7と9.8,平均腫瘍体積(mm3)は3353.4と4694.1であった.2群間で有意な因子を認めなかった.診断後5ヵ月でSS-sの1例に再発を認めたが,化学療法で寛解した.最終観察時,全例で寛解を維持していた.【考察】本研究では1例で再発を認め,慎重な経過観察を要すると考えられた.SS-sとSS-mの2群間の診断に有用な因子を認めず,両者の鑑別にはFDG-PETなどの全身検索が必要であると考えられた.

  • 井上 三四郎
    2021 年 70 巻 4 号 p. 769-773
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    (目的)骨転移を主訴とし整形外科を受診した初診時原発不明がんについて,整形外科医で行われた治療の実際と転帰について調査すること.(対象と方法)過去約15年間に治療した52例(平均年齢72歳,男性28人女性24人)を対象とした.主訴に最も影響を与えている局所部位は,脊椎26例,大腿骨12例,上腕骨8例等であった.原発巣は,肺がん10例,前立腺がん・悪性リンパ腫各8例等であった.整形外科入院中に行われた治療と転帰について調査した.(結果)27人に29例(52%,27/52)の手術が行われた.放射線治療は,12人(23%,12/52)に,骨修飾薬は9人(17%,9/52)に行われた.27人(52%,27/52)は整形入院のまま治療を続けた.他院転院となった18人中15人は(83%,15/18)の治療方針はbest supportive careであった.中央値8カ月(0カ月~10年)のフォローで,生存群・死亡群は26人(50%,26/52)ずつであった.(考察)誰が主治医として初療にあたるべきか,誰が骨修飾薬を導入するべきかという問題について議論を深める必要がある.

  • 牧 悠之, 中島 帆奈美, 平岡 弘二, 白濱 正博, 濱田 哲矢, 志波 直人
    2021 年 70 巻 4 号 p. 774-777
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    McCune-Albright Syndromeは,皮膚カフェオレ斑,線維性骨異形成症,ゴナドトロピン非依存性思春期早発症を三主徴とする症候群であるが,その臨床経過は多彩である.出生時より徴候が明らかな場合と,徐々に臨床症状が現れる場合があり,三主徴がすべて揃わないこともある.当院にて加療,経過観察されている4症例から臨床上の問題点を検討した.当科初診時の年齢は6-30歳(平均15.5歳),診断時年齢は2-13歳(平均7.25歳),男性1例,女性3例であった.2例は当科受診後,骨病変の確認により診断が確定していた.皮膚カフェオレ班とGIPPに関しては積極的な治療を要した症例は1例のみであった.骨病変は多骨性FDを呈しており,3例に骨折に対する手術が施行されており,1例は5回に及ぶ手術が施行されていた.骨病変は進行性であり,小児期の生活様式に多大な障害をきたしていた.1例は30歳で手術が施行された.本症候群は成人後も観血的治療を繰り返す可能性があり,長期にわたり経過観察を必要とする.

  • 中村 郁也, 明島 直也, 荒木 貴士, 田口 勝規
    2021 年 70 巻 4 号 p. 778-781
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    McCune-Albright症候群は多発性線維性骨異形成,皮膚カフェオレ斑,ゴナドトロピン非依存性思春期早発症を三主徴とする非常に稀な疾患であり,特に大腿骨において羊飼いの杖変形(shepherd’s crook deformity)と呼ばれる変形を起こし歩行障害の原因となる.今回我々は,12歳時に左大腿骨骨幹部骨折を生じ,以後2年間に5か所のプレート固定術を施行した1例を経験したので報告する.骨折は骨脆弱部で発生しており左右大腿骨2か所ずつ,上腕骨1か所で,2か所は術後のプレート近傍での骨折であった.骨癒合はおおむね良好であるが,骨異形成や成長に伴う骨変化は進行しており,将来的な変形の程度や骨折部位を予測することは非常に困難であった.現在患児は15歳であり,McCune-Albright症候群の生命予後は比較的良好であるため,今後,骨接合の方法,固定範囲や予防的な手術についても検討が必要と思われた.

  • 吉本 昌人, 横山 良平, 横山 信彦
    2021 年 70 巻 4 号 p. 782-785
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】長期経過後,頭部皮下に転移した骨肉腫症例を経験したため報告する.【症例】36歳,女性.25歳時に誘因なく左膝痛が出現し,近医で左脛骨近位端に骨腫瘍を指摘され,当院紹介受診した.通常型骨肉腫の診断となり,術前後化学療法,腫瘍広範切除及び腫瘍用人工関節置換術を施行した.術後10年,側胸部痛を主訴に来院し,胸部単純CT検査で右第10肋骨と右肺に転移性腫瘍を認め,PET-CT検査では後頭部皮下に6 mm大の異常集積を認めた.頭部皮下腫瘤に対して切除生検行い,病理診断は骨肉腫転移であった.【考察】骨肉腫の頭部皮下転移は非常に稀であり,文献的考察を含めて報告する.

  • 瀬尾 智史, 戸次 大史, 濱田 貴広, 木戸 麻理子, 木下 英士, 兵藤 裕貴, 大山 龍之介, 今村 隆太, 井口 明彦, 伏見 文良 ...
    2021 年 70 巻 4 号 p. 786-788
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    骨盤の骨内腫瘍の生検に対する手技は確立されていない.Low route創外固定の進入アプローチを応用し,簡便に腸骨腫瘍を生検する方法を経験したため報告する.症例は65歳男性.CTにて偶発的に右腸骨の骨内腫瘍を認め,腸骨部からの生検を行った.腫瘍の局在は腸骨下前腸骨棘の頭内側であった.仰臥位にて上前腸骨棘から1.5 cm遠位に縦切開を加え,鈍的に下前腸骨棘を展開.創外固定用のスリーブを挿入して,イメージインテンシファイアの管球を30度傾斜させ,スリーブがその傾斜と一直線になることを確認した.ドリルで腸骨の皮質骨のみを開窓し,腫瘍生検を行った.本手技は骨盤骨折に対するlow route創外固定と同様であるが,スリーブを介して意図した方向と深さへ安全に生検針を誘導できる点,また仰臥位で管球の傾斜を固定した状態で手術に臨める点から,本手技は腸骨や臼蓋直上の腫瘍生検に有効である可能性が示された.

  • 今井 稜, 戸次 大史, 今村 隆太, 木戸 真理子, 木下 英二, 兵藤 裕貴, 大山 龍之介, 濱田 貴広, 井口 明彦, 有薗 剛
    2021 年 70 巻 4 号 p. 789-790
    発行日: 2021/09/25
    公開日: 2021/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】乳癌鎖骨上リンパ節転移により尺骨神経麻痺を呈した1例を経験したため報告する.【症例】47歳女性.12年前に乳癌(T2N1M0)に対して外科で乳房切除術と再建術を施行された.突然の左母指の脱力,環指,小指の感覚鈍麻を認め,当科紹介となった.Fromentサイン陽性,背側骨間筋の萎縮を認めた.画像上,頚椎C5/6, 6/7の神経根基部直上に骨棘形成を認めた.胸部Xpで肺尖部に腫瘍を認めなかった.頚胸部CTを追加したところ,鎖骨上窩リンパ節の腫大を認め,MRIでは左鎖骨上窩にC7, 8, Th1神経根へ浸潤している軟部構造を認めた.鎖骨上窩リンパ節転移による尺骨神経麻痺の診断で放射線照射治療を開始された.【結論】悪性腫瘍の既往がある患者で上肢の麻痺所見を認める際,肺尖部の転移巣だけでなく鎖骨上窩リンパ節の評価も重要であることが示唆された.

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