整形外科と災害外科
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69 巻, 4 号
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  • 中島 帆奈美, 保利 俊雄, 園田 玲子, 高宮 啓彰, 保利 喜英, 水掫 貴満
    2020 年 69 巻 4 号 p. 717-720
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)肘頭脱臼骨折(以下OFD:Olecranon Fracture Dislocation)3症例の治療経験を報告する.(症例1)85歳女性.転倒し受傷.森谷分類Type A1,Jupitar分類ⅡA,Mason分類Type 3の橈骨頭と肘頭骨折の骨接合を行い,術後7ヶ月現在骨癒合を得られた.(症例2)31歳男性.高所転落で受傷.森谷分類Type P2,Jupitar分類ⅡD,Mason分類Type 3の橈骨頭脱臼骨折と尺骨鉤状突起を含む粉砕骨折を認めた.橈骨頭及び尺骨鉤状突起は埋没型スクリューで,肘頭部はプレート固定した.術後7ヶ月現在骨癒合を得られたが,橈骨頭変形治癒と回内外の著しい可動域制限が残存している.(症例3)80歳女性,転倒し受傷.森谷分類Type A1,Jupitar分類ⅡA,Mason分類Type 3の橈骨頭脱臼骨折に人工橈骨頭置換,肘頭骨接合を行い,術後16ヶ月現在骨癒合を得られている.(結語)OFDで森谷分類Type P2,Jupitar分類ⅡDでは近位橈尺関節の構築が治療成績に影響するものと思われた.

  • 古江 幸博, 後藤 剛, 川嶌 眞人, 田村 裕昭, 永芳 郁文, 本山 達男, 佐々木 聡明, 渡邉 裕介, 藤池 彰, 川嶌 眞之
    2020 年 69 巻 4 号 p. 721-724
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    上腕二頭筋遠位腱断裂に対して,長掌筋腱を用いた腱移植術にて加療した経験を報告する.30歳,男性.ボーリングをした際,ブチッと音がして肘痛が出現した.肘屈曲に力が入らず,力こぶの近位への移動を自覚し,近医受診後,当院紹介受診した.受傷後19日目の手術では,腱の引き下げが出来ずに,急遽,長掌筋腱による腱移植術を行った.術後は,6週間のギプス固定の後,可動域訓練を開始した.術後6ヵ月,可動域は正常,回外筋力にやや低下があるが,経過良好である.上腕二頭筋遠位腱断裂に対する,肘強屈曲位での縫着や腱移植術の成績は一般に良好である.今回の経験では,長掌筋腱移植術は良好な成績が得られたが,力学的な裏付けがなく,今後の力学的検討が必要と考える.

  • 森 詩乃, 徳永 真巳, 吉本 隆昌, 松田 秀策, 碇 博哉, 松田 匡弘, 井浦 国生, 石原 康平, 富永 冬樹, 王寺 享弘
    2020 年 69 巻 4 号 p. 725-729
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    近年,膝関節症に対して患者立脚型評価法の有用性が報告され,本邦でもJapanese Knee injury Osteoarthritis Outcome Score(J-KOOS)が広く使用されている.2018年7月~2019年7月に施行した,術前のJ-KOOSが評価可能であった脛骨骨切り術61膝(骨切り群)と人工膝関節置換術170膝(TKA群)を比較検討した.術前患者背景(骨切り群vs TKA群)は,平均手術時年齢61.3歳vs 73.5歳,BMI 26.6 kg/m² vs 26.0 kg/m²,膝関節可動域130.7° vs 113.7°,Kellgren-Lawrence分類(K-L)grade≦1/2/3/4:2膝/19膝/22膝/18膝vs 0膝/5膝/20膝/145膝,FTA 180.5° vs 182.4°,%MA 22.2% vs 12.4%であり,BMIを除き有意差を認めた.術前のJ-KOOSのスコアはSymptom・Pain・ADL・Sport/Rec・QOLの順に,骨切り群で59.3%・53.5%・69.7%・30.7%・33.6%,TKA群で54.1%・47.2%・56.6%・19.4%・25.9% であり,TKA群がSymptomを除いて有意に低いスコアであった.また,骨切りとTKAの両術式が適応となりうる集団を仮定し検討したところ,QOLが骨切り群で有意に低いスコアであった.

  • 神崎 貴仁, 岡崎 成弘, 中添 悠介, 米倉 暁彦, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 730-732
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】完全型外側円板状半月板損傷に対しては従来,亜全切除術が行われることが多かった.しかしながら術後の二次的関節軟骨損傷や離断性骨軟骨炎の発生も報告されている.近年では半月板形成縫合術の良好な治療成績が報告されており,今回陳旧例で良好な成績が得られた1例を経験したので報告する.【症例】11歳女性.7ヵ月前にバスケットボール練習中に左膝痛と引っかかり感を自覚.MRIで完全型外側円板状半月板および後節辺縁部での縦断裂を認め,断裂半月は前方に著明に転位していた.受傷後7ヵ月で半月板形成切除術とinside-out法を用いた縫合術を施行した.術後3週から関節可動域訓練および部分荷重歩行を開始した.現在術後1年で臨床症状は改善し,MRIでも縫合部の癒合が得られ経過良好である.【結語】若年者の場合は陳旧例であっても積極的に半月板形成縫合術を考慮すべきである.

  • 佐藤 慶治, 舛田 哲朗, 岡元 信和, 久永 哲, 伊藤 仁, 宮本 健史
    2020 年 69 巻 4 号 p. 733-736
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】膝蓋大腿関節滑車部離断性骨軟骨炎(PF関節滑車部OCD)の発症頻度は,膝OCD中1-2% と比較的稀であり,その治療方針に関しては不明確である.今回当院で手術加療を行った,PF関節滑車部OCD症例の術後臨床結果について検討した.【方法】対象は,術後1年以上の経過観察可能であった8例である(手術時平均年齢17歳).術前,術後6か月で単純レントゲンとMRIを撮像し,最終観察時の臨床評価を行った.【結果】術中関節鏡所見では8例中6例に遊離体を認め,骨軟骨固定が困難であった2例には骨穿孔術,可能な6例は吸収ピンによる骨軟骨固定術を行った.術後6か月のMRIではKramerらの分類で,2例がHealed,6例でPartially Healedであった.最終観察時の臨床評価では全例で疼痛が消失し,スポーツ復帰可能であった.

  • 鎌田 敬子, 萩 健太朗, 木戸 健司
    2020 年 69 巻 4 号 p. 737-739
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨軟骨腫は日常診療で遭遇する頻度の高い良性骨腫瘍であるが,大腿骨遠位後方の骨軟骨腫に膝窩動脈瘤を生じた1例を経験したので報告する.【症例】39歳男性.腰椎椎間板ヘルニア手術歴有.趣味スポーツ.数分の運動負荷で左下腿後面痛および脱力感を自覚.明らかな神経脱落所見なく,腰椎Xp,MRIでも明らかな異常は認めなかった.左膝Xpで大腿骨遠位後方に骨軟骨腫認め,造影CTおよびMRIで骨軟骨腫近傍に膝窩動脈瘤を認めた.【考察】骨軟骨腫に合併する血管系合併機序としては軟骨帽消失による先端の鋭利化や持続圧迫,鈍的外傷等が考えられ,可動性の乏しい膝窩動脈に多いとされる.本症例ではスポーツ等で骨軟骨腫に隣接する血管に負荷がかかり,動脈瘤が生じたと考えられる.【まとめ】大腿骨遠位後方に骨軟骨腫を認める場合,膝窩動脈への血管系合併症を念頭に置く必要がある.

  • 副島 竜平, 前山 彰, 木山 貴彦, 小林 知弘, 鎌田 聡, 小阪 英智, 石井 聡大, 宮崎 弘太郎, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 4 号 p. 740-742
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】膝蓋上嚢は胎生8週頃,隔壁により膝関節腔内と完全に隔てられている.胎生5ヶ月頃に機械的な刺激により隔壁に穿孔が生じ,膝蓋上嚢と膝関節内とが交通するが,稀に交通せず遺残することがある.無症候性であることが多いが,外傷や繰り返す機械的刺激により肥厚や繊維化を来たし,疼痛の原因となることがある.完全型滑膜ひだ障害に対して当院で手術を行った3例を経験したので報告する.【対象】2015年から2017年までに完全型滑膜ひだ障害で手術を行った3例のMRI所見・手術所見等について調査した.【結果】全例にMRIではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号が見られ,術中所見では上嚢に完全型の滑膜ひだを認めた.関節鏡下滑膜切除術を行い,症状改善を認めた.【考察】滑膜ひだ障害の診断はMRIで行い,保存療法が無効な場合は関節鏡下での滑膜切除が有効とされている.若年者の膝痛を有する症例において本疾患も鑑別の一つとして念頭に置く必要があると考えられた.

  • 小倉 拓馬, 高橋 建吾, 海江田 光祥, 有島 善也, 東郷 泰久, 小倉 雅, 谷口 昇
    2020 年 69 巻 4 号 p. 743-745
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    膝蓋腱断裂は比較的稀な損傷である.今回我々は交通外傷に伴い脛骨近位部開放骨折を合併した外傷性膝蓋腱断裂の1例を経験したので報告する.【症例】24歳男性.軽トラック走行中に対向車と正面衝突し当院救急搬送.搬送時,右膝関節自動伸展不能.膝関節前方部に5 cmの開放創を認め,Gastilo-Anderson分類type 2の開放骨折及び膝蓋腱断裂と診断し,同日洗浄と膝蓋腱の可及的縫合術を行った.受傷後7日で感染がないことを確認後,関節内骨折観血的手術と靭帯修復を行った.術後は3週間Knee brace固定し,歩行は許可,術後4週目より他動可動域訓練,術後6週より自動可動域訓練を行った.【結果】術後14か月で感染や可動域制限は認めていない.【考察】今回は,ブレーキを強く踏もうとした介達外力に加え,ダッシュボート損傷による直達外力によりと受傷した推察された.開放骨折を合併しており早期手術を行うことができず術後後療法は遅れたが,結果は良好であった.

  • 鮒田 貴也, 安樂 喜久, 堤 康次郎, 安藤 卓, 立石 慶和, 上川 将史, 河上 純輝, 前田 和也, 髙田 柊, 刈谷 彰吾
    2020 年 69 巻 4 号 p. 746-749
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【症例】56歳男性,階段からジャンプし着地の際左膝をひねって受傷した.膝伸展不能で外反および前方動揺性を認め,単純X線検査およびMRI検査にて膝蓋腱断裂,ACL,MCL損傷と診断し,修復術を行った.術中所見として,膝蓋腱は実質部で断裂しMCL浅層は大腿骨付着部で深層は脛骨付着部でそれぞれ断裂し,ACLは大腿骨付着部で断裂していた.ACL,MCLをアンカーで付着部に縫着した後,膝蓋腱断裂部を縫合修復し人工靱帯を用いて補強した.【後療法】術後は伸展位固定とし,術後1週目から可動域訓練を開始,2週目から部分荷重を開始し4週目で全荷重を許可した.【考察】複合靭帯損傷における修復の方法や時期については意見が分かれるが,本症例では直視下にACLが修復可能であったことより一期的に修復した.現時点で可動域制限無く経過良好であるが,今後も注意深く観察していく予定である.

  • 但馬 祐季, 太田 浩二, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 大角 崇史, 國分 康彦, 上妻 隆太郎, 白澤 建藏
    2020 年 69 巻 4 号 p. 750-752
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部骨折骨接合術は早期離床のために良好な整復位を得ることと,侵襲を少なく合併症を軽減させることが必要とされる.大腿骨転子部骨折骨接合術における周術期出血の危険因子について検討した.【方法】2018年4月から2019年9月に当院で施行した大腿骨転子部骨折に対する骨接合術123例のうち,short femoral nailで手術施行した109例を対象とした.男性24例女性85例,平均年齢86.5±7.7歳であった.周術期輸血の有無,単純Xpにおける大腿動脈の石灰化の有無,骨折型,術中観血的整復の有無で比較した.【結果】多変量解析において周術期輸血を必要とした症例は,大腿動脈石灰化,初診時Hb,手術時間で有意差を認めた.【考察】術後早期荷重のために整復操作は必要だが,出血リスクの高い症例には,周術期出血量が多くなることを念頭に置き手術を行う必要がある.

  • 髙田 柊, 安樂 喜久, 堤 康次郎, 安藤 卓, 立石 慶和, 上川 将史, 河上 純輝, 前田 和也, 鮒田 貴也, 刈谷 彰吾
    2020 年 69 巻 4 号 p. 753-756
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部骨折術後のカットアウト症例について検討すること.【対象】2012年5月から2019年4月に当科で骨接合術を行った大腿骨転子部骨折1414例のうち,カットアウトにより当科を受診した12例について術前骨折型を分類し,整復位,固定性のいずれがカットアウトの要因であったか検討した.【結果】3DCT中野分類での骨折型では,TypeⅠ:2-partが2例,3-part Aが1例,3-part Dが2例,4-partが2例であり,TypeⅡが2例,頚基部骨折3例であった.カットアウトの原因としては,整復不良が8例,固定性に起因しているものが10例,原因不明が1例で,複数の因子が関与しているケースが多かった.【考察】整復位や機種選択により改善しうる場合もあったが,頚基部骨折でより厳密な整復が獲得できない場合はカットアウトリスクが高いことを念頭に置く必要がある.

  • 大串 美紗子, 坂本 哲哉, 木下 浩一, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 4 号 p. 757-759
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折の周術期で深部静脈血栓症(DVT)は重篤な合併症である.大腿骨近位部骨折の周術期でDVTの発生頻度や危険因子を検討した.【方法】2015年6月から2019年6月までに大腿骨近位部骨折に対して人工骨頭置換術,あるいは骨接合術を行った症例のうち,周術期に下肢静脈エコーを施行した70例を対象とした.検討項目はBMI,受傷から下肢静脈エコーまでの日数,抗凝固薬内服の有無,既往歴,Dダイマー,ADLとし,DVTの有無で2群間をt検定,χ²検定を用いて比較した.【結果】DVT発生は14例(20.0%),うち2例(2.9%)で無症候性の肺血栓塞栓症を認めた.DVT発生群,非発生群間でBMI,下肢静脈エコーまでの日数,抗凝固薬内服の有無,既往歴,Dダイマー,ADLに有意な差はなく,活動性の癌患者で有意にDVT発生率が高かった.【結論】DVTの有無の予測は困難だが,重篤な合併症予防のためDVT発生を念頭に置く必要があると考える.

  • 山手 智志, 齊藤 太一, 糸川 高史, 入江 努, 田中 哲也, 中原 寛之, 青野 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 760-763
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折の骨接合術時に,遠位横止めスクリューの切開で生じた仮性動脈瘤の1例を経験した.【症例】87歳男性.前医にて転倒し受傷,同日当院に搬送.右大腿骨転子部骨折(Jensen分類typeⅢ)の診断で受傷6日目に髄内釘挿入術を施行した.遠位横止めスクリューの皮膚切開時に噴出性の出血を生じ,焼灼止血を施行して手術を終了した.総出血量は326 gであった.術直後より右大腿部の強い腫脹があり,術後5日目の造影CT検査にて右大腿外側部に仮性動脈瘤を認めた.術後6日目の血管造影検査にて遠位横止めスクリュー付近を走行する外側大腿回旋動脈の下降枝に仮性動脈瘤を認め,コイルにて塞栓した.【考察】大腿骨転子部骨折術後の仮性動脈瘤の発生率は0.17~0.28%と稀だが,96%が医原性である.治療は血行再建術もしくは血管塞栓術が必須である.大腿部腫脹,創部からの出血,急速なHb低下を伴う貧血の3徴を認める場合は,仮性動脈瘤の鑑別が必要である.

  • 神崎 衣里, 宮本 俊之, 本川 哲比古, 森 圭介, 西野 雄一朗, 土居 満, 田口 憲士, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 764-768
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨転子部骨折に対して髄内釘を行い,術後5ヶ月で小転子骨片により右深大腿動脈の分枝に仮性動脈瘤を生じた症例を経験したので報告する.【症例】症例は61歳男性でバスと接触して受傷.右大腿骨転子部骨折(AO分類:31-A2)と診断し,同日に髄内釘固定を行った.術後の経過は問題なくリハビリ病院へ転院したが,術後2ヶ月の単純X線像で小転子骨片が近位へ転位したのを認めたが無症状であった.術後5ヶ月に,車椅子移乗の際に右大腿部に激痛を自覚し,CTで右大腿に仮性動脈瘤を認めて経カテーテル動脈塞栓術(Transcatheter arterial embolization;TAE)を行った.TAE後は問題なく経過している.【考察】大腿骨転子部骨折の小転子骨片による血管損傷はかなり稀な合併症である.粉砕骨片が内方転位した症例において突然の大腿部痛は術後どの時期においても血管損傷の可能性を念頭に置いておく必要がある.

  • 石橋 卓也, 中村 厚彦, 尾上 英俊, 岩本 良太, 稲光 秀明, 橋野 悠也, 秀島 義章, 阿南 亨弥
    2020 年 69 巻 4 号 p. 769-773
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院での大腿骨遠位端関節内骨折に対する逆行性髄内釘の治療成績について調査することである.【対象と方法】対象は2012年8月から2017年12月までに手術を行った22例中,1年以上観察可能であった10例(C1:4例,C2:6例)である.男性2例,女性8例で手術時平均年齢69.6歳,平均観察期間は20.7ヵ月で検討項目は手術待機期間,荷重開始時期,最終観察時の可動域,骨癒合期間,femoral angle(FA), Lindahl’s angle(LA),Neer評価基準(pain, motion, functionの計60点)とした.【結果】待機期間は平均8.9日で荷重開始時期は平均23日,骨癒合期間は平均25.5週,全例で骨癒合を認めた.Neerの評価基準は平均52.2点で可動域は伸展が平均-4°,屈曲108.5°であった.FAは術後平均82.6°,LAは平均34.2°で最終観察時に過度な矯正損失は認めなかった.【結論】全例で追加手術なく骨癒合が得られ,臨床評価は良好であった.

  • 中山 宗郎, 田口 勝規, 杉山 健太郎, 上木 智博
    2020 年 69 巻 4 号 p. 774-776
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    大腿骨変形は下肢アライメント異常の原因となり,ときに膝関節障害を引き起こす.今回我々は幼少期の遺残した大腿骨遠位部変形に対し,逆行性髄内釘を使用した矯正骨切り術を行ったので,その有用性に関して検討を加える.症例は2例,1例は25歳の女性で,大腿骨骨腫瘍に対する頻回の手術歴があり,遠位部での内反変形が残存していた.もう1例は42歳女性でBlount病に伴う脛骨内反と大腿顆部の外反変形が認められた.両者とも主訴は歩行時の膝関節痛であった.手術は大腿遠位でのドーム状矯正骨切りを行い,創外固定にて保持し逆行性髄内釘にて固定した.両者とも術後早期にROM訓練を開始し,荷重は4-6週で開始した.術後合併症はなく骨癒合も良好で,現在疼痛なく歩行可能である.この方法は,プレート固定と比較し手術手技においてはやや煩雑で経験を要するが,低侵襲なためROM回復や骨癒合は良好であり有用な方法と思われた.

  • 星山 政輝, 常松 俊鷹, 金山 完哲
    2020 年 69 巻 4 号 p. 777-778
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】外弯変形の強い大腿骨骨幹部骨折に,既存の髄内釘では形状が適合しないため挿入困難となり治療に難渋する.【症例】93歳の女性.転倒し右大腿骨骨幹部骨折を受傷した.術前のXpで健側の大腿骨に高度の外弯変形を認め,右大腿骨も同様の外弯変形が推測された.術前計画では既存の髄内釘の挿入困難が予想されたため,Zimmer社の反対側のNailを用いることで髄腔適合性の高い髄内釘を挿入するとこができ,良好な整復位を得た.【考察】高齢者では大腿骨の高度の外弯を伴うことがあり,反対側の髄内釘を用いることで外弯の変形を残すが,髄腔占拠率がよく,良好な骨癒合が期待できる.

  • 本川 哲比古, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 西野 雄一朗, 森 圭介, 神﨑 衣里, 津田 圭一, 山田 周太, 横田 和明, ...
    2020 年 69 巻 4 号 p. 779-782
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】初診時にCT・MRIの両者を撮影したにも関わらず頚椎脱臼の診断が困難だった一例を経験したので報告する.【症例】84歳男性,脚立で作業中に転倒している所を発見され当院へ救急搬送となった.上肢筋力低下・徐脈などから脊髄損傷が疑われたが,CTとMRIでは頚椎の骨折や脱臼を認めなかった.軟性装具を装着し,受傷1週間程度を目処に動態撮影の予定とした.受傷32時間後から上肢の麻痺が進行し,MRIで頚椎前方脱臼を認めたため,同日頚椎後方固定術を行った.【考察】頚椎評価においてCTはX線より有用で,MRIは脊髄や軟部組織の描出に優れていることが知られているが,屈曲損傷に伴う前方脱臼では頚椎を固定して撮影するCTやMRIで脱臼が整復されることがある.このため受傷機転や画像検査を正確に判読し,受傷後可及的早期に動態撮影で頚椎の不安定性を評価することが重要である.

  • 大角 崇史, 山下 彰久, 太田 浩二, 國分 康彦, 但馬 祐季, 上妻 隆太郎, 橋川 和弘, 原田 岳, 渡邊 哲也, 白澤 建藏
    2020 年 69 巻 4 号 p. 783-786
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折(Osteoporotic Vertebral Fracture以下OVF)の後壁損傷は遷延癒合や偽関節の危険因子という報告が散見される5)6).後壁損傷の治癒経過に関して調査したので報告する.【対象と方法】2017年4月から2018年3月に当院入院となった後壁損傷を伴うOVF患者30例30椎体を対象とし,受傷1カ月後の後壁癒合をレントゲン,CT multi planar reconstruction(MPR)像で骨癒合が得られた群,骨性架橋あり群,癒合なし群の三群にわけ,腰椎YAM値,荷重下局所後弯角,後壁高,楔状率,椎体の半定量診断法(semi-quantitative assessment:以下SQ法)1),椎弓根骨折の有無について後ろ向きに調査,評価した.【結果】30例中19例で骨癒合を認めた.骨性架橋ありと判断した9例は軸位断面のみ連続部位を欠いていたが,冠状断面,矢状断面での骨性架橋は認めていた.30症例中6例;20%で椎弓根骨折を合併しており,楔状率50%未満の項目のみ骨癒合群とそれ以外で有意差を生じた.【考察】椎体形成を必要とする偽関節リスクの高いOVFを評価したが,椎体後壁は4週で骨癒合が得られることが示唆された.

  • 市ヶ谷 憲, 土持 兼之
    2020 年 69 巻 4 号 p. 787-789
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    頚髄硬膜外血腫は,急激な頚部痛を伴い四肢麻痺症状が進行しうるまれな疾患である.当院で経験した後頚部痛のみで麻痺症状を認めなかった頚髄硬膜外血腫の症例について文献的考察を加え報告する.症例は82歳,女性.脳梗塞の既往により,抗血小板薬常用あり.深夜,急激な後頚部痛を自覚し当院へ搬送となった.後頚部痛及び高血圧を認めたが,筋力低下や感覚異常,反射亢進などの神経学的所見は認めなかった.CTでC2-3レベル硬膜外背側右側に高吸収域を認め,頚髄硬膜外血腫の診断で入院となった.発症12時間後の頚部MRIでは血腫の増大は認めなかった.その後,麻痺の出現はなく,第4病日に後頚部痛は軽減し第32病日にMRIで血腫消失を確認した.本症例では他疾患鑑別のためCT撮影を行い,脊柱管内背側に高吸収域を認め同診断となった.CTは,緊急時に短時間で撮影可能であり本症例では頚髄硬膜外血腫の早期画像診断として有用であった.

  • 川越 隆行, 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 川野 啓介, 永井 琢哉, 李 徳哲, 高橋 巧, 濱田 浩朗, 帖佐 悦男
    2020 年 69 巻 4 号 p. 790-793
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】非常に稀な特発性脊髄硬膜下血腫を経験したので報告する.【症例】78歳女性.突然の背部痛と呼吸困難感が出現し,前医に救急搬送された.MRIで胸椎レベルに脊髄硬膜外血腫を疑う所見があり,徐々に膝立て困難となったため,当院に転院搬送となった.当院初診時MMT4まで改善していたが,その後もMMT2まで動揺する下肢麻痺を認めた.再検MRIでTh4-L2の脊髄腹側に血腫があり,さらにT12/L1のT2高輝度変化を認めた.受傷後2週目の脊髄造影検査で,褐色の髄液を認め,特発性硬膜下血腫と診断した.保存加療にて血腫は自然消退,独歩可能となった.【考察】特発性硬膜下血腫の画像上の特徴はMRIで三日月型とされているが,その他の出血性病変と鑑別困難なこともあり,稀ではあるが脊髄硬膜下血腫を念頭に置いて診療することが必要である.

  • 長田 宗大, 信藤 真理, 田中 潤, 塩川 晃章, 深川 遼, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 4 号 p. 794-797
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における脊椎術後血腫により血腫除去術が必要になった症例を臨床的に検討する.【対象と方法】2014年から2019年までの5年間に当院で脊椎手術を行った747症例から術後血腫による麻痺または疼痛に対して,血腫除去術が必要となった7症例を対象とした.手術部位,術前麻痺の状態,手術時間などを調査しどのような症例で注意すべきかを検討した.【結果】術後血腫により手術を行った頻度は0.9%であった.手術部位は胸椎4例,腰椎3例であった.再手術に至った原因としては1例が下肢神経痛,6例が下肢麻痺のために手術を要した.【考察】術後血腫により再手術に至った症例は胸髄症やFrankelC1,下垂足の症例が多かった.特に胸椎OPLL症例ではlaminectomyを施行されていること,また胸椎部の生理的後弯により術後血腫発生時に,脊髄が直接圧迫を受けやすい傾向があると考えられた.

  • 戸倉 晋, 塩川 晃章, 信藤 真理, 田中 潤, 島田 哲郎, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 4 号 p. 798-802
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    Chronic expanding hematoma(以下CEH)は数ヶ月~数年の経過で徐々に増大する血腫と定義されている4).今回,我々は脊椎手術後に生じたCEH 2例を経験したので報告する.【症例1】76歳男性,L3腰椎後方除圧固定術後9年目に腰部の軟部腫瘤を指摘され当院紹介受診.術前生検の結果血腫と診断し血腫除去術施行.【症例2】60歳女性,頸椎前方固定術の際に腸骨スペーサーを挿入.術後9年目に腸骨スペーサー設置部の軟部腫瘤の増大を認めた.術前生検の結果血腫と診断し血腫除去術施行.2症例とも術後病理検査においてCEHの診断となった.CEHは悪性腫瘍との鑑別が困難な場合もあるため,生検などで診断を確定させ,再発のリスクを軽減させる為に被膜ごと一塊に血腫を摘出することが望ましい.

  • 髙田 紘平, 藤本 徹, 谷脇 琢也, 岡田 龍哉, 中村 孝幸, 杉本 一樹, 宮本 健史
    2020 年 69 巻 4 号 p. 803-805
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊髄神経鞘腫は全脊髄腫瘍の56%と最も多い.MRIの普及に伴い,症状発現のない腫瘍も散見され,経過観察となる症例が多い.今回我々は短期間に急激に増大した頸椎神経鞘腫の1例を経験したので報告する.【症例】14歳女性.前医MRIで頸椎に腫瘍性病変を指摘され当科初診となる.脊髄の圧迫所見は無く,経過観察としていたが徐々に疼痛が強くなり,半年後のフォローMRIにて腫瘍の増大(年間増大率377.3%)を認め,当科入院となった.腫瘍摘出術を施行し,病理検査にて脊髄神経鞘腫の診断であった.術後身体所見に特記すべき異常所見はなく,術後3か月,9か月のフォローMRIで再発所見はなかった.【考察】安藤ら1)は脊髄神経鞘腫においてT2WI,造影T1WIで不均一な信号変化を呈する場合,腫瘍増大率が大きいと報告しており,本症例も同様の信号変化を呈していた.脊髄神経鞘腫の中には短期間で急激に増大するものもありMRIフォローが必要である.

  • 島田 哲郎, 田中 潤, 信藤 真理, 塩川 晃章, 戸倉 晋, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 4 号 p. 806-809
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    髄外腫瘍においては神経鞘腫と髄膜腫が約85%を占める.髄膜腫の腰椎発生は極めて稀であり,馬尾腫瘍の多くは神経鞘腫である.今回,我々は当院で手術を行った馬尾腫瘍について検討した.2015年1月から2018年12月の4年間に当院で手術を行った馬尾腫瘍14例を対象とし,術前画像検査からの診断予測と術後病理検査での確定診断との診断一致率を調査した.対象症例14例の平均年齢は48.9歳(27~77歳)で男性9例,女性5例であった.術前の画像診断からは全例神経鞘腫の可能性が高いと判断し手術を施行していた.術後病理検査では神経鞘腫12例,傍神経節腫1例,類表皮嚢腫1例であった.診断一致率は86%(12/14例)であった.当院で施行した馬尾腫瘍の86%は神経鞘腫であり,他の文献と同様に高い値であった.術前に神経鞘腫と予測されたが確定診断は違う結果となった症例が2症例あり,文献的考察を含め報告する.

  • 緒方 亜紀, 藤原 将巳, 高岸 憲二, 齊田 義和, 宮岡 健, 小松 孝, 杉田 敏明, 松本 嘉寛
    2020 年 69 巻 4 号 p. 810-813
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】神経鞘腫は充実性や嚢胞性など様々な形態を取る.今回嚢胞を伴った馬尾神経鞘腫を2例経験したため報告する.【症例1】42歳女性,6年前より右臀部痛が出現.MRIにてL4/5高位にT1 low,T2 high,造影にて壁のみ増強される嚢胞性病変を認めた.手術にて馬尾神経を温存し可及的に腫瘍を切除し,病理診断は神経鞘腫であった.術後疼痛は消失し,2年後のMRIでも再発を認めていない.【症例2】58歳男性,2ヶ月前から腰部~左大腿後面の疼痛を認め受診.MRIにてL5高位にT1 low,T2 high,造影にて壁のみ増強される嚢胞性病変を認めた.手術にて馬尾神経を温存し腫瘍を可及的に切除した.病理診断は神経鞘腫であり,術後症状は改善した.【考察】嚢胞を伴う神経鞘腫は単純MRIでは腫瘍内部と髄液がisoとなるため,MRIで描出困難となることがある.その場合も造影MRIや脊髄造影検査を行うことでより正確な診断を行うことができる.

  • 立山 誠, 水溜 正也, 井上 哲二, 福田 和昭, 畠 邦晃, 田上 学, 松永 英人, 荒木 崇士, 阿部 靖之
    2020 年 69 巻 4 号 p. 814-816
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】胸部脊髄症の発生頻度は少ない.今回脊椎症,胸椎椎間板ヘルニア,胸椎後縦靱帯骨化症,胸椎黄色靱帯骨化症を含む胸椎変性疾患について検討した.【対象および方法】2012年から2018年までの期間で当院にて胸椎変性疾患に対して手術を施行した症例は84例(男性56例,女性28例)であり,平均年齢は67.0歳であった.【結果】罹患高位は下位胸椎の頻度が高かった.神経学的症候では,下肢痛よりも下肢痺れの割合が多かった.膀胱直腸障害は罹患高位で明らかな差はなかった.術後は一過性の麻痺が発生した1例(MEP波形消失の為に手術を中止した)と永続的な麻痺が発生した1例を除けば,症状の改善を認めた.【結語】胸部脊髄症は罹患高位により多彩な症状を呈することがあり,靱帯骨化症などでは治療に難渋することもあるため,適切な診断と治療が特に望まれる領域であると考えられた.

  • 松永 英人, 福田 和昭, 水溜 正也, 井上 哲二, 畠 邦晃, 田上 学, 荒木 崇士, 立山 誠, 阿部 靖之
    2020 年 69 巻 4 号 p. 817-820
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊椎の術後に麻痺を呈し,MRIで硬膜外の液体貯留を認めた場合,通常術後血腫が疑われ多くは5日以内に発生するとされる.また頻度は少ないが,偽性髄膜瘤や硬膜外膿瘍も鑑別に挙がる.今回我々は,胸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対し,術後10日以上が経過してから麻痺を呈し2度の再手術と長期のドレナージを要した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.【症例】44歳女性,BMI 38.1,1年前より両下肢の痺れ痛みを認め,筋力低下が進行し当科を紹介となった.Th1-4のOPLLを認め,椎弓切除術+後方固定術を施行した.術後11日目に麻痺が出現し再手術を施行,再手術後12日目に再度麻痺が出現し再々手術を施行し軽快した.いずれもMRIにて創部の液体貯留を認めた.術中髄液漏の所見は認めなかった.再々手術後も液体貯留が持続し26日間のドレナージを要した.【考察】胸椎OPLLでは,術後多量の浸出液により麻痺をきたす可能性が考えられた.

  • 中村 憲明, 津田 圭一, 横田 和明, 山田 周太, 田上 敦士, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 821-824
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    背景:腰部脊柱管狭窄症に伴うredundant nerve rootsの報告は多く,その機序も解明されつつあるが,脊髄圧迫病変に伴う弛緩脊髄の病態についての報告は少ない.胸腰椎移行部に生じた弛緩脊髄の2例を経験したので報告する.【症例1】42歳男性.右臀部痛と右下垂足が出現し近医を受診.硬膜内髄外腫瘍を認め当院受診.初診時の理学所見では大腿四頭筋と前脛骨筋に筋力低下を認め,MRIではTh12/L1高位で硬膜内髄外腫瘍による脊髄圧迫と弛緩脊髄を認めた.腫瘍摘出術後,弛緩脊髄は改善した.【症例2】67歳女性.両下肢しびれ,歩行障害が出現し当院受診.初診時の理学所見では両下肢の痙性麻痺を認め,CTではTh11/12高位に黄色靭帯骨化,MRIでは同高位で脊髄圧迫と弛緩脊髄を認めた.椎弓切除術を施行し弛緩脊髄は改善した.まとめ:弛緩脊髄は円錐部での圧迫病変に伴い生じ,その病態には歯状靭帯の解剖学的特徴や脊髄円錐部の形状が関与していると推測する.

  • 松尾 拓, 横山 良平, 横山 信彦
    2020 年 69 巻 4 号 p. 825-826
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】狭心症様の左前胸部痛が初発症状であった胸椎転移の1例を経験したので報告する.【症例】患者は76歳男性で去勢抵抗性前立腺癌加療中による右大腿骨近位部骨転移の病的骨折に対して,右大腿骨近位部置換術を施行した.術後8日目の夜間及び朝方に15分程度の前胸部痛を生じた.心電図・心エコーでは明らかな器質的疾患を認めなかったが,その後も頻回に症状があり,冠攣縮性狭心症の診断で内服薬治療を開始した.しかし改善がなく胸椎転移の可能性を念頭に診察を行うと背部に叩打痛があった.MRIにてTh5の棘突起の転移があり脊髄圧迫を伴っていた.第5胸椎に対して放射線治療を行ったところ,胸痛症状は改善した.【考察】狭心症様の前胸部痛を呈する患者では虚血性心疾患以外にも胸椎疾患の可能性に留意することが望まれる.

  • 杉木 暖, 大隈 暁, 岡田 宗大, 朝長 星哉, 畠山 英嗣
    2020 年 69 巻 4 号 p. 827-830
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】仙骨骨折は骨盤骨折の中でも比較的稀な外傷であり,その中でも横骨折は稀と言われている.今回特急列車との接触により仙骨開放横骨折を受傷した症例を経験したため若干の文献的考察を含め報告する.【症例】76歳女性,線路を歩行中に特急列車が臀部に接触し受傷.来院時,臀部に約30 cmの挫滅創と後腹膜の露出を認めた.CTにて明らかな臓器損傷を認めず,第4仙骨孔付近に横骨折を認めた.同日緊急手術を行い,仙骨静脈叢からの出血に対して止血操作,また仙骨骨折に対して縫合を行った.術後経過は良好であり,明らかな下肢神経症状,膀胱直腸障害認めず術後33日目に自立歩行で転院となった.仙骨骨折の受傷機転の多くは自殺による飛び降りであるが,受傷部位は仙骨高位部が多く,神経学的後遺症が残存する可能性があると言われている.今回の症例は仙骨低位部に対する直達外力での受傷であったため経過良好の転帰であったと考える.

  • 城下 卓也, 本多 一宏, 井本 光次郎, 林田 洋一, 岡村 直樹, 宮本 和彦
    2020 年 69 巻 4 号 p. 831-834
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    当院で行った寛骨臼骨折手術のうち,内方化したquadrilateral surfaceをbuttress plateにより固定した症例の治療成績を検討した.対象は2018年5月~12月に行った3例で受傷時平均年齢は50.7歳,平均観察期間は13.3か月(12~16か月)であった.手術時間,術中出血量,整復位評価,臨床評価と術後合併症の検討を行った.骨折型は全例AO/OTA分類62C1であり,ilioinguinal approachとKocher-Langenbeck approachを併用して手術を行った.前方アプローチの際に内方化したquadrilateral surfaceをspring plateを使用してbuttress固定を行った.Mattaの基準を用いて術後評価を行い,X線学的評価はanatomicalが2例,poorが1例で,臨床評価はgoodが3例であった.内方化したquadrilateral surfaceをbuttress plateで固定し,良好な成績が得られた.本手技は,quadrilateral surface固定の選択肢の1つになると考える.

  • 水光 正裕, 熊谷 謙治, 井上 拓馬, 飯田 健, 徳永 敬介, 村山 雅俊
    2020 年 69 巻 4 号 p. 835-838
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の骨盤骨折は比較的稀である.今回尿道断裂を合併した小児不安定型骨盤骨折の1例を報告する.【症例】8歳,男児.1 mの高さから転落し,さらに岩が骨盤上に落下し,体幹部が岩に挟まれて受傷.ショック状態のためドクターヘリで当院に搬送された.X線検査にて,両恥坐骨骨折,恥骨結合離開,仙腸関節脱臼骨折を認めた.造影CTにて,右恥骨と右仙腸関節周囲に血管漏出像を認め,また,尿道完全断裂を認めた.同日TAEを行い,手術室で膀胱瘻造設後,非観血的に恥骨結合離開の整復を試み,創外固定を行った.【経過】受傷後4週で創外固定を抜去し,部分荷重を開始.恥骨結合離開は残存するものの,疼痛の訴えはなく,受傷後1年で問題なく歩行可能である.【考察】恥骨前方に膀胱瘻を造設したため,観血的な恥骨結合離開の整復操作は行えず,創外固定を行った.今後自家矯正の経過を見ながら,長期的な観察が必要である.

  • ~適応と有用性~
    木村 誠, 金﨑 彰三, 坂本 智則, 野谷 尚樹, 津村 弘
    2020 年 69 巻 4 号 p. 839-842
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    近年臨床応用が開始された逆行性髄内釘の治療成績についての報告は少ない.当院において経験した脛骨遠位骨幹部・骨幹端部骨折の3症例に対して逆行性髄内釘を用いて骨接合術を施行した.いずれも骨癒合を認め臨床症状なく経過しており,有用な治療選択肢であると考えられた.

  • ―要介護度と退院転帰の関係―
    西村 博行, 浦上 泰成
    2020 年 69 巻 4 号 p. 843-848
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    介護保険要介護認定者は年々増加している.今回,我々は,回復期リハを行った高齢骨折患者において,受傷前要介護度と退院転帰との関係を検討した.対象は,平成25年から平成30年に,当院にて回復期リハを行った65歳以上で自宅在住の高齢骨折患者821名.ADLは,Barthel index(BI)で評価し,受傷前の要介護度を確認した.受傷前要介護認定者は59.4%であった.退院時BI得点(ADL)は,要介護度1が,要介護度2に比べ,良好であったが,要介護度1の自宅退院率(65.7%)は,要介護度2(76.2%)に比べ,低値を示した.退院転帰には,BI得点,ADLのほか,家族構成や介護保険利用などの社会的因子の関与がある.要介護度1では,3人以上の家族の占める割合および介護保険サービス利用率は,要介護度2に比べ,低値で,このことが要介護度1の自宅退院率の低下につながったと考えられた.

  • 井上 三四郎
    2020 年 69 巻 4 号 p. 849-853
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    (目的)転科に関する理想と現実を調査すること.(対象と方法)対象は2019年4月から6月に整形外科医が主治医となり入院した269人.各患者について,その整形外科医主治医に対し,入院期間中に他科へ転科して欲しかったか否かを対面調査で尋ねた.強く転科を希望した症例を赤群,可能ならば転科を希望した症例を黄色群,特に転科を希望しなかった症例を青群に各々振り分けた.次に実際の転科と整形外科の希望との一致率について,κを使用し検討した.(結果)赤群8例黄群16例青群245例で,転科は赤群2例黄群3例青群1例であった.赤群のみを転科希望群とした場合κ=0.267であった.赤群と黄群を転科希望とした場合,κ=0.308であった.判定はいずれもpoorであった.(考察)超高齢化社会を迎えた現在,地方の総合病院である当院では,整形外科医にジェネラリストやコーディネーターとしての役割が要求される場面も存在する.

  • 有馬 嵩博, 薬師寺 俊剛, 柳澤 哲大, 有村 仁志, 大野 貴史
    2020 年 69 巻 4 号 p. 854-857
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】整形外科手術において,関節内骨折における関節面の整復状態や骨接合術に際してのKワイヤーおよびスクリュー等の挿入位置の確認は術中透視画像のみでは不十分なことがある.我々は症例を選び,術中MPR画像を用いて手術を施行しており,その有用性に関して報告する.【対象】2019年4月から11月までの8ヶ月間に術中MPR画像を用いて,四肢骨折手術や人工関節手術など27例の手術を行った.【結果】術中MPR画像は整復状態,Kワイヤーやスクリューの刺入方向を確認するのに有用であり,特に骨盤骨折のTITSスクリュー固定や,三果骨折の後果骨片へのスクリュー固定に際し,誤刺入の防止や安全域への刺入に適していた.【考察】被爆量が少なくないこと,撮像操作による手術時間延長などの問題点により,適応を考慮する必要はあるが,術中MPR画像を用いることでより正確で安全性の高い手術が可能となると考える.

  • 井上 三四郎, 小玉 隆男, 山口 健一郎, 村中 貴浩, 川崎 裕平, 福里 幸子
    2020 年 69 巻 4 号 p. 858-860
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    (目的)当院における整形外科疾患のCTガイド下穿刺(以下本法)を調査すること.(対象と方法)2018年4月から2019年6月までの15か月間に,整形外科疾患で本法を行った症例を対象とした.症例数や適応疾患などを調査した.(結果)19例が該当した.本法は全例放射線科医により局所麻酔下に施行された.穿刺目的は3つに分類され,①骨軟部腫瘍(疑い例含む)に対する組織診断10例,②腸腰筋膿瘍に対するドレナージ8例,③その他1例であった.①について,穿刺部位は胸椎3例,腸骨・腰椎各2例,後腹膜・臀部・脛骨近位各1例であり,1例を除き診断は確定した.②は穿刺のみが4例,持続吸引用チューブ留置追加4例であった.起炎菌は6例で同定され,大腸菌2例,連鎖球菌2例,MSSA・M.intracellulare各1例であった.全例で膿瘍掻把術は行わなかった.(結語)本法は,当院の整形外科診療にとって欠くべからざるツールとなっている.

  • 田中 宏毅, 井上 三四郎, 有田 卓史, 古川 寛, 大角 崇史, 内田 泰輔, 岩崎 元気, 菊池 直士, 阿久根 広宣
    2020 年 69 巻 4 号 p. 861-863
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    51歳女性.左腰痛,両下腿痛,血尿のため体動困難となり,救急搬送された.両下腿と腰部に高度な浮腫と腫脹,激しい疼痛,水泡形成,著明な筋逸脱酵素の上昇,高カリウム血症を認め,左腰部,両下腿の急性コンパートメント症候群と診断した.緊急で腰部と両下腿に減張切開術を施行し,ICUで全身管理を行った.全身状態安定とともに四肢の浮腫は改善した.初診時に血圧低下,血液濃縮,低タンパク血症,心拍出量低下を認め,その他の多発コンパートメント症候群をきたし得る全身疾患が除外されたことより,原疾患として全身性毛細血管漏出症候群(SCLS)と診断した.SCLSは非常にまれな疾患であり,多発急性コンパートメント症候群を認めた場合,鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある.

  • 藤本 泰毅, 東 千夏, 比嘉 浩太郎, 翁長 正道, 松田 英敏, 石原 昌人, 仲宗根 哲, 神谷 武志, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 4 号 p. 864-866
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    両側同時TKAは1回の入院・麻酔,医療コストの削減といった長所がある一方で,手術時間の延長,合併症の報告がある.当科における両側同時TKAの臨床成績を報告する.対象は2011年1月から2018年6月までに両側同時TKAを行った9例(男性4例,女性5例),原疾患は変形性膝関節症4例,関節リウマチ4例,特発性骨壊死1例,手術時年齢は63歳だった.調査項目は,平均手術時間,平均入院日数,術前後のJOA score,大腿骨脛骨角,膝関節ROM,術後の合併症とした.手術時間は平均251分,入院日数は34.6日だった.術前後でJOA scoreは43点が77点に,FTAは184°が177°に,ROMは伸展/屈曲-17°/102°が-2°/108°に改善した.術後の合併症は,表層感染1例,深部静脈血栓症2例,術後貧血1例等6例に認めた.両側同時TKAを安全に行うには年齢や合併症などを考慮しなくてはならない.

  • 山本 俊策, 二之宮 謙一, 合志 光平, 牟田口 滋, 佐々木 大, 坂本 悠磨, 福島 庸介
    2020 年 69 巻 4 号 p. 867-868
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】外側型変形性膝関節症に対し人工膝関節単顆置換術(UKA)を行ったので,治療成績について報告する.【対象と方法】2014年2月から2017年6月までにUKAを実施し,2年間以上の経過観察を行った7例7膝を対象とした.手術時平均年齢は71.7歳.使用した人工関節はZimmer社のZimmer Uni 3例及び京セラ社のTribrid 4例である.術後平均経過観察期間は38ヶ月であった.【結果】術前立位大腿脛骨角(FTA)平均170.2度から術後平均174度へ術前内側基準 %MA平均67.2%から術後平均52%となった.脛骨コンポーネント設置角度は平均外反1.2度,術前後傾平均8.8度から術後平均6.1度となった.可動域は術前平均118度から術後122度に膝関節JOAスコアは術前63点から術後82点となった.1例脛骨コンポーネント周囲の骨透亮像を認めたが,臨床成績には影響を認めなかった.【結語】外側型変形性膝関節症に対する人工膝関節単顆置換術は有効な治療法である.

  • 内田 研, 丸井 研吾
    2020 年 69 巻 4 号 p. 869-870
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】後十字靭帯温存型TKA(CR-TKA)において,術中にPCLの張力を調整する参考指標は明らかになっていない.90°屈曲位Rollback実値とFlexion Gap値を測定し,術中指標になりうるか,相関するのかを調査したため報告する.【方法】平成29年9月から平成30年5月までにZimmer Biomet社製Vanguard CRを使用した72例124膝(男性20膝,女性104膝)を対象とした.【結果】Rollback値の平均は14.3±3.2 mm(6~21 mm),Rollback実値は63.0±7.4%(42.8~80.0%)であった.Flexion Gap値(テンサー値)は平均9.8 mm(8~16 mm)であった.【考察】CR-TKAにおいて,90°屈曲位Rollback実値とFlexion Gap値は負の相関にあった.【結論】術中にRollback値・Flexion Gap値を計測することでPCLの張力を推定し術中に良好な可動域を得ることができた.

  • 田浦 智之, 石谷 栄一, 園田 康男, 岡田 文, 香月 一朗
    2020 年 69 巻 4 号 p. 871-875
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    両内反型変形性膝関節症の患者の片側にPS型TKA施行後,対側にBCS型TKA施行した9例(除外7例)を対象に比較検討を行った.いずれも術後6ヵ月以上経過した症例とした.内訳は,性別は全例女性,平均年齢は75.4歳(73~81歳),BMIは26.2±2.9 Kg/m2であった.臨床評価項目(経過観察期間,ROM,VAS,患者立脚型評価,体幹後傾テスト)及び画像評価項目(コンポーネント設置角,Femoral-tibial angle,Posterior condylar offset,Joint line)に関して検討を行った.PS型と比較して,理論上,より正常膝に近い生理的な膝形態・位置関係・キネマティクスを目指した機種であるBCS型は,術後成績を向上させる可能性があるため検討を行ったが,本研究では,両群とも有意差は認めなかった.今後も引き続き症例を重ね,評価・検討する事が重要であると考える.

  • 白木 誠, 浅見 昭彦, 田島 智徳, 井上 孝之, 末次 宏晃, 石井 英樹, 山﨑 文朗
    2020 年 69 巻 4 号 p. 876-879
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    症例は83歳女性.繰り返す左膝関節内血腫で色素性絨毛結節性滑膜炎(pigmented villonodular synovitis:以下PVS)を疑われ当院紹介となった.単純X線検査にて外側大腿脛骨関節および膝蓋大腿関節の関節症性変化と大腿骨外側顆,膝蓋骨に骨嚢腫様病変を認めた.MRIでは顆間前方や大腿骨外側顆周囲にT1およびT2強調像で低信号を呈する腫瘤性病変,外側半月板断裂を認めた.大腿骨外側顆,膝蓋骨の骨嚢腫様病変はPVSで認められる典型的な骨破壊病変とは異なっていた.以上より特発性膝関節血症を考え滑膜切除,骨病変の掻爬および人工骨移植,外側半月板切除を行った.関節内には血腫とヘモジデリン沈着を伴う滑膜増生を認めたが,病理所見では組織球様単核細胞の増生は乏しかった.以上より慢性血腫貯留に伴う慢性滑膜炎が考えられた.本症例はPVSと特発性膝関節血症の両方の特徴を持ち鑑別が困難であった.

  • 満瀬 葉介, 末吉 貴直, 佐藤 広生, 山元 雅典, 宮本 健史
    2020 年 69 巻 4 号 p. 880-883
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    当科では,悪性軟部腫瘍術後の皮膚・軟部組織欠損に対して,2011年よりVacccum-assisted closure(以下,VAC)治療を使用し,その有用性を報告してきた.今回新たな洗浄機能付きのV.A.C.Veraflo™治療を用いた1例を経験したので報告する.症例は84歳女性.右下腿の腫瘤を主訴に当科紹介となり,針生検にて粘液線維肉腫の病理診断となった.MRIでは右下腿外側に径5×4×3 cmの腫瘤性病変を認め,皮下から筋肉内に進展し,筋膜上および筋間に浸潤性発育をしていた.遠隔転移を認めず,広範切除しV.A.C.Veraflo™治療を行った後に,二期的に植皮術を行った.皮膚欠損は下腿周径の3/4に及び欠損サイズは288 cm²であったが,術後10日目には良好な肉芽形成があり術後4週には植皮可能な状態となった.

  • 蛯子 隼, 金城 政樹, 村上 弘, 赤嶺 良幸, 當銘 保則
    2020 年 69 巻 4 号 p. 884-887
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    腱黄色腫は家族性高コレステロール血症に伴い出現する報告が多い.高コレステロール血症を伴わない,多発性腱黄色腫の1例を経験したので報告する.症例は46歳,女性.8年前に両側手関節部と下腿後方の腫瘤に気付いた.2か月前に右手関節部腫瘤が書字やパソコン操作に支障をきたし近医受診,当院へ紹介された.初診時身体所見で両側手関節掌尺側に弾性・硬,可動性に乏しい腫瘤があり,両側アキレス腱および腓骨筋腱の肥厚を認めた.血液検査で高コレステロール血症はなく,高トリグリセライド血症を認めた.MRIで尺側手根屈筋と連続し,T1・T2強調画像で低信号,被膜のみ造影効果を示す腫瘍を認めた.切開生検で腱黄色腫と診断した後に高トリグリセライド血症に対し,脂質代謝コントロールを行い右手関節部の腫瘤を可及的に切除した.術後5か月で関節可動域・握力に術前と大きな変化はなく,書字・パソコン操作時の支障は消失した.

  • 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 888-890
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    [はじめに]悪性腫瘍の治療方針の決定において組織学的診断は必須である.しかしながら,生検で診断が確定出来ない事や,生検診断と術後診断が異なることを時に経験する.今回当科において生検後に手術を行った症例で,生検診断と術後診断が一致しないと考えられた症例について検討した.[対象]2014年1月-2018年12月に182件生検が行われた.生検後切除術を行った92例を対象とした.[結果]生検診断と術後診断の不一致は30例で,内訳は,生検で診断確定出来ず術後確定した症例11例,生検で病変が採取出来なかった症例7例,組織学的分類が異なった症例6例,腫瘍の良・悪性が異なった症例5例,組織学的亜分類やgradeが異なった症例5例であった.[考察]本研究の結果から,画像診断から診断に繋がる部分を慎重に選択し正確に生検を行い,生検診断と臨床像から慎重に治療方針を決定する必要があると考えた.

  • 山家 健作, 椋 大知, 尾﨑 まり, 南崎 剛, 遠藤 宏治, 永島 英樹
    2020 年 69 巻 4 号 p. 891-893
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】四肢原発肉腫の外科治療は患肢温存術が主流であるが切離断術が選択されることがある.【目的】切離断術を行った症例の臨床像を調査すること.【対象】2000年~2018年まで初発の下肢原発肉腫に対し切離断術を行った11例を対象とした.男性6例,女性5例,平均年齢55.0歳,平均観察期間53か月であった.【結果】腫瘍最大径は平均9.3 cm,術前補助化学療法が4例に行われ,手術時遠隔転移を1例に認めた.切離断部位は骨盤半截1例,股離断1例,大腿切断4例,下腿切断4例,足部切断1例,切除縁はR0:10例,R1:1例,局所再発は1例に認めた.術後最良ADLは義足なし独歩1例,義足歩行(補助具併用を含む)7例,松葉杖歩行1例,車椅子2例,切離断術を行った主な理由は機能的患肢温存不能が7例,安全な切除縁確保不能が2例,神経血管束への浸潤が1例,高齢によりリハビリ介入困難が1例であった.【考察】切離断術の局所制御や術後機能は良好であり症例によっては切離断も治療の候補となる.

  • 糸瀬 賢, 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 4 号 p. 894-896
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    〔はじめに〕骨盤で発生した骨巨細胞腫(GCT)に対してデノスマブ療法を行った2症例を経験したので報告する.〔症例1〕67歳女性,エホバの証人信者.主訴は左股関節痛.単純CTで左恥骨上枝から左臼蓋臼底に約5×5×2 cm大の腫瘍を認めた.信仰上の理由で輸血が行えず,手術は不可能と考えデノスマブ投与を開始した.1年後に休薬するとMRIで信号変化が出現し,残存腫瘍の再活性化を疑った.デノスマブを再開し投与継続中である.左股関節痛は改善しており,GCTの硬化像が見られ拡大進展はない.〔症例2〕45歳女性.主訴は腰痛.単純CTで腫瘍は約8×9×10 cm大で腸骨から仙骨に存在し骨盤輪の破綻も伴っていた.手術は困難と判断し,デノスマブ投与を開始した.単純CTで腫瘍の進展はなく,骨形成が徐々に進行している.鎮痛剤を服用しているがADL障害は見られない.〔考察〕骨盤に発生したGCTに対してデノスマブを投与して病勢のコントロールができ,ADLの改善を得た.

  • 佐藤 翔太, 糸永 一朗, 田仲 和宏, 河野 正典, 岩崎 達也, 松田 昌悟, 津村 弘
    2020 年 69 巻 4 号 p. 897-901
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性.64歳時に左膝関節痛,両手関節痛で発症したRAであり,Golimumabによる加療が開始された.手関節痛は改善したものの左膝痛は持続し腫脹も増悪傾向でありTofacitinibに変更された.しかしその後も改善なく,滑膜切除の方針となった.術中所見では肥厚した滑膜を認め,病理組織検査の結果,悪性リンパ腫の診断に至った.RAに対してMTX投与中に発症する悪性リンパ腫はMTX関連リンパ増殖性疾患としてよく知られているが,MTX使用歴のないRA患者においても悪性リンパ腫が発症しうることを念頭におく必要がある.稀ではあるが,本症例のように関節内に発症した場合は,臨床的な初期診断が困難となることを認識した.

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