整形外科と災害外科
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72 巻, 1 号
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  • 宮坂 悟, 向井 順哉, 志田 崇之
    2023 年 72 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨髄腔がStove pipe形状の大腿骨頸部骨折に対してVLIANステムを用いたBHAの短期成績を評価したので報告する.【対象と方法】2020~2022年に手術を行った20例20股(女性18股,男性2股,平均年齢84歳,平均観察期間6.1ヶ月)を対象とした.大腿骨髄腔形状をNobleらの方法で術前にCFI(Canal flare index)を計測し,CFI<3.0にVLIANステムでのBHAを行った.術直後と最終診察時の単純X線写真を比較し,ステムアライメント,Barrack分類,sinkingの有無,術前後のADL変化を評価した.【結果】ステムアライメントは20例中19例で中間位,1例は屈曲位であった.Barrack分類はGrade Aが13例,Grade Bが7例であった.術直後と最終診察時の単純X線写真を比較し全例ステムのsinkingはなかった.ADLは20例中17例が離床可能となり,3例が立位困難となった.【結語】Stove pipe型に対してVLIANステムを用いたBHAの短期成績は良好であった.

  • 長松 晋太郎, 中島 圭, 平井 伸幸, 浅山 勲, 白濵 正博
    2023 年 72 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    高齢者の人工骨頭置換術を行う場合,骨質と骨形状によってはセメントステムが提案されている.我々は超高齢者に対してTaper wedge型セメントレスステムを用いて手術を行ったので成績について検討し報告する.対象は2018年から2021年までに人工骨頭置換術を施行し,術後6ヶ月以上経過した17例で,全例女性である.年齢は平均92.6歳で,全例後方アプローチで手術を行った.術中出血量は平均211g,手術時間は平均76分,ステムが内反設置された症例はなかった.髄腔占拠率は近位83.2%,中央88.5%,遠位75.8%であった.術中・術後のステム周囲骨折はなく,ステムシンキングは1例で認めたが,機能障害は認められなかった.高齢者の骨形状,骨質によってはセメントステムが提案されるが,セメントレスステムの形状とサイズさえ十分に術前計画を行い慎重に設置することを心掛ければ良好な成績が得られる.

  • 野々上 湧人, 小河 賢司, 古市 格, 村田 雅和, 梅木 雅史, 中山 宗男
    2023 年 72 巻 1 号 p. 8-10
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    当院で過去2年間に手術を行った大腿骨近位部骨折425例のうち,術前に股関節CTを撮影した352例を対象とし,CTで大腿骨頚部前額面剪断骨折(以下,CSF)を認める症例に関して調査を行った.8例がCSFであり,4例に人工骨頭挿入術,4例に骨接合術を行っていた.Compression Hip Screwで骨接合術を施行し,早期にtelescopeを認めた1症例を除けば,骨接合術を行った症例は6ヶ月で全て骨癒合を確認した.また,人工骨頭挿入術症例を含め全例短期経過ではあるが大きな問題なく経過していた.これまで,CSFに対する骨接合術は良好な成績が報告されているが,骨折部への剪断力のためsliding量が大きくなり,成績不良となる報告もある.高齢者などの骨質不良患者では,術前CTによる正確な骨折形態評価と綿密な術前計画(手術方法の選択)がより有用な骨折型であると思われる.

  • 畑 直文, 田原 尚直, 濱田 賢治
    2023 年 72 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【症例】90歳女性.ADL:車椅子レベル.右大腿骨転子部骨折に対し観血的骨接合術施行後,車椅子移乗レベルで施設へ退院.術後5ヶ月時に特に誘因なく右股関節痛が出現.単純X線像では骨折部の骨癒合を認め,MRI検査で大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)と診断した.6週間の患肢免荷の後に右股関節痛は改善,免荷開始から8ヶ月後(術後13ヶ月)のMRI検査で信号変化は消失していた.【考察】大腿骨転子部骨折術後の大腿骨頭壊死,骨頭下骨折の報告は散見されるが,我々の渉猟し得る限り,SIFの報告はない.今まで報告されている症例の中にもSIF症例が混同されている可能性が示唆され,早期に診断・治療を行うことで骨頭圧潰の進行を予防することができる可能性がある.

  • 原野 理沙, 阿久根 広宣, 菊池 直士, 井上 三四郎, 増田 圭吾, 岩﨑 元気, 藤井 勇輝, 中村 良, 鶴 翔平
    2023 年 72 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    39歳,男性.右THAを施行した6年後,縁石を乗り越え着地した時に足が滑り右股関節に衝撃がかかった.2日後,座った際に軋むような音と右股関節痛を自覚し,翌日当科を受診した.画像所見よりセラミック骨頭の破損と診断し,再置換術を施行した.術中所見では多数のセラミック破片とメタローシスを認めた.破片の解析では,初回手術時の嵌合不良や異物嵌入を示す所見はなく,経過中に嵌合のずれが生じて破損に至った可能性が示唆された.要因として,活動性の高さや肥満の他,ロングネックの使用により,荷重による骨頭への回転モーメントが嵌合部を引き離す力・接合面へてこの作用として働いた可能性が考えられた.本症例のように,THA術後のセラミック骨頭の破損に対しては,インプラントの設置位置とオリエンテーションを評価した上で,徹底的なデブリードマンを行い,アダプタースリーブを装着しセラミック骨頭への置換を行うべきである.

  • 喜瀬 真行, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 伊藝 尚弘, 與那嶺 隆則, 西田 康太郎, 石原 昌人
    2023 年 72 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【要旨】55歳女性.8年前に外傷後の変形性股関節症のため前方アプローチによる第三世代セラミック(forte®)摺動面を用いた人工股関節置換術を受けた.術後,股関節に愁訴なく経過良好であった.当院受診前日に誘因なく下肢挙上困難が出現し,杖を使わないと歩けなくなった.受診当日には動作時痛が持続し,車に乗り込む際に激痛で歩行困難となり,当院へ救急搬送された.画像検査でセラミック摺動面の破損を認めた.手術は前方アプローチで行った.股関節を展開するとセラミックヘッドは粉々となっており,セラミックライナーは前方と外側前方,内側が大きく欠損していた.セラミック破片を丁寧に取り出し,第四世代セラミック(delta®)ライナーを再設置した.ステムにはトラニオンスリーブを装着し,28mm径の第四世代セラミックヘッドを用いた.術翌日より荷重許可し,術後5日で退院した.現在,術後2年経過し,股関節に愁訴なく経過良好である.

  • ―手術時年齢は長期の関節温存率に影響を与えるか?―
    石橋 正二郎, 北村 健二, 山手 智志, 佐藤 太志, 川原 慎也, 池村 聡, 藤井 政徳, 濵井 敏, 本村 悟朗, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】本研究の目的は,当院で施行した寛骨臼移動術(TOA)の術後20年以上の長期成績を調査し,関節温存に関連する影響因子を明らかにすることである.【方法】1996-2005年に当院でTOAを施行した患者で追跡可能であった159例172股(平均観察期間21年)を対象とした.THA conversionをエンドポイントとしたときの累積温存率を,Kaplan-Meier生存分析を用いて調査した.関節温存に関連する影響因子は,単変量および多変量Cox回帰分析を用いて調査した.【結果】31例33股がTHA conversionとなり,術後20年の累積温存率は79.7%であった.多変量解析では,術前病期が唯一の有意な影響因子であり,リスク比は2.69(p=0.003)だった.一方,年齢は影響因子ではなかった(p=0.153).手術時年齢を考慮して術前病期別に比較したところ,前・初期では45歳未満が89.8%,45歳以上が86.2%と年齢に関わらず(p=0.62),良好な結果を示した.一方で,進行期では45歳未満が66.7%,45歳以上51.1%と年齢に関わらず(p=0.75),前・初期よりも関節温存率は低かった.【考察】寛骨臼形成不全に対するTOAにおいて,長期での良好な関節温存を得るためには,術前病期が前期・初期であることが重要であり,手術時の年齢は影響しなかった.

  • 樋口 富士男, 吉光 一浩, 田中 康嗣, 山下 明浩, 山内 豊明
    2023 年 72 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    目的:摘出骨頭の肉眼所見を分類し,臨床的な有用性を検討した.対象:2020年6月から2022年2月までの間に写真撮影ができた100摘出骨頭である.結果:所見を分類すると,初期・変性型が19骨頭,一次性変形性関節症型が38骨頭,二次性変形性関節症型が31骨頭,大腿骨頭壊死型が3骨頭そして破壊型が9骨頭であった.考察:術前にも諸検査で多くの情報が得られるが,肉眼所見からも新しい情報が得られた.一つ目は,X線所見が軽微で手術の必要性が不明な患者に,重度の軟骨病変を認めた.二つ目は,二次性変形性股関節症で痛みが異常に強い例で,臼蓋縁が骨頭を圧し臼蓋外側縁に対する骨頭に骨破壊が発生している様子が見えた.三つ目は保存的治療施行例で,治療効果と思われる修復組織の状態が観察できた.いずれも,患者に説明する資料として供することができた.結論:骨頭の肉眼所見は,患者への病態の説明に役立った.

  • ―入所施設の特徴と患者転帰―
    西村 博行, 浦上 泰成
    2023 年 72 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    施設入所中に受傷し, 回復期リハを行った大腿骨近位部骨折患者158名の入所施設の特徴と患者転帰を検討した.同時に,自宅在住の大腿骨近位部骨折患者545名と比較した.Barthel Index点数(ADL)および長谷川式知能スケール点数(認知機能)は,自宅在住にくらべ,老健,特養は低下したが,ケアハウスは低下しなかった.回復期リハ後元の施設への再入所率は,自宅(自宅退院率:78.3%)にくらべ,特養は100%で,ケアハウスは44.4%であった.それぞれの施設の,ADLが低下した患者に対する介護体制の違いが示唆された.施設全体では,再入所率は81.0%で,自宅在住の自宅退院率78.3%とほぼ同じであった.施設入所者は,自宅在住者と同程度に,元の居住地に戻るという回復期リハの目標を達成していた.入院時,退院後について家族意向を確認すると,97.5%の家族が退院後に入所を希望する施設を決めていた.

  • 新庄 慶大, 岡野 博史, 福徳 款章, 高野 祐護, 田中 孝幸, 土井 俊郎, 有馬 準一
    2023 年 72 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】尺骨非定型骨折は報告が少なく,治療戦略は未だ確立されていない.2例4肢の尺骨非定型骨折を経験したので文献的考察を加え報告する.【対象】症例1:68歳女性,症例2:90歳女性の両側尺骨近位骨幹部非定型骨折.2例とも10年以上のビスフォスホネート製剤の使用歴があり,軽微な外力で受傷した.【結果】2例とも先に非利き腕側を受傷し,保存的加療で偽関節となり,後に偽関節手術(骨折部新鮮化,症例2は骨移植併用)を要した.利き腕側は2例とも受傷1週目に内固定を施行(骨折部新鮮化,症例2は骨移植併用)し,早期骨癒合を得た.【考察】過去の報告をみても尺骨非定型骨折の保存的加療の治療成績は不良であり,骨折部の生物学的活性低下と不十分な安定性が主要因と考えられる.したがって尺骨非定型骨折の骨癒合を有利にするためには,受傷早期の骨折部新鮮化と強固な内固定を考慮し,骨移植の併用を検討する価値がある.

  • 小河 賢司, 古市 格, 村田 雅和, 梅木 雅史, 中山 宗郎, 野々上 湧人
    2023 年 72 巻 1 号 p. 44-46
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨脆弱性の強い患者では,時折脛骨の脆弱性骨折をきたす症例をみかける.その際には,超音波治療器やPTH製剤を使用して骨癒合を促進する方法を取られることも多いが,今回骨形成促進作用のあるロモソズマブを使用して保存的加療を行った脛骨脆弱性骨折の2症例を経験したので報告する.【症例】2例とも関節リウマチにて長期加療を受けており,特に誘因なく膝関節周囲の疼痛を発症した.初診時のX線では明らかな骨折は指摘できず,MRIにて骨折の診断に至ったため,脛骨近位部脆弱性骨折と診断した.手術は希望なく,保存的加療のため入院とした.骨癒合促進を期待して,ロモソズマブを使用して加療を行った.それぞれ6週・8週で全荷重歩行可能となり,現在独歩で問題なく生活している.【結語】ロモソズマブ使用により,骨皮質の形成が促進される傾向にあり,脆弱性骨折治療の補助治療として有用な可能性があると思われた.

  • 上田 章貴, 濱田 賢治, 清水 建詞, 大茂 壽久, 大友 一, 松永 慶, 長田 宗大, 畑 直文, 草場 宣宏, 瀬尾 智史, 田原 ...
    2023 年 72 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨近位部骨折は脆弱性骨折の代表的疾患で要介護の原因であるとともに,その後に続発する骨折も問題である.【目的】大腿骨近位部骨折後の続発骨折発生リスク因子を明らかにすること.【対象と方法】2018年3月から2020年5月までに当院で手術を行った大腿骨近位部骨折281例中,1年以上経過観察可能であった閉経後女性123例を対象とした.初発骨折率,続発骨折発生率,発生時期および骨折部位,続発骨折あり群となし群の比較検討を行った.検討項目は年齢,BMI,骨密度,P1NP,TRACP-5b,内服薬数,骨粗鬆症治療介入率とした.統計はMann-Whitney U検定およびχ2乗検定を用い,有意水準5%未満を有意差ありとした.【結果】大腿骨近位部骨折後の続発骨折発生率は27.6%であった.1年以内続発骨折あり群となし群で単変量解析を行うとTRACP5bと骨粗鬆症治療介入率で両群間に有意差を認めた.続発骨折の発生を目的変数,TRACP-5b,骨粗鬆症治療介入率を説明変数として多変量解析を行うと骨粗鬆症治療介入率のみが有意な説明変数となった.【結語】閉経後女性の大腿骨近位部骨折後の続発骨折は27.6%に発生していた.積極的な骨粗鬆症治療を行うことで大腿骨近位部骨折後の続発骨折を予防できる可能性がある.

  • 井上 隆広, 生田 光, 土居 雄太, 前田 稔弘, 坂本 和也, 北村 貴弘, 仙波 英之, 志田原 哲
    2023 年 72 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】当院でロモソズマブを使用した症例の治療経過を調査し,その有用性を検討すること.【対象と方法】2019年3月から2021年3月にロモソズマブを導入した骨粗鬆症患者27例(男性4例,女性23例,年齢76.3±7.70歳)を対象とした.導入後1年の継続率と中断理由,新規骨折発生率,導入前と1年後の骨密度変化(DEXA,腰椎)を調査した.【結果】継続率は71.4%(20/27)であった.骨密度は導入前と比して16.3%増加し,新規骨折は認めなかった.【考察】継続率は比較的良好で,臨床成績も良好であった.ロモソズマブは骨粗鬆症治療の有効な選択肢の一つであると考える.

  • 竹内 潤, 山﨑 大輔, 長谷 亨, 市川 理一郎, 水島 正樹, 松尾 卓見, 永吉 隆作, 村岡 辰彦, 鈴木 勝
    2023 年 72 巻 1 号 p. 54-55
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【要旨】当院は鹿児島市中心部に位置し,年間1600名の骨折患者を受け入れている.その中で約70%を占める脆弱性骨折患者に対し,骨粗鬆症治療の早期介入を行っている.その際,効果と利便性からテリパラチド週2回製剤を使用することも多い.今回,テリパラチド週2回製剤の継続率とその治療効果について調べたので報告する.対象は2020年1月1日から2021年12月31日の期間にテリパラチド週2回製剤を導入した脆弱性骨折患者47名とし,その継続率,副作用,新規骨折発生率を調査した.結果,継続率は3ヶ月87.2%,6ヶ月80.8%,1年75.0%であった.副作用出現率は6.4%,新規骨折に関しては平均観察期間11.2ヶ月で2%であった.テリパラチド週2回製剤は継続率は高く,骨折直後に比較的導入しやすい薬剤と考えられた.

  • 赤嶺 尚里, 呉屋 五十八, 当真 孝, 山口 浩, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 56-57
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】稀な小円筋単独断裂を経験したので報告する.【症例】32歳,測量士.車を運転中,後方確認のため左肩を外転・外旋した際に礫音が生じ,左肩痛・運動制限が出現したため近医を受診した.MRI上,小円筋腱断裂を認め,紹介となった.初診時,屈曲130°,外旋50°,内旋第10胸椎レベル,JOA score 60点,外旋筋力の低下を認めた.単純X線上,左上腕骨近位部骨折に対して髄内釘を用いた骨接合術後の状態であり,近位横止めスクリューによる小円筋損傷が疑われた.受傷7週時,直視下にスクリューを抜去した後,小円筋を修復した.術後6週間,肩外転装具を用いて外旋位固定を行い,4週より自動介助・他動可動域訓練,10週以降に筋力増強訓練を開始した.術後12ヵ月,屈曲150°,外旋60°,内旋第10胸椎レベル,JOA score 95点,外旋筋力は改善,MRI上小円筋腱の連続性を認め,復職している.【結語】近位横止めスクリューによる小円筋断裂は稀であるが,手術の際には注意が必要である.

  • 土屋 太志郎, 唐杉 樹, 徳永 琢也, 宮本 健史
    2023 年 72 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】肩甲下筋腱単独断裂は比較的まれな断裂である.今回われわれは肩甲下筋腱単独断裂の鏡視下手術後に再断裂した症例を経験したので報告する.【臨床経過】68歳男性,初診時2ヶ月前に川で転倒し右手をついた際に右肩痛を自覚し前医を受診した.MRI検査で腱板断裂を認め当科に紹介された.肩甲下筋腱単独断裂の診断にてsuture bridge法による鏡視下腱板修復術を行った.術後1週より肩関節の他動可動域訓練を開始した.術後4週に右肩前方に腫脹,圧痛が出現し,精査を行ったところCTにて外側アンカーの脱転を認め,MRIにて肩甲下筋腱再断裂を認めた.再修復術を行い,肩関節の他動可動域訓練は術後3週より開始した.術後6ヶ月のMRIにてアンカーの脱転はなく,肩甲下筋は修復されており,JOAスコア96/100点,UCLAスコア32/35点であった.【考察】肩甲下筋腱単独断裂に対する術後リハビリテーションは保護的に行うべきと考えた.

  • 岸川 準, 太田 浩二, 山下 彰久
    2023 年 72 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【背景】肩腱板断裂に対して鏡視下腱板修復術(ARCR)は広く施行されている.その中で,比較的新規の縫合方法にTriple-Row(TR)法があり,我々は同法でARCRを行っている.【目的】当院におけるTR法の術後再断裂率について調査・検証を行う.【方法】2021年2月~11月に当院にて施行されたARCR症例の内,中断裂以上かつTR法を施行した21例(男性10例・女性11例,平均年齢68.7歳:53-81歳,中断列5例・大断裂11例・広範囲断裂5例)に対して,後ろ向きに調査を行った.再断裂の評価は術後6か月後のMRIで行い,Sugaya分類Type4,5を再断裂と定義した.【結果】21例中1例(4.8%)に再断裂を認めた.【考察】症例数は少なく短期成績ではあるが,従来法における再断裂率(Suture-Bridge法:12-29%)と比較して,当院におけるTR法の術後成績は良好な結果であった.【結論】Triple-Row法による鏡視下腱板修復術を施行し,良好な成績を得られた.

  • 甲斐 勇樹, 佐保 卓, 海江田 光祥, 高野 純, 有島 善也, 東郷 泰久, 小倉 雅, 藤井 康成, 谷口 昇
    2023 年 72 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【背景】肩関節傍関節唇嚢腫は,後上方関節唇近傍の棘窩切痕付近に発生し,肩関節痛や脱力感などの多彩な症状を呈し,肩甲上神経麻痺の原因となる.今回,我々は烏口肩峰靭帯直下の関節窩前上方部に生じた関節唇嚢腫に対して鏡視下手術を施行したテニス選手の1例を経験したので報告する.【症例】32歳男性右利き.テニスのサーブの素振り時に右肩痛出現し,疼痛が持続するため,当院受診.MRIにてSLAP損傷及び肩関節傍関節唇嚢腫を認め,鏡視下関節唇縫合術及び嚢腫切除術を行った.【結語】傍関節唇嚢腫は,関節窩後上方部のSLAP病変に起因し,棘窩切痕付近に発生することが多いが,本症例は,後上方のSLAP病変部と通じる瘻孔を通して,棘上筋と肩甲下筋の間の前上方に存在し,同部の表層にある烏口肩峰靭帯と二次性インピンジメントが生じることで痛みを発症していた.同部での発生は非常に珍しく,鏡視下での切除術により症状は軽減し良好な結果が得られた.

  • 当真 孝, 山口 浩, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 比嘉 浩太郎, 上原 史成, 東 千夏, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】前方関節唇損傷・大きなヒルサックス損傷・広範囲腱板断裂(以下,3部位損傷)を伴う肩関節前方脱臼(以下,肩脱臼)に対し,関節唇修復・ヒルサックス損傷部へ腱板修復した3例を報告する.【症例1】80歳,女性.台座より転落し,右肩脱臼.術前(屈曲30°/外旋30°/内旋不可),MRI上3部位損傷を認めた.術後2年(140°/60°/L1),腱板断裂・脱臼なく経過している.【症例2】71歳,男性.段差に躓き転倒し,右肩脱臼.術前(90°/20°/L1レベル),MRI上3部位損傷を認めた.術後8カ月(140°/50°/L1),腱板断裂・脱臼なく経過している.【症例3】61歳,男性.掃除中に滑って転倒し,右肩脱臼.易脱臼性のため手術目的で当科紹介.術前(90°/20°/Hip),MRI上3部位損傷を認めた.術後2年(140°/60°/L1),腱板断裂・脱臼なく経過している.【結語】3部位損傷を伴う肩脱臼に対する関節唇・腱板修復は有用な術式と考えられた.

  • 津田 宗一郎, 青木 龍克, 梶山 史郎, 佐田 潔, 辻本 律, 松林 昌平, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    陳旧性肩関節前方脱臼骨折(2-part大結節骨折)に対し,観血的脱臼整復術と一時的関節固定術を行った2例を報告する.【症例1】66歳男性.自宅内で転倒受傷し,受傷後9週で観血的脱臼整復術を行った.プレートによる大結節の骨接合後も脱臼不安定性が残存したため,キルシュナー鋼線を用いて4週間の一時的関節固定を行った.術後1年で再脱臼はなく,肩関節自動可動域は屈曲75°外転45°外旋20°であった.【症例2】71歳男性.自宅内で転倒受傷し,受傷後6週で観血的脱臼整復術を行った.症例1と同様に3週間の一時的関節固定を行った.術後1年で再脱臼はなく,肩関節自動可動域は屈曲130°外転130°外旋45°であった.【まとめ】陳旧性肩関節前方脱臼骨折の2例に対して観血的脱臼整復と一時的関節固定術を行った.術後の再脱臼はなく,肩関節安定性の獲得に一時的関節固定術は選択肢の一つと考えられる.

  • ―沖縄県内の調査より―
    呉屋 五十八, 山口 浩, 当真 孝, 津覇 雄一, 赤嶺 尚里, 金城 英樹, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】上腕骨近位部骨折(PHF)は高齢者に多い骨折である.沖縄県内で保存的加療を行なったPHFの調査結果を報告する.【対象】70歳以上の42例(男性2例,女性40例).受傷時年齢は平均77.5歳(70-88歳),経過観察期間は平均32.3ヵ月(12-137ヵ月)であった.可動域訓練開始時期別に仮骨形成前群(以下,前)22例(1-part 5例,2-part 11例,3・4-part 6例)と仮骨形成後群(以下,後)22例(それぞれ7例,5例,8例)に分類し,肩関節自動可動域(屈曲,外旋),合併症を検討した.【結果】平均屈曲は1-part(前127°/後141°),2-part(104°/124°),3・4-part(108°/121°),平均外旋は1-part(43°/64°),2-part(43°/53°),3・4-part(20°/43°).合併症は,1-part 0例,2-part(9例/4例),3・4-part(3例/7例)であった.【まとめ】高齢者のPHFに対する保存療法は,合併症の割合は多いが,屈曲,外旋は良好であり,選択肢の一つと考えられた.

  • 上田 幸輝, 伊東 孝浩, 伊藤 輝, 山本 雅俊, 亀山 みどり, 千住 隆博, 内村 大輝, 水城 安尋
    2023 年 72 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    人工膝関節置換術(TKA)術後1年での,変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)と中枢性感作(CS)が関連するか,Central Sensitization Inventory(CSI)を用いて相関関係を調べた.【対象と方法】2019年1月~2021年8月にTKAを施行した49膝(76±8歳,全例女性).CSIを術前に,JKOMを術前と術後1年に調査し,術後1年の観測膝関節可動域(ROM)と,X線正面像で大腿骨機能軸と大腿骨関節面の角度(α角),脛骨骨軸と脛骨関節面の角度(β角),Hip Knee Angle(HKA)を測定した.【結果】術前CSIは23±13,JKOMは術前52±22,術後1年は22±15,術後ROMは屈曲124±10°,伸展-2±3°,α角91±2°,β角89±2°,HKA2±2°だった.重回帰分析を行うと,術後1年のJKOMに関連する因子として術前CSIと年齢と術後1年のVASが検出された.【考察】術後VASと術後JKOMは正の相関が報告されている.年齢が上がるとCSIが上がるという報告があり,加齢が間接的にJKOMを悪化させた可能性も考えられた.【結語】TKA術後1年のJKOMと術前CSIは相関を認めた.

  • 福永 幹, 神谷 俊樹, 北堀 貴史, 池尻 洋史, 森 治樹
    2023 年 72 巻 1 号 p. 90-92
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】人工膝関節全置換術後の急性関節炎は感染と偽痛風の鑑別に難渋しうる.今回我々は,人工膝関節全置換術後に生じた偽痛風発作の一例を経験したので報告する.【症例】84歳,女性.72歳時に両側変形性膝関節症に対して両側人工膝関節置換術を施行.ベット上から転落し,右膝の疼痛・腫脹が出現し,当院救急外来へ搬送.Xp上,明らかな骨傷なく,血液検査でWBCが26600/μL,CRPが16mg/dLと強い炎症所見を認めた.感染の可能性が考えられたが,関節液検査でピロリン酸カルシウム結晶が検出されたことから偽痛風発作と診断した.【考察】人工膝関節全置換術後の偽痛風発作は希であり,化膿性関節炎に類似した臨床像を呈するため感染と誤りやすい.しかし,術後偽痛風発作も念頭に置いて診断,治療に当たることで早期診断が可能であり,重要であると考えられた.

  • 土持 兼信, 畑中 敬之, 岩崎 賢優, 河野 裕介, 大森 裕己, 土屋 邦喜
    2023 年 72 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【症例】71歳女性.幼少期より外反膝を指摘されていた.左膝痛,歩行障害のため受診.全下肢XpにてFTA144度と高度外反.可動域は-5~140度と良好であった.MRIでACL,PCLは保たれていた.【手術】骨切りを計画.mPTAは88度と正常範囲.mLDFA65度であり大腿骨での矯正.通常の内側closedでは22度矯正で,骨切り幅が19mm.骨切り量が多く,内側の皮質の適合が悪くなり,プレートの適合が不良.ヒンジ骨折の可能性も高いと思われた.Hybrid(内側close,外側open)で計画.内側の骨切り幅は12mmとなった.プレートは両側に設置.【術後】術後%MAは53度.外側プレートが浮いてしまい,屈曲で腸脛靭帯の痛みあり.可動域が0~100度.術後6週で外側プレートの抜釘と関節鏡で受動術施行.可動域は0~140に改善.術後1年で独歩,可動域0~135度と経過良好であった.

  • 大島 由貴子, 花田 弘文, 石松 哲郎, 野村 耕平, 阿南 亨弥, 千々岩 芳朗, 藤原 絃, 山口 史彦, 久保 勝裕, 藤原 明, ...
    2023 年 72 巻 1 号 p. 98-100
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】当院での大腿骨遠位内反閉鎖式骨切り術(以下,MCWDFO)の治療成績について報告する.【対象と方法】当院で2016年7月から2022年5月までに抜釘まで施行したMCWDFO 10例の術前・術後1年経過時の%MA,mLDFA,MPTA,JLCA,膝蓋骨高,JOA score,関節可動域の変化,初回手術時と抜釘時の関節鏡所見,周術期合併症について検討した.【結果】術前後でJOA scoreは全例改善,関節可動域は平均5.5°改善した.関節鏡所見では外側コンパートメントの大腿骨・脛骨の軟骨損傷は8例改善し,2例は不変だった.内側コンパートメントの大腿骨・脛骨の軟骨損傷は9例不変であり,1例のみ増悪した.合併症は骨切り時のヒンジ骨折を2例,抜釘時の大腿動脈分岐部損傷を1例に認めた.【考察】当院でのMCWDFOの短期治療成績は臨床所見,画像所見ともに良好であった.周術期はヒンジ骨折・動脈損傷などの合併症に注意する必要があり,抜釘時も周辺組織の癒着等で血管同定が困難なため,慎重に展開する必要がある.

  • 白石 さくら, 諸岡 孝明, 島田 哲郎, 木村 岳弘, 後藤 久貴
    2023 年 72 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】内側開大式粗面下骨切り術(OWDTO)において術後3週での矯正が抜釘時に維持できているか検討すること.【対象】2019年9月から2020年9月まで当院で施行したOWDTO33例のうち,1年後に立位全下肢エックス線を撮影した27例.内固定材料は全例TriS Medial HTO plate(オリンパスバイオマテリアル)と4.5mm皮質骨裸子2本を使用.開大部にはAffinosを使用.平均58歳.男性13例,女性14例.術後3週,6か月,12か月の最終フォロー時の立位全下肢エックス線で,%MAとMPTAを計測し比較した.【結果】術後3週での立位全下肢エックス線で測定した%MAは63.6±8.0%,MPTA92.6±2.4度.6か月時の%MAは59.4±8.0%,MPTAは91.4±2.6度.12か月の%MAは56.2±8.7%,MPTAは91.1±2.3度.それぞれ最終フォロー時で有意に小さくなった.【考察】近位骨片のスクリュー周囲のreactive lineが生じており,近位骨片の沈み込みが矯正損失の一員と考えられた.

  • 古市 格, 小河 賢司, 村田 雅和
    2023 年 72 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    広範囲の殿筋壊死から進展した重症骨軟部組織感染症に対し次亜塩素酸を使用した.症例は55歳男性,交通事故による骨盤骨折と骨盤内臓器の高度の損傷例である.急性失血性ショックに対し経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TEA)が行われ,殿筋壊死を合併した.その後仙骨骨髄炎・軟部組織欠損創に多剤耐性緑膿菌感染となり,抗菌剤の経静脈投与を中止し抗菌剤含有ビーズと次亜塩素酸を併用して感染症を制圧した.次亜塩素酸はその強い殺菌効果と安全性を厚生労働省も認めているが医薬品ではない.今回使用した次亜塩素酸(epicsy®)は水素イオン指数(pH)と有効塩酸濃度(ppm)を自由に正確に設定することが可能で,pH5.5~6/200ppmの微酸性で殺菌作用,pH7.5周辺の弱アルカリで洗浄作用があり,医薬品ではないが感染治療の補助として有益な可能性がある.

  • 島袋 晃一, 金城 政樹, 白瀬 統星, 大中 敬子, 仲宗根 素子, 大久保 宏貴, 赤嶺 良幸, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 112-114
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【症例1】17歳,男性.右手背部をタコに咬まれ受傷し,周囲の発赤や腫脹を認めた.潰瘍の進行があり,受傷後17日目にデブリドマン,約30mmの皮膚欠損に対して局所皮弁を行った.【症例2】40歳,男性.右前腕をタコに咬まれ受傷した.抗生剤,ステロイドで治療するも潰瘍化は進行した.受傷後19日目と34日目にデブリドマン,12mmの皮膚欠損を縫縮した.【症例3】22歳,女性.右前腕部をタコに咬まれ受傷し,MRIで皮下膿瘍を認め受傷後8日目に切開排膿を行い,25日目に追加でデブリドマンを行い約10mmの皮膚欠損は40日目で自然閉鎖した.【まとめ】タコ咬傷は海洋生物による咬傷で,かつ唾液中に毒を含有するため咬傷は小さくても潰瘍が拡大し治癒に時間がかかることがある.今回,進行する壊死は3例とも受傷後2~3週まで拡大し,数回のデブリドマンの後に創の大きさに合わせ被覆手技を選択して創閉鎖となった.

  • 佐々木 一駿, 水溜 正也, 吉野 孝博, 畠 邦晃, 井上 哲二, 川谷 洋右, 阿部 靖之
    2023 年 72 巻 1 号 p. 115-117
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    当院で行った透析患者の頚椎手術(42例)の術後成績を検討した.破壊性脊椎関節症(DSA)の有無(Stage 3以上のIII群とStage 2以下の対照群),透析導入の原疾患(糖尿病群と非糖尿病群)に対して,JOA score,改善率を比較検討した.症例は,男性26例,女性16例,手術時平均年齢は67.4歳であった.平均透析期間は15.1年,透析導入の原疾患としては慢性糸球体腎炎15例,糖尿病12例,その他15例であった.DSAは12例であり,発生高位はC5/6が最多であった.改善率は,糖尿病群と非糖尿病で34.38%対25.53%,DSA III群と対照群で24.30%対29.56%であり,ともに有意差は認めなかった.また,関連因子の評価を重回帰分析で行い,年齢・出血量に負の相関を認めた.透析患者における頚椎手術は,DSAの病期や透析導入の原疾患に問わず,一定の治療効果が得られると考えられた.

  • 岸川 準, 渡邊 哲也, 太田 浩二, 山下 彰久
    2023 年 72 巻 1 号 p. 118-122
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【背景】Vertebral Body Stenting(VBS)は,骨粗鬆症性椎体骨折に対する比較的新規の術式である.Balloon Kyphoplasty(BKP)と異なる点は,セメントに加えステントの留置も椎体内に行う点である.【目的】VBSの治療成績を調査し,有用性について検討する.【対象】当院にて施行されたVBS症例全20例21椎体の内,術前後に荷重下Xp撮影が可能であった17例18椎体に対して,後ろ向きに調査を行った.【結果】VBS前後で比較して局所後弯角は有意に改善していた.隣接椎体骨折は半数の症例に認めた.【考察】症例数は少ないが,先行研究におけるBKPの術後成績と比較して,局所後弯角の有意な改善を認めた.これはVBSではアライメント矯正も可能であることを示唆する.一方で,隣接椎体骨折が多かった点は偶然なのか後弯矯正や椎体支持性が影響した結果であるのか今後の検証が必要である.【結論】VBSでは局所後弯角の改善を認める一方,隣接椎体骨折が生じやすくなる可能性がある.

  • 金城 英雄, 島袋 孝尚, 山川 慶, 深瀬 昌悟, 大城 裕理, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当科では,2010年から股関節手術で採取した大腿骨頭を用いて同種骨移植を行っている.本研究の目的は,脊椎手術における同種骨移植の有用性を検討することである.【方法と対象】2016~2017年に脊椎固定術に同種骨を使用した12例中,術後6ヵ月以上経過観察可能であった10例を検討した.男性4例,女性6例,手術時平均年齢48.7歳(4~76歳),経過観察期間は48.1ヵ月(9~68ヵ月)であった.【結果】手術部位は頚椎が5例,胸椎が1例,腰椎が4例であった.術式は,脊椎後側方固定術が7例,腰椎椎体間固定,腫瘍掻爬後骨移植が各々1例であった.骨癒合を確認できた症例は5例(50%)であった.癒合不全による再手術は2例(20%)あったが移植部異常反応や感染は認めなかった.【まとめ】同種骨は骨伝導能を有するものの,骨形成能・骨誘導能がほとんどないため,単独使用では確実な骨癒合が得られない可能性もある.自家骨や骨髄液を混合するなど工夫が必要と考えられる.

  • 河野 通仁, 籾井 健太, 木原 大護, 田丸 哲弥, 牧 盾, 小早川 和, 川口 謙一, 赤星 朋比古, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 1 号 p. 128-131
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊椎術後の頭蓋内出血はまれではあるが報告されている.しかし,頭部外傷を合併した脊椎外傷の術後合併症としてのテント上硬膜下血腫の報告はない.【症例】29歳,男性.4階から墜落して,右急性硬膜下血腫,第12胸椎脱臼骨折を含む胸腰椎多発骨折を受傷した.頭部外傷は保存的治療を選択し,CTによる厳密な評価を行った.血腫の増大はなく脳浮腫が改善した第7病日に,脊椎後方固定術を行った.第10病日に意識障害を来たし,CTで右慢性硬膜下血腫による鉤ヘルニアと診断した.穿頭血腫除去術を行い,速やかに意識は改善した.【考察】脊椎手術後合併症として,小脳出血の報告は多いが,テント上の頭蓋内出血はまれである.過去の頭部外傷が危険因子と考えられているが,報告は少ない.頭部外傷を合併した患者における脊椎手術では,術後に頭蓋内出血を合併する可能性を考慮し,意識の変容の有無を慎重に観察する必要がある.

  • 鈴木 湧貴, 末永 賢也, 金海 光祐, 川口 雅之, 平田 正伸, 藤田 秀一, 田山 尚久
    2023 年 72 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【症例】47歳男性.体重150kg,BMI 49kg/m²と高度肥満であった.3mの高さから転落し受傷.右脛腓骨近位端骨折の診断で創外固定を施行.その後Plateによる内固定術を施行した.術後9ヶ月後より膿性の滲出液を認め,骨癒合の遷延もあり感染性偽関節の診断でMasquelet法による骨再建術を施行した.手術は2期的に施行し,初回手術ではPlateを抜去し骨・軟部組織の感染巣をデブリードマン後に抗生剤含有セメントを挿入し固定した.初回手術から1.5ヶ月後にセメントを抜去し髄内釘を挿入し骨欠損部に同種骨移植を行なった.体重を考慮した後療法を継続し,現在骨形成は良好で独歩可能な状態に回復している.【考察】高度肥満があり荷重など慎重を要する症例であってもMasquelet法による骨再建法は有効であることが分かった.

  • 名取 孝弘, 小宮山 敬祐, 美浦 辰彦, 陣林 秀紀, 樺山 寛光, 宇都宮 健, 酒見 勇太, 園田 和彦, 藤村 謙次郎, 浜崎 晶彦 ...
    2023 年 72 巻 1 号 p. 136-138
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    災害現場における四肢切断(field amputation)は非常に稀である.我々は,field amputationを依頼された1例を経験したので報告する.症例は75歳女性.土砂崩れにより両下腿が家財の下敷きとなった.当初は家屋倒壊の恐れがあり救出が難航したため,災害医療チームからfield amputationを要請された.現場での災害医療チームの加療により全身状態は安定し,また家屋倒壊の危険性が下がり,救出の目処がたったためfield amputationは施行しなかった.発生から約18時間後に救出され,当院搬送時,両下腿の筋区画内圧の上昇を認めたため緊急で減張切開を行った.全身管理を行い,幸い圧挫症候群は免れた.左下腿は開放骨折と筋壊死を広範囲に認め救肢困難であり,受傷後5日で左大腿切断術を行った.右下肢は筋デブリードマンや植皮術を重ね,最終的に救肢し得た.field amputationの報告は少なく,確立した適応はないため,患者や現場環境を総合的に判断することが重要である.

  • 井上 三四郎, 菊池 直士, 増田 圭吾, 岩崎 元気, 藤井 勇輝, 中村 良, 鶴 翔平, 原野 理沙, 川越 亮, 阿久根 広宣
    2023 年 72 巻 1 号 p. 139-140
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    当科での使用したニチノールステープル(DynaNite® ステープル,Arthrex Japan合同会社)の使用経験について報告する.対象は12例,中央値67(23~95)歳,男女は半数ずつであった.対象疾患と術式は,変形性足関節症に対する足関節固定術 4例,上腕骨遠位部骨折に対する骨接合術 3例,骨盤骨折に対する骨接合術 2例,踵骨隆起骨折に対する再骨接合術・リスフラン関節脱臼骨折に対する脱臼整復術・強剛母趾に対する関節固定術 各1例ずつであった.ニチノールステープルが単独で使用された症例はなく,他のインプラントと併用され補助的に使用されていた.

  • 水田 康平, 當銘 保則, 大城 裕理, 津覇 雄一, 熱海 恵理子, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 141-144
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】近年,ユーイング様肉腫としてBCOR遺伝子異常を伴うBCOR遺伝子異常肉腫が新たな疾患概念として提唱されている.今回,腹壁発生のBCOR遺伝子異常肉腫の1例を経験したので報告する.【症例】症例は27歳,男性.2ヵ月前から左側腹部に腫瘤を認め,徐々に増大したため,近医を受診した.MRIで内腹斜筋内に軟部腫瘍を認め,T1強調像で低信号,T2強調像およびSTIR像で高信号を呈し,腫瘍辺縁はガドリニウムで造影効果を示し,内部壊死が疑われた.切開生検でBCOR遺伝子異常肉腫と診断された.術前化学療法を行ったが,1クール目で腫瘍内出血を伴う増大を認めたため,化学療法を中止し,広範切除術とメッシュを用いて腹壁再建術を行った.術後化学療法を行ったが,COVID-19感染・CVポート感染のため,術後化学療法は継続困難となり,3クールで終了した.術後9ヵ月に肺転移を認め,部分切除術を行った.現在術後10ヵ月,無病生存中である.

  • 岩永 隆太, 三原 惇史, 坂井 孝司, 村松 慶一, 伊原 公一郎
    2023 年 72 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    (はじめに)悪性軟部腫瘍の大きさは局所再発や予後と関連すると言われるが,巨大な腫瘍を対象とした報告は少ない.当院での治療経験を報告する.(対象と方法)2006年から2021年に当院で加療した長径15cm以上の悪性軟部腫瘍16例(巨大群)を対象とした.長径15cm未満の91例を対照群とし,患者背景,病理組織学的診断,手術時間,出血量,皮弁の有無,術後感染,補助療法の有無,切除縁,局所再発,生存率などを比較検討した.(結果)巨大群では切除縁がR1もしくはR2になることが多く(巨大群5/16,対照群7/92),術後放射線療法を選択することが多かった(巨大群9/16,対照群19/92).また局所再発,生存率ともに巨大群が悪化しており,5年生存率は巨大群で60%,対照群で78%だった.(考察と結論)長径15cm以上の巨大な悪性軟部腫瘍は広範切除が困難であり,また術後RTを併用したとしても成績は劣る.切除が最も重要と考える.

  • 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 1 号 p. 150-152
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    [はじめに]当科では,非円形細胞軟部肉腫に対しアドリアマイシンとイホマイドを用いた化学療法(AI療法)を第1選択として治療を行なっている.今回,術前AI療法の治療成績を調査した.[対象と方法]2010年から2021年に術前AI療法を3クール行なった35症例を対象とした.性別,年齢,病理診断,発生部位などを調査した.治療効果判定はRECISTガイドラインに準じて行なった.[結果]症例は,男性23例,女性12例,平均年齢50歳(23-67歳).病理診断は,脂肪肉腫15例(粘液型7例,脱分化型6例,多形型2例),滑膜肉腫4例,平滑筋肉腫,粘液線維肉腫,未分化多形肉腫,紡錘形細胞肉腫各3例,その他4例であった.発生部位は,体幹11例,上肢4例,下肢20例であった.効果判定は,CR 0例,PR 4例,SD 26例,PD 5例であった.[考察]当科において実施した術前AI療法の反応性は不良であった.

  • 井上 三四郎, 中川 亮
    2023 年 72 巻 1 号 p. 153-156
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的稀な神経線維腫症1型(neurofibromatosis以下NF1)とNF2型(以下NF2)を報告する.【症例1】59歳男性.37年前他院でNF1と診断された.左上肢のしびれ,疼痛,脱力を主訴に当科入院,鎖骨下動脈に仮性動脈瘤あり,胸腔に液体が充満し,左肺は虚脱していた.胸腔ドレーン挿入,血管塞栓術,右腋窩動脈―左腋窩動脈バイパス術が行われた.4年後他院でフォローされている.【症例2】42歳男性.21年前に当院皮膚科でNF2と診断された.15年前に当科で頸部脊髄腫瘍に対して手術を行った.その後通院が中断した.2年より難聴が進行,4カ月前より歩行困難となった.診断書の件で当院を受診,既知の聴神経腫瘍や頸部脊髄腫瘍増大の他に新たな胸髄腫瘍も認めた.半年後に誤嚥性肺炎のために死亡した.【考察】NFの問題点として,臓器横断的疾患であることや患者・家族への情報提供が不十分であることが挙げられる.

  • 松浦 充洋, 吉田 史郎, 高田 寛史, 小倉 友介, 平岡 弘二
    2023 年 72 巻 1 号 p. 157-159
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    血管腫はISSVA分類で診断され,外科的切除や硬化療法,薬物療法,圧迫療法など総合的な治療を要する疾患である.手掌部血管腫を外科的切除した1例を経験したので報告する.症例は39歳,男性.10年前より左手掌部に腫瘤性病変を認め経過観察されるも疼痛と痺れが出現し精査加療目的に紹介.手指伸展時に疼痛を認めていた.MRIで屈筋腱を主体にT2強調像で高信号を呈する血管腫を認めた.日常生活に支障をきたし,指神経周囲に存在する腫瘤のため外科的切除の方針とした.腫瘍は葡萄房状を呈しており,腱鞘,指神経,血管束に絡みつく様に発生し,一番太い静脈を同定・結紮し,一塊として摘出した.術後3年経過するも再発は認めていない.血管腫は再発も多く,特に手内発生の神経周囲に存在する症例では治療介入にて症状を改善させるどころか合併症をきたす可能性もあるため症状・部位・範囲を見極め,患者と相談しオーダーメイドに治療していく必要があると考えられた.

  • 古賀 陽一, 樋髙 由久, 元嶋 尉士, 西田 智
    2023 年 72 巻 1 号 p. 160-163
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    手根管内の正中神経から発生した脂肪腫の一例を経験した.71歳,女性.誘因なく正中神経支配領域の痺れと疼痛が出現,症状が9ヶ月持続し当院受診.手根管症候群と診断し,直視下手根管開放術を行った.術中,正中神経橈側に脂肪性病変を認め部分切除を行うも,症状改善せず.後日MRIで正中神経近傍に腫瘍性病変を認め,症状残存の原因の可能性があると判断し,再手術を行った.正中神経橈側に黄色の脂肪性病変を認め,正中神経を尺側に大きく圧排していた.腫瘍を正中神経から剥離し,全摘出を行った.腫瘍は神経上膜下から発生し,サイズは15mm×10mm×9mmで,病理結果は脂肪腫であった.術後,徐々に痺れと疼痛は改善した.腫瘍は神経内に発症しており,intraneural lipomaと考えられた.手根管内の正中神経から脂肪腫が発生することは稀であるが,手根管症候群の原因となる可能性があるので注意が必要である.

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