整形外科と災害外科
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71 巻, 2 号
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  • 長谷川 晃大, 飯田 圭一郎, 幸 博和, 松下 昌史, 川口 謙一, 松本 嘉寛, 中島 康晴
    2022 年 71 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】成人脊柱変形手術はQOLの改善をもたらし保存療法より有効とされるが,高い合併症発生率は問題となっている.当院における成人脊柱変形手術の術後経過を調査し,問題点を検討した.【対象と方法】40歳以上,5椎間以上の固定術を行った成人脊柱変形手術30例を対象とした.インプラント関連合併症と周術期合併症について調査を行った.【結果】患者背景は平均年齢61.2歳,男性5例,女性25例,平均固定椎体8.7,二期的手術8例,骨切り併用7例であった.合併症はインプラント関連40%,周術期37%に認め,再手術率は40%であった.65歳以上の高齢者ではインプラント関連60%,周術期53%と若年者と比較し合併症発生率が高かった.【考察】高齢者ではインプラント関連,周術期ともに合併症は50%を超えており,手術適応を慎重に検討する必要があると思われた.

  • 安元 慧大朗, 土井 俊郎, 藤澤 徳仁, 上妻 隆太郎, 前田 向陽, 福徳 款章, 高野 祐護, 岡野 博史, 田中 孝幸, 有馬 準一
    2022 年 71 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】骨Paget病は本邦においては非常に稀な骨代謝性疾患であり,Paget病罹患骨に対して手術を行った報告は少ない.今回,L4病的骨折に伴う腰部脊柱管狭窄症に対して,椎弓切除術を施行した骨Paget病の一例を報告する.【臨床経過】28歳女性.主訴は腰痛,両下肢痛.近医でL4圧潰を指摘,骨腫瘍による病的骨折を疑われ,当科にて椎体生検を施行した.骨性ALP高値,画像所見,病理所見,家族歴より骨Paget病と診断.保存的加療を行うも下肢痛遷延,筋力低下出現あり,L4病的骨折に伴う腰部脊柱管狭窄症と診断し,L3-4椎弓切除術を施行した.術後,腰痛・下肢痛は軽快した.【考察】本症例は28歳と若年でL4圧潰を来すなど病勢進行が早く,また家族性を伴っていることも本邦発生の骨Paget病としては非典型的である.術中所見として椎弓皮質骨の菲薄化が認められ,脊椎手術の際に留意すべき所見であると考えた.

  • 眞田 雅人, 河村 一郎, 冨永 博之, 八尋 雄平, 徳本 寛人, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    はじめに:後縦靱帯骨化症(OPLL)の好発年齢は50歳代と報告されているが1),若年発症の因子は未だ不明である.今回,多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を合併した若年発症OPLL症例を報告する.症例:33歳の女性.13歳時にPCOSと診断されている.26歳時に右下肢痛,痺れ認め,他院にて腰椎椎間板ヘルニアの診断で手術施行するも症状持続.さらに増悪傾向となり,当科紹介受診.腰椎OPLLを認め,手術を施行された.考察:前回手術から7年の経過画像を振り返ると,本症例は前回腰椎椎間板ヘルニアと診断された高位における後縦靱帯の著明な骨化伸展を認めており,20歳代でOPLLが既に顕在化していたと考えられる.若年発症OPLLは高度肥満やインスリン異常が関与しているとの報告があり,本症例はPCOSと高インスリン血症を認め,代謝異常がOPLL若年発症に関与している可能性が示唆される1例であった.

  • 当真 孝, 山口 浩, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 比嘉 浩太郎, 上原 史成, 東 千夏, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】上腕骨大結節骨折は転位が小さい例では保存療法での関節可動域(以下ROM)は良好だが,転位が大きいと腱板機能不全やインピンジによりROMが不良となる.本研究では上腕骨大結節骨折に対し保存療法を行った例の大結節転位の距離,肩関節ROMを調査した.【対象と方法】対象は上腕骨大結節骨折に対し保存療法を行い6カ月以上経過観察が可能であった34例34肩.性別は男性15肩,女性19肩.受傷時平均年齢は63.3歳.平均経過観察期間は16カ月.最終観察時ROM(屈曲,外旋,内旋:JOAスコアを用いて点数化),単純X線を用いて大結節上方転位を計測し,転位距離を3群(5 mm未満/5-10 mm/10 mm以上)に分けてそれぞれのROMを統計学的に検討した.【結果】全体のROMは屈曲137°,外旋50°,内旋4.7点.転位群の内訳は5 mm未満群16肩,5-10 mm群7肩,10 mm以上群11肩.転位群別ROMは屈曲(5 mm未満/5-10 mm/10 mm以上)(143/148/120°),外旋(49/66/42°),内旋(4.8/5.4/4.2点)で,10 mm≦で屈曲,外旋が不良であった.【結語】10 mm以上転位群でROMが不良な傾向であった.

  • 橋本 雄太, 山口 浩, 当真 孝, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】上腕骨近位端骨折(以下PHF)の続発症・合併症の1つに骨頭壊死がある.今回,骨頭壊死(ON)のリスクが高いPHFに対して髄内釘を用いた骨接合術を行い,術後ONを認めたが再手術を行うことなく経過している3例を報告する.【症例1】68歳女性.階段を踏み外しPHF(Neer分類4-part/山根分類type 1B)を受傷し骨接合術を施行した.術後経過観察中の単純XpにてON(Cruess分類stageⅣ)を認めた.術後8年7カ月肩関節可動域(ROM)は屈曲115度,外旋0度,内旋不可であった.【症例2】56歳女性.脚立より落下しPHF(4-part/type 1B)を受傷し骨接合術を施行した.術後経過観察中の単純XpにてON(stageⅣ)を認めた.術後6年6カ月ROMは屈曲120度,外旋60度,内旋L2であった.【症例3】55歳女性.側溝に落ちPHF(3-part/type 3)を受傷し骨接合術を施行した.術後経過観察中の単純XpにてON(stageⅢ)を認めた.術後4年3ヵ月ROMは屈曲150度,外旋40度,内旋L3であった.【結語】術後ON発症例でも,比較的ROMは保たれていた.

  • 中川 航, 松浦 恒明, 進 訓央, 兼川 雄次, 溝口 孝, 加峯 亮佑
    2022 年 71 巻 2 号 p. 187-189
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】近年髄内釘を用いた上腕骨近位端骨折に対する骨接合術について良好な成績の報告が散見される.当院で経験した髄内釘を用いた骨接合術の治療成績について考察を交え報告する.【対象】2019年1月から2020年12月までに当院で手術を行った上腕骨近位端骨折25肩のうち,髄内釘を用いて骨接合を行い,術後3ヶ月以上経過観察が可能であった18肩とした.年齢は平均77.3歳,経過観察期間は平均4.9ヶ月であった.調査項目はNeer分類,AO/OTA分類,合併症,骨癒合率,骨頭壊死の有無,肩関節可動域とした.【結果】Neer分類では2 part:9肩,3 part:9肩,4 part:0肩であった.1肩で偽関節となり,17肩で骨癒合が得られた.骨頭壊死の発生は認めなかった.【結語】諸家の報告と同様に,短期ではあるが概ね良好な成績であった.

  • 蛯原 宗大, 坂本 悠磨, 佐々木 大, 二之宮 謙一, 合志 光平, 牟田口 滋, 山本 俊策
    2022 年 71 巻 2 号 p. 190-192
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】上腕骨顆上突起は上腕骨遠位部に発生する稀な骨性の突起である.今回,尺骨神経刺激症状を呈した上腕骨顆上突起の1例を経験した.【症例】58歳女性.特に誘引なく右肘周囲の疼痛を自覚し初診.上腕骨内側遠位部に圧痛・叩打痛があり,前腕・手指尺側への放散痛を認めた.画像検査にて上腕骨顆上突起と診断した.保存治療を行うも症状改善せず,初診から5ヶ月半後に突起部切除を施行した.突起に付着するStruthers靭帯により尺骨神経が軽度絞扼されており,術後速やかに放散痛は消失した.病理組織所見において軟骨成分は認めなかった.【考察】上腕骨顆上突起は日本人での頻度は0.3%と報告されており,通常は無症状だが,神経血管症状を呈する場合もある.本症例のように保存治療に抵抗性の場合,手術による突起部切除が有効であると考えられた.

  • 吉川 誉士郎, 大久保 宏貴, 大中 敬子, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    36歳女性,10歳時に右橈骨遠位部骨折に対して保存的に加療された.中学生時,部活動中に右手関節痛を自覚し,30歳時から日常生活時の右手関節尺側部痛が出現した.手関節痛が増悪,安静時痛が出現したため当科を紹介された.初診時手関節尺側部痛と手関節可動域制限を認めた.単純X線像でulnar variance+9.3 mmと著明な尺骨頭高位変位と遠位橈尺関節部の骨棘形成を認め,尺骨頭は手根骨と関節様形態を呈していた.MRI T2強調像で三角線維軟骨複合体の描出は不明瞭であった.橈骨骨端線早期閉鎖による尺骨突き上げ症候群・変形性手関節症の診断で遠位橈尺関節部骨棘切除,尺骨短縮骨切り術,三角線維軟骨複合体再建術を行った.術後1年6か月で前腕回旋時の手関節痛・轢音は消失した.手関節機能は改善,手関節可動域も改善がみられ,尺骨頭の安定化も得られており,原職の保育士に復帰している.

  • 南 公人, 吉田 健治, 白石 絵里子, 井上 貴司, 中村 英智, 森松 稔, 志波 直人
    2022 年 71 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】反復作業による長母指伸筋腱皮下断裂は比較的に稀である.今回その1例を経験したので報告する.【症例】70歳,男性.無職.左利き.現役時は30年間,ボーリング作業に従事していた.掃き掃除中に軽い疼痛を感じて左母指の伸展が出来なくなり発症9日目に当科を受診した.左母指IP関節伸展不能,母指の引き上げ動作不能であった.X線所見は軽度の変形性手関節症を呈していた.長母指伸筋腱皮下断裂の診断で発症後27日目に手術を行った.固有示指伸筋腱を長母指伸筋腱へ移行した.切除した腱断端の組織学的所見は腱鞘滑膜の慢性炎症を呈していた.術後10か月,母指の伸展,引き上げは良好で日常生活に支障はない.【考察】橈骨遠位端骨折や関節リウマチに続発する長母指伸筋腱皮下断裂はしばしばみられるが,反復作業による断裂は比較的に稀である.【結語】反復作業により生じた長母指伸筋腱皮下断裂の1例を経験したので報告した.

  • 石川 千夏, 石河 利之, 小川 光, 村田 大, 仲西 知憲, 小島 哲夫
    2022 年 71 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    母指CM関節症に対する,第1中手骨外転伸展骨切り術の治療成績を報告する.対象は2017年12月~2020年3月の16例16手,男性3例3手,女性13例13手,平均50.6歳,Eaton分類stageⅠ;5手,Ⅱ;7手,Ⅲ;4手,Ⅳ;0手であった.平均観察期間は12カ月であり,評価項目は可動域,VAS,DASH,握力(健側比),pulp pinch力(健側比)とした.全例骨癒合を認め,可動域は掌側外転では41から44.3°へ,橈側外転では34.7から39.8°へ,VASは安静時34.4から6.5 mm,運動時70.6から34.4mmへ,DASHは47.2から15.4点へ,いずれも改善した.また術後の握力は健側比91.6%,pulp pinchは健側比78.3%であった.今回の治療成績は諸家の報告と同様であった.StageⅣへの進行は1例のみ認めたが,関節形成術を追加して経過良好となった.関節を温存でき,比較的手術手技が容易であることや,隣接関節への悪影響が少ないことからも,第1中手骨骨切り術は選択しやすい手術的治療であると考えられた.

  • 井上 三四郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【背景】大腿骨近位部骨折患者においてASA PSを判定する際に,不一致症例は34.8%(38/109)存在し,そのうち92.1%(35/38)はASA PSⅡもしくはⅢで判断が異なることを著者は報告した2).【目的】ASA PSがⅡかⅢかで判断に迷う症例をⅢと判定する整形外科内でのマイナールールがASA PS評価に与える影響を検討すること.【対象と方法】大腿骨近位部骨折を受傷した模擬患者10例を作成し,20人の検者にASA PSの分類を判定してもらった.次に,マイナールールを呈示後に再度判定をしてもらった.これらをASA PSⅡまでを当科麻酔対象の低リスク群,ASA PSⅢ以上を全身麻酔対象の高リスク群と定義し,2群のいずれか群に割り振り,McNemar検定を行った.【結果】3例では回答は有意に変化して,そのうち1例では多数派が入れ替わった.【考察】マイナールールはASA PSの判定に少なからぬ影響を与えた.

  • 翁長 正道, 仲宗根 哲, 石原 昌人, 平良 啓之, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】61歳女性.幼少期に右先天性股関節脱臼に対して骨盤骨切り術を施行.1年前より右股関節痛が増悪し近医より当院紹介され,Crowe 3の脱臼性股関節症と診断した.人工股関節置換術(THA)を計画したが,原臼蓋は低形成であり上方に二次臼蓋を形成していた.3次元術前計画ソフト(ZedHip®)で術前計画を行い,3Dプリンターで実物大の骨盤立体模型を作製し,術前シミュレーションを行った.術中も立体模型を滅菌し,手元で確認しながら寛骨臼リーミングを行った.術後CTでカップの設置角誤差は外方開角0.1°,前方開角1.1°,設置位置誤差はそれぞれ内外2.1 mm,前後0.2 mm,上下0.8 mmであった.【考察】高度な股関節変形を伴うTHAに対して骨盤立体模型で術前シミュレーションすることにより術中にランドマークやリーミングの位置,方向を確認でき,正確なカップ設置が可能であった.実物大立体模型による術前シミュレーションは有用と思われた.

  • 中川 皓一朗, 相良 学, 日髙 信道, 島内 誠一郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】一過性大腿骨頭萎縮症(以下TOH)は,誘因なく股関節痛が出現し数ヶ月で自然軽快する原因不明の疾患で,主として中年男性や妊娠後期の女性に発症する.今回我々は一度の妊娠期間中に左右連続してTOHを発症した症例を経験したので報告する.【症例】31歳女性.妊娠23週頃より右股関節痛が出現.徐々に増悪し,妊娠27週頃体動困難となった.単純X線像で右大腿骨頭の萎縮,MRIでは大腿骨頭から転子部にかけてT1強調で低信号,STIRで高信号域を認め右TOHの診断で免荷療法開始.妊娠34週で疼痛改善し,単純X線像では骨頭萎縮の改善を認め,荷重開始.妊娠37週頃から左股関節痛が出現し,単純X線像で左大腿骨頭の萎縮,MRIは股関節と同様の所見を認めた.左TOHと診断し,免荷療法を再開.妊娠39週4日で出産.出産後1ヶ月で疼痛軽快し退院となった.【まとめ】同一妊娠期間に左右連続して発症した稀なTOHを経験した.

  • 吉光 一浩, 大作 明広, 諫山 輝刀, 樋口 富士男, 志波 直人
    2022 年 71 巻 2 号 p. 217-219
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術(THA)の際,自己血を400 mL採血困難な症例で200 mLではなく300mL採血しており,この有用性について検討した.【方法】当院で2016年6月から2018年5月までに施行したTHAのうち貯血式自己血輸血を行った109例を対象とし貯血量別に比較検討した.【結果】自己血200 mL群は,77.1歳,体重49.8 Kg,自己血前Hb 12.4 g/dL,術後7日Hb 10.7 g/dL,貯血量は循環血液量の7.0%.300 mL群は,70.6歳,体重44.5 Kg,自己血前Hb 12.8 g/dL,術後7日Hb 11.4 g/dL,貯血量は循環血液量の10.5%.400 mL群は,63.9歳,体重61.7 Kg,自己血前Hb 13.7 g/dL,術後7日Hb 11.8 g/dL,貯血量は循環血液量の11.2% であった.【考察】自己血を400 mL採血できない場合の300 mL採血は術後のHb低下を少なく抑えられ有用である.

  • 山城 正一郎, 高江洲 美香, 宮田 佳英, 仲宗根 哲, 石原 昌人, 翁長 正道, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 220-223
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    71歳,男性.小児期に右化膿性股関節炎の手術歴があり,6年前に右変形性股関節症に対して他院で短縮骨切り併用THAを施行され,術後左下肢の4 cm肢長差が生じた.今回Crowe typeⅠ左変形性股関節症に対して大腿骨短縮骨切り併用THAを施行した.手術は側臥位後方アプローチで行った.大腿骨は逆V字で4 cmの短縮骨切りを行い,セメントステムを用いて固定した.切除骨は骨切り部にポリエチレンケーブルで固定した.また,カップ設置の際,寛骨臼骨折を合併し術後4日目でカップの転位を認めたため,10日目にAnti-protrusio cageを用いてカップ再置換術を行った.術後下肢長差は0.6 cmまで改善した.術後8週から部分荷重を開始,14週で全荷重を許可し,術後16週にT字杖歩行で退院した.術後7か月で膝伸展不全は消失した.現在術後7年でインプラントの緩みは認めず,疼痛なく杖歩行可能である.

  • ―何故?日本に二次性変形性股関節症が多いのか―
    樋口 富士男, 吉光 一浩, 田中 康嗣, 田中 順子, 荻野 美佐
    2022 年 71 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    我が国は,二次性変形性股関節症が多い.従来,乳児期の股関節脱臼がその原因と考えられていたが,乳児期の股関節脱臼が激減したにも拘らず,未だに二次性変形性股関節症が多いので,その理由を人工股関節施行例から検討した.2018年10月から実施した人工股関節158例のうち,寛骨臼形成不全を呈した106例を対象とした.成長期のスポーツ歴を採取し,立位の骨盤側面像を加えて検討した.乳児期に股関節脱臼の既往があるものを脱臼群,既往がなく大腿骨側の変形が少なく両側の同程度の寛骨臼形成不全を呈するものを成長期群とし,骨盤後傾があるものを骨盤後傾群とした.脱臼群は43例,成長群は33例,骨盤後傾群は21例で,残り9例はいずれにも該当しなかった.成長期群でスポーツ歴があるのは27例であった.成長期のスポーツと高齢期の骨盤後傾が,寛骨臼形成不全の誘因となり,これらが加わり二次性変形性股関節症が多いと考えられた.

  • 横手 龍一郎, 白石 浩一, 渡邊 伸彦, 城石 達光, 武田 研, 西島 毅志, 安永 博
    2022 年 71 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【背景】Medial pivot型TKA(GMK sphere)では完全伸展が得られない症例が散見されるため,その形状と伸展制限の関連を疑い調査したので報告する.【対象】2018年7月~2020年2月にMedial pivot型TKAを施行した86例中,1年以上経過観察可能であった82例101膝を対象とした.【方法】術前後の膝可動域,posterior condylar offset,伸展位での術前後の大腿骨・脛骨間前後位置の比較を行った.【結果】膝可動域(伸展/屈曲)は術前-8.8°±5.4/122.4°±13.9が術後12ヶ月で-1.3°±2.6/127.2°±11.3と改善した.posterior condylar offsetは術前27.8 mmが術後29.1 mmと増加した.大腿骨・脛骨間前後位置は術前-1.29 mmに対して,術後+10.4 mmと後方に位置していた.伸展制限が3°以上の症例は22膝(21.8%)で認められたが,posterior condylar offset,大腿骨・脛骨間前後位置の増加とも関連はなかった.【結論】Medial pivot型TKAでは術後大腿骨が脛骨に比べ後方に位置するが,術後の伸展制限との関連はない.

  • 廣瀬 良太, 諸岡 孝明, 押領司 将人, 石川 貴晴, 木村 岳弘, 後藤 久貴
    2022 年 71 巻 2 号 p. 234-238
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】内側開大式粗面下脛骨骨切り術(DTO)は,術後の膝蓋骨低位や膝蓋大腿関節の変性をきたしにくいと報告されている.【対象と方法】通常の内側楔状開大式高位脛骨骨切り術(PTO)とDTOの症例について,年齢,骨切り前および抜釘後の単純レントゲンによる膝蓋骨の高さ(Caton-Deschamps index;CDI)の変化および骨切り時および抜釘時の関節鏡視による膝蓋大腿関節の膝蓋骨と大腿骨膝蓋骨溝のICRS(International Cartilage Research Society)分類の変化,術前後の膝屈曲および伸展角度の変化について比較検討した.【結果】CDIに関して,骨切り前(p=0.81)はPTO群とDTO群において有意差を認めなかったが,抜釘時(p=0.001)および変化率(p=0.0004)では有意にPTO群でCDIが低く,関節鏡視所見では,DTO群で悪化する例が少なかった.また,DTO群で有意に術後の膝屈曲角度が改善した.【結語】DTOは膝蓋大腿関節軟骨に対する影響が小さく,膝屈曲角度を改善させうる.

  • 矢部 恵士, 城野 修, 吉兼 浩一, 大江 健次郎, 岩田 真一郎, 西井 章裕
    2022 年 71 巻 2 号 p. 239-241
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】TKA後の膝蓋骨骨折は治療に難渋する.今回TKA後の膝蓋骨骨折に対し追加手術を行わずに患者満足度の高かった1例を経験したので報告する.【症例】80歳女性.FTA 206度の高度変形RA膝に対してPS-TKAを施行した.術後2週の単純X線写真にてインプラント周囲膝蓋骨骨折(Ortiguera and Berry分類TypeⅡ)を認めた.Tension-band wiringによる骨接合術を検討したが骨癒合率は高くないこと,入院治療期間が延長することより追加手術は希望されず術後3週で自宅退院された.術後3ヵ月で一本杖歩行安定しており可動域伸展0度屈曲110度(術前0度,72度),伸展lag 20度,伸展筋力110 N(非手術側184 N),TUG 12.7秒(術前19.8秒),Pain Catastrophizing Scale 5点(術前20点)であり患者満足度は高かった.【考察】TKA術後の膝蓋骨骨折は骨癒合率が低く合併症率が高いとされている.また入院が長期化することにより患者には時間的金銭的負担や精神的ストレスがかかるため,追加手術をしない選択肢も考慮すべきである.

  • 岡本 渉大, 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 中添 悠介, 千葉 恒, 樋口 尚浩, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 2 号 p. 242-246
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院で経験したDFOにOWHTOを併用した症例(DLO群)とTCVOを併用した症例(DFOTO群)とで比較検討を行なったので報告する.【対象と方法】2015年から2019年までにDLOまたはDFOTOを施行した17例20膝を対象とし,術前および最終経過観察時のX線計測値,膝関節可動域,JOA score,KOOSを評価した.【結果】膝関節可動域は,DLO群がDFOTO群と比較して術前伸展制限が大きい傾向にあったが有意差はなかった.術後の伸展可動域はDLO群が-5.5°,DFOTO群が-1.6°であり,伸展制限はDLO群が有意に大きかった.両術式間で術前後のX線計測値と臨床スコアに有意差はなかった.DFOTO群において術後%MAとKOOSのPainやSymptomsとの間に相関係数がそれぞれ0.66および0.72の正の相関を,ΔJLCAとKOOSのSymptomsとの間に相関係数-0.75の負の相関を認めた.【結語】DLO群とDFOTO群とで臨床スコアやX線計測値に有意差はなかった.DFOTO群において術後%MAやΔJLCAと臨床スコアの間に相関を認めた.

  • 鈴木 真由佳, 千住 隆博, 伊東 孝浩, 柳田 隆宏, 田代 英慈, 上田 幸輝, 内村 大輝, 水城 安尋
    2022 年 71 巻 2 号 p. 247-249
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】80歳女性,TKA術後1年7ヶ月.深部静脈血栓症に対してアピキサバン内服中であった.降車の際に大腿部痛を認めた後,左大腿内側の広範囲な皮下血腫,疼痛が出現し当院を受診.MRIでは中間広筋内に5×15 cmの血腫を認め,筋挫傷の診断で入院・安静加療を開始した.しかし症状は改善せず,34日後の造影CTにて膝関節内にも血腫の貯留が疑われたため,抗凝固薬を中止した.その後も腫脹の持続,関節可動域の低下が見られたため,鏡視下血腫除去術を施行.60 gの血腫を摘出するも,明らかな出血源は認めなかった.術後,症状は改善し歩行可能となり60日目で自宅退院とした.【考察】関節内血腫は滑膜増殖など関節内因子による報告が多い.本症例では関節内に明らかな出血源を認めず,中間広筋内血腫が膝関節内に波及した可能性が考えられ,TKA術後は関節近傍の血腫が関節内血腫の要因になりうることが示唆された.

  • 吉村 優里奈, 伊藤 仁, 岡元 信和, 舛田 哲朗, 久永 哲, 宮本 健史
    2022 年 71 巻 2 号 p. 250-254
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【症例】49歳男性.両膝の疼痛と水腫が出現したため近医を受診し,MRIで腫瘍性病変を疑われ当院に紹介となった.単純X線では両側の大腿骨外顆に骨びらんを認め,CTでは膝蓋上嚢外側に高吸収病変を認めた.造影MRIでは同部位にT1W1で低信号,T2W1で低~高信号の混在,T1造影で造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた.採血では尿酸値11.7 mg/dlと高尿酸血症を認めた.痛風結節と診断し尿酸降下薬による加療を開始した.尿酸値は改善したが,経過中に可動域制限が出現したため外科的切除を行った.病理結果は痛風結節であった.術後は疼痛,可動域共に改善し症状の再燃は認めていない.【考察】痛風結節の膝発生は約4%と稀であり,両膝発生の報告は渉猟した限り5例のみであった.腫瘍との鑑別が問題となるが,CTが鑑別の一助となる.痛風結節の治療は血清尿酸値のコントロールが基本だが,本症例のように可動域制限などの機能障害を認める症例には外科的治療が有用である.

  • 内田 研, 丸井 研吾, 阿部 知佳
    2022 年 71 巻 2 号 p. 255-257
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨遠位端部の骨切りは骨髄内ガイドを用いるのが一般的であるが,人工股関節置換術後等,弯曲が強い症例等では使用が困難な場合がある.今回Simple GuideⅡ system(SガイドⅡ)に大腿骨側の骨髄外ガイド・ポータブルナビゲーションのKnee AlignⅡを用い,良好な術後アライメントを得たので報告する.【対象・方法】2013年4月~2018年2月迄207膝にSガイドⅡ,2018年8月~2020年6月迄158膝にKnee AlignⅡを用いて人工膝関節置換術を施行した.【結果】SガイドⅡ:冠状面設置角度 平均88.4°,±3°以内平均89.1°±1.4°,Knee AlignⅡ:平均89.1°,±3°以内平均89.4°±1.4°,CT計測(LEXI):平均89.4°,±3°以内平均89.7°±1.4°であり,良好な骨切りが得られた.【考察】SガイドⅡ・Knee AlignⅡを使用した他施設の結果と同様に良好な結果が得られ,双方の計測値に有意差を認めなかった.ともに正確な骨切りが可能と考えられた.

  • 林田 一公, 二見 俊人, 吉川 英一郎, 村上 秀孝, 志波 直人
    2022 年 71 巻 2 号 p. 258-260
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    人工膝関節置換術(以下,TKR)術後22年が経過して,脛骨コンポーネントの破損を認め,再置換術を行った1例を経験した.症例は91歳女性,誘因なく,右膝関節の疼痛と変形が生じ,当科を受診した.単純X線,CT検査でTKRの脛骨コンポーネントの破損を認めた.術中,ポリエチレンインサートは内側の摩耗が強く,脛骨コンポーネントは中央で破断していた.脛骨コンポーネントの内側にはBone ingrowthを認めず,内側のみ緩みが生じ破断したと考えられた.大腿骨コンポーネントには緩みは認めず,脛骨コンポーネントの再置換のみを行った.術後4週間,屈曲60度までの可動域訓練,平行棒内起立訓練を行い,術後4週以降,制限なく可動域訓練,歩行訓練を行った.術後2ヶ月で,可動域屈曲120度を獲得し独歩可能となった.

  • 日浦 健, 小野 哲生, 廣田 康宏
    2022 年 71 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,比較的稀な前脛骨筋腱皮下断裂の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性,1ヶ月前から特に誘引なく右足関節の腫脹と歩行困難が出現.近医受診し利尿薬内服で経過観察となるも症状改善せず当科受診となった.初診時所見では右足関節前面の腫脹と前脛骨筋腱レリーフの消失,足関節背屈の著明な筋力低下を認めた.エコー所見で右前脛骨筋腱の皮下断裂を認め,MRIでも同様の所見を認めた.前脛骨筋腱皮下断裂の診断で,脊椎麻酔下に手術を行った.前脛骨筋腱の走行に沿った斜切開でアプローチし,上下伸筋支帯を切開し,断裂腱の近位端を露出した.遠位端は同定困難であった.自家膝蓋靭帯(以下BTB)を採取し再建術を行った.近位端とBTBをinterlacing sutureで縫合し,舟状骨内側に2本のアンカーを挿入してBTBの脛骨部を縫着した.術後は大腿部中央部からMTP関節までのギプス固定を4週間行い,5週目からROM訓練,7週目から部分荷重訓練を開始した.JSSF Ankle scoreは術前68点が術後12ヶ月では100点まで改善した.

  • 神村 直人, 松本 康二郎, 小田 浩司, 島田 佳宏, 森 俊陽
    2022 年 71 巻 2 号 p. 267-269
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    今回,我々は大腿切断後の切断肢に生じた大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行した症例を経験した.症例は76歳男性.幼少時の熱傷後遺症のため,25歳時に右大腿切断されていた.義足装着し,歩行器のロックをかけ忘れたまま立ち上がり転倒して受傷.右大腿骨頚部骨折(Garden分類:stageⅣ)と診断し,入院7日目に側臥位側方アプローチにて人工骨頭置換術を行った.術後2週間義足を使用せず創傷治癒期間を設けたのち,義足歩行を開始した.術後約1ヶ月で義足+片松葉杖歩行自立し,約2ヶ月で自宅退院となった.大腿骨切断後の切断肢に生じた大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行した症例の報告は稀である.今回我々はそのような症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • ―運動器疾患リハ中に発症した急性疾患患者の検討―
    西村 博行, 浦上 泰成
    2022 年 71 巻 2 号 p. 270-275
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    回復期リハ中に,急性期病院への転院を必要とする急性疾患が生じることがある.今回,我々は,運動器疾患に対する回復期リハ中に発症した急性疾患患者の急性期病院への転院に際しての病病連携を検討した.平成25年から令和1年に,当院回復期リハ病棟に入院した運動器疾患患者で,入院中に発症した急性疾患の治療のため転院した患者121名を対象とした.運動器疾患が23名,運動器以外の内科および外科疾患が98名であった.急性疾患患者の転院に際して,紹介元病院への転院が困難な場合,別の病院に急性疾患患者を受け入れてもらい,転院が必要な患者はすべて急性期病院へ転院することができた.更に,転院先病院の所在地を検討すると,当院近隣の病院が大部分で,すべての患者は当院の二次医療圏の中で,転院することができ,二次医療圏を超えた遠隔転院を行う必要はなかった.回復期リハから急性期病院への病病連携はスムーズに行われていた.

  • 井上 三四郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 276-280
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    (目的)整形外科病棟の在院死亡の特徴を調査すること.(対象)約15年間に整形外科医が主治医として死亡した患者は58例であり(転科後に死亡した症例は含まず),これは同時期の入院患者の0.45%に相当した.年齢や死因などを調査し,対照群を設定して統計学的検討を加えた.(結果)平均年齢80.1±11.8歳(36~101)であり,65歳以上の高齢者が89.7%(52/58)を占めた.男性31例女性27例,外傷症例は35例であり,非外傷例は23例であった.CCIは平均3.1±2.6(0~11)であった.入院時病名は,大腿骨骨折25例(うち近位部19例)が最多で,四肢壊死・壊疽10例,脊椎骨折・脊髄損傷7例と続いた.死因は,呼吸器疾患17例(うち誤嚥性肺炎11例)が最多で,敗血症8例,心疾患7例と続いた.入院時病名と死因が直接関係した症例は14例に留まった.単変量解析と多変量解析で,年齢,CCI,治療法に有意差を認めた.(考察)我が国の整形外科病棟には,orthogeriatric careを行う医師が求められている.

  • 渋田 祐太朗, 田嶋 光, 倉 明彦, 入江 弘基, 沼田 有生, 小笠原 正宣
    2022 年 71 巻 2 号 p. 281-283
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    遠位上腕二頭筋腱付着部断裂は労働者で疼痛と筋力低下が問題となり,元職復帰には修復術が必要となる.当院での手術例を検討する.対象は2001年11月から2020年7月の11肢11例を検討した.年齢は平均49.3才(43~66才),男9例女2例,右6肢左5肢,受傷機転については1例のみ高エネルギー外傷と考えられたが,他は軽微な外力,もしくは本人が自覚できない程度だった.手術例は9肢で全例金属アンカーによる固定(Mitec G Ⅱ7肢,Cork screw 2肢),2例は保存的加療を行った.術後運動訓練は術中の縫合時の腱緊張に従い1週から2週で伸展制限下に開始し,平均6週で外固定離脱とした.全例再断裂なく,良好な肘屈曲力と元職に復帰した.本症例は開放性腱損傷とは異なり,橈骨二頭筋結節での剥脱であり,確実な骨組織への腱固定の上で一部遺残腱組織,瘢痕化した周囲組織を利用しての縫着となり,症例ごとに断裂状況を確認しての修復術が必要である.

  • 呉屋 五十八, 山口 浩, 当真 孝, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 2 号 p. 284-288
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】陳旧性肩関節前方脱臼は治療に難渋する疾患である.今回保存療法を選択した症例の成績を調査した.【対象】肩関節前方脱臼の状態で3週以上経過していた6例(男性1例,女性5例)を対象とした.受傷時または脱臼発見時年齢は平均78.3歳(67~93歳),脱臼継続期間は平均26.5ヵ月(13~53ヵ月)であった.調査項目は,陳旧性肩関節前方脱臼に至った原因,保存療法の選択理由,最終経過観察時のJOAスコアおよび肩関節可動域とした.【結果】陳旧性脱臼の原因は,医療機関への受診遅れ4例,整復処置後の受診なし2例,保存療法の選択理由は,高齢のためが1例,既往症のためが5例であった.最終経過観察時の平均肩関節可動域は屈曲96.7°,外旋-8.3°,内旋1.3点,JOAスコア43.3点(疼痛スコア20.8点)であった.【まとめ】高齢者の陳旧性肩関節前方脱臼に対する保存療法は,ADLは比較的保たれることが多く,疼痛が落ち着いていれば保存療法も選択肢の一つである.

  • 白本 明大, 下河邉 久雄, 田原 尚直, 志波 直人
    2022 年 71 巻 2 号 p. 289-292
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    画像検査で診断できなかった肩関節滑膜軟骨腫の症例を経験したので報告する.症例は62歳男性.誘引なく左肩痛が出現し,半年間改善ないため当院を受診した.初診時は可動域制限,インピンジメント症状を強く認めた.X線,単純CT検査では明らかな所見はなく,超音波,MRI検査では腱板損傷を疑う所見を認めた.保存治療も無効であったため関節鏡手術を行った.鏡視では棘上筋の滑液包面損傷を認めたが,完全断裂は認めなかった.術中に棘上筋筋膜上に軟骨様の5 mm大の腫瘍病変2つ認め,肩峰下で嵌頓しており摘出した.病理検査では滑膜間質に硝子軟骨の増生を認め滑膜骨軟骨腫症の診断となった.術後3日で疼痛も消失し,屈曲150°以上可能となった.画像検査で診断が困難であった滑膜骨軟骨腫症に対して,短期ではあるが良好な術後成績を得ることができた.

  • 都甲 渓, 丸山 和典, 石塚 光太郎, 大城 朋之
    2022 年 71 巻 2 号 p. 293-296
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    母趾基節骨骨折後に第1趾間に発症したMorton病の稀な1例を経験した為報告する.症例は41歳男性.21ヵ月前に左母趾基節骨骨折を受傷し,他院で保存的治療を受けた.骨折完治後より荷重時の母趾底外側の痺れが徐々に増悪した為当院受診.診察ではMulder click陽性,MRI検査では第1趾間にT1・T2強調像で低信号の腫瘤性病変がみられた.Morton病と診断し,底側アプローチでの神経摘出術を施行した.術後6ヵ月でSAFE-Qスコア全項目100点,JSSFスケール100点と良好に経過している.本症例は母趾基節骨骨折後の変形癒合による趾間の狭小化や,炎症・癒着の影響で発症したと考えられた.趾神経の背側に種子骨複合体が存在する第1趾間では,底側アプローチによる手術が背側アプローチと比較し低侵襲であり適していると考える.

  • 笠原 峻, 西野 雄一朗, 前田 純一郎, 朝長 匡
    2022 年 71 巻 2 号 p. 297-300
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/05/06
    ジャーナル フリー

    【はじめに】鎖骨遠位端骨折は,治療に難渋することが少なくない骨折である.当院にて同骨折に対しZip Tight AC Joint®(Zimmer-Biomet社)を用いた烏口鎖骨靭帯(CCL)再建による骨接合術を行い,比較的良好な結果を得られたため報告する.【対象】2019年2月~2021年7月当院にてCCL再建を用いて骨接合を実施した鎖骨遠位端骨折7例とした.骨折型は,Craig・田久保分類TypeⅡb:3例,TypeⅤ:3例,TypeⅥ:1例であった.手術は全例直視下に行い,骨接合方法はCCL再建のみ1例,ロッキングプレートを併用したものが4例,テンションバンドワイヤリングを併用したものが2例であった.【結果】5例で骨癒合が得られ2例が偽関節となったが,すべての症例で疼痛なく良好な可動域を獲得できた.【考察】偽関節の原因はCCL再建のみの固定やロッキングプレートの破綻による固定性不足が考えられ,良好な骨癒合のためにはCCL再建に加えて骨接合術の併用が必要である可能性が示された.

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