整形外科と災害外科
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71 巻, 4 号
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  • 笹岡 眞光, 岡田 龍哉, 渡邉 弘之, 興梠 航, 酒本 高志, 相良 孝昭
    2022 年 71 巻 4 号 p. 619-621
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    当院では腰椎外側病変に対してはMED法を第1選択としており,今回治療成績について解析したので報告する.対象は2019年12月から2021年5月までに当院で腰椎外側病変に対してMED法を施行した症例11例.疾患は腰部脊柱管狭窄症6例,外側型腰椎椎間板ヘルニア5例であり,高位はL2/3:2例,L3/4:1例,L4/5:4例,L5/S:2例,L4/5/S(double region):2例であった.手術時間,術中出血量,術後入院期間,術前JOAスコア,術後JOAスコア,JOA改善率(平林法),術前単純X線画像について検討した.その結果,JOA改善率は脊柱管狭窄症例と腰椎椎間板ヘルニア症例で比較し脊柱管狭窄例は低い傾向にあり,改善率の程度は術前の脊柱変形と相関がみられた.腰部脊柱管狭窄症症例は腰椎椎間板ヘルニア症例と比較し,術前での変形が強い症例が多く,治療改善率に影響していることが考えられた.

  • 赤嶺 尚里, 呉屋 五十八, 当真 孝, 山口 浩, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 622-624
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】車いすスポーツ競技者は,肩関節障害が多く発生すると報告されている.今回,車いすバスケ選手の肩関節障害について調査したので報告する.【対象と方法】対象は,車いすバスケ選手11例22肩.平均年齢は37.5歳.障害レベルは,脊髄損傷(重度6例,軽度2例),下肢切断3例であった.調査項目は,疼痛部位,握力,インピンジテスト,Horizontal flexion Test(以下,HFT),Combined abduction Test(以下,CAT),超音波を用いた筋腱損傷の有無及および棘下筋の筋厚計測とした.【結果】疼痛部位は肩関節が8例と最も多く認めた.握力は健常成人と大きな差はなく,インピンジメントテストは12肩で陽性,HFTは8肩で陽性,CATは3肩で陽性であった.腱板損傷を6肩に認め,健常成人と比較して車いすバスケ選手で棘下筋が肥厚している傾向であった.【まとめ】車いすバスケ選手は肩関節に疼痛を最も多く認め,棘下筋が肥厚している傾向であった.

  • 高橋 巧, 帖佐 悦男, 栗原 典近, 小薗 敬洋, 川野 啓介, 石原 和明, 木戸 義隆
    2022 年 71 巻 4 号 p. 625-627
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】転位の大きい(15 mm以上)上前腸骨棘裂離骨折の治療方針に一定の見解は得られていない.今回Suture anchorを使用して骨接合術を施行した3例を経験したため報告する.【症例】(1)14歳男児.骨片は17 mm下方に転位.(2)13歳男児.骨片は19 mm下方に転位.(3)13歳男児.骨片は15mm下方に転位.受傷起点は全例ダッシュ時であった.いずれも転位が15 mm以上と大きく,手術加療を選択した.手術は骨片を整復しSuture anchorを1~2本使用し,骨片・骨腱移行部に縫合固定した.【結果】全例8週程度で骨癒合を認め,術後8~9週で部活動復帰が可能であった.1例外側大腿皮神経領域の知覚低下を認めた.【考察】上前腸骨棘裂離骨折の手術加療は,スクリュー固定が多く報告されている.しかし抜釘が必要なことや骨片が小さい時に固定困難である.Suture anchorでの固定は,スクリュー固定と比較して骨癒合,スポーツ復帰期間に遜色なく,有用である可能性がある.

  • 土肥 有二
    2022 年 71 巻 4 号 p. 628-632
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【要旨】当院ではアキレス腱断裂に対し主に手術治療を行っているが,術中に足関節を0度まで背屈させ再断裂がないことを確認し,術後は外固定を行わず1日目より自動運動を許可している.2日目より補高装具を使用して50%荷重歩行,9日目より全荷重歩行を開始している.装具はシーネを4~5重に折り重ねただけの簡便な補高を使用しているが,これを5日ごとに漸減し21日目に終了,その後前足部に装着して歩行中の背屈強制を行っている.術後経過は良好で,半年程度でほぼ満点となっている.断裂腱の治癒に関する研究では免荷や固定不動化を行うよりも腱に負荷をかけるほうが組織学的にも臨床的にも成績がよく,また再断裂の原因は長期間の固定により弱化した腱への荷重負荷と固定角度の急激な変化とされている.本法は術後外固定を行わず軽い負荷を継続的に加えることで,早期に良好な機能回復が得られている.

  • 佐保 卓, 東郷 泰久, 海江田 光祥, 高野 純, 有島 善也, 小倉 雅, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 4 号 p. 633-637
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    足舟状骨疲労骨折に対して保存加療を行った1例と偽関節となり観血的治療を行った2例を経験したので報告する.症例1は20歳男性,バスケットボール選手,左足背部痛出現から2ヶ月後に当院を受診し,足舟状骨疲労骨折の偽関節の診断.症例2は19歳女性,陸上の中距離選手,右足背部痛出現から2年経過してから当院受診し,偽関節の診断.症例3は20歳女性,陸上の長距離選手で,右足背部痛が出現してから3日後に当院受診し足舟状骨疲労骨折の診断に至った.3症例とも最終的に骨癒合しスポーツ復帰を果たしている.スポーツ復帰を早めるためには早期診断が重要で早期復帰を希望するアスリートは骨折型によっては手術を考慮する必要がある.

  • ―Kirschner鋼線固定期間の検討―
    大串 美紗子, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 稲光 秀明, 秀島 義章, 重田 幸一, 深川 遼, 市川 賢
    2022 年 71 巻 4 号 p. 638-641
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】小児橈骨頚部骨折に対してKirschner鋼線(以下K-wire)を用いて経皮的整復を行った症例の術後K-wire固定期間について検討した.【対象と方法】2015~18年に小児橈骨頚部骨折に対してK-wireを用いて経皮的整復を行った6例(男児4例,女児2例),平均年齢7.3歳(5~9歳)を対象とした.K-wire固定期間は術後0~14日(0日1例,5日1例,6日1例,10日1例,11日1例,14日1例)で術前,術直後および最終経過観察時の橈骨頭傾斜角を測定した.【結果】手術は受傷2日以内に行い,全例骨癒合した.橈骨頭傾斜角は術前平均50°が術直後には5例で0°,1例で8°に整復されていた.術直後8°であった症例も自家矯正し最終経過観察時には全例0°であった.【結語】小児橈骨頚部骨折6例に対してK-wireを用いたIntraforcal pinningにより治療を行った.一旦整復された橈骨頭は近位橈尺関節の解剖学的特徴から再転位をし難く,術後のK-wire固定期間は1週程度が妥当ではないかと考えた.

  • 荒木 貴士, 明島 直也, 本川 哲比古, 田口 勝規
    2022 年 71 巻 4 号 p. 642-646
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    手根骨骨折のうち,月状骨骨折は0.5~6.5%程度9)と報告され,15歳以下の小児ではその頻度はさらに低いとされている.今回,小児の月状骨骨折の1例を経験したので報告する.症例は8歳,男児で自転車走行中に壁に衝突し受傷した.右月状骨骨折と両側橈骨遠位端骨端線損傷を認めた.転位した月状骨は徒手整復も経皮的整復も困難で,背側関節包を切開し,C-wireを挿入し観血的に整復固定した.骨端線損傷はK-wireにてintrafocal pinningを行った.術後経過は良好で,術後3か月で骨癒合を認め,抜釘術を施行した.受傷後4か月でのMRI画像では月状骨の壊死所見を認めなかった.現在,受傷後1年3か月で,疼痛や機能障害もなく経過している.単純X線像では,月状骨の硬化像や扁平化はないが,変形治癒を認めている.今後も月状骨壊死や変形性関節症などを生じる可能性があり,長期間の経過観察が必要である.

  • 秀島 義章, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 稲光 秀明, 重田 幸一, 大串 美紗子, 深川 遼, 市川 賢
    2022 年 71 巻 4 号 p. 647-650
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の環指基節骨変形治癒に対して矯正骨切り術を行った1例を経験したので報告する.【症例】10歳,男児.川で遊んでいる際に転倒して受傷した.前医で環指基節骨骨折の診断で保存的加療が行われたが,環指が中指にオーバーラップする事に気がつき受傷後3カ月で当院へ紹介となった.XPで右環指基節骨の変形癒合部に15°の角状変形を認めた.経過観察を行うも自家矯正は認められず,受傷後10カ月で手術を行った.術後3年5カ月の最終観察時にグリップ位でのオーバーラップは消失し機能的な障害は認めておらず患者は満足している.【考察】本邦では手指骨変形の矯正骨切りにおいて骨切りを行う位置や骨切り方法,内固定材の選択を論じる文献は数多く散見される.しかし術前の骨切り計画を術中に再現する方法を論じる文献は少ない.二次元上での作図は正確に作成することができるが,実際の手術の場面で小児の小さな骨でこれを正確に再現することは困難である.隣接指を矯正のためのガイドとして用いる骨切りは比較的容易な手技で臨床上の障害を取り除くことができる有用な方法であった.

  • 高田 壽愚瑠, 村山 隆, 矢崎 雄一郎, 大迫 浩文, 今林 正典
    2022 年 71 巻 4 号 p. 651-654
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    小児頚椎椎間板石灰化症は,急激な頚部痛を認めるが,そのほとんどは保存的治療で治癒する予後良好な疾患である.今回,我々は保存的治療で軽快した小児頚椎椎間板石灰化症の1例を経験したので報告する.症例は6歳女児.特に誘因なく,2週間前より後頚部痛が出現.疼痛が持続し,当院外来を受診した.初診時,発熱,斜頚,可動域制限は認めなかった.頚椎単純X線検査で,C4/5椎間腔に石灰化及び隣接椎体の扁平化を認めた.小児頚椎椎間板石灰化症と診断.頚椎カラーの装着とアセトアミノフェンによる内服を開始し,外来フォローの方針とした.発症7日目には,後頚部痛は改善を示し,28日目には完全に消失した.発症12ヶ月目には,症状の再燃なく,石灰化も縮小・消退した.

  • 荒武 佑至, 水内 秀城, 坂井 宏旭, 前田 健
    2022 年 71 巻 4 号 p. 655-658
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    軟骨無形成症は,四肢短縮型低身長をきたす骨系統疾患であり,時に脊柱変形および脊柱管狭窄症を呈する.今回,小児軟骨無形成症に伴う胸腰椎後弯変形に対し後方矯正固定術を行った症例を報告する.12歳女児.胸腰椎後弯変形を伴い,数年前から腰部痛と両大腿前面痛を認めていた.X線:T12-L3 cobb角:93°,MRI:胸腰椎に脊柱管狭窄を認め,T12-L4後方矯正固定術およびL2 PSOを施行した.術中MEP波形の低下を認め,ミエログラフィー追加にて,矯正による狭窄部位が明らかとなり椎弓追加切除を行った.術後神経学的脱落なく,腰部痛・両大腿前面痛は速やかに消失し,術後アラインメントは,T12-L3 cobb角:14°と改善した.術後1年6ヶ月において矯正損失や症状増悪なく経過良好である.小児軟骨無形成症に伴う胸腰椎後弯変形に対し,矯正固定術は有症状を改善し,有効な治療法であることが示唆された.

  • 樋口 尚浩, 松林 昌平, 津田 宗一郎, 辻本 律, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 4 号 p. 659-662
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    発育性股関節形成不全症(DDH)に対してLudloff法で観血的脱臼整復を行った症例の長期成績を検討すること.1974年から2003年に当院で手術を行い,追跡調査が可能だった16例18股(男3例4股,女13例14股,右5股,左13股)を対象とした.手術時平均年齢1歳6ヵ月,平均経過観察期間17年5ヵ月だった.術前治療はリーメンビューゲル装具(Rb)が7股,牽引が3股だった.治療成績を最終観察時の単純X線像でSeverin分類を用いて評価し,Severin分類Group 1,2を成績良好群,Group 3~5を成績不良群とした.大腿骨頭壊死(AVN)はKalamchi分類を用いて評価した.Ludloff法後,6股に対して追加手術が行われていた.最終観察時,成績良好群が6股(追加手術後3股),成績不良群が12股(追加手術後3股)で成績不良群が67%を占めていた.2股にKalamchi分類Group 1,16股にGroup 2のAVNを認めた.Ludloff法は股関節後外側の関節包の解離ができないため十分な求心位を得られない.また,Ludloff法では追加手術を行っても良好な長期成績は期待できない.

  • 北島 潤弥, 浪平 辰州, 才津 旭弘
    2022 年 71 巻 4 号 p. 663-666
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    小児の大腿骨頚部骨折は非常に稀な骨折である.交通外傷による1歳9ヶ月の大腿骨頚部骨折(Delbet-Colonna分類Ⅳ型)の保存加療を行い報告した.受傷から1年の治療成績はRatliffの基準によるgoodであった.内反股等の合併症を考慮し長期的な経過観察が必要であると考える.

  • 久嶋 史枝, 永田 武大, 池邉 顕嗣朗
    2022 年 71 巻 4 号 p. 667-671
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】エイトプレートでの脚長補正術の短期成績評価と適応検討.【対象と方法】2014年以降に大腿骨遠位に対し骨端成長抑制手術を行い,抜釘まで経過観察した脚長不等の10例11回.原因は特発性片側肥大症,DDH観血手術後,ペルテス病,大腿骨頭骨髄炎後,大腿骨頭すべり症,脳性麻痺と多様であった.術前から最終観察時までの立位X線像により下肢長を計測した.【結果と考察】平均値は手術時年齢が9歳7ヶ月,術前下肢長差が20.3 mm,挿入期間が22ヶ月,抜釘後観察期間が22.6ヶ月であり,補正量は抜釘時11.9 mm,最終観察時10.7 mmであった.挿入後半年以降に補正効果が高まった.手術時年齢が高くても低くても成長抑制効果が低減し,低年齢では抜釘後補正量ロスが大きい傾向を認めた.9歳頃の手術が効果的と考えるが,幼少で脚長差が大きい場合は補正量ロスを見込んで複数手術を行うなど個別の判断が必要である.

  • 永田 武大, 久嶋 史枝, 池邉 顕嗣朗
    2022 年 71 巻 4 号 p. 672-676
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    発達障害と診断される児は増加傾向にある.彼らはその特性から外傷リスクの高さを指摘されるが,行動やコミュニケーションの障害により診療に難渋することがある.我々は彼らの特性に配慮した工夫を行う事で比較的スムーズに診療を行えており,どの医療機関でも対応可能なこの工夫について報告する.自閉スペクトラム症の児は意思疎通において抽象的なものへの理解の苦手さや特定の物へのこだわりがみられるが,段階的,具体的,視覚化されたものへの理解のしやすさがあり,診療では事前の予告や図などでの説明があると協力を得られやすい.また,注意欠如・多動症の児は好きなものへ過集中する傾向があるため,周りの情報量を減らし,それに集中できる環境を作ることでトラブルを減らせる.発達障害児にとって病院での診療は苦手なことだらけである.特性を理解し,対応する工夫を行うことは患者側と医療側それぞれのストレスを軽減させる手助けとなる.

  • 井上 三四郎, 中村 良, 鶴 翔平, 横山 龍三, 原野 理沙
    2022 年 71 巻 4 号 p. 677-681
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    (背景)アドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)とは,「患者・家族・医療従事者の話し合いを通じて,患者の価値観を明らかにし,これからの治療・ケアの目標や選好を明確にするプロセス」と定義され,近年注目を浴びている.(目的)整形外科入院中に行われたACPを調査すること.(対象)2021年4月から8月の間に行われた15例の現状について調査した.(結果)年齢は72~94歳(中央値84歳),男性9例女性6例であった.入院時整形外科病名としては,大腿骨近位部骨折8例が最多であった.内科既存合併症としては,循環器疾患9例が最多であった.入院中内科合併症としては,経口摂取困難(胃瘻造設1例含む)5例,尿路感染症各4例,誤嚥性肺炎3例などが生じていた.3例は入院中に死亡した.(考察)整形外科病棟の現状を直視すればACPと向き合わざるを得ない.整形外科医は自ら行うかどうかは別としてACPについて学ぶ必要がある.

  • 本川 哲比古, 明島 直也, 荒木 貴士, 田口 勝規
    2022 年 71 巻 4 号 p. 682-685
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】2015年以降に当科で施行された下肢切断術および術後合併症を調査し,原因となる内科的疾患や手術に影響する因子などを検討したので報告する.【対象および方法】過去6年間に当科で施行された大腿・下腿での下肢切断術を対象とし,切断の原因疾患,合併症,および治療経過を調査した.また再手術となった症例の創治癒遅延因子との関連性を調査した.【結果】下肢切断例は,過去6年間で57例68肢,年齢は平均73.8歳であった.原因疾患はASOとDMの合併例が45肢と最も多かった.主な合併症としては慢性腎不全に伴う透析が25例,膠原病によるステロイド内服例が6例であった.再手術に至った症例は7肢で,創治癒遅延因子が3項目以上の症例が多かった.【考察】ASOとDMの合併例では,切断となる例が多く,さらに創治癒遅延因子を有する場合は再手術のリスクを伴っていた.切断レベルの決定は術前と術中所見によって総合的に判断することが重要である.

  • 松元 健太郎, 前山 彰, 山﨑 裕太郎, 小田 大嘉, 村岡 邦秀, 萩尾 友宣, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 4 号 p. 686-689
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【背景】多剤生物学的製剤の使用などによっても低疾患活動性が達成されない関節リウマチ(RA)であるdifficult to treat RA(D2TRA)に対するヤヌスキナーゼ阻害薬の有効性はいまだ明らかとなっていない.そこで,当科および関連施設にてバリシチニブで加療されたRA患者の治療成績を検討し,有効性を評価した.【対象と方法】2017年9月から2021年5月に当科および関連施設にてバリシチニブで加療されたRA患者23例を対象とし,治療継続率,圧痛・腫脹関節数,疾患活動性,有害事象を検討した.【結果】D2TRA 10例(平均67.5歳),nonD2TRA 13例(平均67.2歳)で,D2TRAとnonD2TRAでバリシチニブの52週時の治療継続率,低疾患活動性達成率に統計学的な有意差は認めなかった.【結語】本研究でバリシチニブ投与52週時のD2TRAとnonD2TRAの有効性は同等と考えられた.

  • 立花 悠, 村岡 邦秀, 廣田 高志, 田中 秀明, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 4 号 p. 690-692
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    心アミロイドーシス(以下CA)は致死的な心不全の原因となり,早期治療が必要な疾患である.一方,手根管症候群(以下CTS)は,CAの初期症状として最も多いものとされている.今回我々は,CTSとCAの関連性について検討した.2020年1月から2021年5月の間に,当院でCTSに対して鏡視下手根管開放術(以下ECTR)を行った14例19手(男9名,女5名,平均年齢67.7歳)を後ろ向きに調査した.Congo-red染色陽性の頻度,CAの診断に至った頻度,心不全症状の頻度,また,循環器内科による精査加療の実際を調査した.その結果,全体の57%もの症例がCongo-red染色で陽性となっていた.さらにそのうち1例では,より早期にCTSに対する治療介入がなされていれば,CAに対する治療介入も早めることができた可能性のある症例であった.CTSを正しく診断治療することで,CAの早期発見,早期治療に貢献することが可能と思われた.

  • 畑 直文, 大茂 壽久
    2022 年 71 巻 4 号 p. 693-695
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【症例】54歳男性.職業:電気工.以前から右手関節尺側部痛あり.仕事の作業中にドリルで複数回,右前腕を回外強制され,疼痛増悪を認めた.近医で三角繊維軟骨複合体(以下TFCC)損傷疑いで,当院紹介となる.身体所見,画像所見よりTFCC損傷を伴う尺側手根伸筋(以下ECU)腱脱臼の診断となり,同時修復を施行した.現在6か月経過し,疼痛改善し,職場復帰を果たしている.【考察】TFCC,ECU腱ともに遠位橈尺関節の安定性に寄与する因子のため,外傷後の手関節尺側部痛においてTFCC損傷とECU腱脱臼は併存しうることを念頭に置き診断,治療を行う必要がある.

  • 井上 美帆, 峯 博子, 荻本 晋作, 井手 衆哉, 青柳 孝彦, 可徳 三博, 鶴田 敏幸
    2022 年 71 巻 4 号 p. 696-701
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【緒言】陳旧性舟状月状骨(Scapholunate:SL)解離に対し,掌側と背側の両側の靭帯再建を行った1例を考察を加え報告する.【症例】58歳,男性.教員(ボクシング部指導).受診3週間前より左手関節痛が出現.手関節の腫脹とSL間の圧痛を認め,画像所見,経過より陳旧性SL解離と診断.保存的治療を行うも疼痛が持続し観血的治療を行った.【手術・経過】掌側と背側の両側から展開し,まず舟状骨,月状骨を整復しpinningを行った.舟状骨と月状骨に骨孔を作製し,人工靭帯で補強した長掌筋腱を背側から掌側へ通した後,掌側で交差させ背側へ引き抜きTJ screwで固定した.術後6週でピンを抜去し術後15週まで外固定を行った.術後6ヶ月時,alignmentは良好で復職している.【考察】SLの安定性には背側の靭帯が主に関与するとの報告があるが背側のみの靭帯再建では不安定性再発の報告も散見される.SL間を背側,掌側の両方から強固に固定できる本法は有効な治療法となりうる.

  • 赤須 優希, 副島 修, 塚本 和代, 榎田 真吾
    2022 年 71 巻 4 号 p. 702-705
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】母指CM関節症に対する手術法は種々あり,それぞれ利点・欠点がある.今回,両側母指CM関節症に対して左母指は関節固定術,右母指には靱帯再建関節形成術(Ligament reconstruction Suspension Arthroplasty:LRSA)が施行された症例の長期成績について報告する.【症例】70代男性,両側進行期母指CM関節症でEaton分類両側stage 3.2014年に他院で左母指に関節固定術を施行され,翌年に当院で右母指にLRSAを施行した.【方法】疼痛Visual Analogue Scale(VAS),握力,ピンチ力,母指関節可動域,単純X線を術前,術後で調査し比較検討した.【考察】術後5年の最終結果において,LRSAは疼痛VAS,握力,ピンチ力,母指関節可動域のいずれも関節固定術側よりも改善を認めた.単純X線より,関節固定術側では隣接関節障害による二次的疼痛の発生が考えられた.【まとめ】これまで関節固定術で対応されることが多かった壮年男性に対しても,強固な安定性と早期リハビリテーションを可能にした本法での適応拡大の可能性が示唆された.

  • 永田 直哉, 廣田 高志, 田中 秀明, 村岡 邦秀, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 4 号 p. 706-709
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では母指CM関節症に対してLigament Reconstruction Suspension Arthroplasty(以下LRSA法)による関節形成術を行っている.今回,関節形成術における術後の母指列短縮が関係する因子について検討した.【対象・方法】2016年5月~2020年8月までに手術を行い,1年以上経過観察可能であった29例29手を対象とした.男性5手,女性24手.手術時年齢は平均66.7歳(53~79歳),術後経過観察期間は平均33か月(12~58か月)であった.単純X線において第1中手骨基部から舟状骨遠位部までの距離と母指基節骨長の比(trapezial space ratio:TSR)を算出し,最終調査時のTSRと術前の臨床症状との関連および経過におけるX線との関連を調査した.【結果】最終調査時のTSRとピンチ力に負の相関を,また最終調査時のTSRと術前のTSRに正の相関を認めた.【まとめ】母指CM関節症に対する関節形成術において術前のTSR及びピンチ力が母指列短縮に関係することが示唆された.

  • 豊島 嵩正, 後藤 剛, 古江 幸博, 渡邊 裕介, 佐々木 聡明, 本山 達男, 田村 裕昭, 川嶌 眞之, 川嶌 眞人, 永芳 郁文
    2022 年 71 巻 4 号 p. 710-712
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    第2, 3, 4,5手根中手関節(以下CM関節)の脱臼骨折を経験したため報告する.症例は44歳男性,ごみ収集車に左手を巻き込まれ受傷した.同日,当院救急外来受診し,単純X線検査,CT画像検査から左第2, 3, 4, 5 CM関節脱臼骨折と診断した.受傷同日に全身麻酔下で非観血的整復固定術を行った.牽引しつつ掌側から中手骨基部を押しあげて整復,Kirschner鋼線(以下K-wire)で第2, 3, 4, 5 CM関節を経皮的鋼線刺入固定した.後療法はsafety positionで外固定を行い,術後4週間で抜釘を行った.術後6か月の時点で手関節掌屈40°,背屈70°の可動域制限があり,X線検査,CT画像検査では第2, 3, 4 CM関節に関節症性変化を認めたが,特に愁訴もなくごみ収集業に復帰している.

  • 真島 久, 坂本 悠磨, 佐々木 大, 山本 俊策, 牟田口 滋, 合志 光平, 二之宮 謙一
    2022 年 71 巻 4 号 p. 713-715
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    MP関節の伸筋腱脱臼は中指に多く,小指は比較的少ないと言われている.今回外傷性小指伸筋腱脱臼の1例を経験したので報告する.症例は36歳男性.拳を握った状態で転倒し,右MP関節を強打.屈伸時に弾発,痛みがあるとのことで紹介となった.右小指MP関節背側の腫脹,圧痛あり,MP関節屈曲時に伸筋腱の弾発,尺側偏位を認めた.以上より右小指伸筋腱脱臼と診断し,受傷後6日目に伝達麻酔下に手術を行った.術中所見では総指伸筋腱と小指固有伸筋腱(EDM)の腱間断裂を認め,MP関節を屈曲するとEDMが尺側偏位した.その間を縫着し弾発,伸筋腱尺側偏位は消失した.術後3週間は小指MP関節伸展位固定し,以後痛みに応じて可動域訓練を行った.術後3か月経過し,再脱臼,明らかな可動域制限を認めず,経過良好である.

  • 堀川 朝広, 佐藤 慶治, 宮崎 誠大, 福田 雅俊, 今村 悠哉, 山下 武士, 緒方 宏臣, 田上 裕教, 浦田 泰弘
    2022 年 71 巻 4 号 p. 716-720
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    転位がある舟状骨骨折に対してテリパラチド併用の保存的加療で骨癒合が得られた症例を経験した.症例は81歳,男性.自宅前の道路で転倒し受傷.第10病日:近医整形外科受診し新鮮第4腰椎椎体骨折を認めコルセットにて固定.第28病日:同院でのX線検査にて右手関節舟状骨骨折が判明し,第32病日:紹介受診となった.X線検査では転位を伴うHerbert分類type B1であった.観血的加療を勧めるも手術を強く拒否される.転位増大時は観血的加療を行う約束のもと保存的加療とした.併せてテリパラチド(週1回)投与を開始した.ギプス固定は受傷後12週まで行い,テリパラチドは計30回(約7ヵ月間)投与した.受傷後10ヵ月,最終的な骨癒合を確認した.転位のある舟状骨骨折に対する保存的加療では偽関節になる確率は高く観血的加療が勧められる.しかしながら諸般の事情で観血的加療が不可能で保存的加療を行う場合に骨形成促進剤であるテリパラチドを併用することは有用と考えられた.

  • 古賀 幹朗, 西尾 淳, 中山 鎭秀, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 4 号 p. 721-724
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】当科で経験した7例の血管平滑筋腫の臨床像,MRI所見,病理組織像を検討する.【対象と方法】2016年1月から2021年4月までに病理組織学的に血管平滑筋腫と確定診断された7例(男性3例,女性4例,平均年齢60.1歳)を対象に発生部位,局在,疼痛の有無,チネル兆候の有無,自覚時から生検あるいは手術までの期間,術前X線所見,術前MRI所見,病理所見,再発の有無を調査した.【結果】発生部位は足関節・足部4例,下腿2例,膝部1例で,局在は全て皮下であった.疼痛があるものは6例,チネル兆候は全て陰性であった.MRI検査は全例で施行され,腫瘤はT1強調像で低~等信号,T2強調像で不均一な高信号を示した.造影MRI検査が施行された4例では全て強い造影効果を認めた.6例で辺縁切除が行われ,再発はなかった.1例は生検のみであった.病理所見において森本の分類では全例solid typeであった.【結論】血管平滑筋腫は下肢の皮下に発生する有痛性軟部腫瘤の鑑別診断として考慮すべき疾患である.

  • 外山 宗樹, 横江 琢示, 田島 卓也, 山口 奈美, 大田 智美, 長澤 誠, 森田 雄大, 川越 秀一, 帖佐 悦男
    2022 年 71 巻 4 号 p. 725-729
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【背景】色素性絨毛結節性滑膜炎(Pigmented villonodular Synovitis, PVS)は関節滑膜や腱鞘に発生する比較的稀な良性腫瘍である.多くは膝関節周囲に発生し,足関節発生症例は稀である.今回,足部びまん性PVSに対して関節鏡下腫瘍切除術を行い,良好な短期成績を得た一例を経験したので報告する.【症例】23歳女性.数年前から左足部外側に腫瘤を自覚していたが,放置していた.しかしながら,腫瘤の消退を認めず前医を受診し,PVSの疑いで当科紹介となった.当科では関節鏡下腫瘍切除術を施行した.足関節前方および後足部鏡視下併用で足関節,足関節周囲,距骨下に病変を認め,関節鏡視下に腫瘍を切除した.術後病理診断ではびまん性PVSの診断であった.術後26ヶ月経過し,再発なく経過している.【結語】足部びまん性PVSに対し,足関節前方および後足部鏡視下併用での関節鏡下腫瘍切除術を施行し,良好な短期成績を得た一例を経験した.

  • 村松 慶一, 谷 泰宏, 小林 将人, 杉本 英彰, 岩永 隆太, 三原 惇史, 坂井 孝司
    2022 年 71 巻 4 号 p. 730-732
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】足趾,指尖部に発生した有痛性ガングリオンのう胞は,切除だけでは30-60%が再発すると報告されている.今回当院で手術加療した症例より,のう胞の起源について考察した.【症例】症例は5例(男3,女2,年齢55-87歳)で,3例は趾部,2例は指発生であった.【結果】趾部のう胞例は全て長母趾屈筋腱鞘と連続しており,1例はのう胞のみの切除を行ったが,複数回再発した.2例は術前MP関節の水腫があり,関節滑膜切除を追加した所再発は無かった.指部2例も屈筋腱腱鞘と連続しており,のう胞切除とともにPIP関節の滑膜切除を行い再発は無かった.【考察】近年,腱鞘ガングリオンは足,手関節や足趾,指関節と交通しており,足趾,指先部のう胞の切除には関節滑膜切除をすべきという報告がある.少数であるが,当科例より足趾,指尖部のう胞の起源は隣接関節発生の可能性がある.

  • 佐々木 大, 真島 久, 坂本 悠磨, 山本 俊策, 牟田口 滋, 合志 光平, 二之宮 謙一
    2022 年 71 巻 4 号 p. 733-736
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Tumoral calcinosis(以下TC)は,大関節周囲の軟部組織に腫瘤状石灰沈着を起こす疾患である.肩関節に発生したTCに鏡視下切除を行った一例を経験したので報告する.【症例】73歳男性.既往症は特になし.1ヶ月前より急に発症した右肩痛で挙上困難となり当科を受診した.可動域は屈曲80°,外転45°であった.単純X線・CTで腱板上に石灰化を認めた.MRIでは腱板断裂は認めなかった.血清Ca値9.6 mg/dl,血清P値3.8 mg/dlと正常であった.以上より滑膜骨軟骨腫・TCを考えた.保存治療に抵抗性のため,鏡視下切除を行うこととした.術中所見では腱板上に沈着する石灰成分を認めた.病理所見より,TCと確定診断した.現在,術後6ヶ月であるが,症状は消失し,画像上も再発を認めていない.【考察】正常リン血症Primary TCは繰り返す微小損傷が原因とされ,治療の第一選択は外科的切除である.腫瘍が限局して存在する例では,鏡視下切除は有用と思われた.

  • 大西 啓志朗, 増田 裕介, 佐々木 裕美, 篠原 直弘, 永野 聡, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 4 号 p. 737-739
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    当科では軟部肉腫の無計画切除後の症例に対し,追加広範切除術を行っている.今回,粘液線維肉腫に対して行われた無計画切除(UE)後に当科にて追加広範切除を施行した群(UE群)と初回から広範切除を行った群(非UE群)を後方視的に比較解析した.【対象】対象は,2004年9月~2019年9月に当科で手術を行った26例(UE群8例,非UE群18例)である.検討項目は性別,年齢,腫瘍最大径,当院切除後の断端評価,局所再発の有無,遠隔転移の有無とし,二群間比較を行った.【結果】断端陽性はUE 0例(0%),非UE 3例(16.7%),再発はUE 3例(37.5%),非UE 3例(16.7%),転移はUE 3例(37.5%),非UE 2例(11.1%)に認めた.いずれの項目も両群間で有意差は認めなかった.【結論】粘液線維肉腫に対する無計画切除後に可及的早期に追加広範切除を行うことで,再発・転移に関しては初回手術に遜色ない結果を得ることができた.しかし治療転帰に良好に働いているかは定かではなく,今後更なる検討が必要である.

  • 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 4 号 p. 740-743
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    [はじめに]高分化脂肪肉腫/異形脂肪腫様腫瘍(WDLS/ALT)は,最も発生頻度が高い軟部肉腫である.本腫瘍は生命予後は良好であるが,時に再発することが報告されている.今回,当科における再発率を調査し,再発症例について検討を行った.[症例と方法]2006年~2020年の15年間に当科に於いて手術を行い,病理でWDLS/ALTと診断された症例は98例であった.このうち1年以上経過観察できた84例を対象に再発率,再発に関与しそうな因子について検討を行った.[結果と考察]男性47例,女性37例,平均年齢64.2歳であった.経過観察期間は1年から14年(平均4年8ヵ月)であった.発生部位は,上肢16例,下肢43例,体幹25例であった.大腿部が36例と最も多かった.皮下19例,筋間18例,筋層内47例であった.切除縁ごとにみると,辺縁切除75例,辺縁切除+ISP 1例,広範切除8例であった.術前放射線照射を1例に,術後放射線照射を26例に行っていた.これらの症例の中で,術後再発を4例(4.8%)認めた.

  • 山元 楓子, 日吉 優, 今里 浩之, 平川 雄介, 山口 洋一朗, 中村 嘉宏, 舩元 太郎, 坂本 武郎, 帖佐 悦男
    2022 年 71 巻 4 号 p. 744-746
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】股関節滑膜性骨軟骨腫症の治療では鏡視下手術か外科的脱臼操作を伴う直視下手術が選択される.股関節鏡での摘出術後にSurgical dislocationを用いて再摘出を行った1例を報告する.【症例】38歳男性.10年前に誘因なく右股関節痛と可動域制限が出現.滑膜性骨軟骨腫症の診断で鏡視下に滑膜・遊離体を摘出した.疼痛改善したが一部残存を認め,再発に伴い疼痛増強しSurgical dislocationを用いて摘出した.術後再発なく経過している.【考察】鏡視下手術は低侵襲だが,体格や病変の位置により鏡視困難な場合,病変の残存・再発の可能性がある.Surgical dislocationを用いた直視下手術では寛骨臼への視野確保が可能だが,大腿骨頭壊死の危険性が指摘される.当院では側方アプローチでSurgical dislocationを行っており,大転子の骨切り量は少なく低侵襲で大腿骨頭壊死の危険性も低いという利点がある.本症例のように鏡視困難な位置に病変がある場合,Surgical dislocationを用いた手術は有用と考える.

  • 水田 康平, 池間 正英, 橋本 雄太, 普天間 朝拓, 神谷 武志, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 747-750
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    13歳,男児.サッカー部所属.多発性軟骨性外骨腫症の診断で他県前医にて加療中,右腓骨遠位の外骨腫による足関節外反変形の進行を認めた.転居のため,当院での手術加療を目的に紹介となった.運動時疼痛は認めず,右下腿遠位前面に硬い腫瘤を触知した.患側の足関節可動域は底屈30°・背屈25°(健側:底屈40°・背屈30°)であった.単純X線像にて,腓骨遠位部に骨性腫瘤と腓骨の短縮を認め,骨端線は開存していた.Tibio-talar angle(TTA)は14°であった.外骨腫による足関節外反変形に対して,eight-Plate®を用いて骨端線成長抑制術と外骨腫切除術を施行した.術後2年の単純X線像にて骨端線は閉鎖し,TTAは4°と改善を認め,抜釘術を施行した.術後足関節痛は認めず,患側の足関節可動域は底屈30°・背屈30°であった.

  • 増田 圭吾, 菊池 直士, 井上 三四郎, 岩崎 元気, 藤井 勇樹, 中村 良, 鶴 翔平, 原野 理沙, 阿久根 広宣, 丸塚 浩助
    2022 年 71 巻 4 号 p. 751-754
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    類骨骨腫は若年者に多く発生する有痛性の良性骨腫瘍であり,下肢長管骨に好発すると言われている.腫瘍サイズが小さいため,XPではわかりにくく,初期には関節炎様症状を呈することから,診断に時間を有することも多い.今回我々は比較的稀とされている踵骨に発生した類骨骨腫の1例を経験したので報告する.症例は37歳女性.左足部内側の痛みが持続していたが,妊娠中であったため鎮痛剤のみで経過を見られていた.症状改善ないため,局所のMRIを撮影し,左踵骨骨髄炎が疑われた為当科紹介となった.CTにてnidusを認め類骨骨腫と診断した.保存的加療で症状改善認めなかったため,手術施行した.手術はOsteochondral Autograft Transfer System(以下OATS;[Arthrex])を用いてnidusとその周囲の骨を一塊として摘出した.術後1年で再発は認めていない.本症例は確定診断までに約20カ月を要し,診断のためにCTでのnidusの同定が有用であった.また,OATSを使用したことで,最小限の骨切除でnidus切除が可能であった.

  • 縄田 知也, 松延 知哉, 前川 啓, 田代 泰隆, 平本 貴義, 花田 麻須大, 河野 勤, 今村 寿宏, 鬼塚 俊宏, 加治 浩三, 岩 ...
    2022 年 71 巻 4 号 p. 755-758
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【背景】脱分化型骨肉腫(DCS)は非常に稀で,予後不良の疾患である.当院で治療した5例の経過と予後について報告する.【対象】2016年から2021年まで当院にて治療したDCS 5例を対象とした.診断時平均年齢は70歳(60-83歳)で,全て女性であった.【結果】経過観察期間の中央値は18か月(7-52か月),発生部位は大腿骨3例,第9胸椎1例,第9肋骨1例.初期治療は全て外科的切除を行い,唯一初診時に遠隔転移を認めた肋骨例では転移巣合併切除も行った.胸椎例では重粒子線治療も併用した.4例で遠隔転移を認め,3例で局所再発も生じた.再発・転移を認めた1例に対し,放射線治療および化学療法を行い,41か月でDead of Diseaseとなった.最終転帰はComplete Disease Free 1例(生存期間52か月),Alive With Disease 2例(7,17か月),Dead of Disease 2例(11,41か月)であった.【考察】化学療法を施行した例は生存期間が41か月と,Complete Disease Freeを除いた4例の中で最長であった.高齢発症が多いDCSであるが,近年化学療法の有効性が示唆されており,今後も検討する余地があると考える.

  • 上田 幸輝, 内村 大輝, 今井 稜, 青木 勇樹, 石田 彩乃, 伊東 孝浩, 千住 隆博, 水城 安尋
    2022 年 71 巻 4 号 p. 759-761
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    62歳男性,当科紹介2ヶ月前に左肩を軽く打撲してから左肩痛出現.近医外科で鎖骨遠位端骨折と診断され,保存治療を受けたが疼痛軽快せず,腫脹や発熱が生じ,血腫感染が疑われ当科紹介.左肩単純X線では鎖骨遠位端に僅かな骨折線を認めるのみだったが,左肩単純MRで鎖骨遠位端に骨外病変を伴う信号変化を認め,切開生検を施行.病理組織診断は悪性リンパ腫疑いであり,A病院血液内科へ転科.病理診断が再度行われ,融合遺伝子EWS/ERGが検出されEwing肉腫と診断.当院に再転院し化学療法を施行したが,病状が徐々に悪化し,当科初診から8ヶ月で死亡した.Ewing肉腫は若年の長管骨骨幹部や骨盤に好発する悪性骨腫瘍である.全国の年間登録数は30例程度で,成人発症や鎖骨の発生は少ない.成人で,長期の局所痛に加え発熱など全身症状を訴える場合は,本疾患や他の悪性骨腫瘍,感染症などの可能性を考慮して積極的にMR精査や生検を行うべきである.

  • 岩崎 正大, 天辰 愛弓, 松野下 幸弘, 桑畑 健太郎, 城光寺 豪, 瀬戸山 傑, 嶋田 博文, 中村 雅洋
    2022 年 71 巻 4 号 p. 762-765
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】悪性腫瘍の骨転移が手指や足趾の骨に生じることはまれである.今回,肺癌が小指末節骨へ転移した1例を経験したので報告する.【症例】71歳男性.約1か月前から誘因無く右手指末節の腫脹,疼痛を自覚.近医にて爪からの感染と診断され,抗生剤加療,抜爪するも改善見られず.単純X線で末節骨に境界明瞭な骨溶解像を認め,胸部CTにて肺癌疑われたため当院紹介となった.造影CT,MRI,PET-CTにて転移性骨腫瘍の所見を認め,小指PIP関節での離断術を行った.病理組織診断は気管支鏡検査での生検と同様に,扁平上皮癌の診断であった.【考察】手指や足趾への悪性腫瘍の転移は非常にまれであり,骨髄炎や蜂窩織炎,痛風,関節リウマチなどとの鑑別を要する.手指への転移性腫瘍の原発巣は肺癌が最も多い.四肢末梢に転移性骨腫瘍を認める場合は生命予後不良であることが多いため,診断や治療には注意が必要である.

  • 岩永 隆太, 三原 惇史, 坂井 孝司, 村松 慶一, 伊原 公一郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 766-769
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    (はじめに)骨嚢腫は小児から若年者に発生し,病的骨折の原因となり得る良性骨腫瘍である.治療法は様々で定型的な治療法はない.我々は2013年から鏡視下掻爬を骨嚢腫に対して行い,良好な成績を得たので報告する.(対象と方法)男性8例女性5例計13例,平均年齢16歳(4-37),平均観察期間13.8か月(5-120),疼痛が全例にあった.発生部位は肩甲骨1例大腿骨3例踵骨9例であった.全例に掻爬を行い,その後吸収性スクリュー留置もしくは人工骨充填を行った.(結果)全例治癒し,再発はなかった.感染などの合併症もなかった.(考察と結論)骨嚢腫の成因はいまだ不明であるが,嚢腫の内圧を下げるために行う排液と骨新生を促す掻爬が重要である.骨嚢腫は若年者が多く,First therapyでかつ侵襲が少ない手術方法で治癒することが望ましい.鏡視下掻爬はその2点を満たしており,また他の良性骨腫瘍にも応用可能である.

  • 福田 雅俊, 佐藤 慶治, 唐田 宗一郎, 宮崎 誠大, 今村 悠哉, 堀川 朝広, 山下 武士, 緒方 宏臣
    2022 年 71 巻 4 号 p. 770-773
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】外来診療において,動物咬傷は頻繁に遭遇するが,今回猫咬傷による局所感染から手指切断を要した1例を経験したので報告する.【症例】55歳男性.既往に糖尿病があり,当院紹介10日前に野良猫に咬まれ受傷し,近医整形外科を受診した.抗菌薬投与を開始されたが,症状の改善無く当科紹介となった.手背部から前腕にかけての腫脹と左中指にKanavelの4徴を認め,MRIでは手背側を中心に高信号域と,中指基節骨から末節骨に骨髄炎を疑う信号変化を認めた.以上より左中指化膿性腱鞘炎,中指骨髄炎と診断し,掻把・洗浄術を施行した.術後は抗菌薬を投与したが,皮膚壊死と感染の再燃を認めた為,術後約3週で中指の切断に至った.再手術後の経過は良好で,術後半年現在,感染の再燃は認めていない.【まとめ】猫咬傷による化膿性腱鞘滑膜炎から手指切断を要した1例を経験した.猫咬傷においては早期に治療介入を行い,重症化を防ぐ必要がある.

  • 鮎川 周平, 田所 耕平, 藤原 将巳, 高岸 憲二, 宮岡 健, 堀田 忠裕, 緒方 亜紀, 笹栗 慎太郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 774-778
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    結核性皮下膿瘍はまれな疾患であり,日常診療で接する機会は極めて少ない.罹患者は高齢者や基礎疾患を有するもの,またはステロイド治療中の症例が多いとされている.【症例】60歳男性.過去2回大腿部近位外側の皮下膿瘍に対し,掻爬・洗浄および抗生剤による治療歴があった.当院受診の1ヶ月前より大腿近位外側の皮下の腫脹を自覚していたが疼痛はなく放置していた,受診後,採血・画像検査による精査を行い,大腿部皮下膿瘍を疑い,受診から2週間後に同部に対して掻爬・洗浄を行った.術中の大転子表面の組織から結核菌PCRが陽性となったため結核性皮下膿瘍と診断し,結核菌治療のため転医となった.原因菌不明の皮下膿瘍を認めた際には鑑別診断として結核感染も念頭に置くことが重要と考えられた.

  • 今井 稜, 上田 幸輝, 青木 勇樹, 石田 彩乃, 千住 隆博, 伊東 孝浩, 内村 大輝, 水城 安尋
    2022 年 71 巻 4 号 p. 779-780
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【症例】62歳の男性.9ヶ月前から左踵外側の腫瘤を自覚,徐々に増大を認めた.初診時,左踵部に4 cm大の皮下腫瘤を認め,皮膚が一部潰瘍化し出血を伴っていた.MRIではT1WIで筋と等信号,T2WIで低~高信号の不均一,STIRで高信号な充実性の腫瘤を認め,骨へは浸潤していなかった.血液検査では炎症反応陰性だった.悪性軟部腫瘍を疑い,針生検を2回施行したが悪性の所見を認めず,感染性肉芽(放線菌症)が疑われた.切除術を行ったところ,標本の組織培養で28日後に放線菌が認められ放線菌症と診断した.術後2週間ペニシリンG点滴,その後半年間アモキシシリン内服を継続した.その後再発を認めていない.【考察】放線菌症は浸潤性の広がりを見せるため悪性腫瘍と誤診されやすい.悪性軟部腫瘍を疑い生検し悪性所見が得られなかった場合,本疾患も鑑別に入れて長期間の培養提出が必要と考えられた.

  • 古谷 武大, 土持 兼信, 中村 哲郎, 岩崎 賢優, 河野 裕介, 畑中 敬之, 松口 俊央, 清原 壮登, 大森 裕己, 土屋 邦喜
    2022 年 71 巻 4 号 p. 781-783
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】外傷性骨化性筋炎の骨化部に感染をきたした症例を経験したので報告する.【症例】54歳男性.35年前に交通外傷による多発外傷の既往あり.低温熱傷による左下腿膿瘍の診断で当院皮膚科紹介受診し,Xp,CTで前脛骨筋に石灰化を認め当科紹介となった.麻酔下に切開すると前脛骨筋膜下より大量の石灰と浸出液を認め,不良肉芽とともにデブリドマン施行した.死腔の補填のため抗菌薬含有のリン酸カルシウム骨ペースト(calcium phosphate cement;以下CPC)を充填した.その後感染の再燃を繰り返し,人工骨ペーストの入れ替えや局所抗菌薬灌流療法(intra-Soft tissue Antibiotics Perfusion;iSAP)併用で感染コントールを得ることができた.【考察】外傷性骨化性筋炎の骨化部に感染をきたした症例を経験した.異所性骨化に感染を合併し,コントロールに難渋する場合は,Drug deliveryの点からiSAPが有用であると思われる.

  • 大井 尭, 善家 雄吉, 安藤 恒平, 濱田 大志, 佐藤 直人, 清水 健太, 真弓 俊彦, 酒井 昭典
    2022 年 71 巻 4 号 p. 784-789
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    症例は81歳女性.左膝周囲の疼痛を主訴に来院され,発赤・腫脹,滲出液の貯留のため洗浄・デブリドマンを施行された後,創部管理目的で当センターに紹介された.X線像で脛骨近位外側と踵骨に溶骨性変化が見られ,T-SPOT検査陽性のため結核菌感染が疑われ,病変部の骨掻爬+人工骨移植および抗結核薬で加療した.現在は自宅生活でADL制限は認めず,外来経過観察を行っている.早期診断は難しいが,診断の遅れは関節内病変へと進展して治療に難渋することもあるため,鑑別として本病態も念頭に置き,早期に治療を開始することが重要である.

  • 平田 健悟, 森本 忠嗣, 吉原 智仁, 塚本 正紹, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2022 年 71 巻 4 号 p. 790-795
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    広範囲脊椎硬膜外膿瘍に対して選択的椎弓切除を行い,カテーテルによる洗浄を施行し,良好な結果を得た1例を経験した.症例は,60歳女性.既往に糖尿病がある.誘因なく四肢脱力が出現し,前医受診.CT,MRIにてC3からL4に及ぶ広範囲硬膜外膿瘍を認め,抗菌薬投与を受けた.投与5日目に四肢麻痺が出現し,当院紹介となった.来院時,改良Frankel分類C1の脊髄麻痺(両上下肢不全麻痺(MMT2),Th5~6以下の感覚低下)を認めた.同日,選択的椎弓切除(C3,C6,Th3/4,Th10/11,L2/3)を行い,硬膜外腔へ多孔性吸引カテーテル(MEDLINE PVC®)を挿入し,C3からL4までの硬膜外腔を十分に洗浄した.術後MRIにて膿瘍は消失し,症状は改善した.多孔性吸引カテーテルは,より効率的な洗浄ドレナージを施行でき,広範囲脊椎硬膜外膿瘍を最小限の椎弓切除で治療可能とするデバイスであった.

  • 福元 哲也, 橋本 伸朗, 前田 智, 中馬 東彦, 福田 和昭, 寺本 周平, 坂本 佳菜子, 高木 寛, 高島 祐輔
    2022 年 71 巻 4 号 p. 796-798
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】近年Kinematic alignment法(KA法)の良好な成績が報告されているが,日本人においては内反の残存が危惧される.当院では2020年2月より内側剥離を行わないKA法を行ってきており,術前との骨切り量と下肢アライメント変化について検討したので報告する.【対象】2020年2月以降行われた19例26膝を対象とした.全例内反型のOAで,機種はGMK Sphere(Medacta)である.術前後のLDFA, MPTA, FTA, %MA, HKAを計測した.【結果】術前,術後の平均はそれぞれLDFAは81.7°,82.1°で0.3°の誤差,MPTAは83.7°,85.9°で2.0°減少していた.FTAは185.3°から175.4°,%MAは1.2%から41.6%,HKAは11.8°から2.6°と全例アライメントは改善していた.【考察】KA法では内側の剥離を一切行わないながらも過度の内反を残すことなく下肢アラメント矯正がなされており,軟部組織バランスと安定性を獲得できる手技と思われた.

  • 髙田 紘平, 菊川 憲志, 小田 勇一郎, 白石 大偉輔, 田村 諭史, 甲斐 裕基, 松原 秀太
    2022 年 71 巻 4 号 p. 799-801
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    胸鎖関節前方脱臼は多くは保存的に加療され良好な治療成績が得られる一方,不安定性や疼痛の残存により手術療法を要する症例もある.今回,我々は陳旧性胸鎖関節脱臼に対して手術施行し,比較的良好な治療成績が得られた1例を経験したので報告する.【症例】52歳男性,重労働者.荷物の積み下ろし作業中に荷物が右肩後方に落下し受傷.保存的加療を継続するも,右胸鎖関節の疼痛・圧痛・腫脹,また右肩が下垂するという愁訴が残存した.CTでは鎖骨近位の回旋と亜脱臼,骨化した胸鎖靭帯,肋鎖靭帯の断裂を認めた.受傷から9ヵ月で手術施行,半腱様筋を用いて,胸鎖靭帯を再建した.術後1年時,術前みられた愁訴は消失し,右肩の可動域制限もなく,日常生活には支障をきたさなくなった.重労働は不可であったが,軽作業復帰に至った.

  • 金城 英樹, 山口 浩, 当真 孝, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 802-806
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】上腕骨近位端骨折偽関節(以下,偽関節)の機能予後は悪いことが報告されている.我々が経験した偽関節の調査を行った.【対象と方法】対象は偽関節の7例7肩.男性3肩,女性4肩.平均年齢74.3歳.平均経過観察期間17.7カ月.骨折型(Neer分類),運動療法,肩関節可動域(屈曲・外旋),JOAスコア(疼痛,機能,可動域)を調査した.詳細検討としてJOAスコアの各項目の得点率を比較した.【結果】骨折型(Neer分類)は2-part 3肩,3-part 2肩,4-part 2肩.平均肩関節可動域は屈曲55°(10~100°),外旋8.6°(-15~40°).JOAスコアは平均35.9点(疼痛18.6点/機能7.6点/可動域9.7点).得点率は疼痛62%,機能38%,可動域32%であった.【結語】偽関節は,JOAスコアの得点率から,疼痛より機能・可動域障害が強い傾向であった.

  • 徳丸 達也, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 原 正光, 荒武 佑至, 安元 慧大朗
    2022 年 71 巻 4 号 p. 807-810
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    肩峰骨折は交通外傷や高エネルギー外傷に生じやすく,受傷機転に基づき治療法方針を決定する必要がある.今回superior shoulder suspension complex(SSSC)不安定性を生じた肩甲帯部重複損傷を伴う肩峰骨折に対してtension band wiring(TBW)法を施行した1例を経験したので報告する.症例は54歳男性,バイク走行中に転倒し受傷.右肩峰骨折(仲川分類3型),右肩鎖関節脱臼,右鎖骨遠位端骨折を認めた.受傷後6日目に肩峰骨折に対してTBW法,肩鎖関節脱臼に対して烏口鎖骨靭帯再建術(Zip tight),肩鎖関節固定を施行した.術後7週で肩鎖関節部の鋼線を抜釘,術後14週で骨癒合認めた.SSSC不安定性を伴う肩甲帯部重複損傷では手術適応とする報告が散見され,本症例では肩峰骨折にTBW法を施行し,諸家の報告同様に良好な骨癒合,臨床成績を得られ有用な方法であった.

  • 國吉 さくら, 森山 朝裕, 大湾 一郎, 金城 聡, 伊佐 智博, 山口 浩, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 4 号 p. 811-815
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    上腕骨近位端骨折は高齢者に多い骨粗鬆症性骨折の一つである.骨粗鬆症性骨折治療の際には,骨癒合,機能回復,骨折連鎖防止が重要である.今回,骨芽細胞の活性を増上させる働きがあるParathyroid hormone(以下PTH)製剤を用いて治療した上腕骨近位端骨折の3例3肩を報告する.受傷時年齢は69・76・85歳,全例女性,骨折型(Neer分類)2-part 1例・4-part 2例であった.既往症や全身状態より保存療法を選択し受傷後(1-2週)よりPTH製剤を開始した.全症例に6-8週で骨癒合が認められ,最終経過観察時の肩関節可動域は,屈曲110・125・135°,外旋35・35・45°,内旋は第2・4・5腰椎レベルと良好であった.高齢者の上腕骨近位端骨折の保存療法にPTH製剤を使用することは有用と考えられた.

  • 天辰 愛弓, 松野下 幸弘, 岩崎 正大, 桑畑 健太郎, 城光寺 豪, 瀬戸山 傑, 嶋田 博文, 中村 雅洋, 安武 祐貴, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 4 号 p. 816-818
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    急性コンパートメント症候群は時間経過に伴い不可逆的変化をもたらすため,迅速な診断,治療を要する.誘引なく発症した前腕急性コンパートメント症候群の一例を経験したので報告する.症例は47歳男性,昼頃から誘因なく左前腕痛を自覚し疼痛増悪したため,夜間救急外来受診となった.左前腕掌側に圧痛および緊満感あり,血流障害,知覚異常,運動麻痺は認めなかった.手指および手関節のpassive stretch pain陽性であった.前腕掌側コンパートメント内圧81 mmHgと高値認め,症状出現後11時間30分で筋膜切開を行った.浅指屈筋内に血腫を認め,筋肉内血腫による急性コンパートメント症候群と考えられた.術後は機能障害を残すことなく経過した.非外傷性の急性コンパートメント症候群は比較的まれであり,診断にいたるまでに時間を要することがある.外傷以外にも急性コンパートメント症候群をきたす病態があることを念頭におき,診療にあたることが重要である.

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