近年,トリウム熔融塩炉と呼ばれる革新的な原子炉について,世界各国で開発が進められている.本炉型は,炉概念や安全性概念が従来の軽水炉とは異なる液体燃料の原子炉である.本稿では,熔融塩炉の概念,熔融塩炉の安全性,熔融塩炉の経済性などの特長,熔融塩炉の歴史,世界の現況,日本の現況,信頼性と安全性,安全概念と深層防護,について解説する.
世界では,多くの熔融塩炉ベンチヤーが20万kWe級の小型熔融塩原子炉の開発に鎬を削っている.その20万kWe級熔融塩炉の実証炉及び前座の商用炉となりうる2.5万kWe級の超小型商用炉miniFUJI IIの概念設計を行った.本稿では,その超小型熔融炉の特徴,安全性及び市場性について述べる.
高い信頼性を持つ受動的安全炉であるトリウム熔融塩炉に関し,発電炉として機能させる手法を述べた.発電システムは原子炉で発生する700℃の燃料熔融塩の顕熱から高温の作動媒体を発生させ,水蒸気ランキンサイクルやガスブレイトンサイクルで電力に変換する.炉心回りにはサーモサイフォンの原理を用いた自然循環型の放熱システムを配し受動安全性システムを実現させ,緊急停止した時の燃料熔融塩の残留熱や崩壊熱除去に対応できる.発電時には,適応逆制御方式を採用し電力負荷の要求に従い原子炉の出力を受動的に制御し,緊急時には電力負荷がゼロになることを受けて,原子炉は自動停止する.本機能を有するトリウム熔融塩発電炉は,エネルギー・環境問題を解決できる再生可能エネルギーシステムと連成でき,双方のメリットを発揮できることを示した.
原子力利用の黎明期に出現した液体燃料原子炉は1960年代にフッ化物熔融塩を用いた炉として試験炉として完成したが,いままた安全性だけでなく,前段の燃料製造と炉心,炉心と後段の化学処理,リサイクルが直結できるシステムとして,使用済み燃料処理,余剰プルトニウム処理への適用可能性から見直されつつある.本稿では余剰プルトニウム核反応処理に関係する熔融塩炉の設計研究ならびに段階的な装置開発の現状を紹介する.
トリウム熔融塩炉は熔融塩中に溶かし込んだトリウムの核分裂により熱エネルギーを取り出す炉である.従って,この炉は固体燃料棒を用いる軽水炉とは異なった簡易な構造を有する.この違いは燃料効率,発電効率に大きな差をもたらし又,安全に核分裂生成物を処理する手法を確立している.最大の特徴は事故における原子炉の核分裂連鎖反応の停止保全を機器と共に自然の原理に委ねた処理ができることであり又,熔融塩中にPuを溶かし込むことでPu削減を安全に効率的に処理できることにある.更に,熔融塩炉の構造は小型化が実現でき,次世代の原子炉としての有力な候補と期待できる.
構造疲れと転がり疲れおよび静的強さのばらつきには,最小強さ (γ) を導入した一般ワイブル分布 (GWD) を適用できる. (γ) の導入は形状指数 (m) を固定値にできるうえ,確率密度関数f(x) を (γ) だけ移動することができ,尺度係数 (η) は定格寿命 (x10-γ) の従属変数になる.最近, (γ) は製鋼法や転動体と軌道間の接触状況等に敏感に反応することが判明した.γ=0にするとmは変数になり,結果としてf(x) と (η) に含む寸法効果等にも影響を及ぼす.mは,動的強度1<m<3.26および静的強度m=3.26に標準化,各種寿命分布に適用できる.構造疲れや転がり疲れの寿命式,P-S-N曲線とP-F-L曲線,疲れ限度の判別法,静的強さ等に関し,未発表データを含め,チュートリアルとして議論した.