通信ネットワークは,効率的な通信を実現するために様々な技術を導入し発展してきた.それに伴い,通信ネットワークで提供することのできるサービスも多様化し,電話サービスだけではなくTV会議・映像配信サービスのようなリアルタイム性が要求されるサービスや電子メール・Webアクセス等のノンリアルタイム系サービスまで幅広いサービスが単一のIPネットワーク上で提供されている.本稿では通信ネットワークの発展を振り返るとともに,通信品質を確保するための基本的な考え方や機能,枠組みについて概説する.
ICTを活用して安全・安心な社会を創る必要性が増大している.また,災害発生時に正確な災害情報を住民に迅速に伝える事の必要性も増している.その基盤となるのが通信・放送ネットワークである.本稿では社会の安全を支える具体的なネットワークの構築事例を紹介し,通信・放送ネットワークの重要性について論じる.
新型コロナウィルス感染症の影響によって,これまでになくテレワークへの注目が集まっている.このため,ものづくりの現場でも遠隔制御ロボットによる生産の取り組みが始まりつつある.しかしながら,遠隔制御ロボットには通信に起因する危険性が存在する.このうち,通信の不具合そのものに由来する危険性については,既に広く認知されており,国際安全規格によって,設計の際の安全要求事項が確定している.これらを遵守することにより,安全な遠隔制御ロボットを設計することが可能である.一方,遠隔制御ロボットの一種であるバイラテラル遠隔制御ロボットにおいては,通信遅延そのものによって「力学的ハウリング」が生じ,激しい振動がロボットの周囲の人々に危害を与える可能性がある.このため,特殊な制御アルゴリズムを実装することによって,通信遅延に依存しない安全性を確保する必要がある.これら一連の危険性とその方策を紹介する.
システムの機能安全を担う安全関連系に対するプルーフテスト(定期的な安全機能の動作点検と保全活動)は,運用時におけるシステムの安全要件を継続的に満足するために必要不可欠な保全活動として知られている.プルーフテストは,システムの安全性向上・維持に寄与する一方,ある程度のコストと時間が必要であるため,頻繁にそれを実施することは現実的に難しい.本稿では,まず,運用時における危害リスクを考慮しながら理論的にその実施間隔を決定する問題を,信頼性・保全性理論を活用して定義する.また,定義した問題を現実的な状況を損なわず簡略化し,定常状態における保守コストと危害リスクの観点から最適なプルーフテスト実施間隔を求める最適方策を導くことで,E/E/PE安全関連系に対する運用時の保全実施計画策定を支援する技術について議論する.