熱分解-ガスクロマトグラフ法 (Py-GC) に新規開発した液体試料用熱分解管を適用することによって, 前処理の簡略化および操作時間の短縮化が達成できた。Py-GCにそれぞれ電子イオン化質量分析計, 化学イオン化質量分析計, 原子発光検出器および赤外分光光度計を結合させたPy-GC-EIMS, Py-GC-CIMS, Py-GC-AEDおよびPy-GC-IR法を, ポリジメチルシロキサン (DMS) の熱分解生成物の同定に適用することにより, DMSとそれに含まれていた揮発性不純物の詳細な構造解析が可能となった。各検出法によって得られた同一熱分解物の保持時間には差異が認められたが, 標準ポリエチレンのパイログラムに出現する直鎖飽和炭化水素の保持時間で計算した保持指標 (RI) によって, その差異を補正することが可能となった。DMSの各検出法によるPy-GCで得られた五つのパイログラムに出現した主要な9本のピークについてRIを計算したところ, 同一ピークのRIにおけるバラツキを示す相対標準偏差 (RSD) は, いずれも0.6%以下であった。したがって, 各ピークの構造情報をRIを基準として集積させた統合ライブラリの構築が可能であると考えられた。また, Py-GC-AED法で得られた全炭素面積/全ケイ素面積比 (C/Si比) と核磁気共鳴スペクトル法から得られたM/Q比 (トリメチルシロキシケイ酸構造中のMおよびQ単位のモル比) との間には直線関係 (
r=0.9997) が認められ, Py-GC-AEDによるM/Q比推定法を確立できる可能性を見いだした。しかしながら, 未知パイログラムの同定法を既存のEIMSライブラリ検索法によって確立することを試みたが, ポリアクリル酸の全イオンパイログラムから得られる合算EIMSスペクトルのライブラリ検索結果であるマッチクォリテイの再現性は, 期待した値よりもわずかに低く, 今後合算EIMSスペクトルの最適算出条件および検索パラメータの最適条件をさらに検討する必要があることがわかった。
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