日本化粧品技術者会誌
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34 巻, 2 号
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  • 柳田 博明
    2000 年 34 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    昨今の技術は複雑になりすぎている弊害が目立つ。環境にも人にも優しい技術は簡明なものである。複雑さを回避し簡明な技術を構築・設計するためのコンセプトと手法を材料開発を例にとって説明する。キーワードは発音を「けん」とする漢字群, 賢 (=建=検=兼=健=倹=圏) である。簡明化を通じ技術を市民のものにする運動を展開している。
  • 中西 鉄雄
    2000 年 34 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    シリコーンはそのユニークな特性を生かして広範囲な産業分野に広く使用されてきた実績を持ち, さまざまな化粧料の分野においてもその特性向上に貢献している。しかしながら, これまでは添加剤的な使用方法が主流であり, 他の産業分野に比較してシリコーンを主剤とした製品が開発されていない。最近ではこれらを打破するために新規なシリコーン樹脂やシリコーン粉体の開発が盛んに行われるようになり従来の添加技術では実現できなかった特性, 機能が得られるようになってきた。本総説では, 多様なシリコーン製品群を概説するとともに, 最近開発が進んでいるシリコーン樹脂およびシリコーン粉体について説明する。
  • 副島 亜紀, 島村 公雄, 桑原 裕史, 青木 穣, 原武 昭憲, 池本 毅
    2000 年 34 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ワインはぶどうの種類や栽培方法, 醸造方法, 土壌, 天候, 保存方法等により, その味わいが大きく異なることが知られている。それは, 主成分であるα-ヒドロキシ酸・グリセリン・糖類の組成が大きく異なる点に起因すると言われている。ワインは飲用としてだけでなく化粧水用途として用いられてきた歴史もあるが, その皮膚への作用についてはあまり検討がなされていない。そこで, われわれは, ワインの化粧水としての機能について検討を行うことを目的とした。本研究では, 白ワインの成分組成が化粧水としての感触に及ぼす影響について検討するとともに, 特異成分の一つであるエチルグルコシドの刺激緩和作用について検討を行った。数種類の市販白ワインを塗布したときの感触を比較した結果, その感触は銘柄により大きく異なることが確認された。また, その組成分析を行うことにより, ワインの感触には糖類や有機酸の組成が大きく関与していることが明らかとなった。また, 白ワイン中に存在するエチルグルコシドにはα-ヒドロキシ酸の刺激を緩和する作用があることも示唆された。以上のことから, 白ワインの組成を応用することにより低刺激で感触に優れた化粧水が開発できる可能性を見出した。
  • 岡 憲明, 山田 隆, 岡田 正紀
    2000 年 34 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    バラの花の香気生成機構の研究により得られた知見を用いて, 新しい香料の採取法と化粧品での香気のコントロール等への応用を検討した。香料採取用品種ブルガリアンローズの香料採取後の残渣や葉や茎より香気前駆体画分を抽出し, 酵素と酸による加水分解を試みた。水蒸気蒸留後に蒸留器に残る滞留水より, バラ様の香気を得ることができた。コスト等の課題はあるものの, 未利用資源の活用の可能性が示唆された。花の香気生成のメカニズムの, 化粧品や紙オムツの匂いのコントロールへの応用を検討した。ヘアトニックでは塗布後2-3時間で香気配糖体よりの香りの生成が確認され, 効果は5-6時間持続した。一方, 紙オムツにおいては, 香気配糖体だけの配合では放尿直後の尿臭をマスキングすることが不可能であったが, 包接香料および脱臭粉体と併用することにより, 尿臭を効果的にマスキングすることができ, 効果は24時間も持続した。以上の結果より, 香気生成のメカニズムを応用した新しい商品の開発の可能性が示唆された。
  • 中原 一好, 吉田 誠一, 小松 一男, 石渡 勝己, 阪本 興彦
    2000 年 34 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    熱分解-ガスクロマトグラフ法 (Py-GC) に新規開発した液体試料用熱分解管を適用することによって, 前処理の簡略化および操作時間の短縮化が達成できた。Py-GCにそれぞれ電子イオン化質量分析計, 化学イオン化質量分析計, 原子発光検出器および赤外分光光度計を結合させたPy-GC-EIMS, Py-GC-CIMS, Py-GC-AEDおよびPy-GC-IR法を, ポリジメチルシロキサン (DMS) の熱分解生成物の同定に適用することにより, DMSとそれに含まれていた揮発性不純物の詳細な構造解析が可能となった。各検出法によって得られた同一熱分解物の保持時間には差異が認められたが, 標準ポリエチレンのパイログラムに出現する直鎖飽和炭化水素の保持時間で計算した保持指標 (RI) によって, その差異を補正することが可能となった。DMSの各検出法によるPy-GCで得られた五つのパイログラムに出現した主要な9本のピークについてRIを計算したところ, 同一ピークのRIにおけるバラツキを示す相対標準偏差 (RSD) は, いずれも0.6%以下であった。したがって, 各ピークの構造情報をRIを基準として集積させた統合ライブラリの構築が可能であると考えられた。また, Py-GC-AED法で得られた全炭素面積/全ケイ素面積比 (C/Si比) と核磁気共鳴スペクトル法から得られたM/Q比 (トリメチルシロキシケイ酸構造中のMおよびQ単位のモル比) との間には直線関係 (r=0.9997) が認められ, Py-GC-AEDによるM/Q比推定法を確立できる可能性を見いだした。しかしながら, 未知パイログラムの同定法を既存のEIMSライブラリ検索法によって確立することを試みたが, ポリアクリル酸の全イオンパイログラムから得られる合算EIMSスペクトルのライブラリ検索結果であるマッチクォリテイの再現性は, 期待した値よりもわずかに低く, 今後合算EIMSスペクトルの最適算出条件および検索パラメータの最適条件をさらに検討する必要があることがわかった。
  • 松本 雅之, 小林 紀子, 保科 蔵, 新井 清一
    2000 年 34 巻 2 号 p. 152-159
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    くすみに関する意識調査より, 一般消費者はくすみ感を目のまわりに感じることが多いと言われている。特に若年層におけるくすみは体調や睡眠不足によって現れる一時的なものであることが多く, その大きな要因の一つとして目のまわりに生じるくまが挙げられる。この目まわりのくまの原因としては, 血流の滞留, 血行不良等が一般的に言われているが, 実際には眼瞼部周辺の血流を計測した報告例は少なく, さらにくまと血流動態との関連を詳細に調べた報告自体もほとんどない。そこで今回われわれは, くまの実態を明らかにすべく, 眼瞼部における皮膚温, 皮膚色, 血流の測定を実施した。特に血流においてはレーザードップラー血流計と深度切換型プローブを組み合わせ, 血流量 (Flow)・血液量 (Mass)・血流速度 (Vel.) を各々4段階の異なる深度にて計測することでくま発生部位の詳細な血流動態をとらえ, くまと血流との関連性について検討を行った。その結果, 内眼角周辺部はその皮膚表層部で血液量が多く, 血流速度が遅いという特徴を有しており, 特にくまが表出しやすい内眼角下部ならびに内眼角側部においてその傾向が顕著であることが判明した。またこの傾向はくまの目立つ人においてより顕著に観察された。このように一般にくまの発生部位で言われる血流の滞留とは, 血液量が多くかつ血流速度が遅いことであると考えられ, また血流の滞留が皮膚表層部にて生じることがくま発生の大きな要因の一つであることが示唆された。
  • 菅原 享, 川相 みずえ, 鈴木 敏幸
    2000 年 34 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ネイルエナメルを長期にわたって使用し続けることにより, さまざまな爪のトラブルを引き起こす場合があることが知られている。爪の主なトラブルとしては黄変, 折れ, 二枚爪 (爪甲層状分裂症) 等が挙げられる。そこで, これらのトラブルのうち, 比較的発生率の高い折れおよび二枚爪に着目し, それらの発生原因に関して, 爪の水分および力学的特性に及ぼす有機溶剤の影響の観点から基礎的な検討を行った。その結果, 爪の膨潤は有機溶剤に浸漬した爪より水に浸漬した爪の方が顕著であった。水および有機溶剤浸漬における爪の動的粘弾性の測定より, 有機溶剤に浸漬した爪の方が硬くてもろくなることが示唆された。また, 有機溶剤に起因する折れの発現機構を提案した。
  • 伊藤 元章, 長谷 昇, 旭 正彦, 鈴木 敏幸
    2000 年 34 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ファンデーションの機能において, 毛穴の目立ちを自然に隠すことは重要な因子である。そこで毛穴をカバーして, 自然な化粧仕上がりを演出できる粉体の探索を目的として, 色差および明度という物測値を用いて各種粉体の評価を行った。その結果, 球状のジルコニア被覆酸化チタン内包シリカ (TSZ) が最も効果的な粉体であった。TSZがその効果を発揮する理由としては, カバーカを発揮する高屈折率物質を内包し, 最外層に適度な屈折率を有する物質で被覆することによって生じる光学的特性が寄与し, さらに形状が球形であることから毛穴を選択的に隠蔽することができるためであると考察した。このTSZを応用し, 自然に毛穴を目立たせないファンデーションが得られた。
  • 刺激接触時間
    立川 一義
    2000 年 34 巻 2 号 p. 172-175
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    26名のパネラーを対象に, 5種類の香水試料の中から課題に適した試料を選択させるという, 官能検査を行った。その際, 被験者がそれぞれの試料を評価するのに要する時間すなわち刺激接触時間 (以後SCTと略) を計測, 分析して興味深い発見があった。26名の被験者のうち21名は, SCTが最長の試料と課題に対し1位に選択した試料とが一致していた。1位と一致しなかった5名も, SCTが最長の試料を2位に選んでいるので, SCTと選好度の相関性は非常に高いことがわかる。SCTに関するその他の特性としては (1) 全評価時間の各試料への時間配分 (相対SCT) は試料セットにより特徴づけられ, 被験者による違いは少ない, (2) 嫌いな香りを選択する課題においても, SCTの長い試料が選択される。SCTに関する以上の性質を官能検査に利用すれば, アンケート方式では得られない情報を得ることができる。
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