日本化粧品技術者会誌
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42 巻, 3 号
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  • 上甲 恭平, 吉勝 友美
    2008 年 42 巻 3 号 p. 185-200
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本総説では, ケラチン繊維に対する酸化染料の染着領域や染着機構について検討してきた結果に基づき, 酸化染料の染着にとって細胞膜複合体が酸化染料の染着領域として働くだけでなく, 細胞膜複合体の組織成分および構造性が酸化染料の重合反応に重要な役割を果たしていることを解説するとともに, これまで広く説明に用いられてきた「未反応の染料中間体が繊維中に浸透拡散し, 繊維内部で溶液中と同様の反応が起こり発色・吸着する」とした染着機構ではない新たな染色機構について述べる。
  • 大場 愛, 佐藤 千尋, 高橋 きよみ, 二川 朝世
    2008 年 42 巻 3 号 p. 201-217
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    人間の体は器官・部位ごとに独立して機能しているわけではなく, 顔面皮膚以外の器官が顔面皮膚に影響を及ぼす例は, 多くの女性が経験し認知している。その影響は, 美容上無視できないほどのものである。昨今, 首から肩にかけた部位の苦痛・不快感 (いわゆる, こり感) を抱く人たちが増加していることに着目し, それが顔面美容に影響を及ぼすのか, 及ぼすとすれば, その状態を緩和することで顔面美容の改善を得ることができるのかを検討した。その結果, 首から肩にかけた部位に抱く苦痛・不快感は, その部位の筋緊張の昂進, 筋硬度の増加と関係しており, 額の表情筋である前頭筋の緊張, ひいては額のシワ程度にも関係していることがわかった。そして, 頸部や背面上部の筋肉の緊張を緩和することを目的としたボディマッサージ施術により, 前頭筋の緊張緩和や額のシワ程度の改善が認められた。顔面以外の要因が顔面美容に悪影響を及ぼしている例はほかにもあると考えられ, われわれの結果は, 今後, 顔面皮膚を美しく健やかにするための方策について, 個体全体で考える必要性があることを示唆するものである。
  • 豊田 剛正, 井柳 宏一, 毛利 邦彦, 中前 勝彦
    2008 年 42 巻 3 号 p. 218-225
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    メークアップ製品の処方技術は, 複合化粉体のような機能性原料の開発を主として発展してきた。そのため製品の性能は高まってきているが, 肌との関係を考慮した研究はあまり報告されていない。われわれは, 肌と化粧膜の相互作用を物理化学的に調査するため, 固体表面間の付着性を評価できる, 表面自由エネルギー (SFE) に着目し, 肌とファンデーションに適用することを試みた。その結果, 肌の表面自由エネルギーは, 極性力成分γpが個々人に特有の値であった。また, 一般的な市販のファンデーションのγp値は肌の分布とは乖離しているため, 肌のγp値に近づけたファンデーションを開発することで, 肌上に安定で均一な化粧膜を形成することに成功した。このことから, ファンデーションは付着性を最適化することで偏在化しないことが示唆され, 従来のファンデーションより優れたメークアップ効果を示すとともに, 嗜好性において高い支持が得られることを確認した。
  • 馬場 優, 川向 裕志, 松井 芳明, 五十嵐 正, 中村 文彦, 柴田 雅史
    2008 年 42 巻 3 号 p. 226-230
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    最近の口紅の色持続技術は, 少量の水分でゲル化する性質を有する自己組織化ポリマー (グリセリルエーテル変性ジメチコン (GE) など) を活用することが主流になっている。しかしながら, これらのポリマーは口紅中で顔料を凝集しやすい欠点を有しており, 潤い機能が高い流動イソパラフィンを多量に含む口紅において顕著である。本研究では, 流動イソパラフィン多量系において色持続性能と顔料の分散性を両立する手法を検討した。アルキル鎖をGEに導入することで顔料分散性は顕著に改善した。しかしながら, ランダム共重合体として導入した場合は色持続性能を阻害した。一方, 両末端にアルキル基を導入した場合には色持続性への影響はみられなかった。さらに微粒子シリカを分散剤として活用することで, 顔料分散性と色持続性能を高度に両立させることが可能になった。TEM観察と1H-NMR分析の結果, GEが微粒子シリカに吸着し, さらに微粒子シリカが口紅組成中でネットワークを形成していることが明らかになった。このような有機-無機複合体を形成することでGEは顔料へと直接影響を与えることがなくなり, 顔料の凝集が起こらなくなったものと考えられる。
  • 八木 栄一郎, 中川 公一, 坂本 一民
    2008 年 42 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    電子スピン共鳴 (ESR) スペクトルはおもにin vitro角層脂質の構造研究に用いられてきた。ESRスペクトルから得られる秩序度Sは角層脂質の流動性と配向性を評価する良い指標である。しかしex vivo法としての測定法は確立されていなかった。シアノアクリレートを塗布したガラス板を用いて角層を剥離し, 脂質構造解析のスピンプローブとしてステアリン酸の5位に安定ラジカルをもつ5-Doxylstearic acid (5-DSA) を用いた。角層を0.1%のエタノール水溶液に溶解した0.001% 5-DSAで37度1時間反応させた。過剰な5-DSAは水で洗浄して除いたあとで, 処理角層が接着したガラス板を, ESRキャビティに装着した。本実験用に考案したガラスホルダーによりESR測定の簡便性と精度の向上を達成した。結論としてex vivoでの角層調整法とプローブ標識方法の最適化を行い, ESRによる角層脂質のex vivo状態解析法を確立した。
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