高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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24 巻 , 3 号
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シンポジウム : 失語の回復プロセス
  • 藤田 郁代, 立石 雅子
    2004 年 24 巻 3 号 p. 201-202
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 匡子, 隈部 俊宏, 中里 信和
    2004 年 24 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    失語の回復を左右する重要な要因の1つは,病巣に言語野がどの程度含まれているかという点である。この問題を考えるうえで,皮質電気刺激を用いた術中言語マッピングを施行した脳手術例の検討は有用である。われわれは,脳腫瘍例において術中言語マッピングを行い,術前および術後慢性期の言語症状について検討した。その結果,術中の言語マッピングでは各個人において比較的限局した言語野を同定することができ,この言語野を切除しなければ,術後に重い言語障害は生じないことがわかった。しかし,切除部位によっては,完全な代償は得られにくく,部位特異的な言語症状が残存することがあった。また,広汎な白質切除の影響も考慮すべきと考えられた。失語症の回復を考えるうえで,言語の神経基盤には冗長性が高く比較的代償がききやすい部分と,完全には代償されない部分があることを考えておく必要がある。
  • 横山 絵里子, 長田 乾
    2004 年 24 巻 3 号 p. 209-220
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    脳血流量(CBF)からみた失語症の回復について,罹病期間,年齢,失語症の類型や性別などの影響に関する検討を行った。右利きの左大脳半球の脳梗塞 64例を対象に安静時 CBF を PET で測定し,最終SLTA の正答率と初回平均 CBF との相関を求めた(初回 PET,SLTA 平均85病日,最終SLTA 平均 318病日)。最終評価が 90日以内では SLTA は左半球の CBF と相関し, 90日以後は右優位に両側半球で相関を認めたが, 180日以降は相関を認めなかった。55歳以下では左優位に両側半球の CBF と相関し,55~69歳では左半球で相関し,70歳以上では相関を認めなかった。男性では SLTA は左半球の CBF と相関し,女性では両側で相関を認めた。運動失語では SLTA は左半球優位に相関し,感覚失語では右半球優位に相関を認めた。転帰良好群では SLTA は左半球優位に両側半球の CBF と相関し,転帰不良群では左半球の CBF と相関した。病初期の左半球損傷の程度が失語症の回復にもっとも影響し,右半球は慢性期の回復にかかわる可能性が示された。
  • 奥平 奈保子
    2004 年 24 巻 3 号 p. 221-231
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    失語の回復と治療の関係について言語聴覚士の立場から検討した。流暢型重度失語1例の回復期における治療経過を報告し, 語彙障害に対する認知神経心理学的アプローチの有効性と問題点を検討した。症例は, 語音認知の障害が重篤で, 直接的な治療によって改善が得られなかったが, 語の理解や語彙判断, 語の復唱には改善が認められ, 意味からのトップダウンを強化する治療で聴覚的理解はある程度改善すると考えられた。また発話に関しては, 語の音韻形式の想起がきわめて困難で, 通常の呼称ルートを促通する訓練では改善が得られなかった。そこで, 訓練の経過中に改善が認められた漢字・仮名の音読を利用し, 呼称過程を代償的に再編成する治療法の効果を測定した。その結果「仮名書称後音読」が呼称の方略として有効であることが明らかになった。回復期には, 神経系の自然回復を最大限に活用し促進する治療が有効で, ターゲットをしぼったピンポイントな戦略的治療とともに, 言語処理全般を賦活する総合的アプローチも重要である。神経・認知レベルにおける回復プロセスを知ることが, 有効な言語治療を行ううえで必要であると考えられた。
イブニングセミナー
カレントスピーチ
  • 上田 敏
    2004 年 24 巻 3 号 p. 244-252
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    2001年5月の WHO総会で ICF : 国際生活機能分類が ICIDH : 国際障害分類 (1980) の改定版として採択された。これは第1には人が「生きる」こと,すなわち生活機能と,それが低下した状態である障害とを総合的に把握する概念枠組みとして,第2には国際的・学際的,また専門家と当事者との間の「共通言語」として作られたものであり,障害というマイナス面よりも生活機能というプラス面に着目し,かつ両者を生命・生活・人生の 3レベルで把握するという優れた特徴をもち,今後,医学・医療,介護,福祉,その他,専門職が対象者・利用者にサービスを提供するあらゆる分野に大きな思想的・実際的な影響を与えるものである。本論文では,現在のわが国で医療・福祉・介護の行政の中にすでに ICF の基本概念が相当程度にとり入れられていることを紹介し,ついで ICF の特徴と分類の概要,コーディングの実際について述べ,高次脳機能障害の臨床への応用について論じた。
原著
  • 秋山 知子, 加藤 元一郎, 村松 太郎, 斎藤 文恵, 三村 將
    2004 年 24 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    右側優位の側頭葉損傷と両側前頭葉腹内側部損傷を有すヘルペス脳炎例において,妻などかけがえのない人物は他者に取り違える一方,担当医などさほど親しくない人物には重複現象が生じるという特異な人物同定障害を認めた。本例に妻や病院スタッフの写真を用いた Misidentification triggering test を施行し,情動的価値の高い人物では顔の同定が不十分となり同程度に価値の高い他者に取り違えるのに対し,情動的価値の低い人物では顔の同定は可能だがその同一性が脆弱となり重複現象が生じると解釈できる結果を得た。このことから本例の人物同定障害は形態認知経路と情動的認知経路の統合不全と考えた。
  • 柴崎 光世, 岩崎 絵美, 山村 恵愛, 津波 滿
    2004 年 24 巻 3 号 p. 262-271
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    建物や場所の再認障害を基盤として生じる地誌的失見当の下位タイプは,街並失認と呼ばれる。本研究は街並失認と視知覚障害との関連性に着目することにより,街並失認を引き起こす病態機序について検討することを目的とした。本研究が対象とした症例 FS (78歳,女性)は,発症後に新しく経験した場所に限定して生じる街並失認を示した。また,一連の視知覚検査の結果, FS は基本的視知覚機能は保たれる一方で,刺激事態が複雑になると,部分優位な知覚傾向を示すことが明らかになった。ひと目で全体を見渡すことのできない建物や場所を表象する際には,逐次的に入力される部分情報を全体に束ねることが重要である。本症例は,視知覚検査で用いられるようなひと目で刺激全体を知覚できる事態であっても全体的知覚が難しく,この問題がさらに統合の重要度が増す地誌的表象の構築に阻害的に影響していると考えられる。
  • 石渡 知子, 井堀 奈美, 荒木 重夫, 河村 満
    2004 年 24 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/03/16
    ジャーナル フリー
    いったん軽快していた吃音が,脳梁梗塞後に再発・重度化した57歳,右利き男性を報告した。本症例の発話特徴を分析したところ,1 )吃症状の内容は,音・音節の繰り返し,準備,とぎれの順に多く,2 )舌打ちやしかめ面などの随伴症状を伴い,3 )適応性効果,復唱・斉唱効果,マスキング効果がみられず,4 )一貫性効果,歌唱効果が認められた。以上の特徴から,本症例では発達性吃音,症候性吃音両者の特徴を有すると考えられ,前者の再発に加え,新たに後者が生じた可能性が推察された。脳梁梗塞後に吃音が生じたとされる文献例と本症例の病巣を比較したところ,共通している病変部位は脳梁幹であった。すなわち,発話に関する左右半球間の統合には脳梁幹がなんらかの役割を担っている可能性が示唆された。
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