高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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27 巻 , 4 号
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教育講演
  • 三村 將
    2007 年 27 巻 4 号 p. 278-289
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    内側前頭前野(medial prefrontal cortex : MPFC)の機能について,局在損傷例の神経心理学的検討と,健常例の機能的神経画像所見を中心に概説した。MPFC の機能は大きく分けて,下位目標の処理と,感情的重みづけの2 つに集約される。前者はMPFC のより前方,後者はより後方の領域にマップされている。下位目標の処理については,MPFC は複数の異なる認知操作の組み合わせを必要とする問題解決過程において,中間過程の操作や統合にかかわる。なかでもみずから内的に生成した情報の処理に優先的に働くため,記憶障害のリハビリテーションを考える上でも重要である。MPFC の後方領域は,自分自身の感情状態と関連し,心の理論や自己の感情的価値判断に重要と考えられる。今後はこれらの高度の感情処理が脳の損傷でどのように障害されるかを検討するのにとどまらず,健常者ではどのように形成されていくのかも探求していく必要がある。
原著
  • 小早川 睦貴, 小田桐 匡, 大東 祥孝
    2007 年 27 巻 4 号 p. 290-297
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    物品使用パントマイムと実使用との違いを調べるため,アイマークレコーダーを用いそれぞれの過程における対象の視覚的分析過程を比較した。
      実験は健常大学生を対象とした。被験者は提示された日常物品に対してパントマイムあるいは実使用動作を表出した。その際の眼球運動パターン,および開眼から運動開始までの時間(運動潜時)を測定した。
      結果として,運動潜時に関して,パントマイム条件では実使用よりも運動開始までに要する時間が長かった。また,注視パターンに関して,機能部への注視がパントマイム条件で多く,把持部への注視が実使用条件で多いことが示された。
      パントマイムと実使用との反応潜時の違いから,パントマイムにおいては何らかの処理負荷が大きい可能性が考えられる。また,視線データから,実使用では物品の把持に関する情報を優位に処理しているのに対し,パントマイムでは対象の機能に関する情報を処理していることが考えられた。
  • 花木 りさ, 目黒 謙一, 赤沼 恭子, 平山 和美, 森 悦朗
    2007 年 27 巻 4 号 p. 298-308
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    地域在住の軽度認知障害(MCI)高齢者を対象に,道具的ADL(IADL)障害と痴呆への移行との関連を検討した。対象者は,1998 年の調査で臨床的痴呆尺度(CDR)0.5 を基準にMCI と判定し,兵庫脳研版日常生活活動評価尺度(HADLS)でIADL,MMSE で認知機能を評価,2005 年の調査でCDR 1 以上を基準に痴呆移行の有無を判定した392 名である。MCI 対象者392 名中,HADLS の有効回答者は216 名,うちCDR 調査の同意が得られたのは165 名だった。このうち58 名が痴呆に移行していた。多重ロジスティック回帰分析の結果,痴呆発症の予測因子と認められたのは,男女全体の検討ではMMSE と年齢,男女別の検討では男女いずれでもMMSE のみであった。HADLS 総点,HADLS 中IADL に関する項目の合計点,HADLS の下位項目得点のいずれも,痴呆発症の独立した予測因子とはならないことが示された。
  • 五十嵐 武士, 佐藤 厚, 今村 徹
    2007 年 27 巻 4 号 p. 309-319
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    症例は73 歳,女性。63 歳頃から肛門痛を執拗に訴え,67 歳頃から幻視,幻聴および妄想を訴え,物忘れも指摘されるようになった。72 歳頃からは時刻表的生活が出現した。75 歳時の神経心理学的検査では,MMSE は28 点,ADAS は減点7 であった。遂行機能課題で,計画の障害,目的に沿った行動の障害,効果的な実行の障害が明らかであった。日常生活上では,脱抑制,易刺激性,常同的食行動異常などが認められた。頭部CT 画像では前頭葉の萎縮と基底核の軽微な石灰化が認められた。本症例の臨床症状は前頭側頭型痴呆(FTD)との類似点が多いが,きわめて緩徐な進行や,初期症状が幻覚,妄想であることなどの点はFTD としては非典型的であり,むしろ経過と臨床症状には石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病(DNTC)との共通点も多い。生前の画像診断においては軽微な石灰化しか検出されないDNTC の可能性も考えつつ,経過を観察する必要がある。
  • 中川 佳子, 政岡 ゆり, 本間 生夫
    2007 年 27 巻 4 号 p. 320-326
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,加齢による日本語助詞能力への影響を検討するため,助詞判断課題を用いて後期高齢者の助詞の理解·表出力を評価した。75 歳以上の後期高齢者6 名(平均年齢77.8 歳,教育歴12.1 年)を対象に,Mini-Mental State Examination(MMSE),Frontal Assessment Battery(FAB), 言語流暢性課題(WFT),日本語文法理解テスト(J.COSS),助詞判断課題を用いてさまざまな能力を評価した。その結果,MMSE から知的機能障害が疑われる対象者はほとんどいなかったが,助詞の理解·表出力は,FAB,WFT,J.COSS 同様に,加齢による低下が示された。そのため,これらの対象者に対して,助詞判断課題を用いた1 ヵ月間にわたるトレーニングを行った。トレーニング後,知的機能に変化は認められなかったが,J.COSS と助詞判断課題の成績はトレーニング前よりも有意に上昇し,文法能力が向上した。助詞判断課題はMMSE と有意な相関係数が示されていることから,助詞判断課題を用いたトレーニングは,後期高齢者の知的機能の維持と,文法能力を向上させる効果がみられる有効な方法である可能性が示唆された。
  • 石丸 美和子, 小森 憲治郎, 真田 順子, 池田 学, 田邉 敬貴
    2007 年 27 巻 4 号 p. 327-336
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2009/01/07
    ジャーナル フリー
      喚語困難に始まり伝導失語像を呈した原発性進行性失語症例において,その経過中に鏡現象を認めた。鏡現象出現以降には言語機能の著明な低下に加え,視空間認知操作の障害,観念失行,手指認知障害を認めたが,その時点においても出来事の記憶や道具的ADL は比較的保たれていた。SPECT 画像では左優位の側頭頭頂領域に加え,鏡現象出現時には両側頭頂葉および前頭葉にも血流低下が及んでいた。鏡を用いた検査では,鏡の中の自己像について問われた場面で鏡現象が出現したが,その鏡を使って化粧することは可能であった。
      本例では言語と視覚情報処理過程に関わる側頭-頭頂葉機能の障害を背景に,情報のトップダウン処理に関わる前頭葉機能の障害が加わることにより鏡現象が出現した可能性を想定した。
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