高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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34 巻, 4 号
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原著
  • 野村 心, 甲斐 祥吾, 引地 由香理, 芝尾 與志美, 本田 昇司, 中島 恵子
    2014 年 34 巻 4 号 p. 385-393
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2016/01/04
    ジャーナル フリー
      農協共済別府リハビリテーションセンター (以下当センター)障害者支援施設「にじ」では, 高次脳機能障害者に対して様々な訓練プログラムを提供している。しかし, 病識の低下を呈したケースでは, 訓練の導入・継続に難渋する。そこで, プログラムの一つである農園芸訓練において高次脳機能と作業内容・難易度との関連性について記載した能力表と難易度表を作成した。能力表は作業内容とそれに必要とされる身体機能・認知機能に分類し, 写真とともに呈示した表である。難易度表は 1. 注意・情報処理, 2. 記憶・遂行機能, 3. 上肢・手指機能, 4. 下肢・バランス機能に区分して作業の難易度別に階層的に配置した表である。これらの可視化した表を用いた結果, 現実検討の機会を得て, 目標の再設定から社会復帰へと繋がった症例を経験した。今回作成した能力表・難易度表はセルフフィードバックの機会をより高め, 障害への気づきおよび訓練目的の理解を深める効果があると示唆された。
  • 津田 哲也, 中村 光, 吉畑 博代, 渡辺 眞澄, 坊岡 峰子, 藤本 憲正
    2014 年 34 巻 4 号 p. 394-400
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2016/01/04
    ジャーナル フリー
      項目間の意味的関連性を統制した非言語性意味判断課題を用いて, 失語症者の意味処理能力を検討した。対象は右利き失語症者 35 例 (平均 65.4 歳) および同年代の健常者 10 例 (統制群)。課題では提示された目標項目に対し, 対象者に 5 つの選択肢のなかから, 最も意味的関連性が強いと判断する 1 項目を指すよう求めた。選択肢は質的に異なる 2 つの意味的な関連性 (状況関連性と所属カテゴリー関連性) の有無を基準に設定した。例えば, 刺激項目が「犬」の場合, 状況と所属カテゴリーもどちらも関連する項目 SC (猫), 状況的関連のある項目 S (家), 所属カテゴリーが関連する項目 C (象), 生物・非生物のみ一致するが状況・カテゴリーの関連性はない項目 N1 (鯛), いずれも関連のない項目N2 (消しゴム) の線画を提示した。その結果, 統制群・失語群いずれも全反応中に占める比率は SC が最も多く, 次いで S または C の順で, N1・N2 は最も少ない反応であった。また, 失語重症度別・聴覚的理解力別での反応に有意な偏りを認め, 重度群・理解不良群は軽度群・理解良好群よりも全反応中の N1・N2 の比率が有意に高かった。失語症者において重症度・聴覚的理解力と非言語性意味処理には一定の関連があることが確認された。以上より, 多くの失語症者は非言語性意味判断において, 状況関連性やカテゴリー関連性という判断基準を利用できることが示された。
  • ―隠し文字法を使用した訓練経過における改善を通して―
    熊倉 真理, 堂園 浩一朗
    2014 年 34 巻 4 号 p. 401-412
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2016/01/04
    ジャーナル フリー
      漢字の音読/書字障害を伴うカテゴリー特異的傾向を有する失名辞を呈した左側頭葉ヘルペス脳炎後遺症例を経験し, その症状経過と訓練過程をもとに本症例の障害機序について検討した。本症例はカテゴリー特異的傾向を有しており, 工具での呼称学習が比較的速やかであったのに対し, 生物カテゴリーでの呼称は混合性錯語や tip of the tongue 現象を顕著に示し, 改善を認めなかった。視覚的認知/記憶が比較的良好であったことを生かし, 語頭音を絵カードの中に組み込む刺激を作成し, 訓練に使用したところ, 呼称成績は著しく改善し, 刺激を取り去ってもその効果は持続した。本症例は, 意味カテゴリー特異的失名辞を呈していたが, その機序として意味レベルと音韻レベルの相互活性化が, カテゴリーによる意味賦活系の差異を反映する形で脆弱化していたと考えられた。
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