高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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35 巻 , 3 号
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シンポジウムIII : 頭部外傷をめぐる最近の話題
  • 三村 將, 加藤 元一郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 263-264
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
  • 益澤 秀明
    2015 年 35 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      びまん性軸索損傷は重度から最軽度の軽度脳外傷まで量的に連続する脳外傷病態スペクトラムである。脳挫傷などの局在性脳損傷が合併していても閉鎖性頭部外傷の転帰・後遺障害ではびまん性軸索損傷が主体とされる。びまん性軸索損傷後遺症は精神症状 (脳外傷による高次脳機能障害: 認知障害と情動障害からなる) と神経症状 (小脳失調と中枢性運動麻痺) からなり, 軽重の違いはあっても共通している。 重度ほど自己洞察性が低下し病識・自覚症状が減少・消失するのも特徴である。後遺障害の程度は受傷直後からの意識障害期間と, また慢性期の脳萎縮・全般性脳室拡大の程度と有意に関連する。障害が軽度ほど, また若年齢ほど長期的には改善傾向が著しい原則がある。軽度脳外傷後の一部症例に遅発し遷延するʻ脳振盪後症候群ʼは脳外傷重度と関連せず, 症状に改善傾向がなく遅延増悪し, 自己洞察性が正常~亢進しているのが特徴である。
  • 髙尾 昌樹, 百島 祐貴, 女屋 光基
    2015 年 35 巻 3 号 p. 271-275
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      非穿通性の頭部外傷を, 病理学的側面から基本的な点に関してまとめた。頭蓋骨と脳硬膜との間の出血を硬膜外出血, 脳硬膜と脳くも膜との間の出血を硬膜下血腫という。前頭部を打撲し急速に頭部が動くと, 脳自体の動きは遅れ, 前頭部頭蓋骨内面が脳に接触し脳挫傷を生じる。回転や剪断力により, 脳実質軸索に障害をきたしたものを, 外傷性軸索損傷という。病変が広範だと遷延性意識障害きたす。病理学的に脳梁や脳幹背側に点状出血, 組織学的に軸索腫大を認める。反復的な外傷により, 脳内に変性疾患にみられる病理所見を生じることがある。主にプロボクサーが 10 年程経過してから, パーキンソン症候群, 認知症をきたすボクサー脳症が有名である。頭部打撃が反復的に加わるアメリカンフットボールやアイスホッケーなどのスポーツ選手にも類似の病態が知られ, 慢性頭部外傷に伴う脳症 (Chronic traumatic encephalopathy: CTE) と呼ばれる。病理学的には, タウ陽性の神経原線維変化がアルツハイマー病とは異なる分布で沈着する。
  • 高畑 圭輔, 加藤 元一郎, 三村 將, 島田 斉, 樋口 真人, 須原 哲也
    2016 年 35 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      近年, 頭部外傷の分野で, 国内外においてトピックとなっているのが, 受傷から数年以上のインターバルを経て出現する遅発性の症候である。本総説では, 頭部外傷後にみられる代表的な遅発性病態である慢性外傷性脳症 (CTE) と頭部外傷後精神病 (PDFTBI) について解説する。CTE は, ボクシングやアメリカンフットボールなど反復性軽度頭部外傷を受けた個体にみられる進行性の神経変性疾患であり, 精神症状, 認知機能低下やパーキンソニズムなどが出現する。神経病理学的には神経原線維変化などのタウ病変によって特徴付けられる。一方, PDFTBI は, 重度の頭部外傷から数年後に出現する精神病状態であるが, 詳しい病態はわかっていない。近年, PET によってタウ病変やアミロイド病変の検出が可能となりつつあり, 頭部外傷による遅発性病態の生前診断や背景病理の評価が可能となると期待されている。本総説では, 我々が行っている頭部外傷患者を対象としたタウイメージング研究の結果についても紹介する。
  • 上田 敬太
    2015 年 35 巻 3 号 p. 283-290
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      社会認知障害は, 高次脳機能障害の定義の中で, 他の認知障害と並んで中心的な症状とされ, 近年改訂された DSM-5 の neurocognitive disorders の診断基準の中でも同様の扱いを受けている。社会認知障害を含めた認知機能の障害は, それぞれある一定の脳内基盤を持つと考えられ, 外傷性脳損傷でも, 損傷部位の特徴から, 出現する認知機能障害の特徴を理解しうると考えられる。本稿では, 外傷性脳損傷を局所脳損傷とびまん性軸索損傷の 2 型に分類した上で, それぞれの特徴的な脳損傷部位, およびそれを基盤として生じる認知機能障害について紹介した。特にアパシーについては, その定義, 神経基盤を含め詳述した。
シンポジウム IV : 認知症の言語症状を徹底的に討論する
  • 松田 実, 池田 学
    2015 年 35 巻 3 号 p. 291
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
  • 池田 学
    2015 年 35 巻 3 号 p. 292-296
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      アルツハイマー病などの変性疾患による認知症の言語症状は, 要素的には脳血管障害による失語と共通点も多く, 蓄積されてきた失語の症候学は有用であるが, 一部はまったく異なる視点で捉える必要がある。そこで, 本稿では変性性認知症の言語症状の特徴を, コミュニケーションの困難さという視点から概説しておきたい。認知症者の多くは寡黙であるが, その背景には不安, 抑うつ, 意欲の低下といった精神症状が影響している場合が多い。また, 変性疾患による認知症に伴う言語症状の場合, 失語症状を引き起こしている神経基盤とは直接関係のない, 注意や記憶, 見当識の障害といった全般的な認知症状 (もちろん疾患特異的な症状は多い) を理解しておくことがより重要である。リハビリテーションに関しても, 進行性であるということをふまえて, できるだけ早期に開始するとともに, 失われた機能を回復させようという視点ではなく, 保たれている機能を維持するという視点が必要である。
  • 大槻 美佳
    2015 年 35 巻 3 号 p. 297-303
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      進行性非流暢性失語 (PNFA/nfvPPA) 24 例を対象に, 神経学的所見, 神経心理学的所見, 画像所見, および経過を検討した。その結果, 少なくとも 3 群に分類された。(1) 前頭葉性失語型 (古典的失語症分類ではブローカ失語, 超皮質性運動失語に該当する言語症状を呈する群) , (2) 前部弁蓋部症候群型, (3) 純粋失構音型である。(1) は発症 3 ~5 年以内に, bvFTD と同様の精神症状や行動異常を呈した。(2) は発症早期に流涎や口部顔面失行を呈し, 1 ~3 年以内に嚥下障害を呈した。(3) は失構音のみ進行する場合, 失調症状を伴う場合, 発症から 2 ~5 年以内に, パーキンソニズムや中心回症状を呈し, CBS と診断されるに至った場合など, いくつかの亜型分類がさらに可能であった。これらの群は, 画像診断で明らかな所見が得られない時期でも, 初診時の症候学的検討で, 分類することが可能であると考えられた。
  • 橋本 衛, 一美 奈緒子, 池田 学
    2016 年 35 巻 3 号 p. 304-311
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      意味性認知症 (Semantic dementia: SD) における言語性意味記憶障害の病態を検討した。軽度~中等度の語義失語を呈する SD 患者7 例に対して, 慣用句の意味を尋ねた。正答率はわずか 2.9%であり, 全例で著明な慣用句の意味理解障害を認めた。慣用句はそれ自体が意味を持ち, 言語という媒介がなければ成立し得ない知識であることから, 言語性意味記憶の一つとみなすことができる。したがって SD では, 病初期から著明な言語性意味記憶障害を呈することが示された。次いで 1 例の SD 患者に対して, 身体部位と関連する 12 個の単語 (足, 肩など) を用いて, それらの中核的意味 (身体部位としての意味) と副次的意味 (中核的意味から派生した意味で, ゛机のあし”のように暗喩として用いられる意味) の理解を調べた。結果は, 中核的意味は完全に理解できたが, 副次的意味はまったく理解できなかった。この結果から, SD では最初に語の暗喩的な側面が障害され, その後中核となる意味が失われ語義失語に至ると考えられた。
  • 松田 実
    2015 年 35 巻 3 号 p. 312-324
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      通常のアルツハイマー型認知症 (AD) の言語症状は, AD の神経病理の分布を反映して健忘失語から超皮質性感覚失語に移行していくのが一般的である。言語障害を主症状とする AD の亜型があり, 原発性進行性失語 (PPA) の一型とされている logopenic progressive aphasia (LPA) 以外に (1) 喚語困難/ 漢字の健忘失書型, (2) 超皮質性感覚失語型, (3) 左側頭葉型 (意味性認知症様の AD) なども存在する。LPA を構成する各徴候の軽重も症例により多様であり, 一症候群を形成するといえるのかどうか疑問であるが, 変性疾患としての特異性は著明な言語性短期記憶障害にあるのではないかと考えられた。
原著
  • 石川 幸伸, 藤田 郁代
    2015 年 35 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      失語症患者における言語性保続の発生に関係する要因を明らかにするために連続呼称課題を実施し, 語の意味的・音韻的関連性と刺激提示の時間間隔 (RSI: Response Stimulus Interval) から検討した。また言語性保続の発生と脳病変部位の関係について検討した。対象は失語症患者 14 名 (全例右利き) であった。方法は 60 語からなるリストを3 種類 (意味的関連, 音韻的関連, 無関連) 作成し, RSI 1 秒と RSI 15 秒で語を連続的に呼称させた。その結果, 言語性保続は意味的関連リストと RSI 1 秒の条件で有意に多く発生した。左前頭葉病変群は他の病変群より意味的関連語を RSI 15 秒で連続的に呼称する際に多くの言語性保続を呈した。以上から語の意味的関連と RSI が言語性保続の発生に影響を及ぼし, 左前頭葉における意味情報の調整機能低下が言語性保続の発生に関与すると考えられた。
短報
  • 近藤 郁江, 中川 良尚, 佐野 洋子, 船山 道隆, 加藤 正弘
    2016 年 35 巻 3 号 p. 332-337
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2016/10/01
    ジャーナル フリー
      失語症の長期経過については多数の報告があるが, 治療中断期間を含む長期経過の報告は見当たらない。
      今回我々は, 2 年 3 ヵ月の言語治療の後, 2 年 3 ヵ月にわたる治療中断期間を経て治療を再開した失語症例を経験した。その経過を, 標準失語症検査の総合評価法得点および下位項目成績の変化から検討した。
      その結果, 発症後 7~27 ヵ月時の間に言語理解能力, 発症後 28~55 ヵ月時の間に音読を中心とした表出能力, 発症後 56~70 ヵ月時の間に書字能力を中心に, 機能回復が生じていた。本症例の治療経過から, (1) 言語機能の回復には, 言語機能様式により順序性が存在する可能性があること, (2) 言語治療が中断されても, 外的言語刺激の受容によって言語機能が回復する可能性があること, (3) 書字能力の回復には, 日常生活を上回る外的な文字言語刺激が必要である可能性があることが示唆された。
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