高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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29 巻 , 4 号
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原著
  • 用稲 丈人, 種村 純
    2009 年 29 巻 4 号 p. 386-398
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    Raven's Progressive Matrices (RPM) の3 課題であるColored Progressive Matrices, Standard Progressive Matrices,Advanced Progressive Matrices を脳損傷者と健常者の 101 名に実施し,推理能力の段階的な尺度構成を試みた。RPM 成績にクラスター分析および Guttman 法の尺度解析を実施し,尺度と神経心理学的検査との関連を検討した。解析の結果,RPM の推理過程は「視知覚的分析に基づく1 次元的な規則性の発見」,「視知覚的分析に基づく2 次元的な規則性の発見」,「視知覚的分析に基づいた 2 次元的規則性に変換を加えた推理」の 3 構造を持ち,8 段階の尺度化が可能 (Rep >.90) であった。尺度は段階ごとに注意,記憶,遂行機能検査と異なる有意な相関を示し,認知処理にはワーキングメモリも関連すると考えられた。また,8 段階の合成項目得点による全例の通過率分布からは,推理能力の段階的な評価が可能であると考えられた。
  • 大賀 優, 須田 真紀, 坂居 隆
    2009 年 29 巻 4 号 p. 399-407
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    近年Mariën ら (2004) は脳血管障害に起因する成人右利き交叉性失語において通常失語と異なるいくつかの特徴が存在することを主張している。本研究では,彼らの基準である (1) 右利き,(2) 病変が右大脳半球に限局,(3) 小児期の脳損傷なし,(4) 左利きの家族歴なし,(5) 十分な言語検査の遂行評価あり,を満たす当施設6 症例に対し,疾患・年齢・性別・失語型・解剖学的相関 (鏡像型/異常型)・重症度・音声─書字言語乖離・機能予後・言語以外の認知障害の有無,を調査分析した。その結果,(1) 非流暢な失語が多いわけではない,(2) 通常失語でいわれる臨床型─年齢との相関は明らかでない,(3) 機能予後は必ずしも良好ではない,(4) 随伴症状として左半側無視が多い,等の点は彼らの主張する特徴と一致する反面,(5) 男性が圧倒的に多いわけではなく,(6) 発語失行が少ない,等異なる点もみられた。彼らの主張の妥当性に関しては,その分析手法も含め今後さらなる症例の蓄積検討が待たれる。
  • 塚本 能三
    2009 年 29 巻 4 号 p. 408-414
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    脳梗塞再発後に動作の解放現象を呈した 1 例を報告した。本例の病巣は左前頭葉運動前野の広範に及んでいた。本例の動作は警備の職務上使用してきた,車の運転手や歩行者に示す誘導信号動作であった。発症時から,動作の現れ方で 4 期に分けて検討を加えた。結果,本例の動作は過去に報告された強迫的な動作の解放現象ではないと考えられた。発現には,(1) 重度失語症という重篤なコミュニケーション障害を有していたこと,(2) 誘導信号動作がコミュニケーション手段として確立していたこと,(3) 前頭葉機能損傷による影響,さらに (4) 治療者との関係,すなわち本例の評価される立場から生じる高揚感など,心理学的な側面による影響,および (5) 本例の性格的側面の影響が関わっている可能性が考えられた。
  • 宮崎 泰広, 種村 純
    2009 年 29 巻 4 号 p. 415-425
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    半側空間無視に対する効果的な訓練法を検討することを目的に,メトロノームによるリズム聴覚刺激を用いていくつかの条件下で花の模写課題を施行し,その反応を分析した。実験は (1) 無視側からの聴覚刺激の効果,(2) 聴覚刺激側による違い,(3) 聴覚刺激のリズムによる効果の違いであった。結果は (1) 重症度の異なる各症例においても一定の向上を示したが,その一方で効果を示さなかった症例も存在した。(2) 無視側と反対側からのリズム聴覚刺激においても刺激なしに比べて課題は高得点であったが,無視側と反対側に固執してしまう傾向がみられ,無視側からの刺激のほうが良好であった。(3) リズム間に課題の反応に違いを示した。以上より,本研究で用いたメトロノームによるリズム聴覚刺激は半側空間無視の改善に一定の効果を示した。
  • 飯干 紀代子, 稲益 由紀子, 尾堂 友予, 笠井 新一郎, 新牧 一良, 猪鹿倉 忠彦
    2009 年 29 巻 4 号 p. 426-433
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    療養型医療施設入所中の認知症者 63 例 (男性 22 例,女性41 例,平均年齢75.8±7.1 歳,MMSE 平均22.7±4.0 点) に集団での包括的認知訓練を 4ヵ月実施し,MMSE 得点および MMSE下位項目得点の変化を分析した。訓練内容は言語・空間・構成・計算・注意・記憶・遂行で構成され,1 セッションは約 60 分であった。1 グループの患者数は約 15 例で,スタッフは言語聴覚士など約5 名であった。訓練前と終了後の MMSE 得点を比較すると,全対象では0.7 点上昇したが有意差はなかった。認知症の原因別では Alzheimer 型と Lewy 小体型が 1.4 点,認知症の重症度別では MMSE 21~23 点の群が 1.6 点の有意な上昇を示した (p < 0.05)。また,MMSE の下位項目得点では見当識と言語の項目に有意な上昇を認めた (p < 0.05)。本対象と MMSE 得点が同程度の Alzheimer 型認知症に対する塩酸ドネペジルの薬効は 0.3~1.3 点とされることから,服薬と包括的認知訓練を併用することの効果が示された。とくに,見当識と言語の項目は改善しやすいことが示唆された。
  • 北條 具仁, 船山 道隆, 中川 良尚, 佐野 洋子, 加藤 正弘
    2009 年 29 巻 4 号 p. 434-444
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2011/01/05
    ジャーナル フリー
    脳損傷後に距離判断が困難となった症例の報告は非常に少ない。今回われわれは,脳損傷後に距離判断が困難となった 2 症例 (1 例目は右頭頂-後頭葉の脳出血,2 例目は両側頭頂-後頭葉の脳梗塞 )を報告する。本 2 症例は,Holmes の提唱したvisual disorientation (1 例目は不全型)を呈し,その1 症状として距離判断の障害が出現していた。過去の報告例における距離判断の障害の根拠は主に主観的な訴えであったが,われわれはより客観的な距離判断の障害を検出する目的で,1 例目の症例に対して,大型車や 2 種免許を取得・更新する際に用いられる距離判断の検査機種 (KowaAS-7JS1) を用いて距離判断の検査を行った。その結果,健常者群および左半側空間無視群と比較して有意な成績の低下を認めた。本 2 症例および過去の報告例から,距離判断の神経基盤は,右側を中心とした頭頂-後頭葉の後方,すなわち,上頭頂小葉,下頭頂小葉後部,楔部にある可能性が考えられた。
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