高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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最新号
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
会長講演
  • 鈴木 匡子
    2024 年 44 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

      高次脳機能障害の研究には, 症候を理解し, 診断や治療に結びつける臨床的側面と, 症候を深く検討することで高次脳機能にかかわる脳のしくみを明らかにする神経科学的側面がある。近年では心理学, 老年学, 情報学, 社会学など多くの分野が, 高次脳機能障害に関連する研究に携わっている。さらに, 高次脳機能障害者の支援のために, 行政や福祉, 地域だけでなく, 当事者や介護者も参加した体制作りが始まっている。このような状況において, 高次脳機能障害にかかわる医療者はこれまで以上に広い分野の人とつながり, 相互に強みを生かしながら研究を進めていくことが求められている。そのためには, 他分野の人にもわかりやすく情報を発信し, さまざまな分野への興味をもち続けることが必要と考えられる。

教育講演
  • 大沢 愛子
    2024 年 44 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

      脳卒中のリハビリテーションでは, 運動障害や摂食嚥下障害に焦点が当てられることが一般的だが, 実際には高次脳機能障害も頻繁にみられる。高次脳機能障害の主な原因は脳卒中であり, その治療においても, 高次脳機能障害の特徴を知り対処法を検討する必要がある。高次脳機能は日常生活のあらゆる行動に関与しており, 日常生活の自立を支援するためには, 運動と認知の両面からアプローチを行う必要がある。また, 高次脳機能障害では, 失語, 失行, 失認, 注意障害, 記憶障害, 感情障害などの機能障害だけでなく, 何らかの生活障害を必ず引き起こす可能性が高いため, どのような生活上の問題があるかを観察および評価から分析し, 個々の患者の病態に即し, 生活上の問題点を解決できるような治療手技を選択し, 治療効果をモニタリングしながら回復のメカニズムを考え続けることが大切である。

  • 加藤 弘樹, 森 悦朗
    2024 年 44 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

      びまん性軸索損傷 (DAI) を伴う外傷性脳損傷 (TBI) では, 従来の画像診断での異常が不明確になり, 客観的診断をすることが難しい。一方で, 多くの症例で認知機能の低下が認められ, 社会的, 経済的な支援が必要になることも多い。TBI における神経異常の客観的評価は, これらの患者の社会的, 経済的支援を促進する観点からだけでなく, 根底にある病理を理解するために重要である。123I-イオマゼニル SPECT (123I-IMZ SPECT) は, ベンゾジアゼピン結合によって神経活性を評価することができる。我々は, 123I-IMZ SPECT および MRI を使用して DAI を伴う TBI の症例における神経損傷の分布および程度を明らかにすることを目的とした多施設共同研究を行ってきた。その結果, TBI の患者では, 内側前頭/ 眼窩前頭皮質, 後部帯状回, 楔部, 楔前部, および小脳上部で 123I-IMZ の結合の低下が検出された。帯状回, 前頭葉, 頭頂葉, 後頭葉の内側領域, および小脳の上部領域における 123I-IMZ 結合低下によって高い診断精度で TBI の診断ができることが示された。

  • 上田 敬太
    2024 年 44 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

      外傷性脳損傷は, 直達外力による局所脳損傷と, 回転に伴う剪断力から生じるびまん性軸索損傷に分類され, 実際の症例では合併して生じていることも多い。局所脳損傷症例の半数以上は眼窩前頭前野を中心とした脳損傷を呈し, 同部位の損傷に起因する諸症状を呈する。びまん性軸索損傷では, 脳梁を代表とする深部白質, 視床などの深部灰白質, 小脳, 脳幹などの体積低下を認め, やはり損傷部位に応じた症候学的特徴を呈する。一方で, 神経基盤の明らかではない後遺症もさまざまあり, 本稿では神経基盤の明らかな後遺症, そうではない後遺症に分けて列挙し, 解説した。

原著
  • 大森 智裕, 藤田 郁代
    2024 年 44 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

      本研究の目的は, 失語症における呼称の障害特性を反応時間およびその関連要因から検討し, 失語症者の呼称成績が, 呼称の開始時間を先延ばしすることによって改善するかどうかについて検討することであった。対象は失語症者 19 名であった。方法は, 線画の呼称課題を実施し, 正答・誤答の反応時間を計測した。これを基に, 誤答の反応時間の累積相対度数が 80% となる時間幅を失語症者ごとに抽出し「誤反応時間幅 (error response time : 80% ERT) 」と定義した。続いて, 呼称開始時間の異なる呼称課題 (80% ERT 条件・即時条件) を実施した。80% ERT 条件は, 刺激提示から 80% ERT が経過した時点で呼称を求めた。その結果, 失語症者では, 誤答は正答より反応時間が長く個人差が大きいことが明らかとなった。 また, SLTA 呼称成績が良好な症例ほど呼称の先延ばしによって呼称成績が改善する傾向がみられた。以上から, 失語症者の呼称訓練に際して, 呼称開始時間を考慮することの臨床的意義について考察した。

第47回 日本高次脳機能障害学会学術総会講演抄録 一般演題
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