高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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32 巻 , 4 号
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原著
  • 中谷 謙, 能登谷 晶子, 高橋 秀典, 宮崎 眞佐男, 田中 裕, 小山 善仁
    2012 年 32 巻 4 号 p. 552-560
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       両側大脳半球に病変を有し, 自己の発話に対して病態否認様の症状を呈した純粋語唖の症例について報告する。症例は 78 歳の右利き男性。頭部 CT の結果, 左中心前回とその周辺, および右上側頭回から縁上回にかけて病変が認められた。言語症状, 病変部位などの検討の結果, 本症例は左半球病変を責任病巣とする純粋語唖と考えられた。本症例には, 発話の障害に焦点を当てた言語訓練を実施したが, 2 年以上経過後も, 重篤な構音障害に改善は認められなかった。本症例は聴覚的理解能力や語音弁別能力は正常であったが, 自己の発話に関して病態否認様の反応を呈した。その一方で, 言語訓練の継続には固執するという矛盾を呈したので, あわせて考察を試みた。
  • 越部 裕子, 宇野 彰, 加藤 正弘
    2012 年 32 巻 4 号 p. 561-571
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       本研究は日本語話者の失語症者群のひらがな文字列音読において単語属性を統制した刺激を用いることで背景となる情報処理過程を検討することを目的とした。本研究で検討した属性は, 文字数と音節数の一致性, 親密度, 心像性, 語彙性, 文字長である。参加者は中度から軽度の慢性期失語症者21 名で, 彼らに単語属性を統制したひらがな単語100 語とひらがな非語50 語の音読と音読に関わると思われる認知神経心理学的検査を実施した。その結果, 文字数と音節数の一致性, 親密度, 心像性, 語彙性, 文字長の属性効果が認められた。またカテゴリカル回帰分析の結果からひらがな文字列音読には「名詞の類似性判断 (聴覚呈示) 」と「目標モーラの検出」が重要な認知能力であるとの結果が得られた。失語症群のひらがな文字列音読に親密度, 心像性, 語彙性などの語彙に関する経路が関与していること, ひらがな文字列音読に意味と音韻の能力が関与していることが示唆された。
  • 伊澤 幸洋, 小嶋 知幸, 浦上 克哉
    2012 年 32 巻 4 号 p. 572-580
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       アルツハイマー病 (AD) 患者における簡易知能検査と WAIS-Ⅲ の関連および疾病による知能特性について検討した。対象は, DSM-ⅣとNINCDS-ADRDA の診断基準を満たした AD 患者78 例 (男性 21 例, 女性 57 例) で平均年齢 81.6±6.0 歳であった。検査はHDS-R, MMSE, RCPM の簡易知能検査と WAIS-Ⅲ を実施した。その結果, 各簡易知能検査と WAIS-Ⅲ FIQ, VIQ, PIQ はそれぞれ中等度以上の有意な相関を認め, 旧版のWAIS ・WAIS-R で認めた併存的妥当性は維持されていると考えられた。RCPM は WAIS-Ⅲ動作性下位検査との相関から構成能力や図形の認知処理との関連は強いが, 推理能力との関連はやや弱いと考えられた。また, AD による知能特性として WAIS-Ⅲ の「類似」と「理解」の成績低下から抽象化能力および社会通念の低下がうかがわれる一方, 「数唱」と「行列推理」は比較的高得点であり, 言語性短期記憶や収束的思考能力は疾病の影響を受けにくい知能領域と考えられた。
  • 小林 康孝, 筒井 広美, 木田 裕子, 大嶋 康介, 富田 浩生
    2012 年 32 巻 4 号 p. 581-589
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       軽度外傷性脳損傷 (MTBI) は, 診断が困難な故に診断までに時間を要する。MTBI による高次脳機能障害の場合, さらにその診断は困難で時間を要し, 発症早期のリハビリテーションを受けずに病院を渡り歩く症例が多い。今回, MTBI により高次脳機能障害を来した 3 例をもとに, その問題点を検討した。症例 1 は, 診断までに時間を要し, 十分なリハビリテーションを受けられなかった。また病態に対する家人の理解が不十分であることが, 本人の負担を重くしていた。症例 2 は身体症状の訴えが多く, 十分なリハビリテーションを行えなかった。また, 自賠責保険の等級認定に関する裁判を抱えている。症例 3 は神経心理学的検査結果からの客観的所見はないが, 記憶障害等の自覚症状が強く, ドクターショッピングを続けた。3 症例とも頭部 MRI 上は明らかな異常を認めなかった。今後 MTBI による高次脳機能障害者への支援を進めるには, 病態の解明, 医療従事者の理解, 画像診断の進歩が望まれる。
  • 浅井 慈子, 臼木 千恵, 磯部 史佳, 佐藤 厚, 今村 徹
    2012 年 32 巻 4 号 p. 590-600
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       目的: 極めて緩徐な進行を示すアルツハイマー病 (AD) 患者の特徴を明らかにする。対象: 物忘れ外来 1 施設で初診時評価の 1 年後に MMSE を施行された AD 患者 122 名。平均年齢80.5±6.2歳, 平均 MMSE 得点18.7±4.6。方法: 初診 1 年後と 3 年後の間で MMSE 得点が低下しなかった患者を超緩徐進行 (VS) 群 (n=12) とし, 初診 1 年後時点の患者属性, 疾患属性および認知機能属性を VS 群とその他の患者 (n=110) との間で比較した。結果: VS 群は Alzheimer's Disease Assessment Scale (ADAS) の口頭命令課題と観念行為課題でその他の患者より有意に良好な成績を呈していた。結論:極めて緩徐な進行を示す AD 患者は, 失語, 失行といった新皮質症状がその他の患者より軽度であった。このような患者の一部, 特に高齢発症の患者は, 辺縁系神経原線維変化認知症などを有しているのかもしれない。
  • 草野 みゆき, 春原 則子, 渡辺 基, 百崎 良, 安保 雅博
    2012 年 32 巻 4 号 p. 601-608
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       慢性期失語症患者に対し短期間の集中的な言語訓練を実施し, その手法および効果について検討した。訓練は毎日40分×2回, 10日間個別に実施した。内容は 1) テーマを指定したスピーチ, 2) 症例ごとに設定した機能訓練, 3) PACE であった。また, 病棟スタッフとのコミュニケーション課題も設定した。介入前後に, SLTA, SLTA-ST (呼称) , Token Test, 失語症構文検査および日常生活上のコミュニケーション活動の状態に関する家族へのアンケート調査を行った。介入後, SLTA「聴く」以外で有意な改善を認め, 3 ヵ月後の評価でも6 項目中5 項目で成績は維持または改善がみられた。慢性期の失語症患者に対しても, その時点の言語機能の評価に基づいた集中的な介入を行うことによって, 言語機能や日常コミュニケーション能力に改善が得られることが示唆された。
短報
  • 白山 靖彦, 中島 八十一
    2012 年 32 巻 4 号 p. 609-613
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/01/06
    ジャーナル フリー
       本研究では高次脳機能障害者の相談支援体制に関して, 国立障害者リハビリテーションセンター発行の報告書 (2011 年) を基に統計的分析を加えて定量的に検討した。41 都道府県のうち外れ値として特定した 2 地域を除外し, 39 都道府県を分析対象とした。支援拠点機関における相談件数の年平均は, 直接相談 527.2 (±526.4) 件, 間接相談 269.3 (±301.2) 件, 総計796.5 (±735.0) 件であり, 人口 10 万人あたりに換算した総計は年 47.0 (±38.3) 件であった。また, 当該地域の人口と相談件数との間に有意な相関を示した。さらに, 39 都道府県を高次脳機能障害支援モデル事業 (以下「モデル事業」) に参加した 12 都道府県とそれ以外の 27 都道府県とに分けて群間比較をおこなったところ, 人口 10 万人あたりの件数に有意な差は認められなかった。したがって, モデル事業実施の影響は減少し, 高次脳機能障害者に対する支援体制の均霑化が図られたと示唆される。
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