高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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35 巻, 4 号
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原著
  • CIQ, CHIEF, SAQOL-39 の日本語版による分析
    大畑 秀央, 吉野 眞理子
    2015 年 35 巻 4 号 p. 344-355
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2017/01/03
    ジャーナル フリー
      失語のある人の参加, 環境因子, 健康関連 QOL を検討した。脳損傷による失語のある人 (失語群) 66 名, 脳損傷の既往のない人 (一般人口群) 51 名に, 参加の尺度 Community Integration Questionnaire (CIQ) 日本語版, 阻害因子の尺度 Craig Hospital Inventory of Environmental Factors (CHIEF) 日本語版 Ver.2 を実施したほか, 失語群からは健康関連 QOL の尺度 Stroke and Aphasia Quality of Life Scale-39 (SAQOL-39) 日本語版および他の関連尺度の情報を得た。CIQ では失語群の参加は一般人口群より有意に低かった。 CHIEF では失語群は一般人口群よりも阻害因子が有意に高かった。失語群では CIQ とCHIEF の総合得点に有意な正の相関を認め, 参加が高い人ほど感じている阻害因子が高かった。ロジスティック回帰分析, 相関分析の結果から, 失語のある人の参加には身体的自立度が, 阻害因子には参加状況が, 健康関連 QOL には言語機能が主に関与していると考えられた。
  • 二村 美也子, 古場 伊津子, 前澤 聡, 藤井 正純, 若林 俊彦
    2015 年 35 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2017/01/03
    ジャーナル フリー
      【はじめに】多言語話者で言語共通領域と特異領域の存在が知られているが, その関係について見解は一定ではない。【症例】再発左前頭葉腫瘍を有する48 歳男性。母語はポルトガル語で第二言語は日本語。成人以降日本に移住・日本語獲得し, 以後日本語を主に使用。覚醒下開頭腫瘍摘出術を施行。術中マッピングでは左下前頭回三角部で, 両言語で喚語困難を呈した (共通領域) 。また左中前頭回では, ポルトガル語のみ喚語困難や音の歪みがみられた (母語特異領域) 。【考察, 結論】本症例の特記すべき所見は, 共通領域と特異領域両者を認め, かつ中前頭回に母語特異領域を認め, 第二言語より母語で機能野の広がりが大きい点である。多言語話者の言語領域については, 母語・獲得時期・習熟度の他に, 環境下の使用頻度についてもその構成に影響を与える可能性があり, 多様と考えられる。機能温存目的のマッピングの際は, 各々の言語で評価する必要がある。
  • 中嶋 理帆, 中田 光俊, 沖田 浩一, 八幡 徹太郎, 林 裕
    2015 年 35 巻 4 号 p. 363-369
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2017/01/03
    ジャーナル フリー
      我々は右前頭葉の脳腫瘍摘出術後, 手指の意図的な運動を新たに開始することが困難となった症例を経験した。症例は 37 歳, 右利き男性。吻側補足運動野を含む右上前頭回, 中前頭回, 帯状回, および脳梁に浸潤する脳腫瘍を摘出した。術後 MRI で尾側補足運動野に梗塞巣を認めた。術後, 症例は左手で物を把持すると意図的に物を放すことができなくなる症状を呈した。しかし, 体性感覚刺激による運動開始のきっかけが与えられると, 容易に放すことができた。なお, 麻痺, 典型的な病的把握反射や失行は認めなかった。症状は徐々に軽減し, 術後 5 週で完全に消失した。本症例の症状は運動の抑制系や興奮系の障害, または両者の不均衡によるものと推察された。しかし, 運動の抑制-興奮の障害の臨床症状は多彩であり, 症状発現部位と責任病巣の関係や運動症状と関わる神経機能ネットワークは十分に解明されていない。今後, 症例を重ねた検討が必要と考えられた。
  • 大石 如香, 丹治 和世, 斎藤 尚宏, 鈴木 匡子
    2015 年 35 巻 4 号 p. 370-378
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2017/01/03
    ジャーナル フリー
      左頭頂葉梗塞によって生じた非流暢な伝導失語例の発話の特徴について検討した。症例は 81 歳右利き男性, 発話障害と右手指脱力で発症した。接近行為を伴った頻発する音韻性錯語や重度の復唱障害といった伝導失語でみられる特徴的な症状を認めた一方で, 発話速度の低下やプロソディ異常といった伝導失語では通常認められない非流暢性発話を呈した。発話に現れる音の誤り方について分析を行ったところ, 課題によらず音の歪みがみられること, 音韻性錯語の出現率に呼称と復唱で差がないこと, 子音の誤りは置換が多く, 転置が少ないことが明らかとなり, 中心前回損傷でみられる発話特徴に近似していた。病巣は左縁上回から中心後回の皮質下に及んでおり, 中心後回と中心前回は密な機能連合があることから, 中心後回の皮質下の損傷が本例の非流暢な発話に関連していることが示唆された。
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