日本を文化國家として再建せんがために, 戰後國民の輿望を担つて振興されつ瓦あるものが二つある。それは貿易と観光とである。
國立公園の増設通動も観光の分野明拓であると云う訳で, 通動頗る熾烈なものがある。
我國の國立公園通動は, 迂余曲折を経て今日に到つたのであつて, 担々左る眞直な道を樂々と進んで來たのではない。大正12, 3年頃には関東震災による経済不況に禍され, 昭和15, 6年頃からは, 漸次苛烈を加える戦争の嵐にまき込まれて, 非常な苦難の道を経て來て居る。
從つて今日の國立公園の前途は開けつゝあるかに見える情勢も, 何時変るかも予想はつかぬ。寧ろ今日こそ, 國立公園の当局者も國民も齊しくその使命や在り方に反省と理解を深めて, 今後の健全な発達を期すべき時ではなかろうか。こう云う意味から我國の國立公園に対して選定の標準とされて居る所を見直すのも徒爾ではあるまい。
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