真菌と真菌症
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25 巻, 3 号
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  • 岩田 和夫
    1984 年 25 巻 3 号 p. 194
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 坂野 喜子, 矢野 高, 山田 富保, 野沢 義則
    1984 年 25 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    二形性真菌 Candida albicans は, 酵母形 (Y) から菌糸形 (M) への形態変換によつて著しい膜脂質組成の変化がみられた. Y形細胞をメチオニンを含む合成培地へ移すことによりM形細胞が得られ, 経時的にリン脂質組成の変化が生じた. とくにホスファチジルセリン/ホスファチジルイノシトールは33%から7%に一過性の顕著な減少を示した. またすべてのリン脂質の脂肪酸組成も変化し, オレイン酸の減少とリノール酸の増加がみられ, 不飽和化の亢進が顕著であつた. 両形細胞から高純度に単離した形質膜について, 脂質組成および物理化学的性質の比較をおこなつたところ, エルゴステロールの含量がM形ではY形の約3倍であつた. またリン脂質組成には大差が認められなかつたが, それぞれの脂肪酸組成は異なつており, Y形に比較してM形ではオレイン酸が少なく, リノール酸が多い. このような脂質組成の相違は両形細胞の膜流動性に反映され, 電子スピン共鳴法による膜脂質の物理化学的性状の検索によつて, Y形の方がM形より流動性に富んでいることが示された. 一方, このような膜物性の変化は, 細胞内小器官および形質膜に結合している酵素の活性に影響をもたらした. 細胞壁の主成分であるキチン合成酵素は, M形に高くY形の数倍に達し, ホスホリパーゼは細胞増殖に伴い細胞外に遊出され, Y形細胞の培養濾液中に高い活性が認められた.
  • 石崎 宏, 小林 博人
    1984 年 25 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    家兎の抗 Sporothrix schenckii 血清, Cladosporium werneckii 血清, Saccharomyces cerevisiae 血清を一次抗体として S. shenckii 菌体に反応させ, 二次抗体としてフェリチン標識抗家兎 IgG ヤギ血清を用いて, 走査電顕で抗原の局在を観察した. また, フェリチン標識コンカナバリンAやカチオン化フェリチンを S. schenckii 菌体と反応させ, 同様にフェリチンの付着部位も観察した. その結果, S. schenckii 菌体表面に露出する抗原は, ラムノースとガラクトース決定基を有するがマンノース決定基を有せず, また, 酸性アミノ酸群も露出していると考えられた.
  • 石橋 康久
    1984 年 25 巻 3 号 p. 206-210
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    角膜真菌症は1955年以降の広域抗生剤およびステロイド剤の広範な使用とともに急激に増加してきた疾患である. 我々は日本における本疾患の報告例を集計した結果, 本邦においても1955年以降急増し, 近年ますますその傾向が強くなつていることを認めた. そこでまず角膜真菌症研究の第1歩として研究に適した実験モデルの確立を試みた結果, 東医歯大小型白色ウサギと新たに考案した改良接種法を用いて研究に最適な病変を作りだすことができた. そして角膜真菌症における菌側要因を知る目的で各種真菌の角膜に対する病原性の違いについてこのモデル系を用いて検討を行なった. その結果 Fusarium solani が最も病原性が強く, 同じ Fusarium 属でも F. moniliformeF. oxysporum は, あまり病原性が強くないこと, また Candida albicansF. solani に比較すると病原性が弱いことなどがわかった. これらのことは角膜真菌症の原因真菌として各真菌が占める割合と良く一致する結果であると考えられた. なお数種類の Fusarium を用いてヒト角膜真菌症由来株と植物腐生株との角膜に対する病原性を比較検討した結果, 同じ種の中では両者の間に病原性の違いはないものと考えられた. 角膜真菌症における宿主側要因としては, まず第1に角膜の損傷があげられる. 上皮および実質に損傷のない健康な角膜では, 結膜嚢内に多量に真菌が存在しても真菌症を発症しないことが知られている. ステロイド剤の影響については, 我々の実験の結果では宿主側に作用して炎症反応を抑制し, その結果真菌の発育が促進されるものと考えられた. 抗生剤の影響については, 一部の抗生剤点眼は角膜上皮層の上に通常よりも厚く mucin の層を形成するとされ, これが真菌などの寄生に促進的に働らくのではないかと考えられている.
  • 西村 和子
    1984 年 25 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    病原性黒色真菌, Fonsecaea pedrosoi, Cladosporium trichoides, Exophiala dermatitidis, E. jeanselmei および Phialophora verrucosa の neurotropism がヌードマウスおよびそのヘテロ接合同腹仔を用いて検討された. 前3菌種はマウス脳を強く侵したが, 後2菌種は侵さなかつた. F. pedrosoi 感染を受けた両マウス脳においては, 感染初期には菌糸発育に伴つて小膿瘍が形成されていた. 感染の進行と共にヌードマウスでは菌糸は発育し続け, 化膿性壊死性病巣が形成された. ヘテロマウスでは10日目頃より病変は肉芽腫性となり, 菌糸発育は抑制されていた. C. trichoides を接種されたヌードおよびヘテロマウスの脳においては, 感染初期には菌糸発育に伴つて小膿瘍が認められた. 病巣は速やかに拡大し, ヘテロマウスでは旺盛な菌糸発育を伴つた化膿性壊死性病変が, ヌードマウスでは細胞反応に乏しい, 大きな菌糸発育巣が認められ, 基部組織を変性壊死に陥れていた. E. dermatitidis 感染を受けた両マウス脳においては, 酵母様細胞を中心とした小肉芽腫性病変が多数認められた. ヘテロマウスでは菌接種40日後に病巣が消失したが, ヌードマウスでは持続的に小肉芽腫性病変が観察された. その病巣中の酵母様細胞の周囲にはアルシャンブルー陽性物質が産生されていた.
  • 坂口 平, 横田 勝司, 蝦名 敬一, 石塚 幸雄
    1984 年 25 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillu fumigatus のマウスでの実験的感染で, 感染経過中での各臓器, 組織内での生菌の消長は, 肝, 脾, 肺臓内では急速に減少するが, 107個生菌投与群で10日後でわずかであるが生存が見られたのは腎と脳であつた. また酵素抗体法で実際に溶血毒 (Asp-hemolysin) の産生と分泌が証明された. 溶血毒は感染を促進し, 毒素抗体では IgG が IgM より強く感染を抑制した.
    溶血毒投与マウスの病理組織学的所見では, 腎, 肝, 心, 脳に毒素による病変が認められた. 毒素はヒト白血球やモルモット腹腔Mφの形態学的変化を示した.
  • 山本 容正, 岩田 和夫
    1984 年 25 巻 3 号 p. 225-230
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    マウスの実験的 C. albicans 系統感染において血中に遊出する菌体抗原を125I標識 C. albicans 糖蛋白毒素 (毒素と略す) を用いたラジオイムノアッセイ法によつて経時的に定量を行つた結果, 毒力株の C. albicans MTU 12021, 同じく毒素分離用の毒力株である C. albicans MTU 12024の2株を用いてその各1MLD (1×106細胞/マウス) を静脈内に接種したとき, ともに感染初期である菌接種2日後に早くも血中に高い菌体抗原 (100~1,000ng/ml) が検出された. また, コーチゾン前処置マウスに C. albicans MTU 12024を1/10MLD (1×105細胞/マウス) 感染させた場合は, コーチゾン非処置対照群に比し, 致死率および臓器内菌数が著しく上昇し, 感染の促進が認められ, 血中菌体抗原も比較的多量 (数100ng/ml) に検出されたのに対し非処置対照群ではほとんど検出されなかつた. このことは血中への菌体抗原出現と感染進展との間の密接な関連性を示唆するものである.
  • 仲 弥, 多島 新吾, 西川 武二
    1984 年 25 巻 3 号 p. 231-235
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Sporothrix schenckii の菌糸形および酵母形の菌体および培養濾液より蛋白質を抽出後, SDS電気泳動にて分離し, 各菌形における蛋白質を比較検討した. その結果, 酵母形菌体に特異的な分子量15万前後の蛋白質が認められた. この蛋白質はアミノ酸分析の結果, グリシン, グルタミン酸, セリン, アラニン等を多く含むことがわかつた. また, 酵母形および菌糸形の培養濾液中にそれぞれ特異的な蛋白質がいくつか認められた. 以上の結果より, これらの蛋白質と S. schenchii の二形性との関連性につき若干の考察を加えた.
  • 第19報 Asp-hemolysin 投与および Aspergillus 感染後のマウス血清の生化学的検討
    蝦名 敬一, 一ノ渡 俊也, 横田 勝司, 坂口 平
    1984 年 25 巻 3 号 p. 236-243
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus 生菌感染マウスと Asp-hemolysin 投与マウス血清の生化学的分析を行い, 次のような結果が得られた. すなわち, Asp-hemolysin 投与後のマウスにおいて, 非タンパク性窒素, 血中尿素窒素, 血清グルタミン酸オギザロ酢酸トランスアミナーゼ, 血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ, 乳酸脱水素酵素の血清レベルの上昇が認められた. また, Aspergillus fumigatus 生菌感染マウスにおいても, 血清内レベル上昇までの時間的ずれはみられるものの, Asp-hemolysin 投与群とほぼ類似した上記血清成分の有意な変動が観察された. LDH アイソザイムパターンからは, 両投与群共に, 腎臓, 心臓, 肝臓等の組織障害が考えられ, この結果は前報の病理組織所見との一致をみた. 以上のように, 生菌および Asp-hemolysin 投与後のマウス血清の生化学的比較検討からも, 菌側因子としての Asp-hemolysinが, 実験的生菌感染時における発症・進展に関する可能性が示唆された.
  • Katsutaro Nishimoto
    1984 年 25 巻 3 号 p. 244-246
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    The influence of high concentrations of NaCl, KCl and MgCl2 on the growth and conidiogenesis was examined on some strains of dermatophytes, namely Microsporum audouinii, M. langeronii and Arthroderma vanbreuseghemii. The salts examined were incorporated by serial concentrations ranging from 0.5 to 8.0% or more into the basal medium composed of peptone, dextrose and agar. The effects of high concentrations of all these salts on the growth, micro- and macroconidia production were similar with slight differences among the salts. Microconidia were produced within a relatively wide range of salt concentrations whereas macroconidia were produced within a range of salt concentrations narrower than those for microconidia. At about 8% or more, the production of micro- and macroconidia tended to decrease in number and was replaced by arthroconidia. The results indicate that the utilization of high concentrations of salts is applicable not only for the identification of dermatophytes which lack characteristic conidia production but for the further clarification of the biological roles of each conidial form.
  • 渋谷 和俊, 安藤 充利, 跡部 俊彦, 直江 史郎, 大野 研一, 戸張 幾生, 石田 哲朗
    1984 年 25 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    急性散在性脳脊髄炎の疑いで経過中に発症した25歳男子の両側内因性 Candida 性眼内炎の1剖検例を報告した. 剖検時発見された肋間膿瘍からのみ Candida albicans が培養された. 組織学的に眼病変は, 急性化膿性炎から肉芽腫性炎への移行ないし混在する像を呈し, ごく少数の酵母様真菌要素が壊死層内に散見された. それらは, PAS 反応および抗 albicans 抗体を用いた免疫染色により, Candida であることを証明し得た. 以上の組織像は, 真菌性眼内炎では, 最も多い型であるが, 本例では, 脈絡膜病変がみられなかつた.
    Candida の侵入経路は, 明確にはできなかつたが, 静脈内留置カテーテルの使用や大量の抗生物質および副腎皮質ホルモンの投与が発症に関与したことは, 推測される. Candida 性眼内炎の本邦報告例は, 腹部手術および術後の抗生物質大量投与に引き続いて発症するものが多く, 自験例のごとく, 手術や外傷の既応がない症例は稀なものである.
    また, 肋間筋内に真菌性膿瘍を形成していた症例は, 自験例を含め内外に5例ある. このことは, 眼球転移が比較的多い肺癌や乳癌を念頭に入れて考える時, 非常に興味ある事実といえよう.
  • 藤田 和夫, 本間 喜蔵, 西本 勝太郎
    1984 年 25 巻 3 号 p. 253-256
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    15歳女子の後頭部, 左拇指爪に生じた Microsporum canis による白癬例を報告した. 飼猫が以前から獣医により白癬の治療を受けておりこれが感染源となつた疑いが強い. 爪では基部に白濁があり, KOH 標本にて多数のやや短か目の菌糸を認めた.
    グリセオフルビン1日500mg1ヵ月間内服を行い, 頭部白癬は1ヵ月後, 爪白癬は4ヵ月後治癒した. 自験例は M. canis による爪白癬の本邦報告第1例である.
  • 森 健, 浜本 恒男, 日比野 順子, 饗庭 三代治, 八巻 悟郎, 渡辺 一功, 池本 秀雄, 小沼 一郎
    1984 年 25 巻 3 号 p. 257-273
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    カンジダ症12例に対しケトコナゾール200mg/日を投与し, 治療効果および治療上の問題点について検討した. 口腔および食道カンジダ症計7例の表在性カンジダ症には, 極めて有効で, とくに口腔病変は早ければ投与2日後, 遅くとも7日以内に消失した. 経静脈的高カロリー栄養または持続点滴療法中に発症したカンジダ血症では, 本剤投与後解熱し, 血液培養で菌を検出しなくなつた. しかし投与11日目にジギタリス中毒後の急性腎不全を来して死亡した症例では, 基礎疾患 (悪性関節リウマチ) による肺血管病変が存在し, その血管内に真菌要素を認めた. 基礎疾患による locus minoris resistentiae が存在する場合には, その部位に転移巣を形成して治療が困難になるため, 早期診断治療が必要である. 他の1例では点滴部位に血栓性静脈炎があり, 本剤の投与に加えて, 病変部の切開および病変表在静脈の切除を行つて治癒した. カンジダ髄膜炎1例では, 本剤とフルシトシンの併用により治癒せしめたが, ドレナージなどの手技に合併することが多く, ドレーンの入れ換えや挿入部位の変更が必要である. 本剤は他の抗真菌剤と同様に髄液中への移行が少ないが, 副作用を認めない場合には, 800~1,200mg/日に増すか, 他の抗真菌剤との併用を考えるべきである. カンジダ尿症2例に対して良好な結果を得たが, 今後検討する必要がある.
    今回の経験では, 重篤な副作用を認めず, カンジダ症に対して有効な薬剤といえる.
  • 柳沼 英哉, 小瀬木 幸司, 坂野 喜子, 野沢 義則
    1984 年 25 巻 3 号 p. 274-280
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans をグルコース培地とメチオニン含有合成培地で培養し, それぞれの培地から酵母形 (Y形) と菌糸形 (M形) 菌体を得た. 両形の菌体を細胞壁溶解酵素 (ザイモリエース100,000) で処理してスフェロプラストを調整し, ついで低張処理をおこなつた. 160×g, 10,000×g, 100,000×gの遠心分画により各膜画分を得た. 各膜画分のキチン合成酵素活性を比較したところ, 100,000×gの画分が最も高い活性を有し, Y形では4倍に, M形では5倍に濃縮されており, しかも両形ともに対数増殖期で最も高い活性が得られた. 両形菌体の100,000×gの画分を使用し, キチン合成酵素活性に対する二価金属イオンの効果, pHの影響, Km値, 熱安定性, 活性化剤について検討したが, 両形間の膜結合キチン合成酵素における生化学的性質の差異は認められなかつた.
  • 第1報 In Vitro 抗菌活性
    俵 勝也, 砂川 則雄, 竹間 盛夫
    1984 年 25 巻 3 号 p. 281-289
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    イミダゾール系化合物710674-Sの抗真菌活性に関する基礎的研究の一環として各種の真菌および細菌に対する in vitro 抗菌活性を検討し, 既存のイミダゾール系抗真菌剤と比較するとともに本薬剤の抗菌活性におよぼす諸因子の影響について検討した. 710674-Sは広域な抗真菌スペクトルを有するが, 本薬剤の抗真菌活性の特徴として皮膚糸状菌に対しては強い静菌的ならびに殺菌的作用を示すものの, Candida albicans に対する作用は比較的静菌的であることが認められた. 一方臨床分離株の感受性測定結果から710674-Sは C. albicans に対しては対照薬剤とほぼ同程度のMIC平均値を, 皮膚糸状菌に対しては対照薬剤と同等またはすぐれたMIC平均値をそれぞれ示した. また本薬剤の抗真菌活性は培地pHがアルカリ側になると増強される傾向のあること, 接種菌量の増加によつて活性は低下するがその程度は特に C. albicans で著しいこと, およびマウスの全血, 血漿ならびに赤血球の添加によつても活性の低下することが認められた.
  • 阿部 章彦, 舘山 美樹, 渋谷 宏行, 恩村 雄太
    1984 年 25 巻 3 号 p. 290-297
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    著者らは, 鉄過剰状態が生体内での Candida の増殖を促進することをさきに報告した. そこで, 今回はひきつづいて, 鉄過剰状態の深在性真菌症に与える影響を検討するため, コロイド鉄を40ないし60mg/kg, 3日間連続静脈内に投与したマウスに, Aspergillus fumigatusconidia を5×106ないし1×107個静脈内に接種して, 実験的アスペルギルス症を作成し, 28日間にわたつて観察した.
    その結果, 死亡率は, A. fumigatus の接種量が5×106および1×107個のいずれの場合も, 鉄投与群 (40および60mg/kgとも) の方が, 非鉄投与群に比し, 高い率を示していたが, 投与鉄量と死亡率との間には正の相関はなかつた. 鉄投与群では, 血清鉄と鉄飽和率の増加を認めたが, 鉄飽和率は2種の投与群の間に有意差がなかつた. また, Aspergillus による病変は, 接種量が1×107個の場合には, 鉄投与群の全例で腎に認められた.
    以上の結果より, 鉄過剰状態は Candida の場合と同様, 生体内での Aspergillus の増殖に促進的に働くことが証明された. また, たとえ投与鉄量に差があつても, 上昇した鉄飽和率がほとんど同じ場合には, Aspergillus の増殖には差異が認められない可能性があることも確認された.
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