都市計画論文集
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53 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の177件中151~177を表示しています
  • 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1348-1354
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の地方都市では,少子化による人口減少や都市のスプロール化に伴うインフラ維持費用の負担増加が課題になっている.このような課題の解決の為に,コンパクトシティを目標に掲げる自治体が増加している.コンパクトシティを実現させるためには,公共交通のサービス向上によって,住民が自発的に集約エリアに居住することが望ましいが,LRTが人口集約に与える影響については不明瞭な点が多い.そこで本研究では,土地利用交通モデルの一つであるCUEモデルを用いてLRT導入後の人口分布を予測することで,LRT導入による人口保持効果を定量的に把握することを目的とする.
  • 海野 遥香, 橋本 成仁
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1355-1361
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の道路別死者数の統計より、幹線道路に比べて、車道幅員5.5m未満の道路(以下、生活道路とする)の死傷事故件数の減少割合が小さい。国内では、交通安全に関する研究は多くあるが、生体反応を基にしたストレス反応と、ドライバーの意識が同じ反応を示している研究はない。そこで、本研究では、ドライバーのストレス意識に関する調査を行い、街路状況・歩行者の特徴がどの程度ドライバーのストレス意識に影響を及ぼすのか検証した。また、個人の特性ごとにストレス意識要因の差異があるのかを検討した。結果として、歩行者の歩行位置や、歩道や路側帯の有無がストレス意識に大きく影響を及ぼしていることが明らかになった。
  • 西浦 哲哉, 橋本 成仁
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1362-1369
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国における車道幅員5.5m未満の道路での交通事故死者数は,年々減少傾向にあり,平成29年には昭和23年以降の統計で最小となった。しかしながら,歩行中・自転車乗車中の死者数は、全交通事故死者数の約半数を占めており、そのうち約半数は、自宅から500m以内の身近な道路で発生している.本研究では、生活道路の交通安全対策として各地で整備が進められている路側帯カラー舗装について,全国的に一貫した整備指標が定められていない中で,全国の自治体を対象としたアンケート調査より,生活道路における路側帯カラー舗装の整備状況を把握するとともに,路側帯カラー舗装の整備に対する自治体の意識を明らかにする.結果として、生活道路における路側帯カラー舗装の整備には,ゾーン30や安心歩行エリアなどのゾーン対策の導入が大きく影響していることが明らかとなった.また、生活道路における歩行者・自転車に関連した問題意識,及び自動車に関連した問題意識が高いと,間接的に路側帯カラー舗装の整備につながっている因果構造が示された.さらに,歩行者・自転車に対する安全対策の重要性が高いと,ゾーン対策を導入する傾向が高くなり,結果として路側帯カラー舗装の整備につながる因果構造も示された.
  • 森重 裕貴, 森本 章倫, 高山 宇宙
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1370-1376
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,動画作成を通して,利害関係者が情報共有・意見反映することができる合意形成手法として,PDCAサイクルを繰り返して,段階的に道路空間の将来像を3DVRで描き出し,動画を作成するという合意形成手法を提案した.また,3DVR作成における関係者の協議への影響を,交渉学を用いて考察した.その結果,3DVR活用により利害関係者の立場の把握,BATNAの把握ができることを明らかにした.そして,より利害関係者が満足するような合意にむけて,利害関係者の意見が互いに寄り合ってくることを描き出した.一方で,道路空間将来像の合意形成の場面において,3DVR・動画作成の留意点がある.短編動画の留意点として,動画構成に制約があり,演出による利害関係者への配慮を示すことが難しいこと,印象が重要になる点が挙げられる.長編動画の留意点として,動画公開によるイメージ先行への懸念,専門用語の理解に関する懸念や,道路空間再配分によって不都合を被る人や未可視化地域の人への配慮などが挙げられる.
  • 会田 裕一, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1377-1384
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    台湾は二輪車中心の私事交通が発達しており、公共交通分担率は低いレベルにある。中央政府では公共交通システムを再定義し、BRTやLRTといった公共交通システムを積極的に推進している。淡海地区では高雄に次いで二番目のLRTが建設中であるが、最初の計画から事業計画の最終承認までに21年間を要している。本研究では、新たな公共交通システムを導入するにあたりどの公共交通システムを採用すべきかの意思決定プロセスを解明すること、LRT決定後のルート選定・構造形式選定といった路線計画の検討ポイントを整理し、その経緯を明らかにすることを目的とする。淡海では、MRT、LRT、BRTの導入が比較・検討された経緯があり、最終的にLRTが選定された。その意思決定プロセスでは、(1)台湾の公共交通政策による誘導が大きな影響を及ぼしていたこと、(2)道路空間などの物理的な制約や投資対効果といった経済性などが重要なポイントであったこと、(3)建設コストのみならず、利便性や景観といったポイントの評価を重視していること、等が明らかとなった。今後、わが国の都市がLRT導入を推進する際にも一つのモデルとなる事例と考えられる。
  • 全市区を対象としたアンケート調査の分析
    高野 裕作, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1385-1392
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    超高齢・人口減少社会の進展により地域の公共交通の持続的な運営は難しくなり、公共交通政策に対する自治体の主体的な関与の重要性が高まっている。地域公共交通網形成計画の策定している自治体の数は増えているが、十分な成果を挙げている例は少数に限られている。本研究では公共交通政策に対する自治体の財政支出に着目し、すべての市・区に対象としたアンケート調査によって、その実態を明らかにするとともに、支出の項目を定義して詳細に分析した。まず、支出額と自治体の特性との関係性を分析した結果、以下の2点を明らかにした。1)経常的費用に対する補助の割合は、自治体の住民の通勤・通学時における自家用車の利用率に弱い正の相関があること。2)地域公共交通網形成計画を策定している自治体は支出の割合が相対的に多いこと。
  • 福島県南相馬市におけるケーススタディ
    吉田 樹
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1393-1398
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京電力福島第一原子力発電所事故による被害を受けた福島県は,避難指示区域の解除が進みつつある一方で,地域公共交通の供給制約の現状や旧避難指示地域のモビリティ確保に求められる視点が必ずしも明確に整理されているとは言えない状況にある。本研究では,福島県内の乗合バスおよびタクシー事業を対象に,原発事故被災地に特有な供給制約の現状を整理したうえで,南相馬市をケーススタディとして,避難指示解除前後における,公共交通サービスが担う役割の変化を捉えた。また,同市小高区をモデルに,供給制約の緩和との両立が可能なモビリティの形態として,タクシーの相乗りサービスに着目し,原発事故避難地域への適用可能性を検討した。
  • 東京近郊一都三県を対象としたアンケート調査の分析を通じて
    寺田 悠希, 近藤 早映, 後藤 智香子, 小泉 秀樹
    原稿種別: 論説・報告
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1399-1406
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,今後,急速に高齢者人口が増加すると予測されている東京近郊一都三県におけるコミュニティ交通に関する政策とコミュニティ交通路線の事例の実態を明らかにすることである。特徴的な事例のみならず,網羅的に実態を把握するために、対象地域の全自治体(島嶼部除く)に対し質問紙調査を行い,分析を行った。主な結論は次のとおりである。第一に,コミュニティ交通をサポートする政策があるのは19自治体と全体の1割強にとどまっていた。第二に,交通事業者が運転する事業者運転型コミュニティ交通の赤字補填について,本格運行時の赤字補填を全くしない自治体から,赤字額の5割までを負担する自治体,予算の範囲内で対応する自治体など大きな幅があった。第三に,住民が運転手となる住民運転型コミュニティ交通においては,地域の実情に応じた多様な運行方式があった。これらの結果から,今後,新たにコミュニティ交通を導入する自治体にとって,サポートの仕組みや運行のあり方の検討のための基準となる有用な知見を提供できた。
  • カラー舗装化と拡幅に着目して
    伊藤 弘基
    原稿種別: 論説・報告
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1407-1412
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    踏切の安全性に対する関心が高まる中、「事故」だけでなく、その手前の段階である「障害」(列車が危険な状態に直面して停止すること)の防止も安全性の確保のために重要な視点である。障害は発生件数が増加傾向にあり、その抑制は予防的な観点からの事故対策になる。本研究は踏切障害の抑制を目的とした鉄道事業者(JR東日本仙台支社)による対策の効果や意義・課題を明らかにすることを目的とする。まず踏切事故・障害の傾向を踏まえつつ、踏切の障害数や交通状況・諸元から「歩車混在」が障害に寄与することを明らかにする。加えてJR東日本仙台支社の事例から「歩車分離」という視点からカラー舗装化が踏切障害の抑制に及ぼす効果を検討する。さらに踏切拡幅の事例について道路管理者と鉄道事業者の議論のプロセスに着目し、その意義や課題を整理する。
  • 佐原の町並みを事例として
    種崎 夏帆, 中村 文彦, 田中 伸治, 有吉 亮, 三浦 詩乃
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1413-1419
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,「重要伝統的建造物群保存地区」(以下重伝建地区)の選定が活発化している.重伝建地区は観光地として注目されていると同時に,郊外住宅地としての側面も持っている.よって当該地区では,住民生活を保ちながら,地区を回遊する歩行者が歩きやすいまちが理想である.一方,地方都市において空き地や空き家が無秩序に駐車場へ転用されるケースが問題視されており,重伝建地区も例外ではない.そこで本研究では,香取市佐原を対象地とし,仮想的な駐車場再配置が歩行者の歩きやすさにどう影響するか,また,どのような場所への再配置が効果的なのかを明らかにすることを目的とする. 本研究では,「歩きやすさ」を(1)歩行者と車の動線の交錯,(2)時空間暴露量の2つの観点から評価した.仮想的な駐車場再配置の結果,歩行者と車の動線交錯では全案にて改善傾向がみられた.しかしながら時空間暴露量では,設定した4案の中で,地区の外側かつ歩行者の少ない細街路内に再配置する案のみにて改善傾向が見られた.これらのことから,動線だけでなく地区全体のネットワークや交通量を考慮することで,適切な駐車場再配置案が得られることが明らかになった.
  • 態度・行動変容理論に基づく評価
    大森 宣暁, 岡安 理夏, 長田 哲平, 青野 貞康
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1420-1426
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,子ども乗せ自転車に関する情報提供および安全教育を通して,子ども乗せ自転車利用者が,より安全な運転を行うようになり,周囲の人々が子ども乗せ自転車利用者に対して,より配慮するようになることで,より安全・安心・快適な子ども乗せ自転車利用環境が形成されるという仮説の下で、情報提供および安全教育の効果を明らかにすることを目的とする.東京および北関東居住者計1,100名に対する子ども乗せ自転車に関する情報提供と、東京都市圏居住者で6歳未満の子どもを持つ計29名に対する安全教室の前後において,子ども乗せ自転車利用に関する意識と行動をアンケート調査によって計測した.分析の結果,Webによる情報提供によって、子ども乗せ自転車利用者層の安全運転および6歳未満の子どもを持たない人々の子ども乗せ自転車への配慮に対する意識が向上し,性別,6歳未満の子どもの有無,子ども乗せ自転車利用経験,居住地などの個人属性による意識の差が解消されうることがわかった.また,情報提供に加えて講義や試乗を行う安全教室の効果は一ヶ月後も継続し,より安全に運転し,子ども乗せ自転車利用にも配慮するようになったことがわかった.
  • 増山 篤
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1427-1434
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    アクセシビリティ指標は、交通・土地利用を評価する上で重要である。個人の時間的制約はアクセシビリティを規定する大きな要因であることから、先行研究において、さまざまな時空間アクセシビリティ指標(STAM)が提案されてきた。しかしながら、それらはいずれも改善の余地を残している。まず、多くのSTAMは、理論的基盤を欠いている。ロジットモデルの枠組みを理論的基礎とし、アクセシビリティ指標の公理を満たすようなSTAMの提案はあるものの、そのSTAMは空間的相互作用モデルと矛盾し、パラメータ推定が容易ではない。こうした先行研究の限界に鑑み、本稿では、先行研究で提案されたSTAMの持つ理論的に好ましい性質を引き継ぎつつ、空間的相互作用モデルと矛盾することなく、かつ、パラメータ推定が容易なSTAMを定式化する。また、このSTAMを、大学生の買い物行動を題材とするケーススタディに用い、その結果から、その妥当性を示す。
  • 小又 暉広, 小林 隆史, 高原 勇, 大澤 義明
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1435-1441
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人工知能や各種センサーの進歩により,公道における自動運転による自動車の走行が現実味を帯びてきた.しかし,自動運転は都市部における右折で課題が多いとされる.右折時には,対向車や反対車線を走る車,横断歩道を渡る歩行者への注意が必要となるからである.また,自動運転に限らず通常の運転でも右折時には事故が起きやすい.以上より,右折を禁止した交通は有用と考えられるが,右折禁止は交通トリップの距離を増大させることは明らかである.本研究では,格子状の道路網において,街区に沿ってトリップの起点と終点が独立かつ一様に分布する状況を想定し,右折禁止の場合と現状とを比較した.道路網内の単位トリップ当たりの平均距離の解析表示を導出することで,右折禁止交通による道路網内の平均距離がどの程度伸びるかを解析的に示した.
  • 嚴 先鏞, 山村 拓巳, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1442-1447
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,コンパクトシティ・プラス・ネットワーク型の都市構造における多様な都市サービス施設の集積が議論されているが,既存施設の分布の考慮が不十分であること,郊外での新規開発も進んでいることの問題が指摘されている.本研究では,国土交通省が誘導施設として挙げている機能を対象とし,商業施設の集積度に基づいた公共施設の空間的な関係についての近年の変化を明らかにすることを目的とする.第一に,施設数が少ない病院,図書館,行政サービス施設といった公共施設が,商業集積度の高い場所に立地する傾向がある.第二に,総合立地合致度がもともと大きい市町村では総合立地合致度が減少した市町村の割合が大きい一方で,総合立地合致度がもともと小さい市町村では,施設の数が少ないものの,増加した市町村が多く,公共施設の立地が商業集積地に立地する方向へ変化している傾向が見られる.第三に,施設種類別に立地合致度の変化を見ると,行政サービス施設,幼・保育所,図書館の場合は商業集積地に立地する傾向が強く,駅前の再開発などにより,図書館や市役所が商業集積度の非常に高い地点に移転したケースも見られるなど総合立地合致度の増加に寄与している.
  • 小貝 洸希, 田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1448-1455
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    演劇やコンサート,パフォーマンスライブなどを観る際,観客からステージ上のパフォーマーまでの距離,および観客からパフォーマーへ向けられる視線の角度は,観客の効用を左右する大きな要因である.観客はパフォーマーをなるべく近く,かつなるべく正面から目にしたいと感じるだろう.本稿では,二次元領域(劇場ホール)を合同な正方形マスの集合として表現し,それぞれのマスを施設(ステージ)または需要(観客席)に割り当て,このもとで観客にとって最も望ましい施設の配置・形状を決定するモデルを構築する.提案モデルに対する近傍探索法に基づく発見的解法を設計し,正方形,台形,円の領域形状に対して提案手法を適用した.得られた局所最適解を分析した結果,視線の角度を重視する場合には,領域の端に細長い形状の施設が配置された.また,距離を重視する度合いを大きくすると,領域中心部に丸みをもった形状の施設が配置されることが明らかになった.
  • 商業地の類似性と容量制約を考慮した一般化
    本間 健太郎, 今井 公太郎, 本間 裕大
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1456-1463
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,商業地の立地パターンに対して新しい説明原理を与えるべく,Harris & Wilsonのバランスメカニズムを再解釈したうえで,その一般化を提案するものである.具体的にはまず,「バランスメカニズムの解,すなわち商業地を時間発展させた末の均衡分布」が「住民便益を最大化する商業地の局所最適分布」と同等であることを示した.次に,その同等性を保ったままバランスメカニズムを一般化することに成功した.すなわち,(i)メカニズムに内包される商業地選択モデルをネスティッドロジットに矛盾なく拡張できると示し,商業地の類似性を考慮できるようにした.また,(ii)時間発展ルールを「単位規模あたりの来客数が多い商業地に規模移転」に緩和できると示し,容量制約を扱えるようにした.そのうえで一般化されたモデルについて簡単なケーススタディを行い,本手法の有効性を確認した.
  • 都道府県別の大学進学データを事例として
    田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1464-1471
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,OD表から各地域の特徴を把握するための可視化手法を提案する.人々が目的地を決定する際には,距離などの空間的な近接性を考慮して意思決定を行っている.そこで,重力モデルのように距離のデータを用いずに,OD表から地域間の関連を分析することは興味深いテーマである.本稿では,OD表の行同士の類似度に基づき,類似度が高い地域同士を近くに,類似度が低い地域同士を遠くに配置することで,データを可視化する問題を定式化する.この手法を,47都道府県から7つの国立大学への進学実績のデータに適用し,各大学への進学傾向の類似度から都道府県を平面上に表示する.得られた配置結果は,日本地図に類似しておる.実地図との対比を通じて,OD表から直接読み取ることが難しい地理的な知見を得ることに成功した.さらに,地域間の進学傾向に基づく類似度行列を用いて,メディアン問題を解くことにより,47の都道府県を指定された数のグループに分割する問題を扱った.提案手法は,地域の大域的な構造と地域間の局所的な関連を可視化し,データの地理的な特徴を理解する有効な手法であることが確かめられた.
  • 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1472-1477
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,p-median問題を拠点配置問題と見なし,これと上述の路線配置問題を組み合わせて,一定の予算制約のもとで拠点と軸(路線)の数と配置を同時に決定する最適都市構造問題が定式化できることを示し,数値例を通じてその解の特徴を拠点数,路線数や路線速度との関係から把握することを目的とする.その結果,総予算が多ければ多いほど,拠点数や路線数が多くなり,拠点は路線の交差するところに設けられるケースが多いが,拠点と路線は相互に影響を及ぼし合いながら,同じ拠点数でも路線の有無や形状によって様々な配置が現れること,高速の場合は少ない数の拠点から放射状の路線が構成される形状となるのに対して,低速の場合は拠点や路線の配置が偏ることのないように構成される傾向を持つこと,施設需要と域内移動需要とのバランスや,コストの重みのバランスにしたがって,拠点と軸の数の組合せが決まってくることなどが明らかとなった.
  • 櫻井 雄大
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1478-1484
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,購買地の動態を消費者の選択行動の集合として捉えてモデル化し,東京都区部に適用してその動態を実証的に分析するものである.購買地の動態を分析している既往研究にWilsonらの一連の研究がある.それらの研究では,空間相互作用モデルに基づいた動態モデル(Harris-Wilson Retail Model)の構築と,ロンドンなどに対するその適用が主な内容である.特にモデル上に表現されていうる非線形の挙動を示す微分方程式を計算機上でシミュレーションをすることで,一般的な動態の性質を導出している.これらの研究における空間相互作用モデルは地点間の流動を扱うものであり,よりミクロスケールの消費者の購買行動については言及していない.本研究では,消費者の購買行動に言及することで,地点間の流動をより実態に則したかたちで表現しその動態を分析し,次いで特定の購買地に対する新規開発事業を想定し,当該購買地における実効性の有無を議論する.
  • 建物・立地・居住者等に着目して
    宮川 大輝, 浅見 泰司, 樋野 公宏, 對間 昌宏, 薄井 宏行
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1485-1490
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    市街地で建物更新がなされない建物は地震時に倒壊しやすいほか火災に弱く延焼しやすいなど防災上の問題がある。本研究では、建物更新の起こりやすさと建物の特性や周辺環境の関係を統計的な分析によって明らかにした。まず、集合住宅では利便性の高い立地であると建物更新が起こりやすかったが、独立住宅では面積などの住宅の性能もまた建物更新に関係していた。次に住居系の用途地域で建物更新が起こりやすく都市計画規制が建物更新の起こりやすさという面で機能していた。さらに木造密集市街地で建物更新が起こりづらくなっていた。最後に周辺の建物更新が起こりやすい地域で建物更新が起こりやすいことが明らかになった。
  • 奥貫 圭一
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1491-1498
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,建物周り建ぺい率と呼ばれる指標を応用して,市街地における物的密度のばらつきについて実証的に検討した。東京都世田谷区太子堂2丁目を事例に,国土地理院から提供されている基盤地図情報と数値地図を活用して,建物周り建ぺい率のばらつきを計測した。その上で,街区におけるばらつきと沿道領域におけるばらつきとを比較したところ,沿道領域におけるばらつきが,おおよその場合で,街区におけるそれよりも小さいことがわかった。ただし,必ずしも小さいとは言えないこともわかった。そこで,道路中心線上での建物周り建ぺい率のばらつきを視覚的に検討する手順を提案した。
  • 建物属性と地域属性に着目して
    前田 翠, 関本 義秀, 瀬戸 寿一, 樫山 武浩
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1499-1506
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都市圏,地方部いずれにおいても民間企業や地方自治体主導の開発プロジェクトが近年増加している.そういった背景から,開発地域選定ならびに開発計画策定の際に,開発物件の賃料を推定し,居住地域の特徴を多角的に捉える為のシステムが必要とされていると考えられる.賃料推定ならびに賃料に影響を与える要因の分析の為の手法として,本研究ではDeep Neural Network,ヘドニックアプローチとRandom Forest Regressionの3つを用いた.そして,この3手法の比較を行うことで各々の優位点や限界を明らかにした.その結果,特にDeep Neural Networkは外れ値に大きな影響を受ける可能性があることからデータクリーニングを行う必要があることが示唆された.また,賃料推定のために構築したモデルを応用し,緯度・経度を説明変数に加えることで地域のポテンシャルマップが作成可能であること,デフレーターや物件登録年度を説明変数に加えることでポテンシャルマップの時系列変化や経済動向のポテンシャルマップへの影響を表すことができるということが示された.
  • -正方形敷地の仮定に基づく延焼確率分布の導出及び密集市街地における延焼リスク評価への応用-
    薄井 宏行, 寺木 彰浩
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1507-1514
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    延焼リスクの評価は住環境の安全性を評価する際に極めて重要である.延焼リスクを評価するためには,建物壁面間の距離の分布を把握することが必要である.ところが,市街地の構成は複雑であるため,建物壁面間の距離の分布を把握することは難しい.本稿では,多様な規模と形状をもつ敷地を正方形に等積変形することで,建物棟数密度と建物壁面間の距離分布の関係を理論的に考察した.また,建物壁面間の距離分布と延焼確率の関係を理論的に考察し,建物棟数密度の減少効果を延焼確率分布(延焼確率の確率密度関数)の変化の観点から評価した.多様な規模と形状をもつ敷地を正方形に等積変形することが建物壁面間の距離の算出に及ぼす影響を実証的に評価し,理論モデルを実市街地へ適用する際の留意点を明示した.
  • アーバンデータチャレンジにおける取り組みを事例に
    瀬戸 寿一, 関本 義秀
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1515-1522
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、日本における様々なシビックテック活動の実態を明らかにし、特にシビックテック活動とアプリケーション制作課程の背景を明らかにするために「アーバンデータチャレンジ(UDC)」における取り組みに着目し分析することである。日本のアプリケーション開発コンテスト等で行われてきたアイデアソンやハッカソンと行った一過性のイベントに限らず、地域の取り組み状況や体制に応じた幅広い活動が行われていることが明らかとなり,同時に幾つかの地域では活動の持続可能性に向けた工夫もされていることが明らかになった。さらに、活動の最終成果としてコンテストにおいて高い評価を受けた作品は、継続的な横断的発展と翌年の賞につながる特徴や側面を持っていることが明らかとなった.
  • UR高島平団地を対象に
    濱田 貴之, 樋野 公宏, 石井 儀光
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1523-1528
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    UR高島平団地において、天候やソーシャル・キャピタル、年齢、性別等の個人特性を考慮し、建造環境と高齢者の身体活動の関係を、活動量計を用い明らかにすることを目的とする。建造環境の指標として、居住階と駅までの距離を用いた。身体活動の指標として、平均歩数と降雨日や単独降雨日、連続降雨日、不快日の平均歩数を用いた。その結果、10階以上に居住する方と、75歳以上かつ駅から遠い地域に居住する方は、そうでない人と比較して歩数が有意に少ないことが判明した。また降雨日では70歳以上であったり、10階以上に居住していたりすると、そうでない人と比較して歩数が有意に少ないことが判明した。連続降雨日では上記の2つの指標に加え、6~9階の高層階に居住している人も含め歩数が少ないことが判明した。地域活動に参加しているような人はそうでない人と比較して単独・連続降雨日ともに降雨による歩数の差が小さいことも判明した。
  • 基準地域メッシュ単位での検討
    都留 崇弘, 福田 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1529-1536
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市における中心市街地の空洞化は喫緊の課題である.その対応策として,都市の効率化を目指した立地適正化計画が計画・実施されつつある.本研究では,群馬県都市部を対象として,小売店舗の立地もしくは撤退を規定する要因を包括的に明らかにすることを目的とする.商業統計の2004-2014年データを用いて小売店舗の新規立地数や撤退数の基本傾向を確認した上で,データのゼロ過剰性ならびに空間効果の存在を考慮した詳細空間(1kmメッシュ)単位での小売店舗の立地数及び撤退数の統計モデルを構築した.パラメータの推定結果より,商業系区域面積が立地数には正の影響を与えているのに対し撤退数には負の影響を与えていること,大型ショッピングモールまでの距離は立地数・撤退数いずれにも負の影響を与えていることなどが明らかになった.また,中心市街地においては,撤退モデルの空間効果パラメータは正の傾向となり,近隣地域での撤退が当該メッシュでの撤退を促す可能性があることが示唆された.最後に,立地適正化計画の実施を念頭に,中心市街地への大型商業施設誘導が小売店舗の立地数・撤退数に及ぼす影響について推計した.
  • つくば市中心部における事例研究
    村中 大輝, 雨宮 護, 樋野 公宏
    原稿種別: 論説・報告
    2018 年 53 巻 3 号 p. 1537-1543
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    地方自治体は,市民の不安に対応して,監視性の確保を目的とした様々な防犯施策を行っている.しかし,各々の手段の連携は十分ではなく,また,総花的な導入にとどまる場合も多い.より効果的・効率的な取り組みに向け,現在行われている監視性の確保のための取り組みを評価することは重要な課題である.本研究では,茨城県つくば市を対象として,多主体からなる監視性の確保のための取り組みをGISデータとして計測する.そして,それを市民の犯罪不安箇所との重ね合わせから評価する.最後に,各監視主体の特性を踏まえつつ,より効果的・効率的な監視性の確保のための改善案を示す.分析の結果,監視の主体別の活動パターンと,犯罪不安箇所との地理的対応関係が明らかとなった.本研究では,この結果をもとに,監視の主体別の特性を考慮した,監視の目の再配分による改善策を示した.
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