日本化粧品技術者会誌
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51 巻, 2 号
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特集総説 スキンケア製品開発における実践技術⑤
  • 高橋 元次
    2017 年 51 巻 2 号 p. 105-116
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    皮膚の機能や特性を調べる方法や機器がこれまでに多く開発されている。たとえば, 角層水分量, 水分蒸散損失量 (TEWL), 皮膚表面形状, 力学特性, 血流速度, 皮脂排泄速度, シワ, シミなどの測定である。これらの測定器は化粧品の効能の実証に使われている。近年, 生体顕微鏡とよばれる非線形光学理論を用いて非侵襲的に皮膚の断層像や水平画像を細胞レベルの分解能で撮像する機器がいくつか開発されている。本稿では化粧品の効能評価に使われている測定器・測定法についてレビューし, あわせて生体顕微鏡, すなわち, OCT (Optical Coherence Tomography: 光干渉断層撮影法), in vivo共焦点レーザー走査型顕微鏡 (confocal laser scanning microscope: CLSM), SHG顕微鏡 (Second Harmonic Generation: 第二高調波発生), 多光子 (励起蛍光) 顕微鏡 (multi photon microscope: MPM), CARS (Coherent Anti-Stokes Raman Scattering) 顕微鏡などについても言及する。
原著
  • —化学的, 物理的側面からのアプローチ—
    土井 萌子, 佐川 由葵, 水谷 多恵子, 岡野 由利, 百瀬 重禎, 田中 巧, 正木 仁
    2017 年 51 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    スイゼンジノリ (Aphanothece Sacrum) の細胞外マトリックスに含まれる硫酸化多糖は, Sacran (サクラン) と呼ばれ, 平均分子量2.9×107, 分子鎖長10 μm, 構成単糖11種類からなる超高分子多糖体である。構成単糖に硫酸基やカルボキシル基を含んでいることから, ヒアルロン酸の5倍もの保水力をもつ物質として新たなスキンケア成分として注目されてきた。これまでにわれわれは, サクラン水溶液が幼若モデル (皮膚損傷モデル) では表皮を透過すること, サクランを配合した保湿液でアトピー性皮膚炎の素因をもつ被験者の皮膚状態を改善することを報告している。またサクランは, 水溶性多糖でありながら乾燥後に形成されるフィルムは水に対する親和性が低下し水に対して溶解しにくいシートを形成すること, さらに1,3-ブチレングリコール (1,3-BG) 共存下で乾燥させることにより水に溶解しにくいゲル状シートを形成することを確認した。このゲルシートは水分蒸散を抑制し, 化学物質の侵入を防ぐことができたため, 皮膚表面で強固なバリアーとして働くことが示唆された。またサクランはポリオール共存下で安定した乳化能を示し, この乳化が油の極性に左右されないことから, サクラン分子マトリックス内に油を保持することで乳化能を持つと考えられた。つまりサクランとポリオールを共存させることにより, 乾燥するとゲルシートを形成し, かつ乳化剤としても働くことが明らかになった。以上よりサクランとポリオールを組み合わせることで肌の保護効果が期待できる。
  • 西田 由香里, 江連 美佳子, 丹治 範文, 溝奥 隆司, 長瀬 忍, 大角 高広, 石川 和高
    2017 年 51 巻 2 号 p. 126-133
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    髪の理想的な状態については, つや・まとまり・触感などさまざまな視点での研究がある。ここでは, 日本人女性の理想の髪の一つである「しなやかさ」という動きを伴う美しさに着目した。しなやかな髪は, たとえば毛束が流体のように連続的に変形する柔らかさと, 乱れても元の形状に戻る弾力性を兼ね備えている。われわれはまず, しなやかな髪の内部構造と物性について検討した。先天的にしなやかな髪としなやかでない髪の内部構造を比較した結果, 先天的にしなやかな髪は, 弾性率の異なる二種類のコルテックス細胞の構造の分布に偏り (二層構造) があり, 先天的にしなやかでない髪はそれらが混在して分布することを見出した。また, それによってしなやかな髪は, 表層は柔軟で内層は弾力がある「二層状態の物性」をもつことがわかった。われわれは, この表層と内層との物性差が, 柔らかさと弾力性の共存する, しなやかな髪の特徴的な性質であると考えた。さらに本研究では, しなやかでない髪をしなやかな髪に近づける一つの方法として, コハク酸によって, 毛髪表層を選択的に柔軟化し, 「二層状態の物性」に改質することに成功したので報告する。
  • 木曽 昭典, 曽 海峰, 前田 憲寿
    2017 年 51 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    シミの代表例である老人性色素斑においては, 表皮基底細胞にメラノサイトから転送されたメラノソームが過剰に蓄積し, 複数のメラノソームが結合した大きなメラノソーム複合体を形成していることが報告されている。一方, シミのない皮膚においては分化の過程でメラノソームは細胞内小器官であるライソソームと融合し, ライソソームに存在する酵素によって分解され, メラニンが分散・希釈されることにより, 皮膚色を均一な状態に保っていると考えられる。本研究では, シミ部位に存在する大きなメラノソーム複合体の膜構造を崩壊させることにより, シミを薄くすることが可能であると考え, ライソソームに存在するタンパク質分解酵素であるカテプシン (cathepsin) に着目し, その活性を制御することによる色素沈着への影響を検討したところ, トウキエキスにカテプシンの活性促進作用をメカニズムとしたメラノソームの消化による色素沈着改善作用が認められたので, 報告する。
短報
  • 高橋 唯仁, 宮本 紘明, 河野 貴裕, 江目 宏樹, 山田 純, 春藤 晃人
    2017 年 51 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    粒子径がサブミクロン領域にある顔料微粒子は, 透明感, 光沢感, および紫外線遮蔽能などの光学的特性に優れ, 化粧品素材として汎用されてきた。しかしながら, 微粒子化に伴い表面エネルギーが高くなるため, 粒子相互の付着性, 凝集性が高くなり, 分散の不均一化に伴う機能低下を生じる場合がある。これまで, 分散性の向上のため, 粒子の表面処理や形状の制御など, 素材レベルでの改良は盛んに行われている反面, 機械的な処理の効果についてはあまり検討されていない。本研究では, 薄膜旋回型ミキサーを用いて, 高速攪拌による微粒子酸化チタンの分散性変化と, 分散系に対する入射光の減衰, 散乱挙動との相関について検討した。その結果, 顔料微粒子が分散した散乱吸収性媒体の場合, 高速攪拌により高度に均一分散することによって, その光学物性パラメータが変化する現象が認められたので報告する。
  • 久加 亜由美, 前田 霞, 澤田 彰子, 澤田 真希, 嶋田 格, 原 武史, 清水 真由美
    2017 年 51 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/08/20
    ジャーナル フリー
    われわれはこれまでに日本人男性の腋臭強度と臭気タイプの分類について,官能評価で解析を行ってきた。男性の腋臭強度は若年層で高いこと,臭気は8タイプに分類されること等がわかっていたが,女性の腋臭の実態は不明であった。そこで,日本人男女計169名の嗅覚評価を行い,腋臭強度と臭気タイプを男女で比較した。その結果,女性の腋臭強度は男性よりも低く,年齢による臭気強度の低下は女性ではみられなかった。また,女性は男性とは異なり,腋臭強度と耳垢性状に強い関係が認められなかった。日本人の主な臭気タイプは男女ともミルク様であった。しかし,臭気タイプの分布は男女で異なり,特に女性は酸っぱい臭気の割合が低いことが明らかになった。女性の特徴に着目すると,腋臭強度と経表皮水分蒸散量(TEWL値)に関係が認められた。一方で,腋臭強度は腋毛の処理行為と関連が認められなかった。今後,より詳細に女性の腋臭研究を進め,女性に適応した腋臭ケアを提案したいと考える。
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