1.コカクモンハマキ(Adoxophyes orana)の要求する未知の幼虫生育因子の作用様式および化学的性質を知る目的で,合成飼料によりふ化幼虫の選好試験,幼虫の飼育試験を行なった。また,あわせて数種の粗物質,純物質の未知生育因子活性を調べた。
2.幼虫の生育は飼料中に茶葉熱水抽出物がふえるにしたがって良好となり,その最適濃度は乾物当たり15~18;6であった。他方町ふ化幼虫の選好性は茶葉熱水抽出物含量に関係なかった。したがって,茶葉中に含まれる幼虫生育因子は,摂食刺激物質として働くのではなく,栄養素として働くものであると考えられる。
3,茶葉各種画分の生育因子活性を調べた結果から,この未知生育因子は,水,70%エタノール,50~67%アセトンに可溶,ベンゼン,クロロホルム,アセトン,エタ一ル,および水飽和酢酸エチルなどに不溶の有機化合物であり,酸およびアルカリに比較的安定で活性炭に吸着されず,中性酢酸鉛で沈殿される中性物質であることが推定された。
4,粗物質では茶葉粉末のほか,アルファルファ水抽出物,酵母水抽出物に強い活性が認められ,パン用酵母,粉末酵母(エピオス)およびレンダーエギス末には弱い活性が認められたのみで,その他の8種の物質には全く活性が認められなかった。
5.純物質では試験した40種のいずれにも全く活性を認めなかった。
6,以上に得られな結果をアワノメィガおよび二カメ.イチュウにおける未知生育因子の場合と比較検討して,これら3種の食植性鱗翅目昆虫における未知因子の同一性について論議した。
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