茶業研究報告
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2017 巻, 124 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
報文
  • 高橋 淳, 中島 健太, 平川 雅文, 福田 健二
    2017 年 2017 巻 124 号 p. 1-7
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    チャの裂傷型凍害は主に初冬および初春期に幼木で発生し,被害が大きい場合は枯死に至る。そこで,裂傷型凍害の発生機構について検討した。十分に吸水させたロックウールに挿した枝条を-5℃で処理したところ,形成層付近での氷の形成により皮層の裂傷が生じることが観察され,その発生部位は地際部から約2cmの範囲内に限られた。枝条を乾燥したロックウールに挿した場合には裂傷は発生しなかった。したがって,裂傷発生には外部からの水分供給が必要であると考えられる。-5℃処理した枝条を室温に戻すと枝条の複数個所から液体が漏出しているのが確認され,この現象が裂傷型凍害発生に関与している可能性があると考えられる。裂傷型凍害発生部位の枝条断面をMRIで観察したところ,皮層までの裂傷が確認できたが,通水阻害は確認できなかった。

短報
  • 小澤 朗人, 内山 徹, 大石 哲也
    2017 年 2017 巻 124 号 p. 9-16
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    マルチ回転翼型無人航空機 (ドローン) が空撮した茶園の画像データを用いて,チャ炭疽病の病葉数密度の推定を試みた。空撮にはデジタルカメラを搭載したDJI社製ファントム4を使用し,市販の写真編集ソフトウェア (Adobe Photoshop element13) を用いて画像データを解析した。画像から抽出された三原色 (R,G,B) と輝度 (Y) のデジタル値,および正規化処理した三原色 (NR,NG,NB) の各平均値を組み合わせた25種類の演算式と,圃場における病葉密度との間の相関を直線回帰分析した。その結果,G-R, (R+G)/Gなど8種類の演算式による計算値と病葉密度との間に|r|>0.75以上の有意な高い相関関係が認められた。さらに,これら8種の演算による推定式の適合性を別データを用いて検証した。これらの結果から,ドローンによる空撮画像データを用いてチャ炭疽病の病葉数の推定が可能であることが示唆された。

技術レポート
  • 小澤 朗人, 内山 徹
    2017 年 2017 巻 124 号 p. 17-22
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    2010年4月~11月に,クワシロカイガラムシの防除適期を把握するために開発された乾電池式の小型微小昆虫捕獲装置を利用して,茶園に生息する数種ダニ類の発生モニタリングを試みた。本装置には,カンザワハダニ,カブリダニ類,チャノナガサビダニ,チャノサビダニが捕獲され,特に,サビダニ類2種の捕獲数が多かった。毎週,本装置のトラップ・カートリッジの交換と同時に装置の周辺から茶葉20枚を採取して各種ダニ類の寄生密度を調査し,捕獲装置による捕獲数と比較した。その結果,チャノナガサビダニとチャノサビダニについては,捕獲数と寄生密度がほぼ同調した消長パターンを示し,捕獲数と寄生密度との間に有意な正の相関関係が認められた。本装置は,野外での耐久性能に若干の問題が認められるものの,茶園に生息するサビダニ類の簡便なモニタリング装置と示唆された。

資料
  • 坂本 孝義
    2017 年 2017 巻 124 号 p. 23-27
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    傾斜釜を用いる釜炒り茶の起源には不明な部分があり,製法は記録に乏しいことから,製茶工程が機械化される以前の,佐賀県嬉野市における釜炒り茶の製法の聞き取り調査を行った。その工程は炒り葉→揉捻→第一水乾→揉捻→第二水乾→バラに広げて静置→締め炒りである。炒り葉の釜の温度は300℃以上で,茶葉がしんなりとなると扇風機を使って一気に蒸気を逃がすところは『茶箋』の製法に酷似している。揉捻後は乾くまで炒ると完成であるが,これは17世紀末の『農業全書』の製法と同じである。

    資料によると,嬉野製は生葉の炒りが重量減で30~35%とされ,茶の品質は形状が丸形で珠状となり,色沢は黄緑色,水色は金色濃厚とされる。

    現在では佐賀県や長崎県に傾斜釜が存在することからすると,中世に伝来したのは傾斜釜であったと推察するのが妥当であろう。傾斜釜を用いる釜炒り茶の製法は中国茶のイギリスへの輸出増加に伴う,つまり「輸出用のため量産能率本位」と説明する史料もあるが,輸出が増加する以前の『農業全書』に既に傾斜釜の製法があること,また製造時間を要することから「労力軽減」と考えた方が妥当である。

    乾燥道具を用いる製法もあった。焙炉を使用する製法は実演会等でも見ることができるが,茶焙炉を用いる製法については嬉野で聞くことができないのは,その後の機械製茶で消滅したと推察する。

    また,傾斜釜の嬉野製は熊本県内や宮崎県内でも導入された痕跡もみられるが,その後に訪れた機械製茶によって傾斜釜は直ちに姿を消し,今日では両県には傾斜釜を用いる釜炒り茶は無かったものと認識されていると考える。

  • 2017 年 2017 巻 124 号 p. 29-33
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2020/01/01
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