二番茶後に毎年行われるようになった浅刈りによって,うね間に多量の整せん枝枝条が堆積し,うね間環境への影響が懸念されてきた。そこで,滋賀県内の茶園における整せん枝残さ堆積の実態を調査するとともに,整せん枝残さ堆積下における施肥窒素の土壌中での動態を調査した。
実態調査は滋賀県内の主要産地20カ所で実施し,堆積残さの深さ,堆積量,栽培者への聞き取り調査等を行った。そして,残さ堆積下における施肥窒素の土壌中での動態については,被覆尿素40日タイプを用いて施肥後80日まで調査した。
実態調査の結果,整せん枝残さの堆積深は,20カ所の平均で12.8cm,堆積残さの乾物重は平均で3143kg/10a,その全窒素量は86.7kg/10aであった。整せん枝残さ堆積下における施肥窒素の動態について,残さ上から施用した被覆尿素は,土壌と混和されず残さ中に混和されていたが,土壌に混和された場合と同様の窒素溶出パターンを示した。土壌表面から下層まで,アンモニア態窒素量は残さ除去土壌の方がほとんどの時期でかなり高く推移したが,硝酸態窒素量においてはアンモニア態窒素でみられたような大きな差が認められなかった。
以上のことから,以下の2点の可能性が推察された。1 残さ中に施肥窒素が固定もしくは吸着されている。2 残さ中もしくは土壌極表層で硝酸化成過程における亜酸化窒素の発生もしくは脱窒反応が起こっている。いずれにせよ,残さが堆積している状態で施肥を行うと,施肥窒素の損失が大きくなるか,土壌中での窒素量の高まりが遅れてしまい適期に肥効が得られず,肥培管理のコントロールが難しくなると考えられた。
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