立枯症の初期症状(細根の機能低下)に対するせん枝の影響を検討する目的で本研究を行った。本報では立枯症感受性のやぶぎたと抵抗性のふじみどりを中心に用いて,細根の呼吸に対するせん技の影響,さらに過剰施肥と過湿の間接的な効果について検討した。
せん技によって細根の呼吸速度は低下し,それはせん枝の程度に依存した。品種間ではおくむさし,ふじみどり,さやまかおりの低下が小さく,やぶぎた,くらさわ,おくみどり,かなやみどりの低下が大きかった。この品種間差異は立枯症の発生難易と一致した。
過剰施肥により,一時的な呼吸低下がみられたが,やぶきたよりふじみどりの方が低下が大きかった。
2日間の湛水処理によっても細根の呼吸速度は低下し,処理をやめると,徐々に回復した。しかし,やぶきたとふじみどりで低下割合,回復速度とも差は認められなかった。
やぶきたについてせん枝を行い,さらに施肥を標準濃度と2倍濃度に変えて与えると,2倍濃度の施肥でせん枝による呼吸低下が大きくなった。
また,せん枝後,さらに湛水処理をすると,せん枝をしない場合に比べて湛水処理による呼吸低下は大きくなり,湛水処理後の回復からも遅れるようになった。
以上の結果から,せん枝は細根の呼吸低下を引き起こし,その品種間差異は立枯症の発生難易と一致することが明らかになった。したがって,せん枝は立枯症発生に関与する重要な要因と考えられる。また,過剰施肥と過湿はせん枝の影響を助長することが明らかとなり,立枯症との関連について考察した。
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